家電製品ミニレビュー
MPOWERD「Luci(ルーシー)」
~息を吹きこんで使うソーラーLEDランタン
by 伊達 浩二(2013/7/5 00:00)
太陽電池で発電して、蓄電池に充電し、LEDライトを点灯する。そういうプロダクツが、最近増えてきている。
これらの主な用途は、送電網が整備されていない国や地域で、一家の中心的な明かりとして調理や勉強に使うものだ。
「Luci(ルーシー)」もそういう製品の1つで、米国のMicro Power Designという会社が開発した製品だ。というよりも、この会社はLuciを世に出すために作られたらしい。Micro Power Design社は「MPOWERD」と書かれたロゴをトレードマークにしているので、以下、MPOWERDと呼ぶ。
途上国などを主なターゲットとする、いわゆる「世界を変えるためのデザイン」系の製品には、素晴らしい製品も多いのだが、日本で使用する場合には、やや性能面で物足りないことがある。ソーラーLED照明器具で言えば、明るさが足りなかったり、充電に時間がかかりすぎたりする例がいくつかある。
Luciについても、そういう恐れをいだきながら試してみたのだが、かなり良くできた製品であり、実用に耐える製品だった。さっそく、紹介していこう。
メーカー | Micro Power Design(MPOWERD) |
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製品名 | Luci |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 2,980円 |
ビニール製の本体をふくらませて使う
Luciのパッケージは、簡素な紙製で、厚さが2cmほどしかない。最近、ブリスター型の派手なパッケージが多いので、こういうシンプルさは好感が持てる。
背面には仕様が書かれている。照明範囲は15ft(約4.5m)四方、LEDの全光束は1,200lmなので、思っていたよりも明るそうだ。
Luciの最大の特徴は、その本体構造にある。本体は塩化ビニール製で、浮き輪のように息を吹き込んで膨らませてから使うのだ。
Luciは、円筒形をしていて、直径はCDと同じ約12cmだ。上と下に2枚の板があり、それをビニール製の筒でつないだ思えば良い。
片方の板に、主な部品が集中しており、太陽電池と電源スイッチ、リチウムポリマー電池と10個のLEDがまとめられている。もう片方の板は、LEDの光を散らすための反射板だ。
買ってきたときは、ビニールに空気が入っていないので、厚さが約2cmしかない。大きさはCDそのもので、厚みが2cmだから、持って歩くときも気が楽だ。重さも100g弱しかない。太陽電池で発電し、リチウムポリマー電池を充電するので、乾電池はいらない。
とりあえず、空気栓を引き出し、息を吹き込む。浮き輪と違って、本体が小さいので一息か二息で十分に膨らむ。空気栓は押さえていなくても、空気栓は弁が付いていて、押さえていなくても空気が抜けない構造なので、膨らませるのは子供でも難しくないだろう。ちゃんと膨らんだら、空気栓を押し込んで完成だ。
なお、息を吹き込み過ぎると、底の部分が丸く膨らんでしまう。そうなったときは、空気栓をつまんで、底が平らになるまで空気を抜く。
電池不要。明るさは2段階
Luciが、ちゃんと充電できていれば、この状態で電源スイッチを押すと、LEDが点灯する。スイッチは1回押すごとに、「弱→強→点滅→切」の順番で切り替わる。
ちゃんと膨らむと、Luciの高さは約11cmになる。この高さがちょうど良く、机の上などに置いたときに照らす範囲が広い。例えば、Luciのすぐ横に文庫本を置いても、ページ全体を照らすことができる。
また、LEDのある面を上にすると、真下を向いたLEDから出た光が、下の反射板で跳ね返り、本体のビニールで散光されて、広い範囲に広がる。LEDも10個あるので、明るさも十分だ。普通の作業ならば、「弱」で十分に明るい。
また、Luciの上と下には、ビニールの帯が付いていて、フックなどに引っ掛けることができる。簡単な構造なのに、便利な工夫だ。
Luciは、基本的には1人に1つのパーソナルな灯りだと思うが、下方向に光が広がるので、天井に吊るせば、カタログ値通りに6畳ほどの空間を照らすこともできる。光の広がりに不満があるときは、高い場所に吊るすことを考えると良い。
Luciの太陽電池は、約80×30mm(横×縦)のパネルが2枚使われている。この手の製品としては贅沢な仕様だ。そのため、充電時間は直射日光下で約6時間と短い。LEDの点灯時間は、6~12時間とされている。
昼間はベランダで充電し、夜は室内で4~6時間使うというサイクルを4日間繰り返してみたが、電池切れにはなることはなかった。晴天というより、曇天の日が多かったことを考えれば、かなり優秀と言って良いだろう。
ただ、リチウムポリマー電池の充電具合が見えないのは、ちょっと不安だ。LEDなどで、電池の残り容量が分かるようになると実用性が上がる。
なお、Luciは防水性があり、水没しない限りは水を気にしないで良い。実際に、ベランダでにわか雨に濡れても問題なかった。ソーラー充電がメインの製品にとって、屋外での充電は欠かせないので、防水性は必須の機能だ。
まじめなメーカーの実用になる製品
MPOWERDのサイトでは、自分で使うLuciを購入するという直販のコーナーの他に、NGO(非政府組織)を通じて、Luciを寄付する「Give Luci」というページも用意されている。つまり、まじめに活動している会社であり、そこが作ったLuciもまじめな製品になっている。
製品としてのLuciが成功している要因は、大きめの太陽電池や、リチウムポリマー電池、10個のLEDという、しっかりしたハードウェアをケチらずに投入していることにある。「途上国向け」という言い訳なしに、ちゃんと使える性能を持っている。
ビニール製の本体も、耐久性という面で不安がないとは言わないが、軽さと散光性の良さという点では有効だ。このビニール製の本体が、Luciを単なる実用品ではなく、面白くて役に立つ製品にしている。
ただ、個人的な意見になるが、Luciを防災用品として使うのは、ちょっと不安がある。1つは、バッテリーの残り容量が確認できないことだ。イザ使いたいというときに、バッテリーがアテになるかどうかわからないのは、ちょっと怖い。メーカーでは、バッテリーをフル充電して、2年間放置した場合でも残量は約50%としているので、2年ぐらいはアテにして良いだろうが、万一に備えて乾電池式のLEDライトも用意しておきたい。
もう1つは、暗い場所に何年もしまいこんでおくと、ビニール製の本体に穴が開いたり、くっついたりしかいという不安だ。
そういうことを考えると、Luciに似合うのは、防災用品としてしまいこんでしまうよりも、どこか日光の当たる場所においておき、夜になったらサブの灯りとして使うというスタイルだろう。生活の中で役に立っており、イザというときにもすぐ使えるというように手近に置いておくのがベストだ。
例えば家の中でインテリアを兼ねた節電器具として使うとか、キャンプや車中泊などの軽いアウトドア用途で使うのが向いていると思う。充電可能回数は約500回とされているので、毎日使っても1年強は使える計算だ。