家電製品レビュー

アイロン掛けのストレス軽減! 東芝の100年記念モデルは欲しい機能が「全部入り」

 面倒な家事ランキングで必ず上位に来るのが「アイロンがけ」だ。衣服は自分で洗濯してアイロンをかけた方が経済的とわかっていても、ある程度コツも要り、準備も含めるとそれなりに時間がかかる。力もある程度必要なので、冬場はともかく夏場はシャツ1枚仕上げるにも汗ばみ、つい億劫になる。

 アイロンがけ、もう少し楽にならんでしょうかねぇ……と、そこで紹介したいのが東芝ライフスタイルから12月16日に発売される「美(ミ)ラクルLa・Coo(ラクー) TA-FLW900」。1915年に国産初の電気アイロンを発売した東芝の、100年を記念する「使いやすさ」を追求したアイロンだ。

東芝ライフスタイル「美(ミ)ラクルLa・Coo(ラクー) TA-FLW900」
メーカー名東芝ライフスタイル
製品名美(ミ)ラクルLa・Coo(ラクー) TA-FLW900
実勢価格21,000円(税抜)

 タイトルで「全部入り」といい切ってしまうほど、ラクーにはアイロンに欲しいと思う要素が揃っていると言っても過言ではない。コードレス、細部にも対応するラクな取り回しができる広いかけ面、低・中・高の全温度に対応する2種類のスチームに加え、「集中」と「全面」が切り替えられる2種類のスチームショット、そしてミスト(霧吹き)も搭載する。

コードレス式を採用
給電台のコードはリール式。コードの長さは約1.4mだ。アイロンを置くとスルッと収まる
給電台の底の様子。すべり止めが2箇所ある

重心が低く従来品よりもかけやすさがアップ!

 本体の大きさは230×115×124mm(長さ×幅×高さ)で、重さは1.2kgと標準的。だが、従来品(TA-FVX920)よりも高さは約15mm低くなり、ハンドルを握った時にアイロンの重心近くを握れるようになっている。

本体の大きさは230×115×124mm(長さ×幅×高さ)で、重さは1.2kg。ケース収納時は276×180×206mm(同)で、重さは2.2kg
ハンドルを握った時、右の従来品(TA-FVX920)よりも高さが約15mm低い。アイロンの重心近くが握れるようになっている

 かけ面は、「ボロンコート」と呼ばれるコーティングが施されている。これがとても良い。今まで使っていたアイロンの滑りとは比較にならないほど、布への滑りが良くて驚いてしまった。かけ面の面積は従来品より17%拡大しており、広い面が一気に仕上げられる。

「ボロンコート」のかけ面。布への滑りがとても良い
右の従来品よりも面積が17%も拡大したラクー

 かけ面が広くなっても、従来からあった「楽がけライン」と「ポイントプレス」は健在だ。より細く加工された「楽がけライン」が、ボタン周りなどの細部にスルっと入り込む。

 後方のせり上がった「ポイントプレス」は、シャツのタックやプリーツなどの部分仕上げに役立つだけでなく、アイロンを後方へ動かした時の”踏みシワ”予防にもなる。

アイロンの先端が尖っている「楽がけライン」。シャツのボタン周りなどの細部にスルリと入り込む
アイロン後方のせり上がった部分は「ポイントプレス」。シャツのタックやプリーツのなどの部分仕上げに役立ち、アイロンを後方へ動かした時の”踏みシワ”もできにくい
ラクーを前後に動かしても、テーブルに置いたランチョンマットがほとんどズレない
筆者が現在使っているアイロンは、マットがずれまくる。摩擦音もラクーより大きい

 また、操作部はアイロンの前方上部に集中。電源の操作やスチームの切り替えなど、ハンドルを握ったまま操作できるので流れも止まらない。表示も明確でわかりやすい。

操作部はアイロンの前方上部に集中している。アイロンを給電台に載せて電源を入れる。インジケータは若干暗いのは気になった

コードレスなのに長持ち! 全温度対応のスチーム機能

 シワを気持ち良く伸ばすための工夫として、合計56個のスチーム孔は、深さのあるスチームライン(溝)の中に立体的に配置されている。スチームが溝全体に広がり、熱いかけ面が触れる前に衣類にしっかり浸透できる空間があるのだ。

スチームは56個全ての孔から噴出される。ショットスチームは、「集中」が先端の5個、「全面」は残り51個からスチームが出る

 スチームの量は2種類。衣類の素材、シワの状況に応じて使い分けられる。「スチーム」は毎分約5ml、「シャワースチーム」なら倍以上となる毎分最大約13mlのスチームがたっぷり出る。切り替えレバーの操作だけで簡単に選べる。もちろんスチーム無しの「ドライ」もある。

スチームの量は「スチーム」が約5ml/分、「シャワースチーム」は最大約13ml/分とたっぷり

 しかも、スチームは低・中・高の全温度に対応している。繊維の種類に関わらずいつでもスチームが利用できるのは、廉価版のスチームアイロンに望めない特徴だ。

 特筆すべきは、コードレスアイロンなのに、スチームが驚くほど長く出続けることだろう。何度か実際に計測してみたが、「スチーム」は高で約5分・中で3分、低でさえも40秒出続けた。スチーム量の多い「シャワースチーム」でも、高で1分50秒、中で1分15秒、低で30秒出続ける。

 ただし、その分スチームが使えるまでの時間は、最近の立ち上がりの早い他のアイロンよりも少々時間がかかるかもしれない。アイロンが高で2分以上、低でも1分10秒かかった。とは言うものの、一度アイロンの予熱が済んでしまえば、設定温度に復帰するのに長くても1分程度だ。

シワを一撃する「全面」「集中」2つのショット

 「ショット」は、より深いシワができてしまった厚みのある衣類やセーターなど、熱いアイロン面を直接触れさせたくない衣類に重宝する機能。かけ面の向きは下向き、垂直のどちらでもショットスチームができるので、衣服をアイロン台に置いてもハンガーに吊るしても、どちらにも対応する。

 ハンドルの左側面の切り替レバーを操作すれば、「全面」と「集中」の2種類から、ショットの質が選択できる。ショットボタンを押せば、スチームが勢い良く噴出する。

スチームの切り替えレバーと、ショット&ミストボタン(左)。ショットの切り替えレバー(右上)。タンクのフタは指腹で簡単に開けられる

 「全面」は、かけ面の中央の51個の孔からスチームが広範囲に拡がるように噴き出す。セーターの仕上げや、衣服についてしまった臭い取りなどに活躍する。かけ面を垂直にしても40~60cmもスチームが飛ぶほどの勢いがある。

ショットスチームの「集中」はボタンを押すと勢い良く飛び出し(上)1m先まで届く(中央)。「全面」はスチームがひとかたまりで噴出される印象だ。スチームはかけ面に対して真っ直ぐ噴出する

 「集中」はさらにパワーがある。集中スチームは、かけ面先端の5個の孔からのみ出るので、ショットボタンを押すとスチームはけたたましいブッシューッ!!! という音と共に1m先まで届くほどだ。そのパワーはアイロン台も軽く突き抜けるほど強い。厚手の生地にできた深いシワも、繊維の奥までスチームが届くので一網打尽にできる。1回の給電で、どちらのショットも3秒間隔で15~18回のショットができた。

「集中」ショットはラクにアイロン台を突き抜けるほどパワフル。使う際はヤケドには十分気をつける

 アイロン面を垂直に保持しやすいのもラクーの大きな特徴だ。先にも記しているが、アイロンの重心近くを持つようデザインされているので、目の高さあたりまで持ち上げて保持していても、先端が傾きにくくコントロールしやすい。

「TA-FLW900」(左)と、従来品の「TA-FVX920」(右)。アイロンを目の高さまで掲げても、先端が傾かずに保持しやすい。重心が手元から遠い従来品は、どうしても傾いてしまう

 もう1つ、「ミスト(霧吹き)」機能も搭載されている。スチームアイロンをかける前に、シャツなどの薄い生地にできた深いシワを軽く湿らせておけば、仕上がり度もアップ。シワが取れにくい麻のシャツなどにミストはとても重宝する。ショットの隣のボタンを押すだけなので、アイロンがけの途中でも気になる所にシュッ! と一吹きできる。

ミスト機能も搭載。取れにくいシワや、麻のシャツなどに重宝する

シャツのアイロンがけがラク〜になった!

 ラクーはハイエンドモデルがゆえ、機能の説明がつい長くなってしまった。いよいよここからラクーを使ってみる。

 アイロンがけに用いるシャツとして、ビジネス向きの“形態安定加工“のボタンダウンシャツ(ストライプ)とブロードシャツ(白)に、オフ用のフランネルシャツ(グレー)と、いずれも綿100%のシャツ3着を用意した。普通に洗濯機で洗濯し、ベランダで乾かしたものだ。

ストライプのボタンダウンシャツ。形態安定加工されているものの、洗って干しただけではやはりもっさり。ストライプのラインがピシッと見えない
形態安定加工されていないブロードシャツ。このままではだらしなく見えそうだ
普段着のネルシャツ。アイロン無しでも良さそうなシャツだが、やはり洗濯シワが気になる

 シャツにアイロンをかける順番は、「襟」→「肩ヨーク」→「袖」→「後身ごろ」→「両前身ごろ」の順で、それぞれの箇所をアイロン台の上で手で伸ばしてからかけ始めた。アイロンの設定温度は高温で、スチームはたっぷりの「シャワー」を選んだ。

 シャツ3枚を立て続けにかけたが、とにかくアイロンがけ中にありがちなストレスが少ないのに驚く。疲れを感じるどころか、ちょっとした快感さえ感じるほどだった。

軽い力でスイスイとシワが伸びるラクー

 ラクーは軽い力でスルスルと布の上を滑り、アイロンを押さえつけなくてもシワが面白いように消えていき、踏みシワはまずできない。「楽がけライン」がボタン部分やタック部にも小気味よく入って行き、「ポイントプレス」はタックのキワ部分を狙って、キチンとした折り目も付けられる。シャツの仕上がりはどれも大満足だった。

 かかった時間は1枚につき9分弱。形を整えながらアイロンがけをするので、今まで使っていたアイロンよりも飛躍的に時間が短縮するわけではない。だが、思い通りにサササッと軽快に進められた。

敢えて作った”踏みシワ”(上)は、ミストをかければ一瞬でシワが消える
アイロンの先の楽がけラインが、カフス側の細かなタックにもスイスイ入り込む(上)。アイロン後方のポイントプレスでタックのキワを軽く押さえればピシッと仕上がる

 スチーム量の多いシャワースチームを用いたが、途中でスチーム切れは起こらなかった。シャツの各箇所をアイロン台に広げている間は、アイロンを給電台に戻すためだろう。また、スチームは給電台に載せると止まるので、無駄にスチームを消費しないのも良い。結局、3枚のシャツを仕上げるのに、アイロンへの給水は最初の1回だけですんだ。

形態安定加工されたシャツも、アイロンをかけたほうが断然良い
布地の薄いブロードシャツは、やはりこうでなくては!
ネルシャツもアイロンをかけたほうが、しなやかな風合いがアップする

強力ショットで、厚手生地のシワも一網打尽

 ショットスチームは、しまいこんでいたスーツ、手洗いして平干ししたウール100%のセーターに、やはりしまいこんでいたコートの3点で試してみた。

いかにも「しまいこんでいました感」溢れるスーツ
肩と袖の付け根に、パンツにはくっきりとシワ、ハンガーの跡がついている

 スーツの肩口についた深いシワ、コートの袖の要らない折り目などの特に気になる深いシワは、アイロン台の上に置き、アイロンを浮かせながら「集中ショット」していった。ショットの狙いも定めやすく、コレが面白いようにシワが消えてゆき愉快! 深いシワを駆逐したらハンガーに吊るし「全面ショット」をかければ風合いも蘇る。

肩と袖に「集中ショット」を数回かけるだけで、深いシワが消えた
ハンガー跡がくっきりとついたパンツも「集中ショット」であっという間に跡が消えた
深いシワを取ったあと吊るして「全面ショット」をまんべんなくかけた。布地のハリが戻り、スッキリ
Before→After

 セーターはアイロン台の上に広げて、「全面ショット」をゆっくりとかけ、手で軽く押さえていく。全体のヨレや捻じれも取れ、編み目も整った印象に仕上がった。

手洗いして平干ししたセーター。編み目が乱れ、干した際にできたヨレが残っている
「全面ショット」でスチームをかけ、軽く手で押さえるだけでOK
Before→After。スチームをかけたセーターは編み目も揃い、ヨレも消え元通りになった

 ショットはアイロンを浮かし、かけ面を水平または垂直に保持しながら行なう。シャツと同様に立て続けに3着ショットしたが、思いのほか疲れなかった。

 というのも、ハンドルを握る指4本それぞれにアイロンの重さが均等にかかるので、アイロンの先端が傾かないので手首の負担も少ないのだ。水を入れれば1.2㎏を超えるアイロンなのに、まるで衣類スチーマーのような感覚で扱えた。

長年折りたたんでしまいこんでいたフェルト地のショートコート
袖には要らないシワが付き、全体的にクタッとしている
袖の深い折り目は「集中ショット」をかけた。後はハンガーに吊るしてゆっくり「全面ショット」を噴射
Before
After。布地の風合いが戻り、しまいこんでいたニオイも消えた

 蓄熱中のラクーの消費電力は、実測で1,340W前後だった。もちろん設定温度に達すると0Wになり、給電台からアイロンが離れている間は電気を消費しない。予熱に2分、シャツ1枚のアイロンがけに9分の合計11分として、例え給電し続けていたとしても電気代はわずか6円程度(実際の消費電力量は、待機からシャツ1枚仕上げるまで0.08kwh)。洗濯の水道代、洗剤代を入れても、クリーニングに出すよりも経済的だ。

 アイロンの電源を切り忘れても、約10分後に自動で電源が切れる。安全にも配慮されている。

スチームの水をキレイに保つ除菌仕様

 タンク内が除菌できるのも特徴の一つだろう。給電台に載せたまま片手で着脱できるカセットタンクには、「抗菌ガラス・プラチナボール」が組み込まれている。タンク内の水を除菌してくれるので、スチームもミストもキレイな水でできる。タンク容量は約120mlだ。

カセットタンクは片手で着脱できる
タンク内の水を除菌する「抗菌ガラス・プラチナボール」がタンク内に組み込まれている

初めて意識させられた、アイロンの「重心」の良さ

 ラクーを使ってじわじわと思い知らされたのは、持った時のアイロンの「重心」がいかに大切か、という事だ。アイロンの重心がハンドルを握った手の真下に感じられるので、とにかくラクに軽快に動かしやすい。強力で長持ちするスチームと、滑りの良いかけ面も相まって、少ない力で面白いようにスイスイとシワが伸びる。

 重心の良さは、ショット時にも感じられた。衣類をアイロン台に載せてアイロンを浮かし続ける場合でも、吊るした衣服にショットする場合でも、アイロンの先端が傾かないのでコントロールしやすい。これほどまでにアイロンの重心を意識させられたのは、ラクーが初めてだ。

 コードレス・スチームアイロンは、安いものなら数千円からある中で、ラクー TA-FLW900は高価。だが恐れずに言おう。ラクーはアイロンがけが確実にラクになり、面倒臭さが相当減る。国産の電気アイロンを初めて発売した東芝の、100年を記念するのに相応しい、完成度の高いアイロンだ。

協力:東芝ライフスタイル

藤原 大蔵