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シャープ、2018年度決算発表会 ~今後は最先端技術を核にグローバルブランドを強化

 シャープは2019年5月9日、2018年度(2019年3月期)の決算説明会を開催した。米中貿易摩擦や大手顧客の需要変動などが強まったことで厳しい市場環境となったが、「環境変化に先んじて、第2四半期以降『量から質へ』の転換を進めてきた効果もあり、業績予想からは下振れしたものの、前年度を上回る最終利益と最終利益率を確保できました」とシャープ 代表取締役 兼 副社長執行役員の野村 勝明氏は2018年度を振り返った。

2018年度の連結業績概要概要

 「四半期ベースでは2016年度第3四半期以降、10四半期連続で最終黒字を継続しています。このほか、A種種類株式の一部取得・消却するなど資本の質的向上にも取り組みました。また、普通株式への配当については1株当たり10円増配の20円としています」(野村副社長)

 2018年度第4四半期の売上高は6,285億円となり、営業利益は158億円、経常利益が69億円となった。

 「非常に厳しい市場環境だったものの、量から質へと転換したことで10四半期連続の最終黒字を確保しました」(野村副社長)

シャープ 代表取締役 兼 副社長執行役員の野村 勝明氏
2018年度第4四半期の業績概要。10四半期連続の最終黒字となった

 2018年度は前年度を上回る最終利益と最終利益率を確保したものの、鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下となってから初めて減収となった。この要因について野村副社長は次のように語った。

 「米中貿易摩擦に加えて、欧州と中国経済の減速が大きな要因です。また、大手顧客の需要変動の影響から、特にIoTエレクトロデバイス、Advanced Display System(以下、ADS)のODMビジネスを中心に市場環境が想定以上に厳しさを増したのも大きな要因となりました。私どもが想定した売り上げには届かなかったものの、スマートホームやスマートビジネスソリューションについては収益性を確保できたのではないかと思います」。

事業セグメント別売上高

 「商品部門は厳しい市場環境にあっても堅調でした。スマートホームは順調に伸長し、スマートビジネスソリューションも底堅く推移しました」と野村副社長は語る。

 「一方、米中貿易摩擦などによるデバイスの顧客需要変動、量から質への転換に向け中国でのテレビの販売抑制を行なったことから、IoTエレクトロデバイスとADSが全体を押し下げました」(野村副社長)

 営業利益について、セグメント別では「IoTエレクトロデバイスは売上高が大手顧客向けのカメラモジュールやセンサーモジュールが想定以上に厳しく、売り上げ減によって利益も悪化しました」と野村副社長は続ける。

事業セグメント別営業利益

 「ADSも、液晶テレビ事業は第1四半期から第3四半期まで黒字でしたが、第4四半期だけで見ると赤字となりました。これは特に中国・欧州でのテレビ販売の下振れによる営業利益の低下が要因です。スマートホームやスマートビジネスソリューションについては、売り上げとしては想定にわずかに及びませんでしたが、収益性はある程度確保できています」(野村副社長)

 2019年度について野村副社長は、「米中貿易摩擦や顧客需要変動の影響など、当面は厳しい事業環境が継続し、特に第1四半期は厳しいものになると考えています」と語る。

2019年度通期の連結業績予想

 「相応の影響は受けると思われますが、"8K+5G エコシステム"とAIoTの最先端技術で特長商品・サービスを創出するとともに、グローバルブランドの強化を図り、通期では売上高・各利益とも2018年度を上回る予想としています」(野村副社長)

 2018年度には米中貿易摩擦などの影響もあり、「事業拡大より収益力強化を優先するという判断の下で量から質への転換を図ったことから、2018年度は前年度を上回る最終利益を確保できた」(野村副社長)ものの、2019年度は改めて販売強化にも取り組み、収益力強化と事業拡大の両立を図っていくとのことだ。

 「2018年度は収益力強化を進めてきましたが、2019年度はさらなるコストダウンに取り組むとともに、事業を展開する空間を広げ、収益力強化と事業拡大の両立を図っていきます。事業別では商品事業は引き続き順調に成長し、デバイス事業は業界との合作により実力を向上させ、第2四半期以降伸長すると見込んでいます。2018年度に続き資本の質的向上にも取り組んでいきます」(野村副社長)

 2019年度の業績予想は売上高が10.4%増の2兆6,500億円、営業利益は18.8%増の1,000億円、経常利益は37.7%増の950億円、親会社株式に帰属する当期純利益は7.8%増の800億円と見込んでいる。

 2019年度以降にシャープが目指す方向性として、野村副社長は次のように語る。

2019年度以降にシャープが目指す方向性

 「我々は、ディスプレイ技術、通信技術、クラウド・IoT技術、センシング技術など独自の最先端技術を保有しています。こうした技術を核に新規事業を創出し、スマートホームやスマートオフィス、エンタテインメント、インダストリーといったさまざまな事業分野でイノベーションを実現していきます。スマートホームではAIoT対応機器やサービスの拡大、5G、スマートサービスの拡大などを図ります。エンタテインメントでは8Kテレビの販売強化やコンテンツの拡大、小型8Kビデオカメラの商品化などに取り組んでいきます」(野村副社長)

各事業分野におけるシャープの取り組み

 さらに「グローバルブランド企業『SHARP』の確立も加速していきます」と野村副社長は続ける。

 「商品事業では中国で量から質への転換を加速するとともに、白物家電事業を本格展開し、米州でブランドビジネスの本格展開を図るなど各地域でのニーズと当社の強みを考慮した効果的な取り組みを進めていきます。デバイス事業ではIGZOなど長年培ってきた技術を活用し、中型パネルへのシフト、有機ELパネルの外販推進などに取り組んでいきます」(野村副社長)

 米州でのブランドビジネスの本格展開について野村副社長は次のように補足する。

 「特に米州では(テレビ事業など)黒物をやっていきたいと考えています。白物についても当然販売を伸ばしたいですし、(PC事業の)Dynabook(ダイナブック)もあります。シャープにとって(米州市場は)今まで空白市場だったからこそ、そこのところを広げていきたいと考えています」

グローバルブランド企業としての『SHARP』の確立も加速していく