イベントレポート

ソーラー蓄電や水処理装置など、無電化地域で使える日本の技術

アフリカン・フェア 2013

 アフリカの文化やビジネス情報を発信する見本市「アフリカン・フェア 2013」が、5月30日、パシフィコ横浜で開幕した。一般入場無料。期間は5月30日から6月2日の4日間。時間は10時から18時。31日のみ14時まで、最終日となる2日は17時まで。主催は日本貿易振興機構(ジェトロ)と経済産業省。

 アフリカン・フェアは、アフリカ各国の特産品やビジネス情報を紹介する見本市。4回目を迎える今年は、アフリカからは46カ国、300社以上が参加。6月の「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」に合わせて開催された。

 会場内では、約70社におよぶ日本企業もブースを構え、アフリカの成長に貢献する技術や製品を紹介している。家電Watchではこうした日本企業の取り組みをレポートする。

アフリカの雰囲気を味わえる物販コーナーや、アフリカ料理の屋台が並ぶフードコートもあり、朝からにぎわっていた
エチオピアのブース。国ごとのブースも用意されており、各国の鮮やかな民族衣装も紹介されていた
ガーナのブース。各国ブースでは投資などの商談も可能

GSユアサ、小規模な村を電化するソーラー蓄電システム

GSユアサのブースで紹介されていた、電化システム

 GSユアサでは、ソーラーパネルと複数の小型バッテリーを用い、10世帯程度の小規模な村を電化するシステムを紹介していた。

 まず、親機となるソーラーパネルと蓄電池を村のリーダー宅に設置し、そのほかの村のメンバーには家庭用の子機バッテリーを配布。村のメンバーは、1~2日ごとに子機を充電しにリーダー宅を訪れ、電気代として10セント程度を支払う。

 システムには、ソーラーパネル1台、蓄電池1台、子機バッテリー10台、LEDライト20台、LED用ケーブル20本、ソーラーパネル用ケーブル1台が含まれる。

 子機バッテリーには同社の鉛バッテリーを採用し、約100lxの明るさのLEDライト2個とセットにして、村のメンバーに配布する。この仕組みにより、低所得の家庭も高品質のバッテリーを長期に渡って使うことができ、明かりも得られるという。

蓄電池を搭載した親機。専用のソーラーパネルで発電した電気を貯め、最大10台の子機を同時に充電できる
発電用のソーラーパネルの模型
付属のLEDライトの明るさは約100lx
鉛バッテリーを搭載した、コンパクトな子機
子機のUSBポートから携帯電話などを充電できる。アフリカでは、電気や水などのインフラが不十分な地域でも、携帯電話の電波は届いている場所が多く、比較的普及しているという

シャープ、ソーラーパネルと連携しコンセント不要の冷凍ストッカー

ソーラー蓄冷冷凍ストッカー

 シャープは、太陽光があればコンセント不要で使える「ソーラー蓄冷冷凍ストッカー」を展示していた。

 高効率の電力制御回路を採用し、ソーラー発電した電気を電源として使える冷凍ストッカー。曇りの日や朝夕の光が弱い時間帯にも発電できる。

 庫内にはオリジナルのパネル型蓄冷材を20枚搭載。これにより、ソーラーパネルで発電できない夜間や荒天の際にも、最大36時間程度は安定して冷却を続けるという。

 同社では、商用電源のない地域や電力供給が不安定な地域、電気代が高い地域において、食料品業者や村落単位で食材などを冷凍/冷蔵できるとしている。

冷凍ストッカー本体
操作ツマミは本体前面の下部に付属。冷蔵、冷凍温度を設定できる。ほかに、冷蔵専用のストッカーも販売する予定という
高効率の電力制御回路が採用されている。DC/DCコンバーター回路の効率は95%以上で、インバーター回路の効率は98.5%以上という
庫内には20枚の蓄冷材を搭載する
蓄冷材には、-15℃を下回ると凍る特殊な液剤が入っており、過冷却を防ぎ、効率的に冷却・放熱できる

 冷凍ストッカーの庫内容量は200L。AC電源にも対応する。太陽電池は別売りも可能。今年後半よりアジア、アフリカに向けて順次出荷予定。

ジー・イー・エス、ソーラーパネルで動く水処理装置

太陽光発電技術と電気分解技術をあわせたハイブリッド型水処理装置

 ジー・イー・エスでは、シャープ製のソーラーパネルで動く水処理装置を展示していた。

 ジー・イー・エスは、アフリカに向けて20年近く前から水処理装置を納入してきたメーカー。この水処理装置では、電気分解技術によって汚れた水を浄化し、飲料水や医療機関向けの除菌水を生成できる。工業廃水の処理や、水のリサイクルにも使える。

 電源にはソーラーパネルで発電した電気を使うため、無電化地域でも水処理が可能。一日当たりの生成量は、飲料水で50t、除菌水で2t。

 この水処理装置の運転に必要なものは、水と塩だけ。既にアフリカ各地に納入事例がある。同社の下川樹也取締役副社長によれば、「いくらきれいな水があっても、現地の産業が育たなければ意味がない。水と塩は現地でも低コストで手に入るので、こうした物資を納入する現地のビジネスを育てたいという想いもある」と話す。

なお、アフリカの貧しい地域では飲料水を購入する人はほとんどいないという。そのため、この医療機関向けの除菌水を販売することでコストを回収し、飲料水は無料で現地の人に提供しているという。

「ELECTROLYSIS」と書かれた管の中で、水を電気分解して浄化する。太陽光パネルからの直流電源を効率的に利用する
会場では着色した水を無色透明の水に還元していた。手前のタンクに着色水、奥のタンクに処理後の水が入っている
シャープのソーラーパネルと組み合わせて、アフリカ地域に提案していくという

パナソニック、無電化地域向けの小型LEDランタン

チャージ機能付ソーラーランタン

 パナソニックでは、生活用の電気が通っていない地域向けの小型照明器具「チャージ機能付ソーラーランタン」を展示していた。

 蓄電池を内蔵したLED照明。ソーラーパネルで発電した電気を蓄電池に貯め、夜間の照明などに使用できるほか、付属のUSBポートから携帯電話などを充電することも可能。

 本体には金具のハンドルが付属し、吊り下げたり、自立させて使える。

 光源には5基のLEDを装備し、明るさは3段階から選べる。明るさは最大90lxで、約6時間点灯する。満充電にかかる時間は約6時間。

金具で吊り下げることもできる
金具を立てれば自立する
充電用のソーラーパネル
電源OFF時

角野製作所、少ない水力で発電できる水力発電装置「ピコピカ」

水力発電装置「ピコピカ」

 角野製作所は、少ない水力で発電できる水力発電装置「ピコピカ」を展示していた。

 ピコピカは、農業用水の水路に置き、水流を利用して発電する螺旋式水車。発電した電力は街灯や害獣防止用の電柵などに利用できる。発電量は水流によって3W~10Wほどになるという。

 ピコピカ本体は自分で組み立てることが可能で、国内では子供の教材用に教育現場で使われている例があり、今後アフリカなど途上国に向けてアピールしていく予定。

 本体サイズは280×1,085×380mm(幅×奥行き×高さ)。本体重量は18.5kg。設置可能場所は、幅30cm以上で水の流量が10L/秒以上のU字溝水路。希望小売価格は86,625円。

ピコピカの螺旋羽根は、ペットボトルキャップを再利用。本体の導水管や透明のカバーはペットボトル本体を再利用している
付属のLEDライト2個
点灯時
内蔵する螺旋羽根

小林 樹