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街路灯の老朽化と、電気工事業界の高齢化問題も救う「QQポール」の設置工事を見てきた
2019年12月6日 12:00
パナソニック ライフソリューションズ社は、公園や集合住宅などさまざまな場所に設置されている既設の街路灯とポールを、約4時間で交換できる「QQポール」を2019年5月に発売。11月末までに200本以上の設置を実現している。
街路灯などに用いられている水銀ランプの製造・販売・輸入が、2020年末には禁止されることに先立ち、同社は報道陣向けに街路灯リニューアル啓発セミナーを実施。
国内の建築市場は住宅新築市場が右肩下がりの状況であるものの、住宅リフォーム市場はほぼ横ばい。また、非住宅新築市場もほぼ横ばいの状況が今後も続くと見られるものの、非住宅のリニューアル分野は、バブル期に建設された建物の更新などで今後さらに伸びていくと予測されている。
国内の照明市場はストック数(総設置台数)が約17億2,900万台あると言われている。そのうちLED化されているのは全体の約34%程度で、LED化されていない既存光源の器具は約11億3,700万台も残っているとのことだ。
2015年に交付された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」やその施行令・省令・告示によって、2020年末に水銀灯の製造・輸出入が禁止されるため、街路灯などの屋外照明で多く利用されている水銀灯を使えなくなる。
パナソニック ライフソリューションズ社 ライティング事業部 ライティング機器ビジネスユニット 屋外エンジニアリング商品部 営業企画課の古本 実照課長は、「当社は2020年6月に水銀ランプの生産を終了しますが、水銀ランプがなくなることで街路灯のLED化に大きくつながると考えています」とコメント。
同社の調べによると、公園や工場施設内、広場、駐車場などに設置されている街路灯は国内で約185万台ほどあるとのこと。これらが今後LED化されていくものと見られるが、一方で電気工事事業者の高齢化問題もあるという。
「電気工事業界にも少子高齢化の波が押し寄せており、工事業者の有資格者が今後減っていくと言われています。また、現在の業者の年代構成は50歳以上が60%を占めている状況です。そこでメーカーとしては時間短縮、短工期、省施工で設置できる商品を出すことで課題解決に結びつけていきたいと考えています」(古本氏)。
QQポールの特徴について古本氏は、基礎工事なしで簡単に施工できる点にあると話す。
「街路灯は公園や建物の周り、駐車場などに設置されており、照明器具とポールがセットになっているものです。街路灯は器具だけでなくポールごと交換するのをお勧めしていますが、交換には非常に手間がかかるため、なかなか進んでいないのが現状です。それを簡単にリニューアルできるようにしたのがQQポールです」(古本氏)。
街路灯のポールには使用期限のようなものはないが、長年使うと使用環境によっては腐食したり、金属疲労などで根元が腐ったり、最悪のケースではさびから穴が開いて強度が持たなくなり、倒れてしまうこともあるという。
照明器具工業会の調査によると、設置から16年~20年ほどで60%ほどが劣化が進行した状況になると言われている。21年以上経過すると、40%以上が危険な状況になるとのことだ。
「年に2~3件くらいは街路灯のポールの根元が腐って倒れてしまうような事故が生じているため、これを放っておくと非常に危険です。こうした課題を何とか解決したいと考えたのがQQポールです」(古本氏)
基礎工事なしで既存の基礎に設置
QQポールの大きな特徴は、既存の街路灯の基礎を生かして設置できる点にある。
一般的に街路灯を交換する場合、基礎工事からし直す必要がある。基礎工事をする場合、コンクリートが固まるまで2日ほどかかるため、作業完了まで最低でも2日はかかってしまう。
一方、QQポールは既存の街路灯のポールを根元で切り、基礎を生かしたままポールだけ交換するため、作業完了まで約4時間ほどで済むという。
「立っているポールを根元で切り、一回り細いQQポールを挿してからモルタルで固めて完成します。だいたい4時間程度ですが、慣れると2時間くらいで作業が終わりますので、省施工で簡単に交換できるのが大きな特徴です」(古本氏)。
対応する街路灯は埋込式鋼管ポールで、ベース式やテーパーポール、アルミポール、架空配線式には対応しないとのこと。
また、既存の基礎を利用するため、基礎の強度が確保できているなど10項目を確認した上で設置が可能になる。
「基礎を入れ替えないため、既存の基礎の強度が確保できていることを確認する必要があります。ひびが入っていないことを目視で確認し、揺らしてグラグラしないかなども確認します。あまりにも古いポールは今回リニューアルの対象にはしていません」(古本氏)。
元々サビが付いているポールの場合は基礎ごと交換ということだったが、今後は対象を拡大するという。
「さびているポールについては設置しても強度が確保できることを検証しました。ただし穴が開いているようなポールはさらに検証が必要になりますので、今のところ対象外になっています。10項目を点検し、すべてOKなポールをリニューアル対象にしています。
コスト面では定価レベルでは高くなりますが、基礎の撤去費用などが不要になるので総工費は安くなり、工期もだいぶ短くなるため人件費の削減にもつながります」(古本氏)
また、パナソニック ライフソリューションズ社では、QQポールを購入すると灯具を1台無償で提供するキャンペーンを7月から先着100台限定で行なっている。
わずかな時間で設置が可能
セミナーの後には、さいたま市にあるパナソニック与野社宅で、QQポール設置工事が実際に行なわれた。
QQポールが従来のポールと大きく異なる点として2つのポイントが挙げられる。
1つは切り取った従来のポールにはめ込むための「スペーサー金具」で、もう1つは垂直出しを簡単に行うためにポールと一体化された「垂直調整治具」だ。
「QQポールは地面から250mm埋めますが、その下にスペーサー金具を取り付けます。太い(従来の)パイプの中に細いQQポールを入れ、すき間をモルタルでふさぐのですが、そのモルタルを下で受け止めるのがスペーサー金具です」(古本氏)。
垂直調整治具はポールを立てる際に垂直出しをしやすくするための治具だ。「これが付いてることで簡単にリニューアルできます」(古本氏)。
実際のやり方を順を追って見てみよう。