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花王がパナソニックとタッグ、極薄膜のヴェールを使った新しいスキンケア

 花王は、同社のプレステージブランド「est(エスト)」から、新たなスキンケアを提案する「バイオミメシス ヴェール」を12月4日に発売する。本体となる「ディフューザー」、美容液「エフェクター(40g)」、化粧液「ポーション(9ml)」で構成される。価格は順に、50,000円、12,000円(リフィル:11,500円)、8,000円。いずれも税抜。

2019年12月4日から販売開始するバイオミメシス ヴェールシリーズ。欧州を中心に日本でも展開をスタートした「SENSAI」ブランド、日本やアジアで展開する「est」ブランドで販売する
ヴェールディフューザーの操作部
ヴェールディフューザーの吹き出し口

 バイオミメシス ヴェールは機器を用いて極細繊維を直接肌に吐出し、肌上に積層型の極薄膜をつくる技術「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」を応用した第1弾製品となる。

機器を用いて極細繊維を直接肌に吐出し、肌上に積層型の極薄膜をつくる技術「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」

 夜のスキンケアの最後、肌に「ヴェールエフェクター」(美容液)をなじませ、次に「ヴェールディフューザー」(高性能小型機器)に「ヴェールポーション」(化粧液)をセットし、肌に吹き付ける。

 ヴェールディフューザーから作り出された極細の繊維を手で押さえて肌になじませると、透明になって肌と一体化したようになる。これによって寝ている間も長時間密着し、一晩中美容液を肌に浸透させたまま湿潤環境を整えてくれるという。

ヴェールエフェクター(美容液)を付けて肌になじませる
ヴェールディフューザーで極細の繊維を吹き付けていく
吹き付けた直後は白っぽいが、手でなじませていくと透明になって密着する
極薄の膜は手で簡単にはがせるのも大きな特徴だ

 花王 代表取締役 社長執行役員の澤田 道隆氏はFine Fiber Technologyについて「軽くて柔らかく、自然な積層型の薄い膜を肌表面に作る技術で、5つの特徴があります」と語った。

 「1つめは肌と膜の段差が極めて少なく、非常にフラットに見えてはがれにくいこと。2つめは肌に自然になじんで、皮膚の上に付くと凹凸が見えにくくなること。3つめは、関節などの折り曲げたりするところに貼り付けても浮いてくることなく、動きに追随すること。4つめは1本の糸が空間を作りながら積層するため毛細管現象が働きやすく、ベタベタしないこと。5つめはフィルムを貼っているのではなく繊維と繊維のあいだにすき間があるため、非常に通気性がよいことが挙げられます」

花王 代表取締役 社長執行役員の澤田 道隆氏
Fine Fiber Technologyの5つの特徴

シミを隠すメイクからボディケア、アートへの展開を想定

 澤田社長はFine Fiber Technologyの応用と、今後の展望について話した。

 「スキンケアからスタートしましたが、並行してシミを隠すようなメイク、ボディケア、アートなどへの展開も考えられます。また、最終的には治療や医療への応用も目指したいです。非常に可能性の高いテクノロジーなので、女性の笑顔をサポートしたいですし、悩みや苦しみを持った方を少しでもテクノロジーでプラスにしたいと考えております」

 続いて花王 執行役員 化粧品事業分野担当 カネボウ化粧品 代表取締役 社長執行役員の村上 由泰氏は「Fine Fiber Technologyから生み出される異次元の肌をFuture Skinと名付けました。技術の応用はまさに無限です。いくつかの研究が進んでいて事業化の準備も着々と進めていますが、その中で肌への高い効果が確認できたということでスキンケアへの事業展開を始めます」とコメント。

花王 執行役員 化粧品事業分野担当 カネボウ化粧品 代表取締役 社長執行役員の村上 由泰氏

 バイオミメシス ヴェールは「エフェクターを塗り込む」、「ヴェールディフューザーで極薄膜を貼り付ける」という2ステップでスキンケアができる。「エフェクターは90回、3カ月使えて12,000円(税抜)、ディフューザーはなくなったら入れ替えて使います」(村上氏)という。

 2ステップでスキンケアを行なうことにした背景には「湿潤療法」があった。「(ケガなどをした際に)乾かして治すという昔のやり方ではなく、水で洗って湿った状態で治すという『湿潤療法』にヒントを得て研究を進めました」(村上氏)

 ディフューザーは絆創膏のようなもので、その前に使うエフェクターを組み合わせることで適切な水分状態を朝まで維持できるようになるという。

 「化粧水や乳液の手入れに加えてフェイスマスクがはやっています。付けるとその効果を実感できると思いますが、朝までパックをしたままでいるのは不可能です。しかし我々の技術で作ったヴェールは、非常に柔らかくて付けた感じがしないので、違和感なく朝まで過ごせます。一晩中スキンケアした状態を維持することで、朝起きると肌の状態が全く変わるというのが最大の特徴です」(村上氏)

「湿潤環境ケア」の実現には湿潤療法がヒントになったという

ディフューザーの製品化にはパナソニックが協力

 発表会ではバイオミメシス ヴェール ディフューザーの製品化に協力したパナソニック 常務執行役員 アプライアンス社 社長の品田 正弘氏も登壇した。

 「2015年の秋に話をいただきました。マーケティングでは花王さんとコラボがありましたが、化粧品分野では初めてのチャレンジです。これまで約4年の間に大変多くの試作を繰り返し、モニター調査を繰り返してようやく製品化できました。花王さんと一緒になって、お客様に新たな価値を提供できる機器ができたと思います」(品田社長)

パナソニック 常務執行役員 アプライアンス社 社長の品田 正弘氏

 ディフューザーの小型化に当たって最も苦労したのは「小型化と使いやすさの両立でした」と品田社長は語る。

 「いかに小型化するかと、極めて微量な美容液をどうやって均一に安定して吹き出すか。ディフューザーの中に美容液を入れるのですが、化粧品の容量に伴って商品サイズが大きくなるので、内部の部品配置を徹底的に検討しました。手に持って使うため、表面にすべり止めの凹凸を付けたり、アースの位置も変えたりして何度も試作を繰り返しました。女性でも片手でグリップして、毎日楽しく使っていただけるようにする点に苦労しました」(品田社長)

開発当初のFine Fiber試作機はかなり大型のものだった

 1μm以下の微細な繊維を安定的に出すために、「吹き出し口に搭載するギアポンプの開発に相当力を入れました」(品田社長)という。

 「極めて微量な美容液を均一に吹き出すためには、小型かつ高精度なギアポンプが求められます。シェーバーに使っている外刃も非常に精密な金型を日本で作っているのですが、その金型技術を使って精度の高いギアを作り出しました。ミクロンレベルの精度を出すために何度も試行錯誤しました」(品田社長)

極めて微量な美容液を均一に吹き出すため新たに開発したという小型ギアポンプを持つ品田社長

 バイオミメシス ヴェールは日本やアジアに展開する「est」ブランドと、欧州で展開する「SENSAI」ブランドで投入していく。

 estブランドでは、2019年12月に銀座直営店と主要百貨店6店舗で販売をスタートし、2020年には約100店舗へ展開するとのことだ。2020年1月には中国越境ECで販売を開始し、その後順次アジアへ展開していく。

 SENSAIは国内主要百貨店3店舗でestと同じ12月にスタート。2020年2月には欧州の旗艦店でスタートし、順次欧州に拡大展開していくとのことだ。

 「パリのボン・マルシェ、ロンドンのハロッズで展開します。すでに商談をスタートしていますが、非常に驚いていただき、想定以上の受け入れがあります。日本の最新の皮膚科学がSENSAIに導入されるということで期待されている状況です。estはアジアと日本、SENSAIは欧州で展開していますが、プレステージの展開ができていない北米エリアも今回の技術によって広げられるのではないかと、日々スタディしているところです」(村上氏)

 村上氏は、美容市場で約100億円規模にしたいと語る。澤田社長は「スキンケアからメイク、ボディアートなどコスメの部分だけでなく治療までいくと考えれば、将来的には1,000億円のプレゼンスのあるブランドになるのではないでしょうか」と語った。