老師オグチの家電カンフー

日本人に必要なのは働き方改革より、お風呂改革だろう~超優越感に浸れるお風呂を体験

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 豪邸訪問みたいな番組があるじゃないですか。豪華なリビングや綺麗なキッチン、機能的な間取りなどを見せられても、すっぱいブドウ理論で「べっ、べつに羨ましくなんかないやい」と思うのですが、バスルームが快適そうなことだけは、素直に羨ましいです。

 なぜそう思うのか考えてみました。自宅に人を招くこともないですし、最低限のスペースと快適性があればいいはずです(それすら現状は不満ですが)。しかし、疲れているせいなのか、心身ともにリラックスできる場所は欲しい。それが、お風呂というわけです。世のお父さん方が、一人きりで心から落ち着ける空間は、お風呂だけなのかもしれません。

 前振りが長くなりましたが、この連載で、シャワートイレを頭にかぶってたら、LIXILさんから連絡がありました。怒られるかと思ったら、最新のシステムバスルーム「SPAGE(スパージュ)」を体験しませんかというお誘いでした。

今回体験した「SPAGE PZタイプ」。写真の右側がシャワーや打たせ湯のスペース。ベンチカウンターがあり、座りながら打たせ湯やシャワーを利用できる

 都内の秘密の施設に着くと、名刺交換も早々に服を脱いでお風呂に入る。これ自体、なかなかない経験。お帰りなさいご主人様、お風呂をどうぞ状態です。

 腰のあたりに当たるジェットバスや、首・肩にお湯が流れる「アクアフィール(肩湯)」、天井からお湯が肩や頭に落ちてくる「アクアタワー(打たせ湯)」など、30分ぐらいひとりで好きなように過ごしました。スーパー銭湯的な施設が好きで、よく利用するのですが、それとはまた違いますね。当たり前ですが、家のお風呂なので、パーソナル感があります。

 ジェットバスは音も静かで、備え付けられたテレビを鑑賞する邪魔になりません。テレビをつけると、平日の昼間だったので、下世話なワイドショーが流れていました。お風呂に浸かりながらスポーツ界のパワハラなどを見るのもまた格別です。あ~、世間の人々は大変だが、それにくらべて今の自分のなんと優雅なことよ、と。お風呂ひとつで、ここまで人間は優越感に浸れるもんなんですね。

シャワーなどのコントローラー。黒基調でモダン
壁に備え付けられたリモコン類。右からテレビ用、照明コントロール、肩湯・ジェットバス用、天井のサウンドシステム用(スマホなどからBluetoothで音楽をかけられる)
撮影のために水着を着用しております。しかしおっさんの汚い裸で申し訳ない。これが若い女性の水着姿であれば、 PVも数倍違ってくるのにと残念でなりません(担当編集の女子を誘ってみましたが断られました)
これが肩湯。首・肩だけでなく、胸の方にもお湯が流れてきて気持ちいい。温泉施設にも似たような設備がありますが、湯船の角度などのせいか、こちらの方が断然リラックスできます

 肩湯はただ、気持ちいいだけでなく、お風呂での悩みが解決されています。半身浴までいなかくても、お湯が少なめだと肩が冷えやすいですが、かけ湯の機能があることで、肩や首まであたたまる。首まで浸かろうとお湯をいっぱいにはると、水圧が体の負担になるし、少ない湯量で無理な体勢で肩を浸けるなんてこともしなくていい。半身浴をする人には、とくにぴったりです。

 照明の調光機能もあって、寝る前はリラックスできるよう暗めで暖色に、朝風呂なら明るめで寒色にして身体を活動モードにという具合に、気分も変えられます。こりゃ、テレビのお宅訪問が来たら、嬉々として説明しだすやつです。

打たせ湯。ただお湯を流しているのではなく、断続的にお湯を落としていて、マッサージ効果が高い。昔、高尾山で滝行したことを思い出した。無の境地になれるやつです

 どんな人が買われているのか聞いたところ、中心は50代から60代。マンションよりは戸建てが多く、リフォームを機に導入するケースが多いと言います。お風呂のサイズは、戸建てでもマンションでもおおむね規格が決まっており、ほとんどの家なら対応可能だそう。

 気になるお値段は、1坪サイズで130万円台から。軽自動車1台分ぐらい。スーパー銭湯の入浴料が1,300円とすると1,000回分。そう考えると、数年で元が取れそうです。

 しかし、この原稿を書いている今、ものすごい肩が凝っていて痛いです。あの肩湯にあたりたいなぁ……。マジ「SPAGE」のある家が憎いです。

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
http://nulloguchi.wix.com/nulloguchi