シャープの高濃度プラズマクラスターイオン、ペット臭にも効果

~動物病院で検証。伝染病の感染力低下も
シャープのプラズマクラスターイオン発生器「IG-B20」。1立方cmあたりのイオン濃度は25,000個

 シャープは、同社の除菌・脱臭技術「高濃度プラズマクラスターイオン」が、ペット臭の原因となるアンモニア臭と浮遊菌を低減し、またイヌ科の動物が感染する病気「イヌパルボウイルス」を抑制することを実証したと発表した。

 シャープのプラズマクラスターイオンは、専用の発生器をはじめ、空気清浄機や加湿器、エアコンなど、同社の家電製品に多く搭載されている除菌・脱臭技術。空気中にプラスとマイナスのイオンを放出し、ウイルスや菌の表面にある細胞膜に反応、細胞膜のタンパク質を破壊し、菌やウイルスの働きを抑制する効果があるという。

 同イオンはこれまでにも、新型インフルエンザウイルスなどさまざまなウイルスに対する抑制効果や、肌の水分を保つ“美肌効果”などが実証されてきた。今回は、ペットとして犬を飼う世帯数が、2009年で約950万件と多く、さらにそのほとんどが室内で飼育しているという調査結果から、ニオイの除去などペットに関連した効果が検証された。

 なお今回は、すべて1立方cm当たりのイオン濃度が25,000個の「高濃度プラズマクラスターイオン」での実証となる。

プラズマクラスターイオンの仕組み。まずは、機器からプラスとマイナスのイオンが放出されるこの2つのイオンが、細胞膜の表面で結合し、除菌力のある活性酸素「OHラジカル」が発生。細胞膜のタンパク質を破壊するタンパク質が破壊されることで、ウイルスの感染力が抑制されるという
ペットとして犬を飼育している世帯数は約950万。5世帯に1世帯が犬を飼っていることになるこれまでにもウイルスの抑制や“美肌効果”などが謳われてきたが、これにペットケアに関する効果が加わることになったペットのニオイが気になったオーナーは約9割。特にトイレのニオイが気になるという

動物病院のニオイと浮遊菌を抑制。高致死率の伝染病の感染力低下に効果

 今回実証されたのは、プラズマクラスターイオンの、動物病院におけるペット臭と浮遊菌に対する効果、およびイヌ科の動物が感染する病気「イヌパルボウイルス」の感染力に関する効果。イヌパルボウイルスは犬の伝染病として代表的な病気で、子犬が感染すると致死率が高く、かつ経口・飛沫感染するため、集団感染が広がる可能性もある。2008年には沖縄で流行し、10カ月で145件の発症例があったという。

 アンモニア臭と浮遊菌に関する検証は、鳥取県倉吉市の「倉吉動物医療センター・山根動物病院」にて、財団法人 鳥取県動物臨床医学研究所と共同で行なわれた。

 浮遊菌に関する検証内容は、試験室にビーグル犬を入れた2段のケージを置き、そのケージを挟むようにイオン発生機を設置、2~3日ごとにイオンあり/なしを切り換えるというもの。この結果、イオンありの場合は、なしの場合と比べて菌数が低減。浮遊菌数は“一般手術室レベル”とされる、NASA規格の「クラス10000」を達成したという。

動物病院における、浮遊菌の低減効果の試験環境。2つのケージにはビーグル犬が入っているこの結果、浮遊菌数を“一般手術室レベル”まで低減できたという

 アンモニア臭の検証では、浮遊菌の場合と同様のケージとイオン発生機を設置し、イオンなしからイオンありの状態に切り換えて、アンモニア濃度の変化を観察する。この結果、当初の濃度は2.25ppmだったのが、29日後には0.56ppm、37日後には0.34ppmに減少した。これは、臭気の強度を表わす「6段階臭気強度表示法」で表わした場合、臭気強度3の「楽に感知できるニオイ」から、強度2の「何のニオイであるかがわかる弱いニオイ」のレベル以下まで低減されたことを意味するという。

アンモニア濃度の低減に関する試験環境。こちらもビーグル犬を起用この結果、アンモニア濃度を「弱いニオイ」まで低減したという

 イヌパルボウイルスに対する検証は、株式会社食環境衛生研究所が実施。容積1立方mのボックス内に同ウイルスを噴霧し、5分間イオンを発生させた場合とない場合での感染力の差を比較する検証が行なわれた。この結果、イオンありの場合、なしの場合と比べて感染力が99.8%以上抑制されたという。

イヌパルボウイルスは、致死率の高いイヌ科の伝染病。感染しやすく、動物病院でも隔離して入院治療を行なうというイヌパルボウイルスの感染力低下の検証に使われた装置この結果、プラズマクラスターイオンを5分照射することで、感染力が99.8%以上抑制できたという


「ニオイ」と「院内感染」の両方がクリアできる

財団法人 鳥取県動物臨床医学研究所の山根義久理事長

 鳥取県動物臨床医学研究所の山根義久理事長は、動物病院には“ニオイ”と“院内感染”の解決が大きなテーマである点を指摘。

 「絶えず犬や猫などの動物が出入りし、また長期入院することもある。そのため、院内は悪臭が漂い、細菌の巣窟になってしまっている。また、院内感染を防ぐために、手術室や入院室では十分な清潔度が保たれる必要がある」

 そのうえで、今回の高濃度プラズマクラスターイオンの効果に「最初はどうかなという一抹の不安があったが、想像以上に良い結果が出た。(ニオイと院内感染という)両方ともクリアできるのは画期的な結果をもたらすのでは」と期待を見せた。

 また、イヌパルボウイルスに対する効果については「(同ウイルスに感染すると)致死率はものすごく高い。生まれて40日、50日くらいのワンちゃんが掛かりやすい病気で、我々も非常に難渋する。これが99.8%抑制できるということは画期的」と評価した。

 同研究所 の才田佑人研究員は、プラズマクラスターについて「動物と人が快適、安心に過ごせる環境作りのために、動物病院での空気ケアとして活躍が期待される」とコメント。また、アンモニアの脱臭効果について、効果が出るまでに時間が掛かるという質問も出たが、これについては「(検証に起用した)ビーグル犬は特にニオイを発する犬種で、また糞尿の影響もあり、抑制するのに時間が掛かった」と説明した。

 シャープの健康環境システム事業本部 プラズマクラスター機器事業部 ソリューション推進部の深田辰雄部長は、「動物病院やペットホテルなどでも(プラズマクラスターイオンの)導入は進んでいるが、今回の結果を受け、この効果を消費者の皆さんへ積極的にPRしていきたい」と、ペットオーナーへの訴求を強化していく意向を明らかにした。なお、他の家電メーカーによるイオン機能でも、アンモニア臭を低減する効果ものはあるが、深田氏は「動物病院という実環境で効果を確認できたのは、プラズマクラスターの大きな優位性」とした。なお、イヌパルボウイルスに対する効果については「調べている限りでは、(プラズマクラスターが)初めての研究結果となる」という。

財団法人 鳥取県動物臨床医学研究所の才田佑人研究員シャープ 健康環境システム事業本部 プラズマクラスター機器事業部 ソリューション推進部 深田辰雄部長
25,000個の高濃度プラズマクラスターイオンは、同イオン発生器に搭載されている。写真はリビングタイプのプラズマクラスターイオン発生器「IG-B200」空気清浄機に搭載されているイオン濃度は、1立方cm当たり7,000個のものが多い。写真は11月15日に発売する「KC-Z65」




(正藤 慶一)

2010年11月5日 18:01