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使ってわかるそのスゴさ! 高級ホームクリーニング機「LG styler」が人気なワケ
2018年4月11日 07:00
スチームと振動で、衣類のニオイやシワをスッキリ落としてくれるホームクリーニング機「LG styler(スタイラー)」。韓国LGエレクトロニクス社が開発した本機は、2011年より韓国・欧米を中心に展開し、2017年には日本でも販売をスタートした。販売価格は約25万円と高額だが、自宅で洗濯しにくいジャケットやブラウスなどを手軽にケアでき、これまでにないジャンルの家電製品として話題を集めている。
見た目は一般的なクローゼットのようだが、本体には水タンクを備えており、内部にスチームを循環させる。1分間に約180回振動するハンガーラックとの組み合わせにより、シワを伸ばし、タバコや汗のニオイを除去できるという。専用のアロマシートを使って、好みの香りを衣類に付けることも可能だ。
さらに、ドアの内側にはズボンをセットでき、プリーツ(折り目)はしっかりと残しながら、全体のシワを伸ばしてくれる。ラックを備えているため、ぬいぐるみや帽子も入れられる。洗濯しにくい布類のケアができるだけでなく、ジャケットやシャツをクリーニングに出す手間がなくなるなど、ユーザーの行動にも変化をもたらしているという。
日本進出から1年経った今、どのような反響があったのだろうか。また、韓国では既にヒット家電として認知されているが、どのように使われているのか。韓国ソウルにあるLGエレクトロニクス本社のほか、LG stylerを設置している家庭やレストランに赴き、話を聞いた。
スリムタイプで日本市場へ進出。BtoCにも注力
製品開発を担当した、LGエレクトロニクス H&A事業本部 LG styler 開発チーム チーム長のパク・ヘヨン氏は、LG stylerの日本進出について次のように語った。
「まず、LG stylerは、衣類の在り方を変えたいという思いから製品開発がスタートしました。外出したらシャワーを浴びるように、服も着たらケアするという習慣を作りたいと考えています。韓国では認知度が高まっていますが、日本市場ではスタイラーは大きいため難しいと思いました。しかし、2015年にスリムタイプが生まれたのをきっかけに再び検討し、日本には制服やユニフォームを着る文化があるほか、アレルギーに敏感であることなども踏まえて進出に至りました」
2017年1月に日本展開をスタートしたが、当初はホテルやレストランなどBtoB向けの製品と位置づけていた。しかし、二子玉川・蔦屋家電からオファーがあったことをきっかけに、一般販売を開始。その後さまざまな家電量販店から声が掛かり、現在はBtoCマーケットにも注力しているという。
実は、日本に投入したLG stylerと、海外で展開した旧モデルでは、細かな違いがあるという。まず、本体サイズに関しては、グローバルでは大容量モデルも用意されているが、日本の住環境を踏まえてコンパクトなスリムタイプを投入。
このほか、既存の製品でも問題だった、ズボンのセンタープレスラインまで取ってしまう点を、ドアの内側に折り目ケア機能を付けることで改善した。スチーム用のタンクも、使いやすさを考慮して直感的なデザインに変更している。
今後はさらなるプロモーションを予定しており、日本での訴求ポイントとなる花粉ケアについても言及していくという。
パク・ヘヨンチーム長は、「製品ラインナップを拡充することも大事ですが、それ以上にユーザーに体験してもらうことが重要と考えています。使ってくれる人が増えるような活動を、今後も続けていきたいです」とコメントした。
クリーニングに出す回数が激減、共働き4人家族のLG styler活用法
一方、既に認知度が高い韓国では、どのような広がり方をしているのだろうか。最近では、婚礼用家具家電セットの中にLG stylerが含まれることが増え、欲しい家電のひとつから、必須家電にまで変わってきている。
韓国でも共働き世帯は多く、LG stylerは広く愛用されているという。今回、LGエレクトロニクスで働きながら、夫と2人の子供と暮らすナ・ジュヨンさんの自宅に伺い、話を聞いた。
ジュヨンさんの自宅では、LG stylerをウォークインクローゼットを兼ねた、書斎部屋に置いている。平日は主に夫のスーツを掛け、休日は子供の服を入れて衣類ケアすることが多いという。
LG stylerを導入した理由についてジュヨンさんは次のように語った。
「韓国ではPM2.5が深刻な問題になっていて、窓を開けても換気にならないので空気清浄機は必ず置いています。特に子供がいるとやはり空気環境は気になるので、LG stylerは重宝しています。衣類を掛けておくだけで、ホコリやPM2.5、ニオイを取ってくれるのは、働きながら子供を育てる身としてはとてもありがたいです」
自宅にLG stylerを設置する前と後では、どのように変化があっただろうか。
「衣類をクリーニングに出す回数が圧倒的に減りました。夫が飲み会から帰ってくると、ジャケットには色んなニオイが付いていてそのままクローゼットにしまうのはためらいます。LG stylerがなかったときは、クリーニングに出すまで仕方なくベランダに置くこともありました。しかし、共働きだとクリーニングに出したいタイミングで出せないことが多々あります。そういった点がLG stylerで解消され、衣類を清潔な状態でキープできるようになりストレスが減りました」(ナ・ジュヨンさん)
ジュヨンさんの自宅に訪問し、興味深かったのは、日本の家庭よりも部屋が広いこと。ソウル市麻浦(マポ)区に位置する都心のマンションで、面積は109m2、3LDKの間取りだ。「4人家族の平均くらい」とジュヨンさんは話すが、東京都心のファミリー向けマンションと比べると確実に広い。トイレは2つあり、1つはゲスト用として使われる。
キムチ専用庫を備えた冷蔵庫も、836Lと大容量。エアコンや空気清浄機はタワー型で、ちょっとずつ日本の家庭との違いが見えて面白い。
日本で投入したLG stylerはスリムタイプだが、それでも大きさが気になるという声はある。こうした住環境の違いも含めて、今後日本でどういった展開がされていくのか楽しみだ。
高級サムギョプサル屋にLG styler、タバコや焼肉のニオイをシャットアウト
一般家庭の次は、焼肉屋に設置されているLG stylerを見せてもらった。訪れたのは、豚バラ肉を野菜で巻いて食べるスタイルのサムギョプサル店「ハナムテジジプ イテウォン直営店」。チェーン店ではあるが、米軍基地が近くにあり外国人観光客が多く訪れるイテウォンという土地柄もあり、高級サムギョプサル店として位置づけられている。
店前にはロッカーが設置されており、ニオイを付けたくないジャケットやコートをあらかじめ入れておける。LG stylerは店に入ってすぐのレジ横に置いてあり、好きに使って良いという。
ハナムテジジプ イテウォン直営店 オク・ミヌ店長は、店内にLG stylerを導入したことについて次のように語る。
「韓国では歓送迎会やパーティなどをする際、焼肉屋がお店の候補に挙がることが多いのですが、ニオイが付きやすいので女性からは嫌がられることが多くあります。当店は、系列店よりも高級感があることをウリにしており、高級スタイルでサムギョプサルを食べてもらうという提案をしています。LG stylerのことは元々知っていたので、高級スタイルというお店のコンセプトに合うと思い、自ら導入を提案しました。焼肉のニオイが気になる人にも、気兼ねなくお店に来てもらえたらと思います」
店内の各フロアにスタイラーを設置し、最大16着まで衣類を掛けられる。サムギョプサルを食べているときにジャケットを着ていたら、どのタイミングでスタイラーに入れればいいのか、実際の活用例をオク店長に聞いてみた。
「20分のお急ぎコースを搭載しているので、もし食事をしている途中でジャケットのニオイが気になったら、いつでも入れてもらって大丈夫です。秋冬などコートを着る時期は、来店したタイミングで『使ってみませんか?』と声を掛けることもあります。お客様も、2回め以降は自ら『スタイラー使っていい?』と入れる人も多いです」
「ジャケットなどをクリーニングに出すと、1回あたり6,000~10,000ウォン(約600円~1,000円)掛かるので、クリーニング代が浮いたと言う人もいました。新婚夫婦には『これいくらで買えますか?』と値段を尋ねられたこともあります」(オク店長)
LGエレクトロニクスでは、プロダクトデザインのコンセプトとして「Life's Good」を掲げている。ユーザーの生活を第一に考え、あるべき機能を持ちながら、不要なものは取り除くというビジョンは、LG stylerだけでなくあらゆる家電製品に反映されている。
後編では、LG stylerをはじめ、スマートスピーカーなど、IoT製品で広がる同社の取り組みついて紹介する。