老師オグチの家電カンフー

2022年は家電に美脚ブームが来る?

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
北欧デザインの空気清浄機、Blueair「DustMagnet(ダストマグネット)」。天面がフラットでスマホなどが置けるサイドテーブルとしても使える

2022年の家電トレンド、デザインで来るのは「脚付き」じゃないでしょうか。脚を目立たせた家電製品が増える気がします。

その理由は、家電もインテリアの一部だから。確信したのは、ブルーエアの新製品です。部屋の目立つ場所に置く必要がある空気清浄機は、デザイン性が重視されますが、「Blueair DustMagnet」は脚が付くことで北欧家具に寄せてきました。天面がテーブルとして使えるので、もはや家具と言っていいかもしれません。

なぜ脚が付くと家具に見えるのか。それは家具には脚が付いているからです(進次郎構文)。家電が登場から100数十年しか経っていないのに対して、家具の歴史は数千年。椅子などは古代エジプト文明からあります。多種多様なデザインが試されては洗練され、インテリアに溶け込んできました。

見た目がまんまソファーのマッサージチェア、アテックス「ルルド エアソファ AX-KIL7000」。脚の存在が大きい
Hutech Industry「restool(レスツール) スツールフットマッサージャー」。家具のようなデザインで、ヒーター付きオットマンとしても使える

アンティークの椅子の脚がカーブしていたり、先がライオンの手になっていたりすることからもわかるように、4本の脚は生き物をイメージさせます。美脚は人間だけのものではないのです。家電も脚があることで、かわいらしさや美しさ、安心感を与えることができる。ソファーやテレビ台でも、脚があるのとないのがありますが、あったほうがオシャレな印象ですからね。

思い返せば、テレビもブラウン管時代は脚があって家具調でした。液晶、有機ELになって“ついたて”みたいになりましたけど、脚の部分は各社美しく見せようと努力されています。まだまだ無機質ではありますけど。

テレビも昔は長い脚が付いていた(写真はドウシシャの20V型ハイビジョン液晶テレビ ヴィンテージシリーズ)
脚が目立つことでレトロ感を高めたラドンナ「Toffy 電子レンジ」

なんにせよ、テレビや空気清浄機のように、目立つ場所に置かれる家電で脚を意識しない手はありません。さらに、先ほどの空気清浄機では、脚を付けることで底面に吸い込み口を設けられる機能面での意味もあります。床面に置く製品なら、ロボット掃除機との相性も考えたいところです。

とはいえ、足を付けるデザインは容易にマネしやすい。これも、美脚家電がトレンドになりそうな理由です。

背面が曲面で、机の上に置いて使うと回転してしまうという例のスマホも、4本の脚を付ければ、無問題ではなかろうか
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>