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第6回:エアコンの心臓部「ヒートポンプ」とは



電気を動力として利用することで、大幅な効率化に成功

ヒートポンプユニットはエアコンが冷暖房を行なううえで欠かせないシステムとなる(写真は東芝のエアコン「大清快 BDRシリーズ」)
 ヒートポンプとは、温度の低いところから温度の高いところへ熱を移動させる仕組みのことです。ヒートポンプを搭載するエアコンでは、屋外の空気から熱を集めて室内に放出することで暖房を、室内の空気から熱を集めて室外に放出することで冷房を行なっています。その動作が、水を高い場所に汲み上げるポンプに似ていることから、ヒートポンプと名付けられています。

 ヒートポンプの特徴は、非常に優れた省エネ性能を備えている点にあります。ヒートポンプを動かすには電力を使用しますが、そのほとんどはヒートポンプ内の「圧縮機(コンプレッサー)」という部分の動力として使われます。化石燃料を燃やして熱を生み出すのではなく、電気で圧縮機を動かして空気中に豊富に含まれる熱を取り込むため、消費電力に対して数倍の熱が取り出せるという特徴があります(圧縮機については後述します)。

 例えば、電気ヒーターとヒートポンプを利用した暖房を比較した場合、同じ消費電力で考えるとヒートポンプのほうが電気ヒーターの数倍の熱を取り出せます。近年の省エネ性能に優れるエアコンでは、実に6倍を超える熱エネルギーを取り出せる製品も存在しているほどです。当然、暖房時の消費電力が大幅に減ることになりますし、直接石油を燃やす石油ヒーターのように利用時に大量のCO2を排出するということもありませんので、省エネやCO2排出量削減に大いに貢献する技術として近年特に注目されています。

 もともとヒートポンプは、冷却技術として開発されたものでした。ヒートポンプの仕組みを利用した冷凍技術は1834年にアメリカで開発されています(出典:東芝科学館 東芝一号機ものがたり)。その後、冷却の逆のサイクルでも利用できるヒートポンプが実用化されたことで、1970年代に冷房と暖房の双方が行なえるエアコンが登場しました。現在ではエアコンをはじめ、冷蔵庫やヒーター、除湿器、洗濯乾燥機、給湯器など、さまざまな家電製品で利用されています。


消費電力に対し、その何倍もの熱を得られる省エネ性がヒートポンプの特徴(写真は財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターの発表資料) エアコンをはじめ、給湯器、洗濯乾燥機、冷蔵庫、床暖房など、ヒートポンプを採用する家電は多い。業務用の空調、給湯でも活用されている ヒートポンプはもともと冷却用途として開発された。写真は1933年の芝浦製作所(現東芝)による、国産初の電気冷蔵庫

物質を圧縮・膨張させると温度が変化する性質を利用

 物質には、圧縮させると温度が上がり、膨張させると温度が下がるという性質がありますが、ヒートポンプはこの性質を利用して実現されています。


エコキュートに搭載されているヒートポンプのシステム図。圧縮機で冷媒を圧縮することで熱を帯び、この熱で湯を沸かす。その後冷媒を減圧することで冷却し、大気から熱を取り込む(写真はナショナルのエコキュート「HE-D37AYS」の発表会時におけるパネル)
 左の写真は、ナショナルのエコキュート(CO2給湯器)におけるヒートポンプの構造を示しています。ヒートポンプの内部には、「冷媒」と呼ばれる物質が封入されており、その冷媒が液体から気体、気体から液体に変化する時の温度変化を利用して、熱の吸収や放出を行ないます。

 まず、ヒートポンプ内の圧縮機を利用して、気体の冷媒に高圧をかけて圧縮します。すると冷媒は気体のまま高温になります。次に、高圧で高温状態の冷媒を、圧力を保ったまま「凝縮器(コンデンサ)」と呼ばれる装置に移動て、熱を放出させます。この凝縮器が熱を取り出す部分――つまり、暖房の熱源として使われます。凝縮器で熱を奪われた冷媒は、ここで気体から液体へと変化します。

 次に、液体となった冷媒を、高圧のまま「蒸発器(エバポレータ)」と呼ばれる装置に移動させて、そこで一気に減圧します。すると、液体だった冷媒は気体に変化して膨張するとともに、一気に温度が下がり、蒸発器が冷やされて周囲の熱を奪います。ここが熱を汲み取る部分――つまり、冷房や冷却を行なう部分として利用されます。

 熱を汲み取った冷媒は、圧縮器に移動させて再度圧縮することになります。これが、ヒートポンプの動作サイクルとなります。エアコンでは、内部に1組のヒートポンプが搭載されていますが、冷媒の流れを制御することで冷房と暖房の双方を実現しています。


日立のエコキュートで搭載されている圧縮機。冷媒にはCO2を採用する 富士通ゼネラルのエアコン「ノクリア」の室外機カットモデル。右下に圧縮機が搭載されている 東芝の洗濯機「エアコンサイクルドラム TW-2500VC」に搭載されているヒートポンプユニット。手前に見えるのが凝縮器(コンデンサ)で、奥が蒸発器(エバポレータ)

ヒートポンプの原理。エアコンだけでなく、洗濯乾燥機にも搭載されている(無音 資料提供:松下電気産業)


【ヒートポンプ】の、ここだけは押さえたいポイント

・空気中の熱を奪って、他の場所に移動することで冷却または加熱を行なうシステム
・電力を熱源として使わずに、冷媒を圧縮・膨張する動力として利用する
・消費電力の数倍の熱が取り出せるため、省エネ性能が非常に優れる

2008年6月18日 初版





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  エアコン 関連記事リンク集
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  現代家電の基礎用語 バックナンバー
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2008/06/18 00:07
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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