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期待のアラジン初コーヒーメーカーを、ひと足先に味わってきた。他と何が違うの?

「アラジン コーヒーブリュワー ACO-D01A」のグリーン。このほかにブラックモデルも用意する。写真のデザインは最終ではなく、製品版では細かな凹凸のシボが入り、グラファイトトースターとも共通した仕上げの外観になる予定

日本エー・アイ・シーは、アラジンブランドのコーヒーメーカー「アラジン コーヒーブリュワー ACO-D01A」の予約を、応援購入のMakuakeにおいて12月23日から受付開始した。一般販売予定価格は33,000円だが、Makuakeでは12月26日時点で15%オフの28,050円から購入できる。応援購入者に届くのは2023年3月末の予定。

「グラファイトトースター」や「ブルーフレームヒーター」などで知られ、“魔法のランプ”のロゴでもおなじみのアラジンにとって初となる、ドリップ式のコーヒーメーカー。“トーストに合う理想の一杯”を追求したという。

レトロなデザインと素早く焼ける機能の両方が特徴的なアラジンの「グラファイトトースター」

大きな特徴は、コーヒーの旨味をそのままに、雑味を除去するという「バイパスドリップ」方式を採用したこと。細部までこだわった抽出プログラムと温度管理でおいしいコーヒーを淹れられるとしている。

本体カラーはグリーンとブラックの2色

以前に掲載した記事でも反響が大きかったこの「アラジン コーヒーブリュワー」を、購入者のもとへ届くひと足先に体験。なぜアラジンがコーヒーメーカーを作ったのか、そして通常の淹れ方と味はどう違うのかなど、気になる点を製品の企画担当者に確かめてきた。

質問に答えてくれたのは、アラジンブランド製品を手掛ける千石の企画本部 商品戦略課 高橋弘真課長と、同課の片山幸二さんだ。

千石の企画本部 商品戦略課 高橋弘真課長(右)、同課の片山幸二さん(左)

なぜ最後に差し湯するの?

各社がコーヒーメーカーで目指す方向はそれぞれあるが、アラジン コーヒーブリュワーのコンセプトは「おいしいトーストに合うコーヒー」。象徴的なグリーンのどこかレトロなデザインが目を引く「グラファイトトースター」でおなじみのアラジンならではの方向性といえる。

実際にトースターなどのユーザーからも「アラジンからコーヒーメーカーを出してほしい」という要望は多かったことも、製品化につながった。この「アラジン コーヒーブリュワー」もトースターと同様に「デザインだけでなく、味で勝負する」とのことで、期待も高まる。

最も特徴的なのは冒頭にも触れた「バイパスドリップ」方式。簡単にいうと、コーヒーを淹れる過程で、最後にコーヒー粉を通さない“差し湯”を行なうものだ。

コーヒーに差し湯すること自体は、ハンドドリップでも一部で使われている方法で、この加減をコーヒーメーカーが自動で最適に行なってくれる形だという。

アラジンによれば、コーヒーをドリップする時間のなかで、旨味成分は前半にピークがある一方で、後半にかけては雑味成分が抽出されるという。雑味とは「イガイガするえぐみ」「舌に残る渋み」「冷めた後の嫌な後味」などを指す。

旨味成分のピークは抽出の前半だという。後半には雑味成分が

そこで、アラジンのコーヒーブリュワーでは潔く抽出の後半の部分をカットして、代わりに普通の湯を加えて最終的な一杯に仕上げるとしている。

前半の抽出中
後半は差し湯に変わる。ノズルが異なり、湯の勢いもしっかりあるため適度に混ざるという

バルミューダとの違いは?

差し湯を行なうドリップ式コーヒーメーカーといえば、2021年に登場したバルミューダのコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」を思い出す人もいるだろう。こちらも「バイパス注湯」という技術で雑味成分を抑えてクリアな後味を実現したところを特徴としている。

細かな部分を除いて、基本的な考え方は似ているようだが、違いの一つは、アラジンの場合「濃く淹れる場合も差し湯を行なう」点。

BALMUDA The Brewは、濃厚なSTRONGモードでは差し湯しない方法をとっているが、アラジンは、4つあるモードのうち「クリア」(軽やかな酸味とすっきりした味わい)、「マイルド」(雑味を抑えたバランスの良いまろやかな味わい)、「ストロング」(ほどよい苦味と深みのある味わい)のいずれも差し湯を行なう。そこに、雑味を徹底して防いで「トーストのおいしさを引き立てる」アラジンのこだわりが込められている。

なお例外として、「デミタス」モードは、贅沢な濃い味わいを楽しむモードで、差し湯を行なわず、量も他モードの約半分になる。こちらはアイスコーヒーやカフェオレなどのアレンジにおすすめとのことだ。

また、多くの量を一度に作るのではなく「ドリッパーの粉を1杯ずつ交換する」のもこのモデルの特徴。抽出量はレギュラーカップサイズの約130mlと、マグカップサイズの約250mlの2種類。付属の計量スプーンですり切り1杯を入れて、1カップ分ごとに粉を入れ替える。保温もあえて搭載せず、“一杯ずつ淹れたて”にこだわった仕様といえる。

ドリッパーは金属製で着脱式。付属するペーパーフィルターも小さめサイズ

なお、朝にまとめて2人分作りたい時などのために、Makuakeでは陶器製のサーバーが付属したセットも用意。このサーバーにマグカップサイズで淹れると、レギュラーカップの2人分を一度に作れる。

最近はコンビニで買えるコーヒーもおいしくなり、多少の待ち時間があっても一杯ずつ淹れたてを味わえることが定着しつつある。こうした「ちょっとの手間を含めた贅沢な一杯」を、家庭で手軽に味わえることを目指したわけだ。

水タンクは容量1L
アラジンのロゴが入ったサーバーや豆を挽くミルがセットになったものもMakuakeで購入できる

北海道の老舗コーヒー店と協力。発売延期するほどこだわった部分

各メーカーから、簡単においしく作れるコーヒーメーカーが登場する中で、今でも「やっぱりハンドドリップが一番」と考える人は根強く残っている。差し湯をするにしても、おいしく淹れるためには、単純に「濃く淹れて、あとでのばす」のとは違う、細かなノウハウが必要になってくる。

アラジンとしては今回が初のコーヒーメーカーになることから、そうした技術をコーヒーメーカーで実現するために、外部とのコラボレーションを行なった。その協力相手が、差し湯式コーヒーの老舗である、北海道の喫茶店「珈琲きゃろっと」だ。

北海道恵庭市にある差し湯式コーヒーの老舗「珈琲きゃろっと」が協力

「珈琲きゃろっと」には国際珈琲鑑定士の資格を持つ焙煎士さんがいて、好みの焙煎を実現するために、自身で焙煎機を設計して作ってしまうほどこだわりを持つ人だという。こうしたモノづくりへの考え方は、アラジンとも波長が合い、「こだわりの一杯」を追求する今回のコラボが実現した。

この焙煎士さんは、昔ながらの職人気質というよりは、データを元にした理論的な考えを持っているとのこと。

実は初期の試作モデルをアラジンがこの焙煎士さんに見せたところ、評価はかなり厳しかった。それでも、人の感覚だけに頼るのではなくデータや理論に基づいて細かな調整を重ねたことで、「珈琲きゃろっと」が長年かけて培った技術やノウハウが、アラジンのコーヒーブリュワーに活かされたわけだ。

このコーヒーブリュワーにおける、もう一つのこだわりが「温度管理」。湯の温度によっても雑味成分の出方は異なるため、アツアツの熱湯ではなく87℃前後のピンポイントを狙って抽出。飲むときに香りや味がちょうどよくなるようにできあがるとしている。

また、ドリップで大事な「蒸らし」の時間もしっかり確保。最初の滴下の後、60秒間の蒸らしを行ない、おいしい成分だけを効率よく抽出するという。抽出時間は、レギュラーカップが約4分、マグカップが約4分30秒。

ところで、これまでニュース記事でも紹介した通り、このコーヒーブリュワーは一度、発売延期を発表していた。その延期を案内する記事も多く読まれたことから、期待している人も多かったことがわかる。

アラジンに聞くと、先ほど触れた「珈琲きゃろっと」の技術やこだわりを余さず投入するための試行錯誤にも時間を要したとのことだが、もう一つ課題となっていたのは、温度管理の部分だった。季節など環境の変化で温度が変わった際も同じ味を保つために苦労したとのことだ。

一般的に、湯の温度が低いと抽出しにくく(薄く)なるが、試作段階で、その濃さが夏と冬の気温下で差が出てしまっていたという。

これを解決するためにこれまでの構造を大きく見直し、最初の予熱の段階でプレスチームを入れる工程を追加。ハンドドリップでもコーヒー器具を湯などで温めるのと同様に、スチームで一度ドリッパー内のコーヒー粉を温めて、温度が下がるのを防ぎ、その後の蒸らしと抽出の工程へ進むようにした。これにより、周囲の気温などが変わっても一定した味を保てるという。

予熱にプレスチームの工程を入れている

アラジンならではのデザインとアナログな操作も魅力。クリアな味わいも実感

アラジンといえば、最初に触れた通りデザイン性の高さも注目ポイント。今回見たものは開発中で、実際の仕上げは表面に凹凸のシボが入るなど、グラファイトトースターとも共通する外観になる予定とのこと。

レトロさを感じるグリーンのカラーのほか、丸みのあるシンメトリーなフォルム、そしてダイヤルを回すアナログ的な操作が、アラジンらしさと、誰にでも使いやすい親しみやすさを形にしている。同社は「アラジンが魔法をかけたコーヒーが、玉手箱のようなボディからカップにゆっくり注がれるようなデザイン」と表現している。

ダイヤルを回してモードを選び、2種類の量から選んで「スタート」を押す。間違えようがないシンプルな操作だ

本体サイズは約155×254×414mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約3.1kg。トースターの横など、キッチンにも置きやすい形状に仕上げている。

気になる味もさっそく試してきた。まずは比較のため、コーヒーに差し湯をせず、蒸らしの工程も入れない“低価格なコーヒーメーカー”によくある淹れ方で飲んでみた。

これはこれでコーヒー粉の個性は出ているものの、のどを通った後にも舌の周りにじわっとする渋みが残る。コーヒーの淹れ方は多様なため、もちろんこれも一つの味わいといえるが、こういう後味は苦手な人もいそうだ。

次に、コーヒーブリュワーで差し湯などの工程が入った形で標準的なモードの「マイルド」を選んで飲んでみた。飲む前の香りは強く漂うものの、舌に触れた瞬間から感じ方が大きく違って、苦みや酸味などの味はしっかり感じられつつ、いい香りを口の中に残してスッと喉を通っていく。薄いのではなく、コーヒーの“おいしいとこ取り”をしたようだ。

取材時点の試作機で淹れたコーヒーを試飲してみた

ここで、先ほどの一杯を少し冷めた状態で飲んでみると、さらに違いが極端に感じられた。熱い状態のときよりも、口に残るぞわっとした渋みのような部分が強く残る感覚だ。差し湯入りのものは、ぬるくなってもそうした感覚はほとんどなかった。

在宅勤務や外出を控えたことで、家でコーヒーを飲む機会が増えた人も多いと思う。パンをトースターで焼いて、その間にコーヒーブリュワーで「トーストのための一杯」を贅沢に淹れる楽しみ方は、新しい朝のルーティーンとしてもよさそうだ。

お気に入りのコーヒーを存分に味わいたい人は、その豆のおいしい部分だけを贅沢に味わえる意味でコーヒーブリュワーをおすすめできるし、高価な品種を買うよりも日常的にコーヒーをたくさん楽しみたい人も、毎日飲みやすくて良い香りで一日をスタートできる。コーヒーメーカーの新しい選択肢として注目の一台といえそうだ。