神原サリーの家電 HOT TOPICS

家電からアートへ。ダイキンのショールームでしか買えないジ・アートラインの魅力
2025年4月8日 09:05
2025年1月にダイキン工業から発表された新ブランド「The Art Line(ジ・アートライン)」は、“家電というキャンバスにアートな体験を。自由な発想で感性のままに空間を創る”をコンセプトに掲げ、鮮烈なデビューを飾りました。
第1弾として、薄さを追求したルームエアコンrisora(リソラ)と、加湿ストリーマ空気清浄機の正面パネルに伝統工芸品やアート作品など、全57種類のデザインを展開。販売は同社のショールームである「フーハ東京・フーハ大阪」の2カ所のみと聞き、フーハ東京へ出かけ、その理由とジ・アートラインの魅力を探ってきました。
薄型エアコン「リソラ」の体験で知るインテリアとの調和の大切さ
西新宿にあるダイキンのショールーム「ダイキンソリューションプラザ フーハ東京」は、最新のエアコンなどを体感できるスペースで、予約などすることなく自由に入場できます。受付で、ジ・アートラインが気になって来場したことを伝えると、最初に案内されるのが、入ってすぐ右手にある「リソラ」のコーナー。幅798mm、奥行きは185mmと超薄型。カラフルなパネルが掛けられ、そのカラバリの豊富さが目を引きます。
さらに驚くのが、自宅の壁紙に合わせて見え方をチェックできるように、壁紙のカラーが各種用意されていて、入れ替えができる仕組みになっていること。照明も昼白色と電球色の2つを揃え、自宅の照明に合わせて確認できるという念の入りように、インテリアとの調和の大切さを知らされます。
ここで改めて、リソラについておさらいしておきましょう。リソラのネーミングは「理想」の「り」と、「空間」の「そら」から来ていて、2017年の初代モデルの発表当時は7つのカラバリでした。
奥行き185mmの中に、中心部にあるクロスフローファンなどの主要部品から、正面のパネルを動かす細かな部品までゼロから設計し、1mmのムダも無くした設計になっています。
ファンと熱交換器が近接するために、熱交換器を通過した風の乱れがファンと干渉して耳障りな風切り音が発生してしまうという問題を解決し、静音性を高めて心地よく使えるようにしているところも大切な特徴の1つ。また、運転してパネルが開いてもスクエアなイメージを損なわず、美しいままであることも言い添えておきたいポイントです。
2019年には正面パネルを600色から好きな色に塗装できる有料オプションサービス「risora custom style(リソラ カスタム スタイル)」を開始。2020年にはインテリアデザイナーの網村眞弓さんとサンゲツが共同で、生活スタイルに合わせたラインナップを新たに選定したほか、これまでオプションでの取り付けが必要だった無線LAN接続アダプターを室内機に標準搭載するなど、ブラッシュアップを図ってきました。
2023年モデルからは、正面パネルが取り外し可能になり、部屋のインテリアに合わせて購入したパネルを自分で付け替えられるように進化しています。
フーハ東京には、カラーのイメージに合わせたインテリアが楽しめるコーナーもあり、“リソラから始める部屋作り”のお手本のようで、うれしくなりました。
まるで誰かの家に招かれたようなアプローチが感動的なジ・アートラインの展示
ジ・アートラインの元となるエアコン、リソラのことを十分に知った上で、さあ、いよいよ本番です。ジ・アートラインの展示スペースの入り口は、まるで玄関のようになっていて「よくいらっしゃいました!」と誰かの家に招かれたような気分にさせられます。「え? 靴を脱ぎます?」と聞くと、「いえいえ、そのままで大丈夫ですよ」とのこと。ちょっとした置物も素敵でワクワク感が高まります。
玄関を入って左に曲がると細い廊下が現れ、両脇の壁には絵を飾るように説明パネルが掛けられています。そして突き当りにはジ・アートラインのパネルを施したリソラの姿が見えるではありませんか。
ジ・アートラインには、福井県に本社を持つセーレンの加飾技術「ビスコテックス」が使われていますが、これについて説明されたパネルもありました。セーレンは1989年に創業100年を迎えた歴史ある繊維業を生業とする企業ですが、次の100年を見据えて立ち上がったのが、「ほしいものを」「ほしいときに」「ほしいだけ」を実現する小ロット・多品種・在庫レス・カスタマイズを可能にした環境にやさしいビジネスモデル。生地だけでなく、立体や樹脂にまで印刷できる独自の加飾技術との連携で、57種類ものデザインを揃えるジ・アートラインの生産を可能にしているのですね。
廊下を抜けるとジ・アートラインの部屋が現れ、そのゆったりした空間は照明も抑えられていて、かすかに流れる音楽とともに居心地のいい空間となっています。
“異彩を、放て。”をミッションにしたヘラルボニーとのコラボの部屋も
ジ・アートラインは、伝統工芸品やアート作品などの美しく繊細な質感を表現した「ART(アート)」、自然由来の豊かな素材感をイメージした「NATURE(ネイチャー)」、インテリアに溶け込む色と質感にこだわった「BLEND(ブレンド)」の3つのシリーズで展開されています。中でも「アート」シリーズの目玉となっているのが、ヘラルボニーの契約作家が描くアートとのコラボレーションと言えるでしょう。
ヘラルボニーは、“異彩を、放て。”をミッションに、障害のイメージ変容と新たな文化の創出を目指して6年前に創業されたクリエイティブカンパニー。ジ・アートラインの発表会では、同社のアカウント事業部シニアマネージャーの方が登壇されましたが、その中で「就労継続支援B型の月額平均賃金が16,118円という現状において、扶養の基準を超えて確定申告をすることになった」というエピソードが語られ、「鳥肌が立つ、確定申告がある」という文字が映し出されて、胸を打ちました。
ヘラルボニーの「障害のイメージ変容を目指す」というビジョンと、ダイキンの「家電のイメージを変え、アートを選ぶようにエアコンを選ぶ新たな考え方を創りたい」との想いが合致したことから、今回のコラボレーションが生まれたと言います。
ショールームにはヘラルボニーの契約作家が描くアートとコラボした作品を集めた部屋も用意されて、こちらのインテリアコーディネートは、2020年発表のリソラカスタムスタイルから関わっているインテリアデザイナーの網村眞弓さんによるもの。森をイメージさせるコーディネートが安らぎだけでなく、ヘラルボニーの作家さんたちの秘められたたくましさや情熱を感じさせるものとなっていて素敵でした。
アートは一期一会。質感はオンラインでは伝わらない
そのほかにも、加湿ストリーマ空気清浄機(70タイプ)のコーナーもあり、リソラと同じデザインを選んだときのイメージもつかめるようになっています。
壁一面にパネルが掲げられたコーナーから好みのパネルを持ち出して、イーゼル仕立ての什器に掛けてどれにしようか悩んだり、壁紙を自宅に近いものに取り替えたりと、さまざまな仕掛けが設けられていて、ゆったりと過ごせる空間になっているのは、「自由な発想で、感性のままに空間をデザインする」というブランドコンセプトそのもの。
今回、ショールームの案内をしてくださったダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室 長谷麻央さんによれば、新ブランド立ち上げのきっかけは、2024年1月30日から2月2日に東京ビッグサイトで開催された冷凍・空調・暖房の展示会「HVAC&R JAPAN2024」で試験的に展示したアート作品のようなパネルを採用したエアコン(リソラ)の評判がよかったからだと言います。この時もセーレンの加飾技術「ビスコテックス」を使っていたそうですが、さらに発想を広げて新ブランドを展開し、まずは今回の57種類が選ばれたとのこと。
「壁に白いエアコンがある……という一律の世界でいいのかという問いかけが、全ての始まりです。心がワクワクする空間を創っていきたい。カラバリを増やすだけでなく、空気・空間の価値を上げることが、ジ・アートラインの目指しているところです。だから、本物のアートを採用したり、自然由来の素材の豊かな質感までを再現できるようにしたり、とことんこだわっているのです。アートは一期一会。こうした私たちの思いや、その質感はオンラインでは伝わらない。そう思って、ショールームでの販売という形を取りました。今後は現物を実際に見ていただいて購入できる場を増やす予定です」と長谷さんは語ります。
以前、ミラノと日本で活躍しているアーティストの方に「デザインは問題解決であり、アートは問いかけである」ということを聞いたことがあります。ジ・アートラインの「一律の白でなく、インテリアや自分の感性に響くエアコン(や空気清浄機)を選ぶ=選び方を変えるのはどうですか?」という問いかけがここにあるのだと思いました。
たとえ購入しないとしても、気になった方は一度訪れて、その問いかけに浸ってみてはどうでしょう。新しい空間が生まれるかもしれません。