家電のしくみ

サイクロン式の掃除機は、紙パック式より吸引力が強いの?

毎日の生活を便利に、そして楽にしてくれる様々な家電。ふと「どんな仕組みで家電は動くの?」と気になったことはありませんか? 電気や家電の基本、ちょっとしたギモンを、家電のプロ・藤山哲人さんに聞いてみました。
サイクロン掃除機のしくみを紹介

掃除機がゴミを集める方式は、大きく2つに分けられる。(紙パックなどの)フィルター式とサイクロン式だ。

そもそも掃除機は、空気と一緒に吸い込んだゴミやホコリなどだけを、掃除機内に集める機械。つまり、吸い込んだ空気から、ゴミだけを分離させて、紙パックやダストボックスに集めていくもの。空気とゴミを分離させる機械ともいえる。

フィルター式は、機構がシンプルなだけに想像しやすい。空気を吸い込むために、掃除機の末端にモーターを搭載し、ファンを回転させる。そしてホース先端からゴミを含む(ほとんど)空気が、掃除機内に吸い込まれて、モーター方向へと移動していく。その経路の途中にフィルターが配置され、そこでゴミが留められて空気が通過していく。つまり、ゴミと空気が分離される。

一方で、サイクロン式は、ゴミと空気を遠心力の力で分離する。そのため、業務用機器などでは、遠心式集塵機と呼ばれる場合もある。

遠心力は、身の回りにある一般的な力だ。

自動車に乗っていて、急にハンドルを左右にきると、体が進行方向(内側)とは反対側(外側)へと飛ばされそうになる……あの目に見えない力が、遠心力だ。さらに自動車で、円を描くように高速で走り続けると、乗っている人や物は、自動車が描く円の外側へ引っ張られていく……これがサイクロンのようなもの。

こうしたサイクロンの原理を利用した掃除機が、一般的に「サイクロン掃除機」や「サイクロンクリーナー」と呼ばれる。

ダイソンの「Dyson Micro 1.5kg」の、サイクロン機構を搭載した本体部分

サイクロン掃除機は、モーターとファンで作り出した吸引力を使って、ホースの先からゴミを含んだ空気を吸い込む。ここまでは、フィルター式の掃除機と同じ。吸い込んだ空気は、円筒形または円錐形の筒の中を通って、細い穴から別の部屋へと移っていく。この時に渦巻(サイクロン)が発生する。サイクロンは、ゴミを外側へ押し出し、中心にある空気だけが次の部屋へと移動していく。

教えて! 藤山さん

一つの大きなサイクロンだけでは、ゴミを完全に分離するのは難しいんです。そのため、ダイソンなどは、掃除機の中に、いくつものサイクロンを起こしています。例えば、少し古いダイソンの「DC35」というサイクロン掃除機では、円筒形のダストボックス内を、ゴミやホコリがくるくると回っているのが見えますが、それは第1段階のサイクロンです。

第2段階のサイクロンは、より小さい円筒の中を、より速く回ります。そして、ダイソンのサイクロン掃除機で象徴的な、いくつもの円錐形のパーツがありますよね? あれが、第3段階のサイクロンです。

第1、第2段階では、大きな筒で大きなゴミやホコリを分離していきます。徐々に小さくしていき、サイクロンの渦巻スピードを増していき、より小さく軽いゴミやホコリを分離していくんです。

渦巻には、縮まると回転スピードが速まる性質がある。例えば、フィギュアスケーターが、一定の場所で回転する「スピン」を想像すると分かりやすい。手や足を外側に広げている時には、ゆっくりと回転しているが、徐々に手足を身体の中心軸に集めていくと、スピンの回転が増していく。

ダイソンのサイクロン掃除機でも、サイクロンを発生させる筒のサイズを何段階かに分けて小さくしていき、徐々に高速化して強力な遠心力を生んでいく。これにより、ミクロン単位の粒子まで分離できる。

ダイソンの「DC35」における、第1と第2のサイクロン
第3のサイクロン。徐々に筒を小さくすることで、渦巻のスピードを増していき、より小さく軽いゴミやホコリを分離していく
「Dyson V12 Detect Slim Fluffy」では、5段階でゴミやホコリを分離し、捕集していく

サイクロン掃除機は吸引力が強いって本当?

昨今では、フィルター式よりもサイクロン式の方が人気となっている印象がある。各メーカーが発表する掃除機も、スティッククリーナーに限れば、サイクロン方式を採用したモデルの方が、種類が多い。

どちらを選ぶか迷うところだが、気になるのは吸引力。はたしてサイクロン掃除機の吸引力は、フィルター式よりも強いのか?

教えて! 藤山さん

サイクロン掃除機の吸う力に関しては、フィルター式などと比べて、強いわけではありません。例えば吸引力でいえば、リョービやマキタ製のフィルター式掃除機などの方が強力です。

サイクロン掃除機は、その代わりに必ずクリーナーヘッドにブラシを搭載し、ゴミやホコリをかき込む機構があります。例えば絨毯などを掃除する際にも、絨毯の中にあるゴミをブラシでかき出して、表に出てきたものを吸引します。だから、それほど吸引力を問われません。

藤山さんによれば、サイクロン掃除機で重要なのは、むしろクリーナーヘッドのブラシで、「ヘッドが命」だという。このブラシにより、細かいゴミやホコリなどまでかき込んで、吸引しやすくしている。

ダイソンの「Dyson Micro 1.5kg」のブラシ

ちなみに、木工や金属加工時に出てくるような、大きく重いゴミを吸い込みたい場合には、吸引力の強いマキタやリョービなどの掃除機がおすすめだという。逆に、細かいホコリなどを吸いたい時には、優れたブラシを備えたサイクロン掃除機を選ぶと良いという。

もちろん掃除エリアが広い場合には、バッテリー切れの心配ない、電源コード有りのスティッククリーナーやキャニスター型がおすすめだ。