トピック

1万km走ったe-bikeドライブユニットの状態は? 特別に分解してもらい中身をチェック

清水氏愛用のe-bike、クロスバイクタイプ「E-POWER SHAPE PT500」の走行距離が10,000kmに達しました

インプレスe-bike部・清水氏の愛車ことcorratec(コラテック)「E-POWER SHAPE PT500」。2019年発売のe-bikeですが、その走りの良さは現在でも定評があります。

コラテック「E-POWER SHAPE PT500」はe-bikeとしては非常によく走る“快速系e-bike”です。率直に、速い!

発売時に車体を借りてレビューしましたが、試走してビックリ。それまで乗ったe-bikeのなかで抜きん出て速かったんです。軽快でスピードに乗りやすくて、「e-bikeでもこんなにスイスイ走る機種があるのか!」と感嘆しました。

E-POWER SHAPE PT500」の試走で、自宅からインプレスまで約40kmを走りました。ですが、体が疲れず、スイスイと楽しく走れたことを記憶しています。しかもインプレス到着時、バッテリーがほとんど減っておらず、それにも驚きました
ドライブユニットはボッシュ製「Active Line Plus(最大トルク50Nm)」を搭載しています

で、インプレスe-bike部・清水氏は、このe-bikeで10,000km走りました。10,000km!! 仕事でもさまざまなe-bikeに乗りながら。

それはまた、走りまくり。清水氏にとってこのe-bikeは、もはや彼の記憶の一部を形成している大きな存在に違いありません。

清水氏のe-bikeホームグラウンドは多摩川沿い。グラベル(砂利道)も走っちゃいます
奥多摩へ遠征に行ったりも
房総の泥道にチャレンジしたり
大雪の日に「なにごとも体験」として走ったはいいがコケてみたり
かと思えば横須賀まで海軍カレーを食べにe-bikeを走らせたり
そして何度か季節が巡り
あら7,000kmも走っちゃった!
でも走り足りずに乗鞍へヒルクライムしに行ったり
さらにヒルクライムレース(e-bike部門)に参加したりしていると
おっ、こいつぁ縁起がいいねぇ~、の7,777km走行達成
でもまだまだ走って猫に出会ったり
必殺アイテムで猫をナンパしてみたり
鬼太郎に会いに行ったりしていたら
キた! 9,999km!
そして10,000km走行達成

ところで清水さん、10,000kmも走ってe-bikeにガタが来てたりしません? 「いや定期的にメンテナンスしてますし、ドライブユニットも快調で、バッテリーも問題ありません」とのこと。

でもでも、ドライブユニットの内部とかは、どうなんでしょう? 「そうですね、10,000kmもアシストさせているから、かなり汚れているかもしれません」と。

そこで、実際、10,000kmも走行をアシストしてきたドライブユニットがどうなっているのか? ボッシュの人に無理やり頼んで「かなり使い込んだドライブユニットの中身」を見せてらもうことにしました。

10,000km走行したドライブユニット「Active Line Plus」をパカリと開くと……?

10,000km走ったe-bike、「E-POWER SHAPE PT500」を都内某所へ持ち込みました。そしてさっそく、ドライブユニットを自転車から外し、パカリと中身を見せてもらうことに。はてさて、使い込んだドライブユニットの中身はどうなっているんでしょう?

持ち込んだ「E-POWER SHAPE PT500」。テーブルの上に固定し、さぁドライブユニットの取り外しです!
ドライブユニットはボッシュ製Active Line Plus(最大トルク50Nm)
作業にあたってくださったのは、ボッシュ・ジャパン eBike マーケティング 豊田 佑一 氏。豊田氏は国内メーカーで電動アシスト自転車のドライブユニットを手がけた後にボッシュへ。さまざまなドライブユニットについてよく知るエンジニアでもあります。10,000km走行したドライブユニットを見て「結構キレイな状態ですねー」と
各種工具を使って作業を進めます
部品をどんどん取り外します。さすが手際がいい!
ドライブユニットの外観。結構汚れがたまっています
こちらはドライブユニットの樹脂製カバー。内側はかなり汚れています。カバーは配線などを保護するためのパーツです
ドライブユニットと車体をつなぐケーブル類。コネクター部分は問題ナシとのこと。泥道や雨や雪などの悪条件下でかなり走ったハズですが、コネクターは防塵・防水性が高いんですね
そしてドライブユニットが外れました。これがe-bikeのアシスト走行を支えるモーターです
続いてドライブユニットの金属製ハウジングカバーを外しにかかります。これを外すと「ドライブユニットの中身」が現れます
ネジをすべて外しました。続いて「スナップリング」と呼ばれるハウジングカバーの外れ止めの役割を果たしているC型の金具を外しますが……そのための工具がない! どうしましょう?
と思ったら、なんと豊田氏、マイナスドライバー1本でスナップリングを外してみせました。すっごーい! こんなゴツいスナップリングをマイナスドライバーでチャチャッと外すとは……さすがe-bikeエンジニア!
「それでは開きますね」との声に、周囲が一瞬静かになります

果たして、ガッツリと走り込んだドライブユニットの中身はどうなっているのか? どのくらい汚れているのか? どこかに不具合は発生しているのか?

ドライブユニット解体動画。記事では紹介していないリアルな部分や通算バッテリーの話なども確認できます

パカッとな! あら、これは、予想外に……!

ドライブユニットのハウジングカバーが外されました。そこにあったのは、予想外の……結果が待っておりました。

パカッと開かれたドライブユニット。ボッシュ製Active Line Plusですが、ギア類は白い樹脂製です
10,000km走行を支えてきたパーツ類なので「そこそこ汚れている」「かなり汚れている」と予想していましたが、「全然」と言っていいほど汚れていません
その反対側もキレイ。一同、目を凝らして汚れている部分を探し始めました
唯一汚れていたのが、金属製のベアリング部分。周囲が少し黒ずんでいます
そのベアリングに塗られていたグリスをすくうと、白いグリスに黒い汚れが付いていました
豊田氏曰く「Active Line Plusの主なギア類は樹脂製です。樹脂は摩耗して粉などが出にくいの素材なので、汚れも出にくいんです」とのこと

なるほど。Active Line Plusはそのトルクからギアが樹脂という仕様です。よりトルクフルなPerformance Line CX(最大トルク85Nm)は、ギア類に力がかかるためより高い耐久性が必要となり、ギア類は金属製。

豊田さんは「10,000km走ったPerformance Line CXとかだと、ギアの金属が削れる関係で、もう少し汚れていると思います。ただ、ドライブユニットは密閉性が非常に高いので、それ以外の汚れが付着することは考えにくいですね」と言います。確かにActive Line Plusでも外部からドライブユニット内に汚れが侵入したような様子は、どこをどう観察しても見当たりませんでした。

にしても、10,000kmの走行を支えてきても、ボッシュActive Line Plusの中身、全然汚れていないんですね。まだまだガンガン走れますね、清水氏!

最後に豊田氏は「今回は企画で特別にドライブユニットを分解しましたが、一般の方は真似しないようにお願いします。保証外となりますし、組み上げを誤るなどすると事故につながる可能性もありますので」とおっしゃいました。ですよね。分解はしない方向でゼヒ。

販売店で「e-bikeの健康診断」もできる、愛車の各種情報がわかる

分解したドライブユニットを再び組み上げてE-POWER SHAPE PT500に取り付けた後、「e-bikeの健康診断をしておきましょう」と豊田氏。ボッシュのe-bikeシステムには独自の「電動自転車診断レポート」アプリがあり、販売店が「e-bikeの状態を細かく見るため」に使っています。アプリをインストールしたPCとe-bikeをUSB接続し、e-bikeの各種状態示すデータを表示するというものです。

続いて、E-POWER SHAPE PT500とPCをUSB接続
PC側で「電動自転車診断レポート」アプリを起動します
接続中のe-bikeのディスプレイには「Diagnostic mode」と表示され、聴診器のアイコンが現れました。Diagnosticは「診断」の意味で、診断モードというわけですね
こんな雰囲気で、PC画面上にe-bikeの状態が表示されます

これで得られる情報は、走行データはもちろん、e-bikeの販売店や所有者、e-bikeとしてのユニークなプロダクトID、最大アシスト速度設定、各種(e-bike関連の)コンポーネンツなどなど。当該e-bikeに関するほぼすべての情報が得られます。

「電動自転車診断レポート」アプリで得られた情報の一部。e-bikeに関するすべてといっていい情報が得られます。詳細を見て「この部分が故障しているかもしれない」といった判断ができます
表示の一部を見た清水氏が「あれ? このバッテリー温度って?」と首を傾げました

表示を見て清水氏が首を傾げた理由は、最小バッテリー温度の項目が「2.21℃」となっていたことです。「寒いのは嫌いだし、バッテリー温度が2.21℃になるようなときに走った記憶もないし……」とのこと。でもすぐに思い出して「あっあの雪の日の走行かな。そうそう、大雪の日、なにごとも体験とか言って走ってコケたときかー」と。

いろいろ記録されていて興味深いですね、ボッシュe-bikeの「電動自転車診断レポート」。なお、このレポートはボッシュe-bikeオーナーなら誰でも見られます。販売店に持ち込めばe-bikeとPCを接続して見せてくれると思いますので、興味のある方はゼヒ。

といった感じで、10,000kmのアシスト走行を達成したボッシュActive Line Plus。ドライブユニットも問題なしの健康状態で、「電動自転車診断レポート」アプリで詳細を見てもとくに問題は見つかりませんでした。予想以上にタフなボッシュ製e-bikeシステム。次は20,000km走行時にまた分解&診断してみたい気がします。

スタパ齋藤