老師オグチの家電カンフー

「この部屋の戦闘力は480ppmです!」CO2濃度計を設置する

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
KIMWOODの二酸化炭素濃度計。Amazonでの価格は部屋の二酸化炭素のように流動的で、6,000〜8,000円前後。測定範囲は、400ppm〜5,000ppm。温度計と湿度計も備える

見えないものを数値化する機械がたまに欲しくなります。かつては使うあてもなくレーザー距離計を買ったり、コロナ禍では、血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを、10年前の原発事故時は放射線量計を買ったりしました。

で、今回は二酸化炭素濃度計。コロナ禍で換気の重要性が高まったことから売れているアイテムです。見えない二酸化炭素(CO2)をどう測定するのでしょうか。最近の主流はNDIR方式といって、空気に赤外線の光を通過させた後の赤外線量をセンサーで測定して二酸化炭素濃度を数値化する仕組みです。二酸化炭素は赤外線領域の波長を吸収する性質を持っているんですね。

普段は二酸化炭素濃度など気にすることはありませんから、リアルタイムに表示されるだけで面白いです。大気中の二酸化炭素の平均濃度は400ppm前後。この濃度が年々上昇し地球温暖化の原因とされているわけですが、都市部の屋内で400ppmの数字を見ることは、ほぼありません。普段から窓を少しだけ開けて換気している部屋でも、400ppm後半~900ppmの範囲で数字が動いています。窓を閉めると1,000ppmを超えてきます。屋内では、1,000ppmがひとつの基準とされ、これを超える場合は換気が推奨されています(購入した製品では1,000ppmを超えるとピーピーとアラーム音がします)。

人間の呼吸による二酸化炭素排出量はバカにできません。全世界の二酸化炭素排出量の1割近くを人間の呼吸が占めるという計算もあるようですし。試しに二酸化炭素濃度計に息を吹きかけると、一気に2,000ppmを超えていきます。

2,000mAhの充電式バッテリーを内蔵(端子はmicro USB)。壁掛け用の穴と折りたたみ式のスタンドも付いている

これは気のせいかもしれませんが、仕事に集中している時ほど数値が高くなりがちです。パソコンのCPUが大量の計算をするほどに熱を発するように、脳が酸素を消費しているのでしょうか。今後、コロナ対策の換気状況チェックはもちろん、生産性向上を目的として二酸化炭素濃度を意識する機会は増えていくのではないでしょうか。スマートウォッチに機能が内蔵されるのも間近でしょう。

ところで、2日前に新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を終えたのですが、副反応は下痢と37℃台前半の微熱で済みました。体内で抗体がどの程度完成しているのか、ぜひ数値で見たいです。いずれは、ドラゴンボールのスカウターのように、相手の免疫力が見える世界も来るのでしょうか。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>