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[聴こうクラシック24]交響曲の父、ハイドンの交響曲「朝」

6月の第3日曜日は父の日ですね。今回は、「交響曲の父」と呼ばれたハイドンの「朝」という交響曲をご紹介します。爽やかな曲調は、緑鮮やかなこの季節の朝にぴったりの曲ですよ。

 

モーツァルトの親友、ベートーヴェンの師匠だったハイドン

フランツ・ヨーゼフ・ハイドンは、1732年オーストリアに生まれ、1809年に77歳で同国で亡くなりました。27歳までフリーの音楽家としてウィーンで過ごし、以後生涯の大半をハンガリーの大貴族・エステルハージ家に仕えました。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは彼のことを大変に尊敬し、またルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは若いころ、彼に弟子入りしました。ハイドンの交響曲は108曲あると言われ、その後の音楽史の発展に大きく貢献したことから「交響曲の父」と呼ばれています。今回ご紹介するのは、初期の作品です。 

 

エステルハージ公のための音楽

交響曲第6番「朝」は29歳のときの作品で、エステルハージ公に仕え始めたころ、主人からのリクエストで作曲したものです。交響曲第7番「昼」、交響曲第8番「夕」と併せて3部構成になっています。交響曲「朝」は、第1から第4楽章まであり、ニ長調で、全曲通して20分前後の楽曲です。

 

エステルハージ公のお抱え楽団は、名手揃い

当時、エステルハージ公のお抱え楽団は優秀な演奏家が揃っており、交響曲のリクエストを受けたハイドンは、奏者の力量が存分に発揮されるよう、各楽器のソロパートを作曲しました。ソロが多くなったことで、この時代の古典派の交響曲というより、バロック時代の楽曲に似たスタイルとなりました。第1楽章では朝の訪れを告げる小鳥の鳴き声のようなフルートのメロディを、オーボエ、ホルンが引き継いでいきます。第2楽章はソロヴァイオリンが高らかに歌い、やがて旋律がチェロと絡み合っていきます。第3楽章は3拍子のメヌエットから始まり、フルート、ファゴットが軽やかに演奏します。前半のメヌエットと対照的な、中間部のファゴット、コントラバス、ヴィオラ、チェロの低音が印象に残ります。第4楽章はフィナーレにふさわしく、華やかなオーケストラの動きと、繰り返される急速なフルートのソロ、中間部のヴァイオリンソロ、後半のチェロのソロが聴きどころとなっています。

 

ハイドンの仕えたエステルハージー家のワイン

名門エステルハージ家は17世紀からブドウ栽培とワイン醸造を手掛けていて、現在もワインの生産を続けています。2009年にはワイン醸造が200周年を迎えたそう。ハイドンへのオマージュとして、その名を冠したワインが販売されていて、日本でも3,000円弱で手に入れることができます。機会があれば、ハイドンの作品とともにこのワインを堪能すると、優雅なひとときを過ごすことができますね。父の日のプレゼントにも、いかがでしょうか。

 

おすすめの演奏

 

 

それでは演奏を聴いてみましょう。ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団の演奏で、写真はエステルハージ宮のホールです。

 

参考文献

「ハイドン:使い捨て作品と芸術作品」ひのまどか著 リブリオ出版
「新設のオーケストラ 同時代人のみたバロック音楽」ヨハン・マッテゾン著 礒山雅編、山下道子訳 季刊リコーダー:芸術現代社

 

 

あやふくろう(ヴァイオリン奏者)

ヴァイオリン奏者・インストラクター。音大卒業後、グルメのため、音楽のため、世界遺産の秘境まで行脚。現在、自然とワイナリーに囲まれた山梨で主婦業を満喫中。富士山を愛でながら、ヨガすることがマイブーム。