老師オグチの家電カンフー

こだわりキーボードHHKB Studioは腱鞘炎対策にも効果あり?

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
「HHKB Studio」(手前・日本語配列モデル)と使用してきた歴代のHHKB

物書きの端くれとして、キーボードには多少のこだわりがあります。ここ10数年デスクトップでは、PFUの「Happy Hacking Keyboard(以下、HHKB)」シリーズを数台継続して使用してきましたが、最新モデル「HHKB Studio」を提供いただいたので、10日ほど使ってみた感想を書いてみます。

既存のHHKBシリーズからの変更は、大きくは次の3つです。
1.メカニカルスイッチ(ホットスワップ対応)
2.ポインティングスイッチ
3.ジェスチャーパッド

1.メカニカルスイッチ
キースイッチの機構は、従来の静電容量無接点方式からメカニカルへと変更されました。メカニカルキーボードというと、打鍵音がカチャカチャとうるさいイメージがありますが、HHKB Studioのキースイッチはかなり静かです。従来のHHKBよりもブレが少なく垂直に押し込めます。「カシャッ」ではなく「コクッ」ってな感じ。個人的には、従来モデルよりも好みですね。

キートップの刻印は黒(墨)に黒文字なので、かっこよさの反面、視認性はかなり低いです。私の視力ではほぼ見えないも同然。文字入力は指が覚えていてタッチタイプできるので問題はないのですが、数字の入力はこれまでキートップを目視しながら行なっていたので、そこは苦痛。パスコードの入力なんかだと画面に入力した数字が表示されなかったりしますしね。どのみち、ガシガシ数字を入力するならテンキーを別に必要とするでしょうけど。

2.ポインティングスイッチ
キーボード中央にマウスカーソルを移動させるポインティングスイッチ、手前にマウスボタン(左右および中央)が備わり、キーボードから手を離すことなく、マウス操作が可能になりました。かつて「ThinkPad」シリーズを愛用していた人間からすると胸アツです。とはいえ、久々のポインティングスイッチで、感覚を取り戻すのに少し時間がかかりました。

狙った場所にピタッと止めるには速度を遅めに変更するといいですが、そうすると長距離の移動がちょっとダルい。欲を言えば、ポインティングスイッチのキャップの形状は複数欲しいところ。軽い力でスーーっと動いてピタッと止まるようソフトウェアでチューニングできれば、さらに良いですね。

キーボードから手を離すことなく使用できるポインティングスイッチ

3.ジェスチャーパッド
キーボード本体の側面と手前がタッチ対応になっており、それぞれに機能を割り当てられる仕組みがジェスチャーパッドです。初期設定では、側面右が「スクロール(UP/DOWN)」、側面左が「上下の矢印キー(↑/↓)」、手前左が「左右の矢印キー(←/→)」、手前右が「ウィンドウの切り替え(Alt+Tab)」となっています(それぞれの機能は変更可能)。

Webブラウジングや文書ファイルの閲覧で頻繁に使う上下のスクロールですが、筆者の環境(macOS+Chrome)では、左側面に割り当てられた上下矢印での操作が速度的にベスト(スクロール機能よりも細やかに操作できる)。左手でスクロールする最大のメリットは、右手の負担が減らせること。

左側面のジェスチャーパッドでスクロール操作することで、右手の負担を大幅に軽減できた

これまでポインティングデバイスはAppleの初代「マジックトラックパッド(Magic Trackpad)」を使っており、カーソル操作の精度や3本指などのジェスチャー機能には満足しているのですが、かなり右手の負担が大きかったのです。常に軽い腱鞘炎っぽく、手首から前腕にかけての違和感も続いていました。これはマジックトラックパッドが悪いというより、マウスだろうがトラックボールだろうが右手を使い続けている以上は免れない症状です。

今回、スクロール操作をHHKB Studioのジェスチャーパッド左側に振り分けたことで、右手の負担をかなり減らせました。MacやWindowsなど、GUIの登場で間口を広げたパソコンですが、手首の負担という意味ではポインティングデバイスってキーボード以上にやさしくないです。昔、マウスカーソルを次に操作するだろう場所(例えばOKボタンなど)へ自動的に動かす「チューチューマウス」ってWindowsアプリがあったんですが、あれをOS標準の機能にしてくれませんかね。PFUさんでHHKBに付けてくれてもいいのよ。

10年以上使用している初代「Magic Trackpad」。現在はHHKB Studioと併用中
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>