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“もしもの備え”どれくらい必要? 「備蓄ナビ」で簡単リスト化
2024年9月2日 12:32
先月8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことで、大規模地震の発生可能性が相対的に高まっているとして、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。その後も非常に強い台風がやって来たりと、この間に災害への備えを見直した人も多いのではないでしょうか。
一言で備えといっても、具体的に何をどれくらい用意すればいいのか、なかなかイメージしにくいかもしれません。そんなとき、家族構成などを入力するだけで、家庭に必要な備蓄品をリスト化してくれる「東京備蓄ナビ」というサイトが便利です。「東京」とついていますが、もちろん東京都以外に居住している人も利用できます。
今回はそんな東京備蓄ナビを使って、自宅の備蓄を見直してみました。あわせて、大きな地震が起こったときに身の回りがどのように変化するのか、東京都の資料をもとにご紹介します。
巨大地震でライフラインはどうなる?
南海トラフ地震は、マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に70~80%の確率で起こるといわれています。また、首都直下地震(マグニチュード7程度)についても、30年以内に70%程度の確率で発生すると予測されています。(「国土交通白書 2020」)。
こうした大きな地震が起きた際に、ライフラインが復旧するまでにどれくらいかかるのかを把握しておくことは、もしものときに対する心構えにつながるのではないでしょうか。今回は一例として、首都直下地震などが起きた場合の東京都の被害想定を、2022年5月25日に公表された東京都防災会議の資料からご紹介します。なお、想定条件はマグニチュード7.3、冬、18時、風速8m/秒とされています。
まずは電気について。発災直後に広範囲で停電が発生し、さらに広い地域で計画停電が実施される可能性があります。3日後から徐々に停電が減少し、1カ月後には多くの地域で供給が再開される見込みですが、発電所が停止した場合など電力供給量が不足していれば、3日後以降も計画停電が続くおそれがあるとのこと。
ガスは発災時に安全装置が作動し、供給が停止します。安全点検や復旧作業が終了しなければ、1週間程度経っても一部で利用できない状態が続きますが、1カ月後には復旧困難エリアを除く多くの地域で供給が再開する見込みとしています。
上水道は地震による断水後、1週間程度すると断水・濁水が段階的に解消されますが、浄水施設などが被災した場合は1カ月以上の長期に渡って断水が継続する可能性も。
下水道は発災時から利用が制限され、一部地域では1週間後も利用できない状況が続くといいます。1カ月後には多くの地域で利用制限が解消されますが、集合住宅では排水管などの修理が完了するまで、1カ月経ってもトイレが利用できない可能性があるそうです。
これらライフラインがストップすることに加え、交通規制や道路の寸断などにより、避難所にも物資が届きにくい状況となるほか、普段食料を購入しているスーパーやコンビニなども、通常通りとはいきません。
こうした大きな地震が起こったときの目安として、東京都総務局総合防災部防災管理課では、まずは3日分の備蓄品を揃えることを推奨。また上述した通り、必要なものがすぐに入手できるようになるとは限らないことなどから、1週間やその先も見据えた備蓄を呼びかけています。
必要な備蓄品をリスト化してくれる「備蓄ナビ」
3日分、できれば1週間分以上の備えが必要とのことですが、具体的に何をどれくらい用意すればいいのかわからない。そんな人向けに、家族構成や住宅環境について答えるだけで必要な備蓄を知れる「東京備蓄ナビ」というサイトが東京都防災管理課によって用意されています。
備蓄ナビでは、世帯人数、それぞれの性別と年齢、住まいの種類(戸建て/集合住宅)、ペットの有無について回答すると、必要な備蓄品リストを作成してくれます。
年齢を選択することで、乳幼児がいる場合は離乳食など、高齢者がいる場合は入れ歯洗浄剤など、各自に必要なものがリストに追加されるようになっています。
住まいの選択では、「戸建て」なら3日分、「マンションなど」なら7日分の備蓄量が表示されます。これは、マンションなどの集合住宅に住んでいる場合、エレベーターやライフラインの復旧に時間がかかる可能性があるため。戸建てに住んでいても7日分の備蓄量を知りたい人は、「マンションなど」を選択するといいそうです。
筆者の場合は成人男女2人暮らしでペットなし、マンションですがエレベーターを使わなくてもいい低層階に住んでいるので、戸建てを選択。3日分の備蓄品リストが表示されました。リストは印刷できるため、プリントして収納場所に貼っておくのもよさそうです。
リストはかなり細かく指定されていて、全部揃えるのは大変そうだなと感じましたが、備蓄ナビのFAQでは、「表示している品目・数量はあくまで一例です。はじめから全て購入するのではなく、それぞれのご家庭で必要なものを洗い出しながら、まずはできるところから始めましょう」と案内されています。
加えて、よく見ると「乾麺 即席麺」「アルミホイル」など、日常的に家にあるものも書かれています。そのため筆者宅では一度、現時点で家にある備蓄品を把握して必要なものを買い足しつつ、食品や消耗品は常にストックを多めに持っておき、それらをいざというときにも活用する形で運用しようと決めました。
また備蓄を見直す過程で、やはり3日分では心もとないと感じたため、再度7日分のリストも作成。といっても置き場所などの問題ですべては揃えられないため、まずは最も優先度の高い水と非常用トイレだけでも、7日分を確保できるようにしました。
最終的に筆者宅では、水12L、非常用トイレ50回分のほか、カセットガス、カップ麺、野菜ジュース、プロテインドリンクなどを買い足し。カップ麺やジュースなどは日常的に食べながらローリングストックしていくつもりです。
備蓄の優先順位は? 東京都に聞いてみた
備蓄ナビのリストを見て、一度にたくさんのものを揃えなきゃと負担に感じる人もいるかもしれません。そこで、無理なく備える方法や備蓄のポイントについて、東京都総務局総合防災部防災管理課に聞いてみました。
東京都では、普段から使用している食品・製品を多めに買い、使った分だけを買い足す「ローリングストック」による備蓄をおすすめしているそうです。「食べ慣れた・使い慣れた製品を、無理のない程度に多めに買う。防災用品をいちから揃え、その備蓄品を保管する場所を確保するのはなかなかハードルが高いが、ローリングストックであれば無理なく災害対策の備蓄を実施しやすい」としています。
リストを見ていると、水やレトルトご飯などのほか、「チーズ・プロテインバー等」「野菜ジュース」というように食品の種類が細かく指定されてるのが印象的でした。これらについては「たんぱく質や食物繊維などを補給する目的があります。また、日頃から慣れ親しんでいる食品があれば、避難生活で口にすることで気分転換にもつながります」とのこと。
備蓄品を揃える際に優先すべきものについては「人が生命を維持するのに必要な水や食料と排泄に関わるものです。特に後者は、なかなか意識しにくいため留意しましょう」とコメント。水や食料とあわせて、携帯トイレや簡易トイレを準備するよう呼びかけています。
なお、備蓄リストは東京都の気候条件を基に設定されているため、寒冷地などではリストの品に加えて、厳寒期用の寝袋・暖房器具などを揃えておくことが肝要としています。
備蓄品の置き場所については、ローリングストックの観点から、食品であれば、いつも使用する食品と一緒に収納するなど、普段から各品物を保管しているところが望ましいとのこと。普段と同じ場所なら、いざという時に「あれ? どこにあったかな?」と慌てることも少ないといいます。
また、置き場所として適さない場所についても聞いてみたところ、「備蓄品にもよりますが、高温多湿や直射日光があたるところは避けた方が無難です。多くの食品はもちろん、衛生用品についても、保管環境が悪ければ、いざという時に機能しないかもしれません」との回答。備蓄品を購入した際に、それぞれどのように保管するべきかを確認しながらストックするようすすめています。
備えを見直そう
実際に備蓄ナビで作ったリストを片手に自宅を見直しましたが、改めて確認すると足りないものや置き場所を変えたほうがよさそうなものなど、新たに気付くこともありました。
例えば、これまでは非常用トイレを玄関の物置に置いていましたが、地震が起きたときに周りのものが倒れてきたらスムーズに取り出せなそうだったため、置き場所を見直すことにもつながりました。
また、多少賞味期限が過ぎても食べられるからと、賞味期限切れの非常食をそのまま保管していましたが、実際に何年も賞味期限を過ぎていたら、いざというときに安心して食べられないなと感じ、普段からローリングストックすることの重要性も再確認。
災害が起こったときの被害を減らし、少しでも落ち着いて行動できるように、日頃から備えておくことはとても大切です。ぜひ、備蓄ナビで必要なものを把握することから始めてみてください。また、今回は備蓄品にフォーカスしましたが、家具の転倒防止なども忘れずに対策しておきましょう。