家電のしくみ
エアコンは、なぜ部屋を暖めたり冷やしたりできるの?
2021年5月11日 07:00
家で過ごす時間の中で、快適さを保つだけでなく熱中症予防など体調管理にも大切なエアコン。
“エアーコンディショナー”の略であり、空気の温度や湿度を調節する装置のエアコンが、どうやって部屋の空気を暖めたり冷ましたり、除湿したりするのか、基本的なところから説明したい。
エアコンで重要な役割を担っているのが「冷媒」という物質。この冷媒を、熱くしたり冷たくしたりし、室外機と室内機の間を循環させる。室外機で熱くした冷媒を、エアコンの室内機に向かわせると、部屋の中の空気が(熱い)冷媒によって暖かくなる。逆に、冷たくした冷媒を室内機に向かわせると、部屋の中の空気が(冷たい)冷媒によって冷やされていく。
この冷媒を、熱くしたり冷たくするのが、エアコンの「室外機」だ。室外機が、冷媒をどうやって熱くしたり冷たくしているのか。
シンプルに説明すると“気体をギュ~っと圧縮すると熱くなる”という性質を利用している。逆に“パッと膨張させると、冷える”。
部屋の空気を暖めたい時には、室外機が(気体の)冷媒を“圧縮”して熱くする。逆に、部屋の空気を冷たくしたい時には、室外機が(液体の)冷媒を“膨張”させて冷やす。
「冷媒とはガスの一種です。液体から気体、気体から液体になりやすい性質のガスです。気体を圧縮すると熱くなり、膨張させると冷たくなる。そうして暖まったり冷めたりしやすい化合物です。
昔はフロンという、炭素・フッ素・塩素からなる化合物を使っていたのですが、環境に悪いとうことで、より環境負荷の低い代替フロンが開発されました。今はハイドロフルオロカーボン(炭素・フッ素・水素)などが使われています。
例えば冷媒に、空気や水を使っても良いんです。ただし、ものすごく強い力で押さないと熱くならないし、熱を放出するのにも時間がかかるなど、冷媒としては効率が悪いんです。そこで、効率の良いフロンを使っているんです」
一般的なエアコンは「室内機と室外機が必要」というのがイメージできただろう。室外機で冷媒を温めたり冷たくし、それを室内機に流して室内の空気を暖めたり冷ましたりする。
続けて、室外機を起点に考えて、エアコンのしくみを見ていこう。
暖房運転の場合
外気が冷たい暖房運転の際は、室外機に入ってきた液体の冷媒は、熱交換器で外気の熱を奪って気体となりコンプレッサー(コンプレッサー)へと向かう。気体の冷媒はコンプレッサーで圧縮されて熱くなる。その後、気体の冷媒が部屋の中の室内機へと流れていく。室内機内の熱交換器で、冷媒は熱を放出しながら液化していく(この時に、部屋の空気が暖められていく)。液体になった冷媒はパイプを伝って室外機へ運ばれていく。
冷房運転の場合
外気が暖かい冷房運転の際は、室外機に流れてきた気体の冷媒は、熱交換器を通って帯びている熱を放出しながら液化する。液体となった冷媒は、膨張弁で膨張してさらに冷たくなる。冷たい液体の冷媒が、室内機の熱交換器へと運ばれていき、部屋の中の熱を奪いながら気化していく(この時に、部屋の空気が冷やされていく)。気体となった冷媒は、パイプを伝って室外機へ運ばれていく。
「エアコンには冷暖房のほかに除湿機能を備えています。これは冷房時に、熱交換器が冷えているからできるんです。冷たい飲み物を置いておくと、コップが結露していきますよね。この冷たい飲み物が入ったコップが、エアコンの熱交換器だと考えてください。すると熱交換器の周りも結露します。この結露した水分を、ドレインホースで部屋の外に排出していきます。それを続けることで、室内の湿度が下がっていきます」
逆に、外が寒い暖房時には、室外機が外気よりも冷たい。そこで、室外機の各パーツに空気中の水分がつき、結露してしまう。結露して霜となっているのを放置しておくと、冷媒が凍って熱を運べなくなってしまう。そのため、冬には「霜取り運転」が必要になる。
室内機の中の詳細
エアコンは、室外機と室内機がセットになってはじめて機能する。さらに冷媒を温めたり冷やしたりする仕組みは同じため、使われているパーツの形は異なるが、構造としては似ている。
室内機の主なパーツは、熱交換器とファン。室外機から送られてきた冷媒は熱交換器を伝っていく。その熱交換器で室内の空気を暖める/冷やすため、ファンを使って室内の空気を取り込み、排出させる。その際に、空気が熱交換器に触れて、温度を調節したあとに、改めて室内に排出されていく。
吸込口には、ゴミやホコリが機内に入らないようフィルターが備えられている。また吹出口には、風向きの左右方向を調整するルーバーと、上下方向を調整するフラップが取り付けられている。
室外機にも、形は違うが熱交換器とファン、さらに冷媒を圧縮するコンプレッサーと、膨張させる膨張弁を備える。熱交換器は、冷媒の熱を外に放出したり、外気の熱を冷媒へ取り込んだりする。
エアコンを省電力で運転する方法
エアコン運転を最適化するインバーター
インバーターとは、電気の電圧や周波数をコントロールする回路のこと。エアコンでは主に、室外機内に搭載されているコンプレッサーに、取り付けられている。つまり、コンプレッサーの駆動を制御して、冷媒をどのくらい圧縮するかを決めている。
「エアコンの電気部品のなかで、一番電気を使っているのはコンプレッサーです。コンプレッサーが、冷媒を圧縮する時に電気が必要になります。昔はこのコンプレッサーをフル回転させるか切るか、オン/オフするだけでした。でも、このコンプレッサーを、ゆっくり回したり早く回したり、力強く回したりできるようにしたのが、このインバーターというパワー回路なんです。コンプレッサーの電源最適化回路と呼べますね。
一番簡単な電源の制御法は、スイッチをオン/オフすることです。それを例えば、細かくオン/オフをカチカチカチカチと、高速に繰り返すと、50%で運転したりできます。もしくは、オンの時間を少し長くしたり、オフの時間を短くしたり、押す時間に緩急をつけたり、周波数を高くすることもできます。電車が好きな方であれば、VVVFというインバーターを調べてみてください(笑)」
室外機を大きくして性能アップ
エアコンの性能を上げることでも省エネが可能だ。性能を向上させるには、いくつか方法がある。代表的なのが、熱交換器を大きくすること。
「熱交換器の表面積を広げることで、より効率的に空気を冷やしたり暖めたりできます。昔は薄いI型だった室内機の熱交換器が、最近ではファンを取り巻くような形になっています。また熱交換器をくねくねとさせているのも、凸凹させて表面積を稼いでいるんです。
あとは、室内機ではなく室外機の熱交換器を大きくする方法も取られています。そのため、室外機自体のサイズを少しずつ大きくしていっています」
最新モデルは、センサーやAIの導入で省エネ性をアップ
最新のエアコンでは、センサーを搭載して室内に人がいるかいないかを把握し、自動で無駄な運転を避ける機能を搭載したモデルもある。また、天気予報やユーザーの生活リズムを把握し、常に快適かつ無駄をはぶいた運転を、自動で行なうモデルも増えている。
今後、省エネ性とバランスを取りながら、ユーザーが細かい操作を行なうことなく、快適な空調が実現できるようになっていくことも期待される。