ぷーこの家電日記

第540回

栗むき器を侮っていた。驚くほどに楽チン!

10月に入っても暑い暑いと言っていたら、急に気温下がって、気をつけていたつもりだけど、まんまと体調を崩してしまった。

春と秋の季節の変わり目は自律神経の乱れが原因で体調不良を起こしやすいそうだ。それでも私はこの季節がすごく好きだ。春よりも秋の方が好き。夜の冷たい空気とか、何となくちょっと寂しい感じとか、そして何よりも秋の香り。歩いているとふわっと金木犀の香りを感じて、一気に何十年も前の自分に戻る感じが不思議で面白い。

臭覚って記憶と直結しているなぁとしみじみ実感するし、何とも言えないキューッとするような、キュンキュンするような、そんな感情が新鮮で懐かしくて堪らなく好きなのだ。

そしてやっぱり秋と言えば食欲(笑)。旬の食べ物は美味しいし、温かい料理の美味しさが染みるし、そして濃厚な秋スイーツ! さつまいもと栗を使ったスイーツはこの季節限定だけど、この季節だけでは食べ切れないほどの種類が発売されるし、大好きだ。

栗が大好きな私は季節がくると毎年自分でも料理する。いわゆる「栗しごと」だ。青梅の季節に梅酒や梅干しを作ることを「梅しごと」というけれど、「栗の方が梅よりよっぽど重労働の仕事じゃん! でも栗しごとって聞かないなぁ」と思っていたけれど、私の周りに栗をたくさん仕込む人が少なかっただけで、ちゃんと「栗しごと」というらしい。

そして数少ない栗しごと仲間の友人がここ数年「実家からたくさん届いたから」とたっぷりの栗をお裾分けしてくれている。ありがたい限りである。栗って食べた瞬間に美味しくて苦労も吹っ飛ぶのだけど(だから学習しない)、準備している間はもう苦行にしか感じられない。

その友人に「栗ってさ、“不味く”じゃなく“強く”進化したの、失敗だよね。花は臭いし、イガは危ないし、鬼皮は硬いし、渋皮はしつこいし、アクは強いし……。こんなに強く進化したのに、それでも食べたくなる人間の食に対する執念って怖い!」と言ったら、「凶器vs狂気」と返ってきて、上手すぎて爆笑してしまった。

これから栗しごとをしながら、「私の狂気がこの凶器を凌駕する!」と頭の中でバトル漫画ごっこをしていこうと思う。少しは攻略が楽しくなるのではないだろうか(笑)。

そんなバトル漫画の主人公脳の私が、夕方に栗ごはんの準備をしながら、いつもの友人たちとオンラインでお喋りをしつつ、「栗って美味しいけど面倒なんだよねー。今すでに嫌気がさしている」なんて言ったら、「うちの地域、栗の名産地なんだよねー。すごい大きいしすごく味もいいみたいよ」なんて魅惑的なことを言い始めた。そう、友人は日本一の栗とも言われる丹波栗の名産地、丹波篠山に住んでいるのだ。

丹波といえば、正月に食べる黒豆の最高峰「丹波の黒豆」だったり、ちょうど先日解禁になったばかりの「丹波黒枝豆」だったり、ほかにもお茶や芋、それを彩る陶器まで何とも贅沢で豊かな地域なんだろうと憧れる。

そしてその友人の話し方が上手なもんだから、目の前の栗と格闘しながら「もう嫌だ」って気分な癖に、「ごめん、ちょっとお遣い頼まれてくれる?」と、丹波栗を買って送ってもらうことに。「自ら苦行を増やすなんて、栗の美味しさって罪深い!」と軽く後悔する私に別の友人が「栗くり坊主(栗むき器)がすっごい楽だよ! うちでもずっと使ってる」と教えてくれた。

とはいえ、栗むき器なんて使っても年に数回だし、昔に栗むき器を買ったけれど、たいして便利でもなかったという記憶が強くて「ふーん」と軽い反応。自分の選ぶセンスの無さは高い棚の上に置いておいて、栗むき器とキャベツの千切りピーラーはどうしても信用できないのである。栗も結局包丁でコツコツ剥くのが1番だと思う。いや、思っていた。

それから数日後、早速友人がわざわざ知り合いの栗農家さんのところまで足を運んで買ってきてくれた、3Lという大きなサイズの栗が2kg届いた! 初の丹波栗とのご対面である。

段ボールを開いてびっくり! 栗の大きさにも驚いたけれど、何と先の話に出た栗くり坊主を買って同封してくれたのだ。あまりのサプライズにびっ栗仰天!(栗なだけに)。

「今週は忙しいから、いつ栗しごとしようかなぁ」なぁんて思っていたのに、ちょっとだけなんて言いながら、つい栗を剥き始めてしまったら、「栗くり坊主すごい! え? 何この楽さ! どれだけでも剥けちゃう!」と、楽しくて止まらなくなってしまった。完全に前言撤回、栗むき器最高だ。例えるならば、ママチャリからe-bikeに乗り換えたくらいの快適さ! スイスイ進むー! もう包丁には戻れない!

そして剥いた栗で初のマロングラッセ作りに挑戦! 毎年渋皮煮を作っていたけれど、今年は作ってみたかったマロングラッセを作ってみる。

栗を渋皮まで綺麗に剥いてから、煮崩れしないように、ひとつひとつガーゼに包んでタコ糸で巻いて保護をする。それをたっぷりのお湯で柔らかくなるまで煮た後に、ひたひたのお湯に砂糖を入れて溶かして一晩置く。翌日また砂糖を足し、さらに翌日も砂糖を足し……と徐々に糖度を増しながら、じっくりと染み込ませていくのである。

恐ろしい砂糖の量にクラクラ来るけれど、シロップを飲み干すわけではないのでと自分に言い聞かせながら入れていく。そしてきっと週明けくらいには完成しそう! ガーゼが足りなくてそのまま一緒に茹でた栗をひとつ食べたけれど、美味しすぎて思わずキッチンでピョンピョン跳ねてしまった(笑)。

丹波栗と栗くり坊主があったら、私も一流パティシエになれそうな気分。サプライズのお返しにマロングラッセを贈ろうと思うので、どうか成功しますようにと祈りながら、夜な夜な狂気の砂糖を投入しているのでありました。いやぁ、栗くり坊主凄い! 感動したー!

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。