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脚つき冷蔵庫ルークなぜ生まれた? デザインだけじゃないこだわり
2024年7月22日 15:15
家具調の脚を備えているのがユニークな、アクアの冷凍冷蔵庫「LOOC(ルーク) AQR-FD7P」。どのようなコンセプトで生まれたのか、9月発売の新モデルを一足先に体験し、開発担当者に話を聞いてきた。
同社が「家具冷蔵庫」と称している通り、一見するとサイドボードのような外観に、冷蔵室と冷凍室を備えた製品。ほぼどの家庭にあるメインの冷蔵庫とは異なり、キッチンだけでなくリビングや個室などにも調和しやすいデザインとサイズ感だ。定格内容積は72Lで、冷蔵室44L、冷凍室28L。右側が冷蔵室、左側が冷凍室という構成。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は77,000円。
特徴的なのは何といっても冷蔵庫では珍しい「脚つき」という点。下に約9cmのスペースを設け、床を見せることで空間を広く見せる効果があるほか、下にロボット掃除機が入れるなど実用性も考慮したものだ。
開発のプロジェクトリーダーを務めたアクア 商品本部 冷蔵庫企画グループ 杉本優輔マネージャーは、アクアのこれまでの冷蔵庫を振り返りながら「(薄型設計の)TZシリーズに代表される“家具のような冷蔵庫”が多かったのを今回、発想を逆転させた“家具を冷蔵庫にする”がコンセプト」と説明。製品名「LOOC」は、この“発想を逆転させた”ことから「COOL(冷たい)」の文字を逆にして名付けたという。
一般的に小型冷蔵庫はドアが1つで冷蔵か冷凍どちらか1つ、または切り換え式になっているのに対し、LOOCは冷蔵室を右、左に冷凍室を備える両開きの珍しい構成。小型ながら冷凍室もフォースターの性能を備え、低温を保たないと溶けやすいアイスクリームも保存できる仕様となっている。
LOOCのデザイナーであり発案者のハイアールアジア R&D プロダクト デザイナー 渡邊悠太さんは、開発のきっかけとして、かつてワンルームで一人暮らししていたころの思いがベースになっていることを説明。「寝る時に音がうるさかったり、周りの家具に比べて奥行きが出っ張って圧迫感があったり、ドアの向きが決まっていて設置場所が決められたりという不満を、特に毎日使うものなのでなんとかしたかった」と語る。
この問題に対し、インバーター制御のコンプレッサーにより静音と省エネを実現。約21dBの静かさとした。展示されていた会場は、人の話し声などのある環境下ではあったが、小型冷蔵庫でよくあるコンプレッサーの低音が気にならないレベルだった。
もう一つ、製品の特徴である奥行き45cmという薄さは、開発当初から決定していたもので、一般的な家具のサイズに合わせて設計。脚をつけて空間を広く見せることも、これまで前例がなかったが、下が掃除できる快適性なども含めて、当初から決めていたという。開発のスタート時は、引き出しとフレンチドアを合わせた3ドアのアイディアもあったが、収納性や使いやすさなどを考慮して、最終的に2ドアの形に落ち着いた。
さらに、細かなところでは棚板も樹脂製ではなくガラスを使用することで、耐荷重を高めつつ少しでも薄く仕上げ、内部もスッキリ見えるようにするなど多くの部分にこだわりを持っている。
前出の杉本優輔マネージャーは「一人暮らしにも冷蔵と冷凍の両方あれば、メインの冷蔵庫として対応しますし、セカンド冷蔵庫にも、冷蔵冷凍両方あればより(用途を)広げられる」として、来客用や、ペットの食品といった様々な使い方を想定。個人向けだけでなくホテルやオフィスの冷蔵庫として設置することも新しい需要として期待しているという。
インテリアスタイリストの窪川勝哉さんは、ヒンジの見えない仕上げやロゴを目立たない位置に配している点などを「家具に近い作り」として挙げた。また、壁に寄せて設置できるように電源コードを後方ではなく側面の方向へ出す形状にしたことなども高く評価している。
用途として窪川さんは、メインの使い方に加えバーカウンターやドリンクカウンター、ベッドのサイドテーブルなどのほか、913mmという高さを活かして、鏡と組み合わせたドレッサーとしての使い方も提案。こうした様々な使用イメージがカタログの写真などにも採用されている。
冷蔵庫を含む家電のロングライフ化が進んで買い替えのサイクルが長くなっている中、LOOCは単に冷蔵庫の置き換えというよりは、引っ越しを伴うライフステージの変化などによって「これをこの部屋に置きたい」と思わせるような特別な存在を目指した製品といえる。デザインが目を引くだけでなく、小型ながら冷凍性能や静音性にこだわるなど、価格だけで選ぶのとは異なる、家電の一つの新しい形となりそうだ。