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フィリップス、眠りの質を高めてくれる「SmartSleep」ヘッドバンド

 フィリップス・ジャパンは、睡眠領域の新たなソリューションとして、睡眠の質を高めるためのウェアラブルヘッドバンド「SmartSleep ディープスリープヘッドバンド」の発表会を開催。同製品の開発経緯や、同社がスリープテックの市場に注力する理由などが語られた。

 「SmartSleep ディープスリープヘッドバンド(以下、SmartSleep)」は、11月26日発売で、価格は42,380円(税抜)。ビックカメラ、ヨドバシカメラ各店舗および、Amazonや楽天などのECサイトで販売される。

フィリップス・ジャパンの睡眠用ウェアラブルヘッドバンド「SmartSleep ディープスリープヘッドバンド」

睡眠不足による日本の経済損失は15兆円

 発表会に登壇したフィリップス・ジャパン 代表取締役社長・堤 浩幸氏は、「フィリップスは、カセットテープやソニーとの共同開発を行なったCDなどを世に送り出しており、イノベーションの歴史がある」と説明。現在ではヘルスケアに100%注力しているが、「新しいモノを作る、世の中のために価値創造を行なう」ことは今でも変わっていないとし、ヘルスケア事業の売り上げはいずれの分野でも「60%以上」と業界のリーダーシップポジションにあるとアピールした。

フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤浩幸氏
現在のフィリップスは、ヘルスケア事業で世界トップの位置にある

 堤氏はフィリップス・ジャパンがスリープテック事業をスタートする理由として、「日本人の睡眠時間は短く、特に40歳台の平均睡眠時間は6時間未満の割合が最多で、睡眠での休養が十分にとれていない」という背景があり、さらに「睡眠不足による日本の経済損失は15兆円、GDP比2.92%と大きい」としている。

日本人の睡眠不足による経済的損失は15兆円にものぼる
働き盛りの睡眠時間が平均6時間未満の短いのが問題点

 フィリップスが睡眠に関する研究をスタートしたのは、約30年も前。すでに「睡眠時無呼吸」の領域ではグローバルリーディングカンパニーの位置にあるという。そのなかでSmartSleepは、さらにコンシューマーに向け、睡眠領域の新しいチャレンジとして提供されるデバイスだという。

フィリップスは30年前から睡眠領域の研究開発を行なっている
SmartSleepはコンシューマー向けの睡眠領域事業のファーストステップとなる

睡眠の質を高める「SmartSleep」

 SmartSleepは睡眠の質をチェックするだけでなく、睡眠の質を高める機能が搭載されている点がポイント。ヘッドバンドには額に当る部分と、耳の後ろに貼り付けて使用する脳波センサーを装備。このセンサーで、「レム睡眠」「浅い睡眠」「深い睡眠」の3段階で睡眠の質を判定する。

 さらに深い睡眠に入ると、耳元のスピーカーから深い睡眠が持続できるようにオーディオトーンを出力。オーディオトーンの音量やタイミングは、睡眠状態に合わせて自動で調整される。ちなみに測定した睡眠の質は、スマートフォンの専用アプリで確認可能だ。

頭に装着して使用する
耳の後ろに脳波センサーをセットする
耳の後ろの脳波センサーは交換式で、3回まで使用可能

 2つのセンサーのうち、耳に装着するセンサーは交換式になっており消耗品。ひとつの交換用センサーで3回(3晩)まで利用可能。製品には30個の交換用センサーが同梱されている。またヘッドバンドは睡眠中に装着しても不快感がないよう、柔らかい布地が使われているが、本体の清掃は水洗いではなく、ウェットタイプのシートを使用して行なう。

本体の素材は柔らかい布
ベルトの長さを調整することで男女どちらでも利用可能
背面の額に当る部分にもうひとつの脳波センサーがある

 フィリップス・ジャパンのスリープ&レスピラトリーケア事業部 事業部長で、SmartSleepを担当する安部 美佐子氏は、「販売前のテストでは、2週間使い続けたユーザーのうち70%が日中の疲労感の軽減を実感している」と説明。使い続けることで、より正確なデータが測定できるだけでなく、実際に睡眠の質も改善されているようだ。

フィリップス・ジャパン スリープ&レスピラトリーケア事業部 事業部長 安部美佐子氏
SmartSleepの概要
専用アプリで睡眠の質がデータとして可視化できる

 本体重量は約110g、対応頭囲は51~60cm、消費電力は7W。リチウムイオン電池を内蔵する充電式を採用する。使用ごとに充電が必要としており、充電所要時間は2~3時間。交換用センサーサイズは、43×19×2mm(幅×奥行き×高さ)で、30個入りが2,980円で販売される。

一括返済ができない「睡眠負債」

 発表会ではゲストとして早稲田大学 リサーチイノベーションセンター研究戦略部門 教授・枝川 義邦教授も登壇。枝川教授は睡眠に関する研究を行なっており、「睡眠負債」について解説を行なった。

早稲田大学 リサーチイノベーションセンター研究戦略部門 教授・枝川 義邦氏

 枝川氏は「日本人の平均睡眠時間はOECD加盟国のなかで群を抜いて短い。しかも年々、平均6時間未満の睡眠時間の人が増加している」とデータを提示。さらに「睡眠不足は認知能力への影響が大きい。6時間睡眠というと十分なように感じるかもしれないが、6時間睡眠を続けていると、1週間ほどで1日徹夜したのと同じ程度の注意力に低下してしまう」とのこと。つまり6時間睡眠を続けることで、慢性的な寝不足状態となり、これが「睡眠負債」というわけだ。

日本人はOECD加盟国のなかでダントツに睡眠時間が短い
毎日の睡眠時間と注意力に関する調査結果
潜在的な睡眠不足が「睡眠負債」の状態だ

 さらに枝川氏は「睡眠負債は借金と違って一括返済ができない。睡眠負債の返済は、コツコツと計画的にすべし」と警告。「睡眠負債を防ぐためには、睡眠時間だけではなく睡眠の質も含め、睡眠の効果を面積で考えることが重要」とし、SmartSleepを睡眠の効果を高めるのに効果的なアイテムとして期待していると話した。

寝貯めなどは効果がなく、睡眠負債は一括返済できない
睡眠時間だけでなく、睡眠の質を高めることで睡眠効果を高める

トークセッションにはメジャーリーガーの前田 健太氏も登壇

 また発表会ではトークセッションとして堤社長と枝川教授に加え、メジャーリーガーの前田 健太氏とクリエイティブコンサルタント市川 渚氏も登壇。前田氏は「試合のあと、特に試合に勝ったときはアドレナリンで眠れないことも。また先発投手は登板間隔が開くので、その間の睡眠はコンディション維持のために重要」とプロスポーツ選手として睡眠の重要性を語っていた。

ゲストとして登壇したメジャーリーガー 前田健太氏
同じくゲストのクリエイティブコンサルタント 市川渚氏

 また市川氏は「スリープテックに興味があり、いろいろデバイスを試していて、深い睡眠を取ることが重要だというのは把握していました。SmartSleepを1週間ほど使ってみたのですが、明らかに深い睡眠の時間が伸びています。友人知人も睡眠が短くて、だるいや眠たいという話をよく聞くので、みんなに進めたい」と実際に効果があったことを話していた。