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パナソニックはなぜ充電池を「エネループ」に一本化するのか
2023年4月7日 07:05
パナソニックが4月25日より発売する充電池「エネループ(eneloop)」の新モデル。容量をアップしながら、繰り返し充電できる回数を維持したことが特徴だが、そのタイミングでもう一つの気になる情報も発表された。
それは、パナソニックがこれまで充電池のブランドとして「エネループ」と「充電式エボルタ」の2ブランドを展開していたのを、今回の発売に合わせて「エネループ」ブランドに1本化するということだ。
「エネループ」は2005年に当時の三洋電機が発売した充電池で、それまでの充電池のイメージとは一線を画すシンプルなデザインが一躍注目を集めた。繰り返し回数が多い、充電1回あたりの電気代が約1円、10年後でも残容量約70%保持を実現(スタンダードモデルのみ)、電池の外装は抗菌加工、出荷時の充電はクリーンエネルギーなど、環境面に配慮した独自の性能を備える。
パステルカラーを採用した「eneloop tones」や、ラメを施した「eneloop tones glitter」などデザインに注力したモデルも次々に発表。容量25%アップした「eneloop pro」、自然放電抑制と使用回数を高めた「eneloop plus」を展開するなど、機能面でも当時の先端を走っていた。
2011年に三洋電機がパナソニックの完全子会社化した際に、その去就が注目されたブランドのひとつだ。
パナソニックは、エネループブランドを残すことを選択、2013年からは「エネループ」と「充電式エボルタ」の2つの充電池ブランドを展開してきた。併売することにより、市場シェアの維持と拡大、さらに充電池のリーディングカンパニーとして市場規模を拡大していくという狙いがあった。
しかし、2ブランド体制から10年、今回エネループブランドへの統一に至った。
その経緯について、パナソニックエナジーのエナジーデバイス事業部 コンシューマーエナジービジネスユニットマーケティング部 二次電池商品企画課 主幹 黒田靖さんに話を聞いた。
「エネループ」に一本化することを選んだ理由は?
ブランドの統一化については、数年前から考えていたとのことだ。
「パナソニックではこの10年間、エネループと充電式エボルタという2つの充電池ブランドを持っていたが、繰り返し回数の多い『エネループ』と、1回の使用時間が長い『充電式エボルタ』で、用途や特徴の違いを打ち出してはいたものの、ユーザーにとっては違いが分かりにくく、どちらを選べばいいか迷うという声があった。2つのブランドを比較した時に、充電池としての認知度・浸透度はエネループの方が高いという判断になった」
背景には、充電池市場の縮小も挙げられるという。
「デジタルカメラやゲーム機のリモコンなど、かつての主戦場だった機器の多くは内蔵バッテリーに切り替えており、充電池を使うシーンがどんどん少なくなっている」
「充電池と乾電池の使用シーンを比較しても、大きな差がない。本体性能で訴求するというよりも、『繰り返し使えて環境に良い』というユーザーの価値観、ライフスタイルにマッチする製品として考えると乾電池ブランドとしても展開しているエボルタよりもエネループの方が合う」
エボルタは乾電池では高性能を打ち出しているのに、充電池では普及モデルとして販売していたため、ユーザーの混乱を招くという背景もあった。
「今後は、乾電池は『エボルタ』、充電池は『エネループ』をそれぞれメインモデルとして据える」
今回、発売する新モデルでこだわったポイントも聞いた。
「今回、約10年ぶりに容量アップに踏み切った。革新的な技術を使っているというよりも個々に積み上げた技術を最適化した結果」
「エネループで一番こだわっているのは、乾電池のように使えるというところ。充電しておけば10年後でも約70%の容量をキープできるという自己放電の性能を下げることなく、容量をあげるということにこだわった」
海外での展開については、既に欧州では一足早く約1年前から充電池ブランドの統一を進めており、現在はエネループのみ展開しているとのことだ。
「乾電池に比べて単価が高いということもあって、充電池の主戦場はECにシフトしている。環境面に配慮している製品ということをしっかり伝えるという狙いから、パッケージを樹脂から紙に変えていく取り組みも行なっている。まずはエネループの良さをしっかり伝えていきたい」