2017年10月12日 06:00
今回の自由工作は、非接触ICカードをエラーレスにする方法。学者みたいで難しくなりすぎた……。簡単に言えば、「NFC(Near Field radio Communication)」を正しく読み込ませる方法。んー、英単語を使うと、どうしても難しくなる。
なので、ぶっちゃけて言うと、交通ICカードの自動改札に通せんぼを食らわない方法。それをSuicaで実践してみよう。
「おれは私鉄だからPASMOだ!」とか、「ウチは関西だからICOCAどすえ!」とか、「ばってん、おいドンは“はやかけん”ですたい!」というのは置いといて、自動改札で「ピッ」とやって、通せんぼされないようにする方法を真剣に考えてみたいと思う。
とはいえ「ラジオラ●フ」じゃないので、チャージ0円で改札を抜けるとか、つねに6万5535円チャージされていて金額が減らないとかじゃない(笑)。
ここでは、急いでいるとツイツイやっちゃう、タッチ時間が短くて「ピンポーン! アウトー!」ってヤツを回避する方法はないか? という研究だ。筆者は何度も自動改札機に通せんぼされ、パワハラならぬ「パスハラ(パス ハラスメント)」を受けたことがある。でも、それ以上に肝を冷やすのは、後ろから続いてきた人の表情だ。声にはしないものの「クソ忙しい通勤時間に改札止めてんじゃネーよ! ボケェ!」というフキダシが頭の上から出てるし……。仁王像みたいなスゴいガン飛ばされるし、自分のせいとはいえスゲー落ち込む。
かといって、自分の前の人が改札を止めると、仁王像の睨みを効かせて「止めてんじゃネーよ!」というフキダシをかかげてるんだが……。
ここでは、自動改札のしくみと、通せんぼ対策を考えていこう!
まずは敵を知る! 交通ICカード自動改札機のしくみ
憎っくき自動改札機を制するには、まず相手を知ることが大切。本当に簡単に、超簡単にしくみを説明するとこんな感じになる。
①交通ICカードにお金をチャージする
ICカードにチャージされている金額が記録され、また、鉄道会社のシステムにも金額とICカードのID番号が記録される。個々のカードに付与されている、ID番号の組み合わせは理論上18,446,744,073,709,551,616(1844京6744兆737億955万)通り。SuicaやPASMO、nanacoカードなど、すべてを合わせても、IDがダブることはないと言われている。
③駅でドリンクを購入
物販購入は、改札とは別にチャージされている金額から減額される。たとえばキオスクでジュースを購入した場合は、交通ICカードのシステムに対してキオスクが購入額を請求する。つまり、チャージした金額は、そのカードの会社の一時預かりになっているというワケ。
④改札出場の際に時刻と駅が記録され、運賃計算とその引き落としが行われる
②の情報をもとに、出場した改札機の駅情報から乗車区間を割り出し、運賃を計算する。乗り継ぎ割引や直通運転による乗り継ぎなど、複雑な計算を一瞬で行い、運賃計算をするため、各社のICカードは利用区間の範囲などを定めている。
また、経路にJR以外の経路が含まれていた場合は、別会社に対する支払いなどもシステム上で自動に行われる。たまに乗り継ぎ専用の自動改札があるが、あれは通常の改札出場情報を書き込まずに、「駅を通過した」という情報のみを記録している。再び制限時間内に乗り継ぎ専用の改札で入場すると、通過情報が消え、同一駅を乗り継いだことになるになるらしい。
交通ICカードを使ったコインロッカーに金属のカギがない秘密
駅に設置されているコインロッカーの中には、PASMOやSuicaをかざすだけで使えるタイプがある。コインロッカー代金を交通ICカードで支払えるのはもちろん、ロッカーから荷物を取り出すときは交通ICカードをかざすだけ。これで荷物を入れたロッカーが自動的に開くというスゴいシステムだ。
このコインロッカーには、今までのような金属のカギがない。だからカギをなくさないように注意する必要もなく超便利なロッカーだ。
じつは交通ICカード対応のコインロッカーは、荷物を入れたロッカー番号とICカードのID番号をひも付けて、デジタルキーとしている。荷物を入れたときはID番号とロッカー番号をロッカーが記憶し、取り出すときはID番号を読み取り対応するロッカー番号のカギを開けるというわけだ。
ちなみにID番号はスマホなどでも見られるようになっていて、ほかのカードにはコピーできない(カードIDの書き換えは不可)ようになっている。
交通ICカードの電源が入ったかどうかが、通せんぼを決定づける
同一鉄道会社内の運賃計算は簡単。しかし、東京近郊のようにどこにあるともしれない駅まで、何路線も乗り入れている場合は、運賃計算が複雑。もはや券売機の上に掲示している運賃表(路線図)は、各社乗り入れ線は大まかなところしか書かれていない。昔は超でかい運賃表を掲げて、指で追いながら運賃を調べて切符を買っていたのに……。
運賃計算が超複雑という現状を踏まえ、改札を出場する際に、複雑な計算が間に合わず、通せんぼされるというなら納得がいく。しかし、入場駅を記録するだけの場合でも、通せんぼされるのはなぜだろう。
ひとつは単純なエラー。改札を出札したという情報がないのに、再び入場しようとした場合や、チャージ金額不足(最低運賃未満)で入場しようとした場合。また、定期では期限が切れている場合もある。
しかし、それ以外で通せんぼされるのは、別の理由がある。それは交通ICカードと改札機の間で、データの無線通信を行っているから。じつは交通ICカード側の電源がONにならずに、ICカード情報の読み込みや入場駅の書き込みができないため、通せんぼされるのだ。
でも、交通ICカードの中には電池が入っているわけでなく、テレビに差し込むICカードのようにほかから電気を供給するための端子がむき出しになっているわけでもない。
無線でデータをやり取りしている以上、どうしても電源が必要になるが、電池のない交通ICカードはどうやって電源を確保しているのだろう?
決め手は無線充電(Qi)などでも活躍する電磁誘導
Suicaをはじめとする非接触型の交通ICカードは、内部に電池を持っていないが、発電のしくみを持っている。発電と言っても、超簡単なしくみで、電線をぐるぐる巻きにしたものをICカードの間に挟んでいるだけ。
ここに電波を当てると、電池もないのに電気が流れる。これは電磁誘導という現象で、一昔前のスマホで流行した無線充電と基本は同じだ。
自動改札機のタッチする場所には、電線をぐるぐる巻きにしたコイルがあり、ここから電波を出している。交通ICカードはその電波を受け取って、自ら内蔵するコイルで発電し、内蔵しているICチップに電源を供給、改札機からの要求に応えて、内部メモリの読み書きを行っている。さらに、交通ICカードがスゴいところは、同じ電波を使って発電しながら、データの通信もやっちゃうという点。
そこで問題になるのは、交通ICカードが発電し始めるまでに、ちょっとタイムラグがあること。また、改札機の送信側コイルの電波は、セキュリティ上、半径10cmぐらいしか飛ばないようにしているという点だ。
駅や車内のポスターで「交通ICカードは改札機にしっかりタッチして通る」と訴えているが、あれは「改札機の電波がガッツリ届く範囲にICカードを当てて、交通ICカードの電源が確実にONになるように改札を通ってね♪」と正しく言うとワケワカランなので、チビッ子にもわかるように簡単に説明したものなのだ。
でも交通ICカードの電源がONになったかどうかは、電源ランプがあるわけじゃなくわかりにくいのが難点。そこで、交通ICカードには一切手を加えず、電源ランプを自作しちゃおう!
ハンダ付けなしでOK! 部品はエナメル線とLEDだけ
交通ICカードのスイッチが入ったかどうかを見る電源ランプの材料は次の通り。
・エナメル線:200円ぐらい
・LED(3mmなければ5mm):200円ぐらい
・紙やすり(240番):100円ぐらい
エナメル線がなかったら、模型工作用の細いビニール被覆電線でもOK。ビニールの電線を使う場合は、ほどけるのを防ぐために瞬間接着剤もあるといい。
これらは近所のホームセンターで入手できるだろう。電気関係の部品の横に、子どもの工作用部品(電池ボックスとか)が売っているコーナーがあり、そのへんで入手できるはず。
もちろん秋葉原に行けば、より眩しく光る高輝度LEDなども入手できるので、実際に店(千石電商や秋月電子、大阪なら共立電子産業)に行ってもよし、通販で購入してもいい。
②エナメル線の片側2cm位を紙やすりで磨く
エナメル線は、電線の上にエナメルを塗って絶縁しているので、その被覆を紙やすりで削り取る。紙やすりには、目の粗さで番号が付いているので、240番を使うといいだろう。120番だと粗すぎ、400番だと細かすぎって感じ。
④エナメル線を切って反対側の被覆も紙やすりで剥がす
巻き数はだいたいでOK。なので被覆を剥がす2cmぐらいを巻き数に入れるか否かは好みでどうぞ。発電力は弱くなるが3回巻きにしたり、一回り直径を小さくしてもLEDを点灯できた
⑤マジックなどの芯からコイルを抜き出して形を固定する
エナメル線で作った場合は、両端の2本の線で円の一部を3回ぐらい巻いて固定。これで2カ所固定できる。もう1カ所は余っているエナメル線を2cm位切り取って、ぐるぐるとコイルに巻きつける。
ビニール被覆の電線を使った場合は、両端の被覆を皮むきして、コイルの円が壊れないように、瞬間接着剤で3カ所ぐらい固定する。手とコイルを接着しないように注意。
⑥エナメル線にLEDを取り付ける
ハンダ付けしてなくてもOK。LEDの足とエナメル線をしっかりと離れないように絡める。LEDにはプラスとマイナスの極性があるが、それは無視してOK。なぜなら発電される電気は、交流なので極性は関係ないのだ(極性が逆のときは点灯せず、極性が正しいときに点灯。
実際には猛烈な速度でLEDが点滅している)。
これでパイロットランプが完成! 簡単でしょ! 試作では、ここまで行くのに紆余曲折あって、労力もコストもかかってる(笑)。でも試作が完成したら、こんなに簡単で良かったのかよ! と叫んだ。遠回りしたなぁ~。だって普通のビニール被覆線でもできちゃうんだもん。
パイロットランプの動作チェックは、FeliCa対応の携帯やスマホを使う。俗に「おサイフケータイ対応」って呼ばれているアレ。スマホでは「NFC」と呼ばれる機能をONにして、交通ICカードのデータを読み取るソフトやおサイフケータイなどのアプリを起動する。
スマホのFeliCaのマークの中心に、作ったコイルの中心が来るようにして、LEDが光れば動作チェックOK!
LED(秋葉原などで購入できる高輝度タイプ)によっては、1秒間隔でチラッっと光るビーコンが見えるものもあるはず。また、マークから外してみたり、遠ざけると明るく光るので要チェック。
自分なりにアレンジしていろいろ作ってみよう!
交通ICカードの電源ランプ、名づけて「交通ICカード リードチェッカー」が完成したら、定期券入れなどに実装してみよう。
一番簡単なのは、切符の領収書(名刺サイズ)などに完成品をテープで貼って、交通ICカードと一緒にカードケースに入れるなどすればいい。
5mm(直径)のLEDだと少し大きいかもしれないが、3mmのLEDなら、ポケットに引っかかることもなく使えるはず。
また100円ショップには、いろいろなケースが売っているので、交通ICカードリードチェッカーを何個も作ってケースに入れると、クリスマスイルミネーションのようにキレイでド派手な仕上がりになる。
なお、スマホのNFC機能に比べると、改札機の電波はスゴく強く設定されているので、かなり明るく、一度に何個も点灯できる。ただし交通ICカードのアンテナの電波を妨害しないように、カードの中心部からは避けたほうがよさそうだ。
※本工作ではLEDに流れる電流や電圧をまったく制御していない簡易回路なので、低電圧で高輝度のLEDを利用すると玉切れする可能性があります。きちんと計算していませんが、3V程度以上で点灯するのLEDを使ったほうがよさそうです。
また、コイルは改札機のタッチ部分と、交通ICカードの間に挟まらないようにすること。間に挟まると電波を妨害してしまう可能性があるので注意。さらに、コイルはICカード中央から避けたところに配置するほうがいいみたいだ。中央部にコイルを設置すると、間に挟んでいなくても電波を妨害してしまう恐れがある。なにしろ読み取り性能が悪くなったら、本末転倒ならぬ本末点灯になっちゃうので。
作ったパスケースを駅まで行って試すのが面倒な場合は、交通ICカード対応のドリンクの自動販売機で実験してもいいだろう。電波の強さは改札犠とほぼ同じぐらいだったので、かざしてスグに残額表示できれば、改札もすんなり通れるはずだ。
もちろん、コンビニの支払いでチェックしてもいいだろう。
また、いろいろなケースに実装する楽しみもさることながら、コイルの直径や巻き数を変えて、発電効率を試してみるのもいい。このあたりは各自の自由研究課題としたい。キーワードとなるのは、「13.56MHz」という周波数だ。
なお、交通ICカード自体にリードチェッカーを取り付けるなどは絶対にしないこと。これはICカードの改造になってしまうので、法的にアウトになる可能性があるだけでなく、チャージのときにICカードを挿入口に入れられなくなる(笑)。
ICカードはいつでもスグに取り出せるようにしつつ、眩しいぐらいに光り輝く交通ICカードリードチェッカーを各々作ってほしい。