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アジアで売れる空気清浄機。ブルーエアが日本で高く評価される理由とは

 スウェーデン発祥の空気清浄機専業メーカー「ブルーエア」。近年、空気清浄機に多彩な機能が求められる傾向がある一方、空気清浄としての性能をシンプルに追求してきたブルーエアも厚い支持を集めている。

6年ぶりにリニューアルした「Blueair Classic」3タイプと、ブルーエア アジア・セールスディレクターのヨナス・ホルスト氏

 そのブルーエアが、同社の象徴ともいえるスタンダードシリーズ「Blueair Classic」を、6年ぶりにリニューアルし、間もなく発売する。Wi-Fi対応により外出先からの操作が可能になったほか、吸込口の改良などにより清浄性能もアップしている。

 今回、ブルーエアのアジア・セールスディレクターであるJonas Holst(ヨナス・ホルスト)氏が来日したのを機に、グローバル市場での空気清浄機の需要、そして日本におけるブルーエア人気の理由を聞いた。

――まずはヨナスさんの簡単なプロフィールをお聞かせください。

 ブルーエア社のグローバルセールス部門を経て、現在は香港オフィスを拠点に、中国を除くアジア全域の担当セールスディレクターを務めています。

現在は香港を拠点に、中国を除くアジア全域を担当している

大気汚染が深刻なアジアは空気清浄機のメイン市場

――アジア全体について現状を教えてください。

 アジアは世界的にもっとも重要な地域です。人口は7億人で、空気清浄機においては、世界の主たる10市場のうち7市場がこのエリアの中にあります。実に年間400万台もの空気清浄機が売れているのです。

 大気汚染も深刻で、ブルーエアを必要としているエリアです。なにしろ、1日当たり1万5千人が大気汚染によって死に至っているという統計もあるのです。具体的には、大気汚染が呼吸器系の疾患、早産、認知症の原因につながるという見方があります。

――地域によって、空気に関する問題は多様に思えます。

 確かに地域によって空気汚染は異なりますね。中国や中央ヨーロッパは、工業地帯や自動車の排気ガスによる大気汚染が問題になっているのに対して、日本は北米や西ヨーロッパと同様、花粉症などの問題が深刻です。

――グローバルなニーズに対応しながら、ブルーエアはどのように日本のニーズに応えているのでしょうか。

 ブルーエアのフィルターは、とても小さな粒子を捉えることができます。花粉はもちろん、バクテリアやウイルス、PM2.5も捕集できるので、グローバルな問題に対処しながら、同時に日本のニーズにもマッチしているのです。

 私の住んでいる香港では、日本ほど花粉はひどくありませんが、空気を汚染するVOC(揮発性有機化合物)を取り除きたいといった要望も多く、そういったニーズにも応えています。

ブルーエアの空気清浄機に採用されている、独自の「HEPA Silent テクノロジー」。吸い込んだ物質を静電気でフィルターにしっかり吸着させ、高速で空気を流しながらも0.1μm以上の物質を99.97%除去するという
フィルターは3層構造。それぞれ網目の細かさが異なっており、微粒子をキャッチしながらも目詰まりを起こしにくい

製品はグローバルで共通。2つのフィルターで世界中の微粒子に対応

――そうなると、ブルーエアのフィルターは、地域に合わせていくつか種類があるのでしょうか。

 いえ、基本的に同じです。ブルーエアは主に2種類のフィルターを用意しており、「ダストフィルター(パーティクルフィルター)」と「ニオイフィルター(カーボンフィルター)」の2つがあります。

 ダストフィルターはホコリ、花粉、ウイルス、バクテリアなどを取り除きます。ニオイフィルターは、ダストフィルターにさらに活性炭のフィルターを搭載し、VOC(揮発性有機化合物)などイヤなニオイを除去するのに向いています。ブルーエアの空気清浄機は、例えばダストフィルターモデルを購入しても、別売りのニオイフィルターと互換性があるので後から変えることができます。

――日本のユーザーはどちらのフィルターを選ぶべきでしょうか。

 目的に合わせて選ぶことがベストです。花粉やハウスダストなどのアレル物質が気になる場合はダストフィルターが適していますし、ペットを飼っていて臭いが気になるときはニオイフィルターが向いています。利用者の皆さんが求めているものに合わせて、使い分けられます。

ニオイフィルター(左)と、ダストフィルター(右)。ニオイフィルターは活性炭が入った黒いフィルター層が特徴

フィルターは6カ月で交換。交換フィルターの販売台数は世界平均を上回る

――2つのフィルターの特徴について詳しくお聞かせください。

 私たちのフィルターはとても独創的です。他社が使っているものとはまったく違う技術を使っています。

 ダストフィルターは、蛇腹状になったものが折りたたまれてボックスに入っていますが、これを分解して広げるとフィルターの長さは実に18mにもなります。他社のフィルターは厚みが我々の半分ほどしかなく、広げた長さも5mほどではないでしょうか」

 ニオイフィルターについては、活性炭が2~3kg入っています。他社製品の200~300gに比べると10倍にもなります。これによって、ブルーエアの空気清浄機は、長期間使っても同じ性能を維持できるのです。

ダストフィルター。蛇腹状になっているが、広げると長さが18mになる
ダストフィルター。活性炭が2~3kg入っており、ずっしりと重い

――ブルーエアでは、性能を維持するために6カ月毎のフィルター交換を推奨されていますよね。他社のようにフィルターを掃除して使い続けるのとは異なります。このあたりの反応はいかがでしょうか。

 2010年以降、6年間販売してきた実績を見ますと、販売台数に対する交換フィルターの販売数が日本ではとても多いのです。これは世界の平均を上回っています。交換フィルターを購入して使い続けているのは、日本のユーザーがブルーエアの性能にとても満足している証だと言えます。これは顧客満足度を調べたときも、同じ結論に至っています。

スマートフォンと接続するブルーエア独自の取り組み

――フィルター以外についてもブルーエア独自の取り組みを教えてください。

 私のスマートフォンをご覧ください。これは香港にある自宅のリビングをモニターしたものです。リビングルームに、Wi-Fi対応の空気清浄機「Blueair Sense+(センスプラス)」と、エアーモニターの「Blueair Aware(アウェア)」が置いてあります。

 このように専用アプリを使えば、電源のON/OFFや、稼働スピードをコントロールすることができます。また、粒子やVOCといった空気の汚れも確かめることができるのです。新しくリリースした「Classic」シリーズでは、本体にセンサーとWi-Fiが内蔵されているので、Awareがなくても部屋の状況を可視化でき、スマートフォンで操作できます。

ヨナス氏のスマートフォン。香港にある自宅に設置している「Sense+」と「Aware」で、リビングの空気状況をモニター
2016年2月に発売された「Blueair Sense+」と、エアーモニター「Aware」。推奨フロア面積は11畳

Wi-Fi対応で推奨フロア面積が大きい「Classic」シリーズ。日本の住宅に合うサイズは

――新しい「Classic」シリーズは、部屋の広さに合わせて3タイプ用意されていますよね。Sense+の推奨フロア面積は11畳ですが、Classicはそれよりも大きく、選択肢が広がったなと思いました。日本ではどのサイズがトレンドなのでしょうか。

 これは住宅事情と密接に関係があります。私の住んでいる香港もあまり部屋は広くありません。日本も香港も同じ傾向なのですが、ミドルサイズの「480i」(推奨フロア面積:24畳)が好まれる傾向にあると思います。

 また、今回よりブルーエアは適合するフロア面積の表示基準に、これまでの国際基準だけでなく日本基準も追加しました。表示基準は、世界各国さまざまなものがあるのです。同じモデルであっても、国際基準は44畳(72m2)、日本基準では75畳(123m2)といったようになります。

Wi-Fi対応の「Classicシリーズ」。左から、「280i」(推奨フロア面積:16畳)、「480i」(24畳)、「680i」(44畳)。価格は7万~13万円(税抜)

――ミドルサイズが好まれる理由はなぜでしょう。

 小さな部屋であっても、大きなモデルを選ぶことは間違っていないと思います。置き場所は限られますが、早い時間で空気を清浄できますからね。「Sense+」は日本の住宅事情にフィットしますし、デザイン的にもスタイリッシュと好評をいただいています。より高性能を求める方には、大きなモデルの新しい『Classic」シリーズをおすすめしたいと思っています。

Sense+はカラーバリエーションが豊富でスタイリッシュなデザインも好評

「Blue」の追加でラインナップ充実。部屋に適した1台を

――業界の動向として、ブルーエアと同じく大きなサイズのモデルが増えている傾向もあると感じます。

 よりプレミアムで、より高価で、より強力な性能をもっているモデルに人気が集まっています。それが、ブルーエアが日本で支持されている理由のひとつです。しかも、日本では家庭に、2台、3台と空気清浄機があるのは珍しくありません。子供が生まれたとき、引っ越したときなどに追加で買う人も多く、そうしたときにブルーエアの製品を選ばれる方がとても増えています。

――今年の9月には、新たなラインナップとして「Blue by Blueair」を発売しましたよね。360度全方向から吸引するという仕組みと、これまでのブルーエアにない新しいフォルムに驚きました。

 ラインナップの幅を広げることで、ユーザーが選びやすくなりました。Classicはリビング向け、Blueは寝室や子供向けなど、それぞれの部屋に適した1台を選んでもらえればと思います。

――ありがとうございました

9月に発売した「Blue by Blueair」。Wi-Fi機能は非搭載。推奨フロア面積は30畳で、価格は54,500円(税抜)。ハイスペックながらも求めやすい価格を実現した、カジュアルモデルと位置づける
ダストフィルターのほか、ニオイフィルター(右)も用意
ARステッカー。専用のアプリかざすと、空気清浄機の動作状況がリアルタイムで見れる。日本では未配布
海外で展開している業務用タイプ

ブンタ