家電のしくみ

炊飯器の「IH」と「マイコン」って、なにが違うの?

毎日の生活を便利に、そして楽にしてくれる様々な家電。ふと「どんな仕組みで家電は動くの?」と気になったことはありませんか? 電気や家電の基本、ちょっとしたギモンを、家電のプロ・藤山哲人さんに聞いてみました。
電気炊飯器のしくみを紹介

日本人の主食である“米”を、自動で美味しく炊いてくれる炊飯器。1955年に誕生して以来、日本独自の進化を遂げてきたと言っていいだろう。今回は、そんな炊飯器の仕組みを解説する。

現在販売されている電気炊飯器は、「マイコン式炊飯器」と「IH炊飯器」の大きく2つに分けられる。

大火力でごはんが炊けるIH式の炊飯器

各メーカーの上位機で主流となりつつあるIH炊飯器は、その名の通り「Induction Heating(電磁誘導加熱)」を内釜の底面や側面に接するように配置して、内釜自体を発熱させる仕組みを採用したモデル。

基本は、IH調理器と同様に、磁力を発生させるコイル(誘導加熱コイル)を内蔵し、このコイルに電気を流すことで、内釜と合わせて「電磁石」のようなものを作り出す。この時に、電気が内釜の中を通過しながら熱を発生させるのだ。

象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き NW-LB型」

お米を釜で、美味しく炊く秘訣として、よく言われる「はじめちょろちょろ、中パッパ」は、炊き始めは弱火で、中頃から強火にするのが良いというもの。つまり、美味しいお米を炊くには、火加減の調整が必要だということだ。

IH炊飯器の場合は、内釜自体を発熱させるため、きめ細かい温度調節がしやすい。また、複数のIHコイルを配置し、様々なタイミングや組み合わせで加熱することで「釜の中に対流を起こして炊く」などを可能にしている。

例えば、2021年に発売された象印マホービンの「炎舞炊き NW-US07」では、底部にIHヒーターを4つ、圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き NW-LB型」では6つ搭載。対角線上にある2つのIHヒーターを同時加熱し、部分的に集中加熱することで激しい対流を起こすとしている。

炊飯工程において、何段階にも火力を調節して炊き上げる(パナソニックの「Wおどり炊き SR-VSX100」)
炊飯器の底に、4つのIHヒーターを搭載(象印マホービン「炎舞炊き NW-US07」)
搭載した6つのIHヒーターのうち、対角線上にある2つのヒーターを同時に加熱して、激しい対流を起こす。写真はイメージ(象印マホービン「炎舞炊き NW-LB型」)
教えて! 藤山さん

IH炊飯器は火力が強い点が特徴です。瞬時に温めて、大火力まで持っていけます。昨今の上級モデルでは、お米の銘柄ごとに炊き方を微妙に変えて、それぞれ最適な炊飯を実現できます。また、ごはんが美味しいかどうかは、言うまでもなく好みが大きく左右します。ざっくりと言うと、もっちり派の多い西日本出身者は、西日本のメーカーであるパナソニックやタイガー魔法瓶、象印マホービンなどとの相性が良いでしょう。逆にシャッキリ派の多い東日本出身者は、三菱電機や日立、東芝製などから検討すると良いです。

ヒーターで加熱するマイコン式炊飯器

マイコン式炊飯器は、その名称からは加熱方式が分からない。「マイコン」とは、加熱方式を表すものではなく、「マイクロコンピューター」または「マイクロコントローラー」の略。炊飯器の場合は、火力や温度などを制御するマイクロプロセッサーを採用した炊飯器だということ。

今では火力や温度を制御するのは当たり前だが、JEMA(日本電機工業会)によれば、マイコン内蔵ジャー炊飯器が発売されたのは1979年のこと。当時は「マイコン内蔵」と言えば、「超最新式です!」ということを、アピールする意図があったと思われる。その後、1988年に「IH炊飯器」が誕生し、マイコン式炊飯器は、加熱方式がIHではない電気炊飯器、つまりヒーター採用の炊飯器のことを指すようになった。

タイガー魔法瓶のマイコンジャー炊飯器「炊きたて JBS-A055」

ということで、マイコン式炊飯器は、釜の底部に配置されたヒーターによって加熱される。

なかでも、ヒーターが直接内釜を加熱する「直接炊き」と、外釜に水を入れ、その水を加熱して間接的に内釜のお米を加熱し、蒸して炊き上げる「間接炊き」とがある。

圧倒的にラインナップの多く、一般的なのが、直接炊きのマイコン式炊飯器。

一方で、間接炊きを採用しているモデルで有名なのが「BALMUDA The Gohan」や、糖質のカットが可能だとするモデル。

教えて! 藤山さん

ヒーターとIHという加熱方式だけで、美味しさが決まるわけではありません。またマイコン式でも、IH式と同様に、細かく火力を切り換えられます。ただし、先述の通り、ヒーターよりもIHの方が、火力が強いうえに、一気に高火力にまで持っていけるという違いがあります。ちなみに、今回の話とはあまり関係ありませんが、崎陽軒のごはんは蒸しています。蒸して炊くと、少し硬めで、冷えても美味しい、おかずに合うごはんが炊きあがります。

なお、炊飯器の容量は、何合炊きなどと表現することが少なくない。

目安としては、米1合は、茶碗約2杯分のごはんが炊ける。また1合は約0.18L。10合は1升(しょう)で、約1.5kg。

最大炊飯容量炊飯器の容量
〜3合0.54Lタイプ
〜3.5合0.63Lタイプ
〜5.5合1.0Lタイプ
〜8合1.5Lタイプ
10合(1升)1.8Lタイプ