老師オグチの家電カンフー

Boseの“ハイテク耳せん”を妻の最強いびきで試した

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 Boseの「noise-masking sleepbuds」(以下、スリープバズ)は、いびきや寝言、クルマのクラクションといった睡眠の妨げとなる騒音をカットするイヤープラグ(耳せん)。騒音を効果的に除去する独自のヒーリングサウンドを流すのが特徴です。

 本当に、眠りに役立つのか。就寝環境はまちまちで個人差もあり、なかなか検証が難しい製品だと思いますが、わが家は幸いなことに妻がひどい寝言&いびき持ちです。

Bose「noise-masking sleepbuds」32,400円。1回の充電で使用できる時間は16時間。専用ケースにはバッテリーを内蔵し、本体を入れるだけで充電される

 妻の寝言のバリエーションは多岐に及びます。一番多いのは子供に怒っているフレーズ。「いい加減にしなさい」「だから言ったでしょ」とかです。 夢というのはネガティブな感情の方が多いのではないでしょうか。自分の場合、喜怒哀楽の比率は、1:7:2:1ぐらいですかね。

 恐怖シリーズも面白いです。「こわいこわいこわい」(稲川淳二か!)、「ギャーッ!」って叫び声(楳図かずおか!)もありました。一番笑ったのは「あー、もう眠い」ですかね。寝言は寝て言えというか、起きて言えと。

 まぁ、寝言は面白いですけど、いびきは連続した騒音で不快なだけです。たいていは「グガァー」みたいな音で、そんなに個性は出ません。しかし、体調によってはかなり眠りの妨げになります。また、わが家は住宅地にありますが、近くに消防署があり、夜中でも緊急自動車の音がします。あと、目の前のアパートがエアビー物件なのか、夜中に出入りする外国人の声も耳障りです。

 そんな絶好の環境の中、スリープバズをテストしてみました。耳に装着するだけで一定の遮音効果が感じられます。普通のイヤホンよりも小さいので、物理的な違和感は少なくすぐに慣れます(このあたりは個人差もあるでしょうけど)。

サウンドは、雨、波、滝、キャンプファイヤーなど10種類。今後のアップデートで追加される可能性もある

 音源は滝の音や水の流れる音など10種類。選択はペアリングしたスマホから行ないます。このヒーリングサウンド自体が単調なこともあって、眠りを誘う効果があります。

 ただ、最初はこの音源自体をうるさく感じました。音量はもちろん下げられます。音量を下げていくと、いびきの音が合間合間に聞こえてきます。しかし、完全にいびきの音をマスキングしなくても、ヒーリングサウンド、たとえば滝の音なら滝の音へ意識が向くので、相対的にいびきの音が小さくなり、やがて気にならなくなります。そして、次第に睡眠にはいっていきました。

 おそらく、人はいびきの音自体で眠れないのではなく、「うるさい」「いい加減にしてくれ」 「明日朝早いのに」などと意識することで神経が興奮状態になり、眠れなくなるのでしょう。それから気をそらし、不快な感情を起こさない音に意識を集中させることでリラックスさせる効果は確かにあります。

 旅先など、枕が変わると眠れないという人も多いでしょう。先日、海外出張があったので、スリープバズを持参しました。飛行機の騒音も、これで気にならなくなるかと思いましたが、ノイズにノイズが上乗せされるだけで、効果はありませんでした。やはり、飛行機など一定したノイズにはノイズキャンセリングイヤホンの方が効果的です。

 宿泊したホテルは市街地にあり、部屋は3階でそこそこ騒音も期待できる環境でしたが、結果としては、効果を試せませんでした。というのも、取材からホテルに戻ってきても、抱えている仕事をやらねばならず、スリープバズなしでも意識を失うように眠ったからです。空腹は最高の調味料と言いますが、睡眠不足は最高の睡眠薬です。

飛行機で使用の図。ジェットエンジンのノイズの方が大きく、眠りの助けにはなりそうもなかった
ホテルのベッドで自撮り。本体が小さく、枕に耳を押しつけるようにしても圧迫感はない。旅先での効果が検証できなかったのは本文の通り

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
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