長期レビュー
東芝「ZABOON(ザブーン) TW-Z9100」その3
全4回にわたってレビューをするが、今回はザブーンに搭載されたテクノロジーと乾燥機能について見てみよう |
縦型の洗濯乾燥機から、ドラム式の洗濯乾燥機「サブーン」に買い換えて、もう1カ月以上が過ぎた。しかし、筆者は飽きることなく、率先して洗濯係を引き受けている。レビューと言うより、新しいオモチャで遊んでいるようだ(笑)。
そんなサブーンの魅力(魔力?)を紹介している連載だが、第1回では、水の少なさや電気代の安さに、第2回では洗浄力の凄さに驚かされた。運転音は静かとは言えなかったが、タイマーを使えばクリアできることが分かった。
第3回となる今回のテーマは「脱水~乾燥運転」だ。脱水時のエラーの発生回数や、シワの有無やふんわり感など、乾燥の仕上がり具合を中心に確認してみたい。
■驚きのエラーフリー運転! たくさんでもチョットでもノンストップ
脱水~乾燥工程で一番脅かされたのは、「偏りエラー」が1回も起こらなかったことだ。1カ月以上使ったが、洗濯物が少ないときでも目いっぱい洗濯物を詰め込んだときでも、完全エラーフリー。洗濯機が苦手とするバスマット1枚だけでも、偏りエラーが発生しないのだ。
第2回の最後で軽く触れたが、従来の洗濯機だと、「コレはヤバイかもな?」というほどたくさんの洗濯物を入れたり、バスマットやGパン1枚だけを洗ったりすると、脱水時に偏りエラーが起きて、洗濯機がピーピーとエラー音で叫ぶことがよく起こる。しかしサブーンはスタートボタンを押せば、乾燥が終わるまでエラーはなし。洗濯物のバランスに煩わされることはないのだ。
偏りが直るまで何度もトライするので、確実に洗濯が終わるというわけだ。洗濯時間が長くなるものの、エラーが出ないので、約5分~20分の見直し時間もまったく気にならない。こっ! コイツ賢いぞ! |
その秘密を探るべく、すすぎ・脱水の洗濯機の挙動を観察してみた。最初はドラムをゆっくり回すのだが、除々にスピードを上げていく段階で洗濯機が大きく揺れると、ドラムの回転を停止させていることが分かった。停止させたあとは、ドラムは左右に揺れる。どうやら洗濯物の偏りを自動的に直しているようなのだ。そして液晶パネルには、偏りの修正に掛かった時間を考慮して、運転時間を再表示する「見直し中」の表示が出る。
カタログやマニュアルには記載されていないが、どうやらザブーンの中には揺れを検知するセンサーが内蔵され、洗濯物の偏りを検知すると、自動的に洗濯物の偏りを正すようにドラムを動かすようだ。まるで、タイマー予約をしておけば、当たり前のように指定時刻においしいご飯を炊き上げる炊飯器みたいだ。
マニュアルを見ると液晶パネルには「衣類片寄り」というエラー表示が用意されているが、これがどうやってもこれが表示しない! 何度もトライしてダメだと、やっと点灯するのかも? |
これまでの洗濯機は、タイマー予約をしてもエラーが発生してしまうなんてこともあったりするが、ザブーンなら炊飯器のように、乾燥まで当たり前に“エラーフリー運転”で終わっている。スゴイ!
■Yシャツを使った縦型ヒーター式vsザブーンの乾燥対決! シワが少ないのはどっち?
洗濯乾燥機で気になるのが、乾燥運転を終えた後のシワ。せっかく乾燥できたというのにシワだらけでは、アイロンしたり洗いなおしたりなど、結局手間になってしまう。そこで、ザブーンと縦型洗濯乾燥機、他社のドラム式洗濯機でYシャツを洗濯~乾燥し、シワの具合を見比べてみよう。
実は家にあるYシャツは、何年も着たものですでにヨレヨレ(涙)。ということで、新しいYシャツを近所のスーパーで調達して実験することにした。使ったのは綿75%、ポリエステル25%のものなので、ランクとして中の下クラスのものだ。ブランド品や格安品を使うと、生地が違うので結果が異なることに注意して欲しい。
今度はザブーンの乾燥具合を見てみよう。近所のイオンで買ってきたYシャツで実験 | 生地は綿75%、ポリエステル25%。綿の割合が多いのでシワになりやすいはずだ |
比較対象にしたのは、第2回目の洗浄力比較でも登場した、日立の縦型洗濯乾燥機(2003年製、ヒーター式)と、パナソニックのななめドラム式(2005年製、ヒートポンプ乾燥)。ほかの洗濯物と一緒にして、洗剤は同じものを使い、柔軟剤は使わず、標準コースで洗濯・乾燥した。アナタの家の洗濯乾燥機は、写真のどれに近いかを見比べて欲しい。
・Yシャツ 正面全体
ザブーンで洗濯から乾燥を終えたYシャツ。全体的にシワが少ない | パナソニックの2005年製ななめドラム。ザブーンと比べるとシワが多めだが、それでも少ないほう | 日立の2003年製縦型。シワも気になるし、エリがヨレヨレだ。なお、この縦型のみ、Yシャツの色が違う点に注意していただきたい(生地は同じく綿75%、ポリエステル25%)。決して色あせしたわけじゃない |
一番シワの少ないのは左のザブーン。アイロンをかけなくてもそのまま着られるほどだ。中央のパナソニックもサブーンに見劣らないが、よく見ると胸ポケットのあたりにシワが残っている。右の日立はシワも気になるが、エリがヨレヨレになってしまった。これだと新規の顧客に挨拶しに行くのはマズかもなぁ。
・Yシャツ 背中側
ザブーン。アイロンを掛けなくても着られそうだ | パナソニックの2005年製ななめドラム。ややシワが出ている印象 | 日立の2003年製縦型。おおっ! シワが少なく意外とキレイじゃん! |
背中側を見ても、左のサブーンはアイロンをかけなくても着られるほどの仕上がりとなった。が、背中で比較すると日立の縦型の方が、パナソニックの斜めドラムよりシワが少ないことにビックリした。
・Yシャツ 袖
ザブーン。シワのない仕上がり | パナソニックの2005年製斜ななめドラム。これもシワが少ない | 日立の2003年製縦型。シワシワになってしまった |
袖の仕上がりは、左のサブーン、中央のパナソニックもシワのない仕上がりになった。洗濯物を取り出したときも、袖が他の洗濯物に絡んでおらず、斜めドラム式の「洗濯物が絡みにくい」という特長が現れた結果だろう。一転、日立の縦型は取り出したときに、袖が他の洗濯物と絡んでおり、結果はシワシワに。
実験から分かったことは、洗濯物のシワは縦型・ドラム式ともに一長一短があるという点だ。しかし、最新機種の最上位モデルになると話は違う。個人的には、サブーンでYシャツを洗濯すれば、アイロンがけは必要ないレベルまで仕上げられたように感じた。これなら、アイロンの時間を別の余暇に充てることができる。サブーンは消費電力が少ない省エネ設計になっているが、時間も節約してくれるのだ。
これに続けて、生地によるシワのでき方や、生地の傷みについても調べてみた。第2回で紹介した、洗濯モードにおける汚れ落ち効果とともに、見比べていただきたい。
・ザブーンで洗濯・乾燥した生地
ポリエステル100%の生地 | 綿58%と麻42%の生地 | 綿100%の生地 |
・日立の2003年製縦型で洗濯・乾燥した生地
ポリエステル100%の生地 | 綿58%と麻42%の生地 | 綿100%の生地 |
左のポリエステル100%は、生地自体がシワになりにくいので大差ないが、縦型は生地の痛み方が激しいことが分かる。綿58%と麻42%の混紡生地で見ると、縦型の方がシワが多い(汚れの撮影のためにかなり引っ張って延ばしても、これだけのシワなのだ)。また、傷み具合も縦型はキツくなっている。決定的に違うのは綿100%だ。縦型は取り出したときに、ハリセンを作ったかのように幾重にも重なり、棒状になっていたほど(笑)。それに比べると、サブーンのシワの少なさが分かるだろう。
■洗濯に続き、乾燥モードもてんこ盛り
操作パネルのモニターのうち、線の左側が乾燥コースのメニュー、右側は仕上がりの設定となっている |
乾燥具合を紹介したついでに、乾燥モードの種類についても触れておこう。
前回は10種類の洗濯コースを紹介したが、乾燥運転にもさまざまなコースがある。下記のようなモードと仕上がりの組み合わせで、ワンランク上の仕上がりになるのもうれしい。
コース名 | どんなときに使う? | 最大 容量 | 仕上がり指定 ・お急ぎ ・除菌乾燥 ・アイロン | 運転時間 指定タイマー | 所要時間 |
標準 | 普段の乾燥運転 | 6.0kg | ○ | ○ | 90~310分 |
念入り | 厚手の衣類や、 部分的に生地が厚い衣類向け | 6.0kg | 乾燥自動運転 のみ | × | 125~320分 |
毛布 | 毛布をまるまる乾燥する | 3.0kg | 乾燥自動運転 のみ | × | 155~170分 |
ソフト乾燥 | ドライマークのついた 衣類や靴の乾燥 | 0.4kg | × (乾燥自動運転不可) | ○ | タイマー による |
メモリー | 洗い・すすぎ・脱水と合わせて 乾燥運転を自分で カスタマイズする | 6.0kg | ○ | × | コース による |
個別運転 | 乾燥運転のみ行なう | 6.0kg | ○ | ○ | コース による |
※表中の所要時間は、おおよその目安。
乾燥コースは全部で6種類。コース名を見れば機能もほぼ察しがつくだろう。ピンとこないのは「ソフト乾燥」だが、ドライマークのついた衣類や靴の乾燥を、自分で乾燥時間を指定するというコースで、ふんわり仕上げるものではないことに注意したい。また「毛布」は、洗濯コースの「毛布」と併用して使うものとなっている(個別運転も可能)。
また乾燥運転は、コースに加えて、次の表のような仕上がりが指定できるようになっている。
仕上がり指定 | どんなときに使う? |
乾燥自動 | 普段の乾燥運転 |
お急ぎ | 自動乾燥よりも早く仕上げる (所要時間:95~275分) |
除菌乾燥 | 衣類を除菌したり、厚手の衣類を しっかり乾かすときに利用 (最大容量:4kg 乾燥時間:120~275分) |
アイロン | アイロンがけでできるように軽く乾燥する (乾燥時間:35~120分) |
タイマー | 乾燥時間を20~90分(10分単位)で指定する |
コースでは、おもに乾燥する洗濯物の種類を選んだが、仕上がり指定では「どういう状態で乾燥運転を止めるか」が主な選択肢だ。通常は「乾燥自動」でかまわないが、急いで乾燥させたい場合は「お急ぎ」を選ぶといい。マニュアルには、どのようにして時間短縮するのかが明記されていないが、おそらく風量や温風の温度を変更するものと思われる。
「アイロン」は、おもにYシャツ用。あとでアイロンがけするために、生乾きの状態で運転を止めるモードとなっている。ただYシャツだけを洗濯するのはごくまれで、たいていは他の衣類と一緒に洗濯・乾燥するだろう。そんなときは、1枚でもYシャツがあれば仕上がりを「アイロン」に指定しておき、いったん乾燥が終了したらYシャツだけ取り出し、他の衣類は「追加乾燥」でさらに乾燥を続けられる。こうした細かい配慮に感心を覚えた。
「除菌乾燥」もマニュアルには運転の詳細が書かれていなかったが、おそらくこれも温風の温度を上げ除菌しているものと思われる。
洗濯・乾燥を一貫して行なうコースでは、乾燥コースは数種類に絞られるたで操作は簡単 |
ここでは、洗濯コースと乾燥コースに分けて説明してきたが、洗濯と乾燥を一貫して行なうコースでは、洗濯コースにより乾燥コースのメニューが自動的に絞られるので、メニューの多さが操作を複雑にすることもないだろう。
通常は「標準」コースで仕上がりを「乾燥自動」にしておけば、運転が終わり次第すぐに着られる状態に仕上がる。しかも今まで使っていた縦型ヒーター式の洗濯乾燥機に比べて30分~1時間ほど早く乾燥する。また、ここ1カ月使ってみたものの、生乾きになっていたことは一切なかった。基本は自動モードで大丈夫だが、プラスアルファを望むなら、これらのモードを選んでみてはいかがだろうか。
■ふんわりバスタオル対決! どっちがフワフワでモフモフ?
乾燥について、個人的にこだわっているのが、タオルの“フワフワ感”だ
柔軟剤のCMでフワフワのバスタオルをよく見かけるが、以前使っていた縦型では、柔軟剤をいくら入れてみても、CMほどフワフワにならず、“もふもふ”にすらなったことがない(笑)。でも実験結果Yシャツのシワを見ていたら「サブーンならイケるかも?」ということで、ふんわりバスタオル実験もしてみよう。
比較対象は、これまた日立の縦型洗濯乾燥機(2003年製)だ。いずれも標準コースで洗濯・乾燥し、洗剤・柔軟剤は同じものを使い、洗濯機が指示した量を投入した。
2003年製の縦型洗濯乾燥機では、サブーンに買い換える前まで使っていた縦型洗濯機と変わらない、ゴワゴワな仕上がりだ。例えるなら、ビジネスホテルのバスルームに置いてあるタオルくらいか。が、ホテルのは水をよく吸ってくれるが、洗ったヤツは柔軟剤のおかげで吸水性に乏しく、タオルとしていかがなものかと思う。試しに、CMっぽくリンゴを高さ1mから落としてみると1cmぐらい凹む程度で、リンゴがタオルに隠れるほどフワフワじゃぁない。いったいどうやったらCM見たいになるのやら……もしかしてCMでは、リンゴを時速100kmぐらいで射出してるのか? と疑ってしまうほど、フワフワ感が出なかった。。
【日立の2003年製 縦型洗濯乾燥機】 ごく普通の仕上がり。りんごはタオルに1cmほど沈み込む |
で、ザブーンだが……うわっ! 見るからに違ってる! フワフワのモッフモフだ!
試しにリンゴを置いてみると、サブーンで洗ったタオルは、リンゴのお尻を包む込むように支えているのが見えるだろう。タオルを真横から見たリンゴの沈み具合も素晴らしい。タオル全体が凹んでいるのがハッキリ分かる。肌触りはゾクゾクするほど気持ちいい仕上がりになっている。一方の縦型は、リンゴを置いてもほとんど凹んでくれない。これじゃまるでプールで使うビート板のようだ。
柔軟剤のCM並みにふわふわタオルにできる洗濯乾燥機。それがザブーンなのだ。スゲーな……ホント――。
【ザブーン】 ふんわり仕上がっているのが分かっていただけるだろう。もはや定規を置くまでもないほど明らかだ |
■まとめ:乾燥のキレイさにこだわるならザブーンがお勧め
今回はザブーンの乾燥効果を中心にチェックしてきたが、仕上がりでみると、Yシャツは洗濯・乾燥してしまえばアイロンが要らないほどシワなく仕上がり、バスタオルは柔軟剤のCM並にフワフワになる。今の洗濯機は乾燥に時間がかかる! シワが多くて困る! フワフワなバスタオルが欲しい! という読者には、ザブーンをおすすめしたい。
次回は、「アクティブサスペンション」や「MR流体」といった、ザブーンに搭載された最新テクノロジーや、それらによって本体や床の振動具合がどのようになっているのかを、紹介させていただきたい。
2011年1月26日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)