トピック

瓦型ソーラーパネル、走る電源ロボットも Jackeryポタ電の安全守る工場を見てきた

Jackeryのポータブル電源やソーラーパネルの工場を初取材

日本でポータブル電源やソーラーパネルのメーカーとして、知っている人も多いJackery(ジャクリ)。オレンジ色のロゴが目を引く本体デザインでもおなじみだ。

ポータブル電源は、災害時など非常時の電源や、キャンプなどのアウトドアのほか、コンセントがない屋内外での家電やパソコン、DIY機器の使用など、幅広い用途に活躍している。国内外の様々なメーカーが登場したことで選択肢は広がった一方、どういった違いがあるのか分かりにくい部分もあるだろう。

今回の取材では、中国・深センにあるJackeryの本社を訪ねるプレスツアーに参加して、オフィスや工場を見てきた。これまであまり公開されていなかった、ポータブル電源やソーラーパネルが作られるまでの工程や、安全性を確認するための厳しいテスト、これから日本に登場するかもしれない新製品の一部も見てきたので、お伝えしたい。

Jackery本社がある深セン市内のオフィスビル

日本にも欲しい? 屋根瓦型ソーラーパネルや走るポタ電

中国の製造業やハイテク企業が多く本拠地を構える深セン。その中でも主要駅である深セン北駅がある龍華区にJackeryの本社がある。大規模なショッピングモールなども隣接し、多くの車や電動バイクなどが行き交っている地域の大型ビルにオフィスがある。

ショールームを訪れると、現行製品のほか、これまで海外の展示会などで披露した試作機や、見たことがないカラーのポータブル電源などが置かれていた。

初めて見たオレンジ色の筐体も。こちらはデモ機で実際の製品ではなく、販売はしていないとのこと

特に興味深いのは、屋根瓦の形をした薄型のソーラーパネル「Jackery SolarSaga Barrel Tile」だ。日本の瓦でいうと2~3枚分ほどのサイズのパネルを複数組み合わせて、一見すると太陽光発電しているとは気づきにくいほど、屋根になじんだデザインを実現できる。

屋根瓦型のソーラーパネル

特徴的な曲面の形状は、単なる瓦に寄せたデザインだけではなく、波の山と谷の間に気流を作り出し、効率的な放熱を実現するというのもポイント。

人が乗っても大丈夫な頑丈さ

面白いのは、日光が当たらない側にも置けるように、ソーラーパネルを内蔵しない同デザインの瓦型ユニットも用意していること。屋根の全てにこのパネルを置かなくても、日当たりに応じて必要な場所にだけソーラーパネルを配置できるのはコストとデザインの両面でメリットといえる。

実際に日本で販売するには、国内の建築基準への適合などの課題があるため導入は未定とするものの、この課題がクリアできれば、屋根のデザインになじむこれからの家屋のソーラーパネルとして、有力なものになっていくかもしれない。

もう一つ目を引いたのは、ソーラーパネルで発電できて、自動的に太陽光を追跡して走る4輪車タイプの「Jackery Solar Mars Bot」だ。

Jackery Solar Mars Bot

太陽光発電、電力貯蔵、充電システムの3つを統合したもので、自動で太陽光に合わせて移動し、1日を通して発電を最適化するという。

一見すると、宅配物でも運んでくれそうな小型ロボットのようなサイズの本体。スイッチを入れると、パネルが上下左右に広がって、十字型の大きなソーラーパネルを展開。自走するため、ソーラーパネルの課題とされる「日が当たらない向きでは発電できない」ことをクリアしてくれるだけでなく、移動するものへの給電もできる。

Jackery Solar Mars Botがソーラーパネルを展開!
ソーラーパネルが展開

本体の下部を見ると、ポータブル電源のようなAC出力やUSB出力などのポートとディスプレイがある。

端子や画面などを見ると、今のJackeryポータブル電源製品に近い

現在のプロトタイプは走行性能などに制限があるようだ。今よりもっと自由に動いて電源供給できる存在になれば、今のポータブル(持ち運べる)電源の可能性が大きく広がって、仕事や遊びなど様々なシーンで役立ってくれそうだ。

実用面で期待されるのは「ベランダ蓄電池」というもの。こちらは欧州などに向けて展開しており、AIによる管理で、電気代が安いときに本体へ充電し、電気代が高いときに使うといった効率的な電気の運用ができるという。

このベランダ蓄電池は、一般的な家庭用蓄電池とは異なり、通常の電源コンセントに差し込んで使用するのが特徴。工事不要で、購入した人が自身で導入可能という制度があることから、欧州や米国の一部で使用が認められているとのこと。

日本では未発売のベランダ蓄電池
スケルトン仕様で中が見えるポータブル電源やソーラーパネルも展示されていた

品質守る厳しいテスト。工場を見てきた

深セン市内にある工場のテストルームを取材

Jackeryは日本でも大容量&高出力なポータブル電源でおなじみだが、昨今のバッテリー関連の話題といえば、小型のモバイルバッテリーが発火するなど、安全性に関するニュースが多い(本記事では、AC出力を持つものを「ポータブル電源」、出力がUSBなどでACを持たないものを「モバイルバッテリー」と表記する)。

次々と新しいモデルが登場し、充電の高速化や高出力化、大容量ながら本体が小さくなるなど、進化のスピードも著しいが、家で長く使うためには安全性は大事なポイント。災害時にも頼りたい製品だけに、いざ使いたいときに不安ができるだけ少ない製品を選びたいものだ。

深セン市内にあるJackeryの工場では、全ラインナップのポータブル電源で553項目、ソーラーパネルでは87項目ものテストを実施。厳しい環境下でも動作したり、不意の事態になっても事故を起こさないための様々な環境が用意されており、その一部を見学してきた。

訪問したのは、年間最大180万台の生産能力を持つJackery自社の生産拠点。敷地面積27,500m2の広さがあり、単に生産するだけでなく環境負荷の低減にも取り組んでいるという。この工場は、年間約173,000kWhの電力を節約し、10万kg以上のCO2排出量削減を行なっており、同社によると「毎年地球に8,000本の杉の木を植えることに相当する」と説明する。

ポータブル電源のテスト現場で最初に見たのは、IPX5防水試験。あらゆる方向からの噴流水により悪い影響がないか、外装の防噴流性能をテストするものだ。

防水試験の様子

高温/低温での試験では、酷暑や極寒、高湿度などの厳しい環境下でも安定して動作するかどうかが試験されている。

さらに、高地環境や航空輸送といった、気圧の変化に関する安全性もテストしている。

そのほかにも、長年の使用に耐えるようにプラグの抜き差し試験も実施。大容量のポータブル電源には底面に移動用のキャスターが付いているが、段差など負荷のある状態でも走行できるように耐久性や安定性が確認されている。

ソーラー発電&充電を継続して行なうテスト
耐衝撃や落下のテストも

ここまで完成品のテスト工程を見てきたが、ポータブル電源の製造ラインも見学できた。ポータブル電源の脳ともいえるメイン基板(PCBA)の表面実装工程では、設計から製造まで自社で行ない、高い信頼性を特徴とする。

ポータブル電源のメイン基板

主要パーツであるバッテリーの最小単位のセルは、全自動設備で精密に測定され、基準を満たした高品質なセルだけを選別して搭載する。選ばれたセルを使ったバッテリーパックの組み立ては自動で高精度に行なわれ、人の作業による厳しいチェックを経て、完成品となる。

ロボットで効率的に実装する工程と、人の手で確実にチェックしながら組み立てる工程で構成されている

完成後には100%全製品に充放電を繰り返す負荷試験を実施。初期不良を排除するため専任スタッフがモニタリングしているという。

別の場所にあるソーラーパネルの生産ラインも見学した。こちらは特許技術の保護などから写真撮影はできなかったが、原材料であるセルを小さく切り、これをデザインされた形に正確に並べて組み立てられ、これをケーキのように重ねて圧縮するなどの工程を経て、1枚の大きなソーラーパネルになるまでを見ることができた。

この拠点でのソーラーパネル生産能力は年間100万台。敷地面積は8,000m2で、業界でも屈指の自動化率と先進的な品質保証体系を持つという。パネルの原材料は、一定の温度と湿度で24時間管理されている。完成したソーラーパネルについても、折り畳みの繰り返しや、ねじれに対する耐久性などのテストを実施している。

Jackeryのソーラーパネル製品

これからどんな製品が出てくる?

話をうかがった周 伝人 Jackeryグループ副社長

Jackeryのブランド発祥は米国カリフォルニアだが、販売市場規模でいえば米国に続き日本の存在も大きいという。家電に対する消費者の目も厳しい日本において、Jackeryは日本人スタッフによるカスタマーサポートサービスも充実させてきた。

昨今のモバイルバッテリーの発火事故を受け、安全面から、航空機内での持ち込みにも制限が厳格化されている。上記のように厳しい安全基準を持つJackeryだからこそ、モバイルバッテリーについても安心して使えるモデルを日本で製品化する予定はあるのだろうか?

この問いに対してJackeryは「これから参入するチャンスがある。近々に、新製品を案内する。Jackeryらしい安全性と品質管理を徹底した製品をお届けしたいので、楽しみにしてほしい」とコメントしている。

一方で、今のリン酸鉄リチウムイオンなどに代わるバッテリーとして、より燃えにくいとされる固体電池や半固体電池を採用するバッテリーメーカーも急激に増えている。Jackeryはこうした動きをどう見ているのか。

「現状すぐに固体電池の製品を出す見通しは立っていない。まだパイロット段階であり、初期の応用分野として考えているのは、EV(電気自動車)や、“空飛ぶクルマ”、ヒューマノイドロボットなどに活用されるのでは」との考えを示している。量産コストなどの課題がクリアされれば、ポータブル電源などにも導入を見込んでいるとのことだ。

瓦型のソーラーパネルは家電 Watchの記事でも大きな反響があったが、こうした製品や、窓型のソーラーパネル、ベランダ用の蓄電池など、住宅と一体になった製品の展開は日本でもあるのだろうか?

同社製品の日本市場を率いる周 伝人 副社長は「ソーラーパネルの瓦などは、日本にも非常に向いている製品だが、今は導入の初期段階。コスト面や各国の建築基準の認証を取ることが課題。事業を進めるにはハウスメーカーや工務店などのパートナーと手を組んで、認証をクリアしていくことが必要。実現すれば、もとの建物の外観を大きく変えず簡単に設置できるなどメリットが多い」として、長期的な戦略で進めていく見方を示している。

冒頭に紹介したJackery Solar Mars Botのようなユニークな製品のアイディアは、今もいくつも発案されているそうだが、一つ面白かったのは、エイプリルフールにXで発信した“ソーラーパネル付き傘”の投稿。現時点で製品化の予定はないとのことだが、想定以上の大きな反響があったことから、同社としても可能性は感じているという。猛暑で日傘を差すことが珍しくなくなった今、ちょっとした充電に役立ってくれるグッズとして、登場すれば日本でも注目されそうだ。

2029年に新社屋も

かつての急成長に比べると、景気の減速などもささやかれている中国だが、今回の取材期間に深センの電気街「華強北」を訪れてみても、人の多さなどを含めて、まだまだ成長のポテンシャルがあり、市街では若者の活気も感じられる。上空を宅配ドローンが飛び交うなど、最新技術がいち早く活用される場としても深センは引き続き注目のエリアだ。

市街には、スマホを自由にワイヤレス充電できるオブジェなど、さすがテクノロジーの街という一面も

グローバルで成長を続けてきたJackeryは、2029年には新社屋を深セン市内に完成予定だという。詳細はまだ明かされていないが、ソーラーパネルなどを含めてJackeryが持つ魅力をふんだんに活かした社屋になるとの見込みだ。

現在のJackery本社から見渡した深セン市街

ポータブル電源が日本で引き続き注目されているのは、地震や台風など大きな災害が多いことも一因。これからの季節はゲリラ豪雨なども気になるところだ。非常時の電源としてのニーズが高く、昨今の中東情勢によりエネルギー問題への関心も高まり、Jackeryのポータブル電源に対しても「どれくらいの容量のモデルを選べばいいのか?」などの相談も多いとのこと。

Jackery製品は、部品の選別から完成後のテストまで、厳しい基準をクリアして日本に届けられることを今回確認できた。電気を賢く便利に使うことは、今の生活に欠かせない基本の部分であることから、ポータブル電源やソーラーパネルに限らず、これからも様々な用途の製品が、便利かつ安全な形で登場することに期待したい。

中林 暁