家電のしくみ

ドラム式洗濯機の洗い方は縦型と何が違う? おしゃれ着洗いに良い理由

毎日の生活を便利に、そして楽にしてくれる様々な家電。ふと「どんな仕組みで家電は動くの?」と気になったことはありませんか? 電気や家電の基本、ちょっとしたギモンを、家電のプロ・藤山哲人さんに聞いてみました。
第3回はドラム式洗濯機のしくみと特徴を紹介(写真はパナソニックの「NA-VG2500」)

様々な電気洗濯機の仕組みは、大きく2つに分類すると「縦型洗濯機」と「(斜め)ドラム式洗濯機」がある。いずれも内蔵モーターで洗濯槽を回転させるが、前者は洗濯槽が縦に配置され、後者は斜め横に配置されている。

ドラム式洗濯機は、斜め横に配置された洗濯槽が回転し、衣類を持ち上げて下に叩き落とすことで洗っていくのが基本。そのため、衣類同士をこすり合わせて洗う縦型洗濯機が「こすり洗い」に近いのに対して、ドラム式洗濯機は「叩き洗い」に近いといわれる。

ドラム式洗濯機の利点の一つは、衣類を上から落として叩き洗いするため、こすり洗いの縦型洗濯機に比べて、洗濯時の衣類の生地が傷みにくいことが挙げられる。また、縦型洗濯機に比べると、乾燥機能が圧倒的に高いのも特徴だ。

ドラム式洗濯機は、洗濯槽が斜め横に設置されている(写真は東芝ライフスタイルのドラム式洗濯乾燥機「ZABOON TW-127XP1」)
教えて! 藤山さん

ドラム式洗濯機は、生地を傷めにくいので、おしゃれ着を洗うのに適しています。そのため、どちらかといえば、泥汚れの多い小学生や中学生のお子さんがいる家庭では、縦型洗濯機がおすすめです。そうした子供もおらず、仕事で油で汚れることもない家庭では、ドラム式洗濯機でもよいでしょう。また、ドラム式洗濯機は、衣服を乾燥させるのも得意です。洗濯物を干すのが面倒だったり、ベランダ干しが禁止されているマンションに住む方などにおすすめです

強力な乾燥機能を搭載する

ドラム式洗濯機の大きな特徴の一つに、搭載された乾燥機能が強力だという点が挙げられる。洗濯物を投入したら、あとは全自動で乾燥まで任せられるのは便利だ。

ドラム式乾燥機で採用されている乾燥方式は、パナソニックを例に挙げると「ヒートポンプ乾燥」と「低温風パワフル乾燥」の2方式がある。

ヒートポンプ乾燥。エアコンと同様にヒートポンプユニットを搭載する
低温風パワフル乾燥。ヒーターで加熱した、室温プラス約15℃の低温風で衣類を乾燥させる

特に乾きが良いのが、ヒートポンプ方式。ドラム式洗濯乾燥機は、乾燥機能が優れているといわれるのは、このヒートポンプ方式を採用したモデルを指しているといっていい。

ヒートポンプは、エアコンにも採用されている。圧縮機(コンプレッサ)、熱交換器が2基、それに膨張弁の4つが、熱の媒介となる冷媒をやり取りすることで、空気の熱を奪ったり、与えたりする仕組みをいう。

ヒートポンプの概要

エアコンもだが、洗濯機にも、このヒートポンプが搭載されている。

まず、イメージ図の下方にある「圧縮機」で冷媒を圧縮すると、冷媒が熱くなる。熱くなって気体となった冷媒は、図の左側にある熱交換器へ進む。そして熱交換器の周辺の空気が暖められて、洗濯槽の中に送り込まれる。その送り込まれた熱風が、衣類を暖めて水分を奪っていくのだ。

さらに冷媒は、図の上方にある「膨張弁」を通過し減圧される。減圧することで、冷媒は一気に冷えて、図の右側にある熱交換器へ進んでいく。この冷却用の熱交換器に、洗濯槽内の湿った空気が触れる。それにより、洗濯乾燥機外へ放出する前に空気が冷やされるほか、結露して排水することで、除湿が図られる。別のいい方をすれば、洗濯槽内の暖かく湿った空気が、機外へ放出される前に、除湿されて、冷たい空気が機外へ放出される。つまり暖められて湿った空気が、そのまま排出されることがない。

一方の縦型洗濯機でよく使われているヒーター方式の場合は、ヒーターで暖めた空気を洗濯槽内の衣類に当てる方式。大きなドライヤーで、衣類に熱風を送るようなイメージだ。洗濯乾燥機内で暖められた空気は、当然、外へ排出する必要がある。このときに、そのまま排出しては部屋が暖められて、湿度も上がってしまう。そこでヒーター方式では、乾燥時にも水(冷却水)を使って、排出される空気を冷ましたり、除湿したりする。つまり、洗濯時だけでなく乾燥時にも、多くの水が必要になるということ。

図はパナソニックのVXシリーズのイメージ図。(1)と(4)は熱交換器のこと。(1)まず除湿された空気を加熱器(加熱用熱交換器)で暖めて乾いた温風にする。(2)温風をドラム槽(洗濯槽)へ送り込む。(3)衣類から水分を吸収して湿気を含んだ空気を、ヒートポンプユニットへ送る。(4)湿気を含んだ空気を冷却器で冷やして結露させて除湿する

2方式を比較すると、ヒートポンプ方式は、洗濯乾燥機内の空気や衣類を暖めるための電気代が安く、排出時の暖かく湿った空気を冷まして除湿するための水も不要なため、省エネ観点でのメリットが大きい。デメリットは、ヒートポンプ方式を採用すると製品価格が高くなることと、ヒートポンプユニット(機構)が大きいこと。

教えて! 藤山さん

ヒートポンプはパワフルな乾燥が可能です。そうであれば、縦型洗濯機にもヒートポンプ方式を採用すればいいのに、と思いますよね。ただ、ヒートポンプユニットは大きいため、縦型洗濯機への搭載が難しいです。もし搭載するとしたら、洗濯槽の下に設置することになるでしょうが、そうすると洗濯槽を従来よりも高い位置に設置する必要が出てきます。つまり衣類などが取り出しにくくなります。一方で、横方向に設置されているドラム式洗濯機の場合は、洗濯槽の下に十分なスペースがあるため、搭載しやすいんです

シャープのヒートポンプユニットのイメージ図
イメージ図の下の方にあるのが、ヒートポンプユニット(写真は東芝ライフスタイル「ZABOON TW-127XP1」)

乾燥機の自動洗浄機能があるかは重要

藤山さんによれば、ヒートポンプ方式のドラム式洗濯乾燥機で、重視すべき点は、熱交換器を自動で洗浄する機能の有無だとする。

使用しているうちにフィルターでも取り除けないほど細かい、衣類の糸くずや繊維が、熱交換器に貼り付いてしまう。これが原因で、乾燥機能が下がってしまったり、故障したりすることがあるという。

それでいて、ヒートポンプユニットにある熱交換器を、ユーザーがメンテナンスすることはできない。そこで、熱交換器の自動洗浄機能が必須だという。

熱交換器を自動洗浄する機能を搭載した、パナソニックの「VXシリーズ」
教えて! 藤山さん

洗濯乾燥機では、常に空気が循環し、衣類を乾かした空気は排出されていきます。このときに、フィルターでは取り除けない衣類の微細な糸くずなどが、熱交換器に付着してしまうんです。これらの汚れは湿気を帯びているので、取れずに貼り付いていきます。1年〜2年であればいいのですが、4年〜5年と使用年数が経ると、エアコンの室外機が布で覆われたのと同じ状況になります。そうなるとヒートポンプの働きが悪くなり、しっかりと暖められなくなったり、乾燥時間が購入時よりも長くなったりします。もっといえば、故障の原因にもなるので、この熱交換器を自動洗浄してくれる機能は、ぼくは必須だと思います

熱交換器を自動洗浄する機能は、主にパナソニックのVXシリーズや、東芝ライフスタイルの最新モデル「ZABOON TW-127XP1」がある。いずれも目立つようにうたっている機能ではないが、長期間使いたいのであれば、これらの製品をチェックしたい。

温水洗浄機能や洗剤自動投入機能がトレンド

ドラム式洗濯乾燥機に限らず、温水洗浄機能と、洗剤や柔軟剤の自動投入機能が、一気に普及しはじめている。

温水洗浄機能は、ヒーターで洗濯水を暖める。例えばパナソニックのVXシリーズでは、約15/30/40/60℃で水温を設定して、洗濯できる。同社によれば、約37℃で皮脂が溶け出しやすくなり、約40℃で洗剤中の酵素が活性化しやすくなるという。また最も高温な約60℃では除菌効果が期待できる。逆に水温が低すぎると、洗剤が溶けにくく、汚れが落ちにくいのだ。

洗濯水を暖めることで、洗剤中のの酵素を活性化したり、皮脂汚れが取り除きやすくなる

液体洗剤や柔軟剤の自動投入機能は、洗濯機のタンク内に洗濯洗剤などを入れておくことで、洗濯量に応じて自動で最適な量とタイミングで洗剤や柔軟剤が自動投入される機能。ドラム式洗濯機に限らず、縦型洗濯機などでも、搭載モデルのラインナップが広がっている。

洗濯の量や洗剤や柔軟剤の種類によって、最適な量を自動で投入する「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能
教えて! 藤山さん

過不足なく適量の洗剤を入れるのは、意外と難しいです。しっかりと汚れを落としたいから多めに入れる、なんて経験は誰でもありますよね。ライオンの調査によれば、約25%の人が「洗剤を多めに入れる」そうです。でも入れすぎると、しっかりと水に溶けないばかりか、洗浄力がアップするわけでもありません。さらに、すすぎをしっかりとしないと、逆に洗剤の成分が衣類に残って、汚れの原因になります。その点、「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能は、適量を入れてくれるので便利です。一度使うと、便利さを実感できる機能です