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コンセプトは毛髪美容器。日本で1番売れているドライヤー「ナノケア」の秘密に迫る

 日本で一番売れているヘアードライヤー「ナノケア」。現在、フラッグシップモデルにおいては、21カ月連続で販売数量シェアNo.1を獲得しており(2014年10月~2016年6月)、累計販売台数は700万台を突破したという。

 ドライヤーの平均単価が5,000円台の中、20,000円を超えるナノケアがシェアNo.1を獲得しているのは偉業といえるだろう。9月1日には新モデル「EH-NA98」も発売された。なぜ、ナノケアが売れ続けているのか。その秘密を探ってきた。

ヘアードライヤー「ナノケア EH-NA98」

 今回訪れたのは、滋賀県・草津市にあるパナソニック アプライアンス社。ドライヤー「ナノケア」の開発が進められており、毛髪を研究する「髪の基礎研究所」も構えられている。

 2005年のナノケア第1号から開発に携わる、パナソニック ビューティー・リビング事業部 商品企画部 清藤 美里氏によると、ナノケアのコンセプトは、毛髪乾燥機ではなく「毛髪美容器」であることだという。速く乾くというドライヤー本来の性質もさることながら、乾かすだけでヘアケアができるといった、髪にうるおいやツヤを与えることにもこだわっている。

パナソニック ビューティー・リビング事業部 商品企画部 清藤 美里氏
フラッグシップモデルは販売数量シェアNo.1という
今回訪れた滋賀県・草津市にあるパナソニック「髪の基礎研究所」
日々毛髪を研究している
研究に使われる毛髪データ
世界の毛髪の傾向も調べている

トレンドは髪質へのこだわり、ナノイーの効果とは

 特に近年は、髪のキレイさにこだわる女性が増えており、髪を乾かしながら髪質を改善できる製品が望まれているという。

 パナソニックではかねてより、ヘアスタイルのトレンドを分析をするために、定期的に繁華街などで定点観測を行なっているという。そこでわかったことは、1980年代はブラシを多用した“聖子ちゃんカット”、90年代後半は茶髪が流行りカラー重視の傾向に、2000年代に入ってからは名古屋巻きと言われるような巻き髪が流行ったが、最近はスタイリングだけでなく、髪へのいたわりを重視する傾向にあるという。

 ヘアスタイルにはこだわりたいけれど「髪は美しくありたい」。そうした女性のニーズに応えるべく、パナソニックでは日々毛髪を研究し、製品の開発に取り組んでいる。

ヘアスタイルの定点観測で見えたトレンド。最近は髪へのいたわりが重視されている

 「毛髪美容器」を謳うナノケアにおいて、代表的といえる機能は、独自イオン「ナノイー」だろう。ナノイーとは、酸素に空気中の水分が融合した微粒子イオンで、マイナスイオンの約1,000倍の水分量を保持している。髪に浸透しやすく、水分バランスを整えられるため、うねりを抑制してしっとりまとまる髪へ導けるという。

 同社の調査によると、ナノケアと、マイナスイオン搭載のドライヤーをユーザーに比較使用してもらったところ、ナノケアの方がよりしっとり感や毛先のまとまりを感じられたという回答が多く挙がったとしている。

ナノイーは水分を多く含む微粒子イオン
ナノケアで乾かした髪(左)とマイナスイオンドライヤーで乾かした髪(右)

髪が失う金属に着目した「ダブルミネラルマイナスイオン」

 しかし、髪にツヤを与えるのはナノイーだけではないという。ナノケアの機能で、もうひとつ注目したいのが「ダブルミネラルマイナスイオン」だ。

 ナノイーが髪の水分量を整えて、しっとりしたまとまりのある髪を作るのに対し、ダブルミネラルマイナスイオンは、ダメージに強い髪を作るのに重要な要素だという。

 同社の研究結果によると、ダメージに強い髪へ導くには、キューティクルがポイントになる。毛髪は3層構造になっており、軸となる部分にメデュラ(毛髄質)、その周りにコルテックス(毛皮質)、そして表面にキューティクル(毛小皮)が、のり巻きのように巻かれている。

 キューティクルは1本の毛髪につき4~8枚重なった状態になっており、CMC(Cell Membrane Complex)と呼ばれる細胞膜複合体で接着されている。髪の毛1本の直径は60~80μmと1mmにも満たないサイズだが、キューティクルの厚みは0.5~1μm、CMCは0.04~0.06μmとさらに小さい。

毛髪は3層構造になっている

 この目に見えない小さなキューティクルとCMCが、加齢により密着性が低下して次第にはがれていき、パサつきなどの原因になることがわかっている。なぜ、加齢とともにキューティクルとCMCが密着しなくなるのか? これには金属が関係してくるという。

 キューティクルの密着性について研究を進める中で、毛髪の金属含有量を調べると、加齢に伴って金属も減少していることがわかった。そこで、加齢で減少する金属がキューティクルの密着性に関係するという仮説を立てたところ、金属の一種が密着性に関わることが判明したという。

ミネラルがキューティクルの密着性に関わるという

 こうした研究から、ナノケアでは、2つの亜鉛電極から発生されるイオン「ダブルミネラルマイナスイオン」を搭載。ミネラルを髪に付着させることで、キューティクルが引き締まり密着性も高まるという。これにより、髪の表面にツヤが出て指通りがよくなり、まとまりが出てくるとしている。

 ミネラルマイナスイオンは、2010年モデルのナノケアから搭載。ナノイーによる髪のしっとり感を保ったうえで、ミネラルマイナスイオンによりキューティクルへの効果も高まり、ダメージに強い髪へ導けるようになった。

 「キューティクルは、水分や栄養素の流出を止める役割があります。一度はがれると再生されることはなく、パサパサになった毛先は切る以外にケアの方法がありません。キューティクルが損傷する前にしっかりケアをすることが重要です」と、清藤氏は話す。

キューティクルを観測する機械
キューティクルが損傷していないと指通りやまとまりが良くなるという
指通りを実験する装置。おもりをつけたクシを髪にとおす
ナノケア使用(左)はクシが引っかかっていないが、未使用(右)の髪はクシが引っかかっている

 また、髪へのダメージを考えたときにドライヤーの温度も気になるだろう。パナソニックでは、髪は140℃以上の熱を与えるとキューティクルが損傷しやすくなるが、ナノケアの温風温度は最大で約125℃(ホット・ドライ時)なため、ドライヤーの熱は髪にあまり影響がないとしている。

 清藤氏は、「熱による髪のダメージはよく言及されていますが、それは180℃以上になるヘアアイロンなどでの話です。ドライヤーでも、1cmの距離で30分以上当てるといった使い方なら傷みますが、通常の使い方なら問題ありません」と述べた。

ドライヤーの温風は髪へのダメージにあまり影響がないという

ほぐしながら乾かし、スピーディーに美しく仕上げる

 「毛髪美容器」をコンセプトにするナノケアだが、ドライヤーの本質である速乾性も備えている。髪を早く乾かすポイントとして風量が注目されがちだが、ナノケアの風量は1.3m3/分と少し弱い。最近の大風量ドライヤーでは2.0m3/分を実現するモデルも多いが、重要なのは「風量・風温・風圧・風の強弱差」のバランスだという。

 中でも「風の強弱差」はパナソニックが独自に謳っている項目。ナノケアのノズルは、縦に仕切りがついており、太さの違う吹き出し口を備える。これによって強風と弱風を同時に発生させられ、毛束をほぐして風のあたる表面積を増やし、スピーディーに髪を乾かすことを可能にした。

 風量や風圧が高いだけでは髪が飛び散ってしまい、乾きムラが生まれたり、毛先が絡まったりと仕上がりに影響が出てしまう。しかし、ナノケアはバランスの良い風でほぐしながら乾かすため、スピーディーながらも、毛先が絡まることなくキレイに仕上がるという。

縦に仕切りがついたナノケアのノズル。風の強弱を生み出す
乾燥具合で色が変化する毛束を使って実験
毛束が濡れた状態
乾いた状態。ほぐしながら乾かすため、ムラなくスピーディーに仕上がる

 「パナソニックが目指しているのは毛髪美容器です。早く乾けば良いという訳ではなく、乾かし終えたときにスタイリングができている状態であることが望ましいと考えます。また、研究を含めデータを取ることは大事ですが、私達がこだわりを持っているのはユーザーが効果を実感してできるかということです。ナノケアのこれまでのモデルでアンケートを取ると、最も喜ばれているのはしっとり感とまとまりです。どの機種でも安定して評価されている項目で、使った直後から実感できるメリットだと自信を持っていえます」(清藤氏)

歴代のナノケアモデル。どの機種もしっとり感やまとまりで評価が高い

西村 夢音