藤山哲人の実践! 家電ラボ

超黄ばんだシャツに生け捕りのダニ!? パナソニックの大人の科学実験室でなるほど! 納得!

超黄ばんだシャツに生け捕りのダニ!? パナソニックの大人の科学実験室でなるほど! 納得!

「本気」が見える技術とアイディア

 パナソニックから「絶対、藤山さんが喜びそうな内覧会をやるので来てくださいね♪」と連絡があり、まんまとソレに乗っかってきた(笑)。

 すでに発表済みの製品もあったので、それほど期待はしていなかったが(すまん! パナさん!)、行ってみたらせんじろう先生も驚く、大人の家電実験大会(笑)。

 パナソニックの技術を余すことなく、分かりやすい実験で解説していたので、ぜひ読者のみなさんにも知ってもらいたく記事にしてみた。理系読者は大喜びの内容。ちょっと長い記事だけど、面白く読んでもらえれば嬉しい。

 まじで、最近のパナはパネェっすよ!

実験大会だったパナソニックの内覧会

暑がりと寒がりを見分けるエアコン! 驚愕の温度差10℃!

 パナソニックのエアコンの愛称をご存知だろうか? 三菱電機や日立のようにパッ! とは出てこないが、なぜなら時代に合わせて愛称を色々変えてきているので、あまり定着していないのだ。そんな愛称の中のひとつに「エオリア」がある。

 なんだかティッシュペーパーのブランドっぽい(笑)が、おそらく40~50代のヒトなら記憶の片隅にあるはず。なにせ徳永英明さんが、製品名を連呼するCMソング「だーかーらー、エオリア! エオリア♪」が大ヒットしたのだ。それでも「?」なヒトは動画サイトで「エオリア CM」で検索すれば、その歌に涙するだろう(笑)(だけど半マジ)。

 比較的長く使われた「エオリア」ブランドは、今年で29年目になる。しかもパナソニックがエアコンを商品化したのは1957年なので、今年で60周年だ。

パナソニックのエアコンの愛称は、これ以外にも「樹氷」(冷房専用機)、「結局 南極 放送局からコマーシャルっ♪」のフレーズと「クールクールで夏がくる〜♪」曲が流行った「クールクール」(楽園と同時期で冷房専用機)、1973年(昭和48年)の「楽園」(暖房もついた)などもあり、型番のみで愛称がないときもあった

 会場に展示してあったエアコン第1号機は1958年(昭和33年)製。読者の大半はおろか、筆者すら生まれてない! 何しろ東京タワーが完成した年で、子どもも大人もフラフープで踊りまくった頃なのだ。

 街にはスバル360が走り交い、出前バイクでおなじみのスーパーカブがその横を追い抜き、家庭ではお湯をかけるだけで食べられるチキンラーメンに舌鼓を打っていた頃。テレビがようやく試験放送をはじめたころから、エアコン(正確には冷房)があったのが驚きだ。

100円ショップで売ってそうな、ありえないカラーリング! 風向きの変え方分かります? 2つのアミを取って、つまみの三角矢印の向きを変えると、風向きを変えられるんです!
当時大ブレイクしたスクロールコンプレッサを搭載したエオリア。最近の機種はお掃除機能と高効率の“コ”の字型熱交換機で、出っ張ってるけど、一時期薄型だった。ちなみにエオリアは、ギリシャ神話の「アイオロス」(Aeolus)から来ている風の神様

 エオリアブランドで販売されたエアコンですら1988年製。バブル絶頂期で青函トンネル、瀬戸大橋、東京ドームが完成し、東北上越新幹線が開業した。オフィスにはNECのPC-9801VMが導入され、一太郎(ワープロ)とロータス1-2-3(表計算)に悪戦苦闘していたころだろう。そしてCMは時代を風刺する「24時間戦えますか? の栄養ドリンク リゲイン」や「さわやかテイスティ♪ I feel coke」のCMがよく流れていた。

ナノイー機能で空気がきれいというコンセプトが、フィルター搭載で空気がきれいという昔のエオリアと同じだったことから、愛称を復活したと思われる

 そんな古い歴史を持つパナソニックの最新エアコンは、温度が最大10℃異なる空気を同時に出せる「Eoria(エオリア) WXシリーズ」。つまり、リビングに寒がりの奥さんと熱がりの旦那さんがいても、2人に快適な異なる温度調正ができるというものだ。2000年あたりから「Eoria」ブランドを使っていなかったので、久々の復活となる。

筆者が推すのは温度が10℃違う気流を同時に作れるって機能。手を左の赤と右の黄色い輪の中に入れると、まったく温度が違う。下の温度計も左が41℃、右が32℃になっている

 温度差を持たせた2つの気流を同時に送る三菱のエアコンは、左右の熱交換器の温度を変えているが、パナソニックは手前と奥の熱交換器の温度を変えている。

 それを可能にしたのが写真の特殊バルブ。これで熱交換器の手前と奥の冷媒(エアコンのガス)の圧力を変えることで、熱交換器に温度差を作るというものだ。う〜む、なかなか賢い!

水道の蛇口と同じ原理で左上のモーター回して、右から来る冷媒(ガス)を、中間にある穴にどれだけ流すかで温度差を作る。全開にすれば圧が同じになるので温度差はなく、絞って圧を低くすると効きを弱められる原理

 「でも送風口は1つしかないのでは?」と思う方も多いだろう。確かに数年前までのエアコンは、吹き出し口が1つのものが多かった。しかし最近のモデルは、上下に風を送るフラップが大型2枚化され、このフラップの幅を絞ることで、部屋の奥まで気流を届ける製品が主流になっている。ちょうどホースで水を撒くのと同じで、蛇口を開けなくても、ホースの先を絞ると水をより遠くまで飛ばせるというしくみだ。

上下の風向きを変えるフラップが3枚、左右に風を振るフラップが2つの隙間で独立しているので、こんな芸当ができる。赤とオレンジは熱交換器の温度の違い

 最新のEoriaは、3枚のフラップの隙間を使い手前からは温めの温風を、奥の隙間からは熱い温風を出すようになっている。普通のエアコンと違うのは、左右に風を振るフラップは手前と奥の隙間で独立しているという点。これで手前の温い温風は熱がりに向けて左へ、奥の熱風は寒がりに向けて右へと気流を分けている。既存のものにチョット手を加えて新技術を作るエンジニアのアイディアに脱帽だ。

超小型のサーモカメラを搭載。360度回転して部屋に居る人物から、背面の壁の温度まで測り状況を把握する
サーモカメラがとらえるイメージ。肌が露出している部分を見分け、その周りの温度との差を調べることで、当人が熱がっている(温度差が少ない:より赤)か、寒がっている(温度差が大きい:よりブルー)かを見分ける

 さらにこのエアコンには、簡易サーモグラフィー(温度検知カメラ)が搭載されており、部屋のどこに人がいるかも認識している。さらに一歩進んでいるのは、その人の周囲の温度と人の肌の表面温度を調べ、肌からの放熱量が多く「寒い」と感じているヒトと、放熱量が少ない「熱い」と感じているヒトも見分けて、送風をコントロールする。

 「熱がりと寒がりの共存」が今年から来年にかけてのテーマになりそうだ。

40℃の温水で一晩つけ置き洗いすると驚きの汚れオチ!

 三菱の洗濯機事業からの撤退、シャープへの海外資本の注入や、東芝の白物家電撤退など、日本の白物家電には逆風が吹いている。そんな中、まさに白物家電の代表「洗濯機」で切磋琢磨しているのが日立とパナソニックだ。

 なかでもハングリーなのがパナソニック。先ごろは、乾燥機能はそこそこながら、デザイン性を重視したCubleが大ヒット。とても洗濯機とは思えない、立方体のデザインに丸マドが家電量販店でもひときわ目立っている。

10月末発売予定の新しいCuble。40℃においスッキリコースを搭載した。後述するダニバスターコースは非搭載
Cubleの特徴は見た目のデザインと、タッチして光り始めるボタンが特徴的。デザイン家電のヒエラルキーも高い

 今回注目するのは、9月末に発売されたばかりの機能重視タイプの洗濯機(一般型:NA-VX型番)だ。10月末に発売の新Cubleにも搭載される機能で、最も目を引くのは、黄ばんでしまった衣類が、真っ白になるという「温水泡洗浄」。漂白剤でも取れないような皮脂の黄ばみやシミが真っ白になる。実際のブツを見れば、その白さに驚くだろう。

編集Nさんの服を試しに洗ってもらった。左半分が洗濯する前で、右側が40℃のつけ置きで洗ったもの。左は全体に黄ばんでアイボリーになっているが、右半分は白に見える。※背景ではなくピンクのチップで画像の色合わせを行なった
エリ部分の比較。左は洗濯前、右が40℃のつけ置きで洗ったもの

 その秘密は「黄ばみの元となる皮脂は、37℃で溶け出す」という原理と、夜中(0:00)につけ置き洗いをしておけば、翌朝(7:00)までドラム内の水を40℃にキープできるという洗濯機ならではの機能だ。時間とともにお湯の温度が冷えてしまう普通のつけ置き洗いでは太刀打ちできない。

一晩40℃でつけ置き洗いすることで、繊維の奥まで染み込んだ黄ばみの元、皮脂を溶かしだすことができる。通常のつけ置き洗いでは、皮脂が溶け出すこの温度帯を維持できず黄ばみが取れない

 そのぶん電気代はかかってしまうが、普段の洗濯を毎回つけ置き洗いするわけではなので、押し入れの奥から出てきたお気に入りの服をクリーニングしたと思えば安いものだろう。

パナソニック提供の写真。「ここまで汚れたら普通捨てるだろ(笑)!?」と突っ込みたくなるYシャツだが、ホントにこれと同じように白くなるのでビックリだ
常温や冷たい水では、布に付けた皮脂に相当する油脂は溶け出さない
40℃のお湯につけると、赤い油脂はどんどん溶け出してくる。6時間つけ置きしておけば、確かに黄ばみも取れるというもの

 また「洗ったのに何だかにおう」というタオルに困っているヒトには、ニオイスッキリコースというモードが追加された。これはつけ置きの温水ヒーターの機能+2倍の洗剤+2回の洗浄で、ニオイの元となる菌を徹底的に死滅させるというものだ。結果タオルに付着している菌をシャーレ(ペトリ皿)で培養すると、こんなに違いが出る。

「洗ったのに何か臭う」原因は、洗濯で落ちきらなかった菌が繁殖するため。左は一般的な洗濯機で洗ったタオルの菌を培養したもの。右はニオイスッキリコースで洗って培養したもの。ニオイスッキリコースは、ほとんどの菌が死滅したため洗濯後にも繁殖しない

 さらに近年、布団についたダニを吸い取る掃除機が流行っているが、シーツや布団カバーの洗濯でもダニ退治をするモードが搭載された。このモードを利用すると、まず乾燥機能で65℃の熱風を当ててダニを死滅させる。ダニは50℃以上の熱を20〜30分当てると死滅するというデータに基づいたひと手間だ。

生きているダニは、洗っても繊維に足を絡めて留まり、洗濯をしても多数が生き残っている
洗濯前に乾燥機機能で60℃の熱風をあてダニを死滅。そのあとで洗濯することで、ダニはほとんど残らない

 こうして死滅したダニは、洗濯することですべて洗い流せるという。アミ戸についた虫を剥がすのは一苦労。お風呂に侵入した虫にシャワーを当てても、スグ元気を取り戻す。でも殺虫剤で退治した虫なら、水を流せば排水口にハイさようなら! だ。

 これを分かりやすい実験映像で見せてくれるのが、次のムービーだ。パナソニック提供だが、当日会場で同様の実験を見せてもらえた。

ダニバスター洗浄比較実験

 なかなか店頭では見られない性能実験を、この目で確かめられる面白い実験を見せてもらった。

コレが見たかった! 上部配置コンプレッサのパナソニック冷蔵庫!

 パナソニックの冷蔵庫の特徴は、なんと言っても最上段に設けたコンプレッサ。おかげで野菜室や冷凍室が広々としている。

 さて冷蔵室の最上段は、カレーやジャム、チョコレートなど細々したものが奥に入ってしまい、かなり年代モノの食品が発掘されるときがある。一方、最下段にある野菜室(冷凍室)は、買い置き野菜に加えて冷蔵庫から追い出された飲みモノや余ってしまった焼きそば1個など、あらゆるものがカオス化して満杯。

一般的な冷蔵庫は、一番重いコンプレッサをなるべく下部に配置する。それは安定性を保つ常識だった
コンプレッサが下にあるので、一般的な冷蔵庫は野菜室や冷凍室は奥行きが短くなっている。

 パナソニックは、それまで冷蔵庫の常識だった10kg近くあるコンプレッサ(冷凍機)ユニットを、最下段から最上段に移設。これにより最上段で秘宝が眠るデッドスペースを小さくし、かつ野菜室を大きくした画期的なアイディアだ。

 が! 実際に店頭でそれを見てみようと思っても、最上段の奥なんてモノは脚立を持ってこなきゃ見られないので、なかなかそれを実感することはできなかった。多くの家電マニアのみなさんも、筆者と同じようにもどかしい思いをしたことだろう。

 しかし、この会場にすごいモノを発見! なんと内部のコンプレッサが見えるカットモデルが展示されていた! スゲェ! これ、めっちゃ見たかったヤツ♪

パナソニックの冷蔵庫は、常識破りのトップ配置のコンプレッサ。冷蔵庫が空のときは安定性が悪くなるが、下部の野菜室や冷凍室は重く水分が多いモノで埋まるので、十分にバランスが取れる
左右中央上部に配置されたコンプレッサ。しかも小さめにできている。冷気は重く下にたまるので、上部に配置したほうが冷機の流れも自然

 まあコンプレッサの位置は、カタログにイラストで描いてあるんだけど、やっぱりカットモデルの説得力は段違い。単純にコンプレッサを上に置いただけでなく、小さいコンプレッサを左右の中央に配置してるのだ!

最上段の置くは手が届きにくく、奥に入ってしまったものを取り出すのが大変。でもパナソニックの冷蔵庫は、奥のデットスペースにコンプレッサを搭載したので効率がいい
コンプレッサが上部にあるので、下部の野菜室は一般的な冷蔵庫に比べると奥行きがあり広々している。しかも引き出し式なので、奥の方の野菜へのアクセスも楽

 さらに驚かされるのは断熱材の薄さ。最近の冷蔵庫って、こんなに断熱材薄いのに高断熱なのだ。その素材が気になるのはもちろんだが、上部のコンプレッサから冷気をどう通して、温度管理しているのか? とさらに分解希望! と欲がでるモデルだ。

各社が凌ぎを削って開発している冷蔵室下部。ここはチルド室とよばれたり、メーカーによっては真空にしたりなんだりと、メーカー色が濃く出る部分。パナソニックは、半冷凍のパーシャル室になっている

 また各社が差別化を図るために日夜研究している、「チルド」だったり「真空」だったりする冷蔵室最下部。パナソニックのパーシャル室は、-1〜-3℃の完全に凍るちょい手前の微冷凍で保存する。冷蔵よりも冷たく、冷凍のように細胞を壊さないので肉や魚をより長期間保存できるとして定番だ。

 チルドは少し温度が高い0℃で保存。凍らないで、細胞がそのままで保存でき食感が変わらないという触れ込みだ。とはいえ各社切磋琢磨しているので、なかなか違いを見ることは難しいが、パナソニックはこんな比較実験をしていた。

パーシャル室で1週間保存した肉と魚2種類。肉は色に注目、魚はドリップと張りに注目
チルド室で1週間保存。肉は色が黒く、右の魚はドリップが多く出ている。左の魚はムナビレあたりの肉の張りが違う

 野菜室もここ数年で大きく機能が進化している。特に葉物野菜は適度な水分を持たせることで長持ちするようになっている。が、やはりこれも各メーカー切磋琢磨している野菜室なので、メーカーの違いを見出すのはなかなか難しいが、これも比較実験。

2009年製のパナソニック製品との比較。しわしわになちゃった野菜
新型冷蔵庫で1週間保存。お肌ツルツル、おいしそうな野菜たち
葉物野菜の違いも歴然。どっちがどっちをというまでもない

 土日で1週間分の食材をまとめ買いするという、現在のライフスタイルに合わせた冷蔵庫と言っていいだろう。まあ、ウチも毎週日曜日は、スーパーまで車運転させられますからね〜(笑)。

丸いパナソニックがとんがりパナソニックに!

 これまで何を作っても平均点。買って損はしないが、惚れ込むほどの機能はなかったパナソニックだが、ここ数年で大きく変貌を遂げている。それどころか、アチコチ尖りだして、そのさまはまさに「頭角を現す」といった感じだ。

 おそらくエンジニアひとりひとりがハングリーに、製品に関わるスタッフ全員がナショナルカンパニーではなく、世界のパナソニックとして、知恵と技術とアイディアを出し合って製品を開発しているのがよく分かる。

 それは製品にも顕著に現れており、「そうきたか!」「なるほど!」と唸らせる製品を全世界のすべてのヒトに届ける、波のようにジワジワと確実に、ときに大きく小さくなりながら製品を届けている。おそらく今のパナソニックは、いい波長が重なりあって、一躍進化している時代にある。

藤山 哲人