老師オグチの家電カンフー

ノンフライヤーでコーヒー豆を焙煎したら、意外に楽勝だった件

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
身近な家電で焙煎したらどうなるか? をノンフライ機能を備えたトースターで試してみた

鮭が産卵期に川を遡上するように、コーヒー好きも川上へと上っていきます。具体的には、ドリップ→グラインダー(ミル)→焙煎へと。焙煎より上流は、現地での豆の買い付けや栽培になるので、一般人には現実的ではありません。

今年の後半から、家庭用の焙煎機が続々と登場してきそうですが、身近な道具でも焙煎できないかと、自宅にある調理器具で試してみました。

使用したのは、レコルトの「エアーオーブントースター RFT-1」。熱風で調理するノンフライヤーのひとつです。熱風で加熱するので、まんべんなく焙煎できそうだし、ドアガラスから中が確認できるので、焙煎の加減も目視で調整できるだろうと考えたんですよ。

まずは、穴の開いたバスケットに生豆を重ならないように並べます。量は60gぐらいがちょうど良いです。テスト的に最大温度の230℃に設定し、時間もマックスの30分に。

60gをエアーオーブントースターのバスケットに並べる。虫食いなどの不良豆があれば、この時点で取り除いておく
モードは「AirOven」、230℃に設定して加熱開始

加熱から3分後には甘い香りがしてきました。5分後には薄皮がめくれ、パチパチとハゼる音が発生し、表面が見るからに色づいてきました。そして10分後には部屋中に焙煎の香りが行き渡ります(換気扇を回した方がいいです)。焦げっぽいにおいが強くなってきたので、20分が経過した時点でストップ。色味は深煎りのフルシティーローストからフレンチローストぐらいでしょうか。

230℃で20分焙煎した結果、まあまあの深煎りに。色が薄く見えるのは薄皮。水分が抜けるので重量は60gから約50gへと10gほど減ります

チャフと呼ばれる薄皮を取り除くために、ざるに入れてベランダで吹き飛ばします。焙煎時に豆が静止しているせいか、チャフが剥がれにくいです。これはオーブンを使った焙煎のデメリットかもしれません。

チャフ(薄皮)を取り除く。写真ではブロワーを使っているが、ざるを上下に振ると豆が空中を舞い、チャフが風で飛ばされる。こちらの方が効率よかった

何はともあれ、ミルで挽いてドリップ。焦げっぽさは気になりますが、飲めないレベルではありません。アイスコーヒーにするとちょうどいい感じです。とは言え焦げっぽさが気になるので、オーブンの設定温度を低くして再度挑戦してみました。

豆を挽いてドリップ。焙煎したてなので、豆がガスを含みかなり膨らみます

今度は設定温度を200℃に。先ほどとは異なり、明らかに色の変化が遅く、ハゼる音も弱い。5分追加し計25分加熱した結果、見た目はミディアムローストぐらいの浅煎りに。飲むと先ほどよりも苦味が減り、酸味が強く感じられます。いわゆるサードウェーブのコーヒーに近い味です。

1回目と2回目の中間の設定だとどうなるだろうと思い、3回目に挑戦。温度を少しだけ上げて210℃で20分。たった10℃の差ですが、色の変化速度やハゼる音、においも2回目より強めに。中煎りのハイローストぐらいに仕上がりました。味もこの3回ではベスト。さらに4回目では、加熱時間を2分延ばして、さらに好みの味へと調整しました。

左から、200℃×25分(浅煎り)、210℃×20分(中煎り)、230℃×20分(深煎り、焦げっぽさあり)

専用の焙煎機以外でやるのが初めてなので、自分に甘めになっているかと思いますが、なんか、これでいい気がしてきました。自分好みの設定温度と時間が決まれば手間なしだし。

ちなみに使用した豆は、1kg1,800円のブラジル(Amazonで購入)。普段購入している豆は、だいたい200gで1,000円〜1,800円ぐらいなので、3分の1から5分の1の価格です。世界的なインフレや円安の影響でコーヒー豆の価格も値上がりしているので、家計防衛の意味でも自家焙煎はアリじゃないでしょうか。別の種類の豆を混ぜて、オリジナルブレンドを作るのも楽しそうです。ああ、これが沼の始まりなのか……。

アマゾンで購入した1kg1,800円のブラジル産
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>