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増収増益へと転じたパナソニック、2018年度に仕掛ける次の一手とは?

 パナソニックは、2018年5月30日、アナリストを対象にした「Panasonic IR Day 2018」を開催。各カンパニー社長による2017年度の総括や2018年度の事業方針、中長期的な戦略について説明した。ここではアプライアンス社、エコソリューションズ社の発表内容を紹介する。

 冒頭に挨拶したパナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田 博和氏は、「2017年度は増収増益にはなったが、ようやく反転したに過ぎない」とし、「2018年度は中期経営計画の最終年度であり、持続的な成長を実現する上で、重要な1年と位置づけている。当期純利益2,500億円の必達に向けて全社一丸となって取り組んでいく」などと述べた。

2017年度、アプライアンス社は増収・増益

 家電事業を担当するアプラインス社の事業方針については、同社の本間 哲朗社長が説明した。

パナソニック アプライアンス社の本間 哲朗社長(パナソニック 専務執行役員)

 本間社長は、2017年度の取り組みを総括し、アプライアンス社の売上高が前年比3.7%増の2兆7,964億円、営業利益が7.9%増の1,076億円、営業利益率が3.8%になったことを示しながら、「中国のエアコン、欧州のAVC(AV機器およびカメラ)が好調であり、アジアを除く海外全地域の家電事業が牽引して増収となった。また、アジアの不振や原材料高騰の影響を、合理化やプレミアム化、中国や欧州の成長によってカバーして、3年連続の増益となった。プレミアム家電の構成比は各国で上昇しており、日本では48%、中国では42%、アジアでは46%に達している。家電の限界利益率も、原材料高騰の影響を除いて、2015年度比で0.7ポイント改善した」と述べた。

 続けて、「資本収益性(ROIC)が、大半の事業で向上。しかも、ほとんどの事業で10%以上を達成し、2018年度もそれが続くことになる。中国の家電事業においては、収益性が高いオンライン販売額が2015年度と比較して、40%増以上の成長を遂げ、営業利益は2倍以上になるなど、大幅な増収増益を達成している。さらに、収益面で課題があった欧州の家電事業については、ハイエンドミラーレスが大幅な増収を達成。メジャーアプライアンスの撤退もあり、増益になっている」と話すなど、好調ぶりを示した。

 国内における家電のシェアは27.5%となり、トップシェアを維持。「当社のシェア拡大は、敵失かどうかはわからないが、当社は日本に残った最後の総合家電メーカーであり、様々な要因でシェアが上がっていると分析している。2020年までは、消費税導入前の駆け込み需要や東京オリンピック開催に伴う需要拡大が想定されるが、2021年以降は厳しくなるのは明らかだ。日本における家電のシェアが上昇することを前提に計画を立てると、甘い計画になる。日本でのシェア拡大の見通しや事業計画については抑えめにしている」とした。

 だが、その一方で自ら課題も指摘。「原材料価格高騰の影響をカバーするコストの合理化や、海外家電事業の収益性を向上させるオペレーション改革、市場拡大が見込まれる海外エアコン、白物家電の持続的成長への取り組みにおいて、さらなる改革が必要であると感じている」と述べた。

 さらに、地域適格商品の創出が重要であることを示し、「AP中国に続いて、新たにAP欧州を設立。主要地域において、製販一体での高収益製品の販売を加速。地域特性に応じた商品提案力を強化している。中国ではポルシェデザインの洗濯機を発売、インドでも現地生産モデルを投入するなど、地域特性にあわせた商品提案力を強化し、従来からの取り組みを市場に問うことができた。また、2018年3月には、新家電ビジョンを発表し、これまでのハード(モノ)の強みを基礎に、コトの強化を発信した。従来の家電の枠を超えた新たなサービスの創出により、ハードに新たな付加価値を加え、一層のプレミアム化を実現する一方、オープンイノベーションによって、『コト』に関するアイデアの出口拡大に挑む」などとした。

プレミアム家電とアジア商圏での増販に期待

 また本間社長は、2018年度の事業方針として売上高で2兆9,500億円、営業利益で1,210億円の目標を掲げ、3年連続の増収、4年連続の増益を目指すことを改めて強調。「エアコンや白物家電の販売増加を主な牽引役とし、原材料価格の高騰の影響はあるものの、プレミアム化による日本での家電事業の増販効果に加えて、アジア、中国、インドでの増販、合理化により、収益向上を図る」と基本方針を述べた。

 日本では、2019年度まで、エアコン、白物家電、AVCが堅調に推移するものの、2020年以降はAVCの需要縮小を予測。その一方で、海外では、中国、アジア、インドを中心に、エアコン、白物家電が大きく成長するとみており、「この領域が当社の成長ドライバーになる」と位置づける。

 その上で、本間社長は、「2018年度は、家電総本山として、持続的に増収、増益を実現するべく、中期戦略で掲げた『立地』と『構え(戦い方)』の変革を加速することになる」と発言。

 『立地』としては、「AVCからエアコン、スモール・ビルトインへのリソースシフトを加速するとともに、日本を基盤に成長性が高い中国、アジア、インドに注力し、収益を伴った事業成長を実現する」と述べ、また『構え』については、「グローバルプラットフォーム開発でプレミアム化を推進し、地域に適したプレミアム商品を効率よく開発。アジアにおける経営、組織能力を強化し、海外の製販連結経営体制を完遂させ、地域ごとに適した経営形態を構築する」とした。

 さらに、食品流通やデバイスによるBtoB事業については、「脱炭素社会に貢献する省エネ、環境対応商品と、IoT技術を強みに、顧客と長期に渡り、継続的に取引できる収益モデルを確立する」と語った。

 同社では、非連続の事業成長も視野に入れながら重点投資を行なう「高成長事業」、安定投資を行なう「安定成長事業」、投資を見極める「収益改善事業」に分類して事業を推進しているが、高成長事業にはエアコンとスモール・ビルトインの2つの事業を分類。安定成長事業には、従来からのメジャー、デバイスに加えて、これまで高成長事業だった食品流通を含めた。また、収益改善事業には、引き続きAVC事業を位置づけている。

 本間社長は、「食品流通は、2016年にハスマンを買収するなど積極的な投資を行なってきたが、今後はこれを刈り取るフェーズに入ってくることから、安定成長事業に位置づけた。成長率の高い地域であるアジア、中国、インド、収益性が高い事業であるエアコン、スモール・ビルトインに集中し、2021年度には海外営業利益率5%を目指す。AVCは規模を追わずに収益性の改善を優先する」とし、「安定成長と収益改善事業の投資を抑制し、高成長事業への積極投資を促進。投資効率を高め、事業成長とキャッシュ創出貢献を両立する」と述べた。

各事業、新たな価値創出に向けて動き出す

 エアコン事業に関しては、ルームエアコンにおいて、アジア、中国で市場全体を上回る成長を目指すとし、アジアでは70人以上増員した専任営業部隊を通じて、空調専門ルートを開拓。さらに、中国市場では、2017年度には、前年比48%増という大幅な成長を実現した実績を示しながら、ナノイー搭載の「健康空調」を軸に、引き続き、高中級機へのシフトを進めるという。

 「中国市場において、前年比約1.5倍という成長になったのは、ナノイーを搭載し空気清浄機能を持った中高級機に絞る施策により、認知度が高まってきたことにある。今後は、東北地域では、日本の寒冷地仕様のような製品を、南地域では除湿機能を搭載した製品など、中国の各地域ごとに最適化した製品を投入していく」(本間社長)

 また、大型空調では、販路およびエンジニアリングの強化に向けて、ブラジルのユニオンRHACと、英国のAMPの2社を買収したほか、省エネ性能を向上させたminiVRFなど、高い技術力を持った製品の投入によって、収益改善にも取り組んでいることを示した。そのほか、エコソリューションズ社との連携により、空調・空質製品を共同展開。統一コンセプトでの訴求を開始したことも紹介した。

 スモール・ビルトインに関しては、「日本ではシェアNo.1の商品が多く、営業利益率も2桁の商品が多い領域であり、海外投資のための収益基盤になっている。だが、内弁慶のところがあり、日本以外ではあまりうまくできていなかった」と前置きし、「ここにきて、ようやく中国における美容商品のプレゼンスが飛躍的に改善し、中国の美容商品は2桁の営業利益率を確保できるようになってきた。200ドルのドライヤーが年間60万台も売れるようになった。中国市場は国民所得の上昇とともに、可処分所得を耐久消費材に使いたいという層が拡大するとみている。今後も成長市場を確実に取り込むべく旗艦ショールームの展開などを通じて、タッチポイントを増やしたい。また中国では今後、ビルトイン事業を本格的に立ち上げたい」と述べた。

 調理家電では、「Experience Freshをコンセプトに、欧州統一デザインでラインアップ。自社およびODMを併用により、スピーディーに開発して、販売拡大を図る」と語った。

 メジャーアプライアンスでは、着実な成長により、営業利益率5%超の定着化を目指すほか、モジュールの組み合わせにより、全世界で統一した思想で設計する「グローバルプラットフォーム開発」の展開を進め、さらなる収益改善と、国ごとのプレミアム化を推進するという。すでに、冷蔵庫と洗濯機において、グローバルプラットフォーム開発を進めていることに言及した。

 「市場にあわせて、変えることができるモジュールは地域最適設計を実現する。また、共通した価値や機能は共通の最適設計とすることで、コストダウンや開発の効率化が実現できる」(本間社長)

 さらに、アジア、中国向けには、日本では投入していない十字ドア型の超大型冷蔵庫やドラム式洗濯機などのプレミアム商品の積極展開を進めていることも示した。

 AVCでは、ハイエンドミラーレスカメラに注力するとともに、テレビ事業の改革を推進。「強固な収益体質の構築に再挑戦する」と宣言した。

 ハイエンドミラーレスでは、新機種の投入によって、2017年度の売上高が3倍弱に増加。イメージングネットワーク事業部の営業利益率は5%を突破した。継続的な収益が期待できる交換レンズの売上げも大幅に成長。2018年度はレンズとボディの販売台数比率を160%にまで引き上げるとした。

 テレビ事業では、利益率が高い4Kテレビや大画面テレビへのシフトで限界利益率を高めて収益体質を改善。共通プラットフォームの活用、液晶モジュールの内製化などにも取り組むという。また、チェコのテレビ生産拠点で、ヒートポンプ温水暖房機の生産を開始。「AVCの専門工場の多角化で、固定費の削減につなげるといった取り組みも、収益性の改善につながると期待している」と話す。

 食品流通では、2017年度にハスマンによる新規顧客開拓が進み、増収増益に転換。2018年度もスマートロッカーなどのIoTを活用した製品を投入し、施工サービスでの収益確保も見込む。日本では、スーバーなどを対象にしたOPEXビジネスの拡大に取り組んでいるほか、自然冷媒機器の普及に向けたラインアップ拡大と補助金の活用により、ユーザーの拡大を目指す。中国では急増している低温物流や、コンビニエンスストアの拡大に着目。さらに、台頭するeコマースや無人店舗などのニューリテール需要の獲得に挑むという。

 また、地域別戦略では、日本においては、高水準の家電シェアを維持することと、安定した収益基盤を維持。100周年記念商品については、第3弾を準備中であることを明らかにしたほか、会員数が1,000万人を突破したClub Panasonicでは、サービスの充実やデータ活用を進めているという。さらに、くらしサービスや新規商品を体験できる新業態の実験店舗をFujisawa SST内に開店したことも紹介した。

 「1,000万人を超える会員を持つClub Panasonicは、当社にとって大きな財産である。今後、アライアンスなどを通じてサービスを拡充したいと考えているが、家庭の奥さんに嫌われるようなことはやらない。会員からの問い合わせの電話はつながりやすいといった見えにくいところから強化している。今年度はもう少しいろいろなことをやりたい」(本間社長)

パナソニックが神奈川県藤沢市で推進しているスマートタウンプロジェクト「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」に、複合施設Wellness SQUAR (ウェルネススクエア)をオープン

アプライアンス社の海外における動向と今後の取り組み

 中国では、2020年に売上高で200億元、営業利益率5%を目指し、外資系白物家電ブランドNo.1を獲得する計画を掲げており、中国市場向けのプレミアムブランド「新貴」を立ち上げ、健康・余裕・品格といったパナソニックならではの価値を提供しているほか、アリババや京東といったオンライン販売を強化。また、IoTを活用した住空間提案の場として、「憧憬屋(あこがれハウス)」を2018年秋に中国・杭州にオープンし、訴求力を強化。「すでに中国では、独自のプレミアム商品をすばやく提供できる体制を整えており、日本の本部に過度に依存することなく展開したシンボルとしての取り組みを行なっている」と自己評価した。

 また、AP中国では、中国人トップを登用。「中国の急激な変化を捉えるという意味では、日本人にはわからないところがある。中国向け製品ラインアップはラグジュアリー化が進んでいる。中国にはすでに1,000人の社員がおり、それを生かして、多くのイノベーションが生まれている。日本でもIoT対応の高級ドラム洗濯機を発売したが、ネット接続率は3分の1に届かず、残念な結果になっている。だが、中国では新しいものがサッと届く環境がある。IoT家電を通じてマネタイズしていく取り組みは、まずは中国で進めていくことになる」などと語った。

 アジア、インド、欧州については、「アジアでは、多くの商品のシェアが向上しているが、冷夏の影響でエアコンの需給が悪化。2017年度には課題が残った。2018年度はプレミアム化を推進するとともに、需給の変化に対応できる製販連結管理の強化と着実な合理化、効率化を進め、高収益化への転換を目指す。またインドでは、冷蔵庫工場が新たに稼働。エアコン、テレビ、洗濯機とあわせた4大家電製品で、『Make in India』が実現した。欧州では、ミラーレス、ビューティ、エアコン、キッチンという収益性が高い4つの重点事業を拡大すべく、専門販路の強化を進めている」と語った。

 パナソニック アプライアンス社全体では、2020年度の目標として、売上高3兆円、営業利益率5%を目指す方針を掲げ、「高い収益が見込めるエアコン、スモール・ビルトインと、安定的に収益を刈り取ることができる食品流通を柱に、メリハリのある投資によって、利益を積み上げる。2018年度は大きな投資は考えていない。また、トップラインにはこだわらない」とした。

 なお、アプライアンス社の本社機能を東京に移転する可能性については、「約5年前に、滋賀県草津にアプライアンス社の本社機能を移し、マーケティング機能はすでに10年前に東京に移している。私自身の拠点も、草津、東京、海外と3分の1ずつという状況であり、それを考えても東京に本社を移す必要はない」と述べた。

海外事業が好調のエコソリューションズ社

 一方、エコソリューションズ社の北野 亮社長は、2017年度実績で、売上高が前年比4%増の1兆9,574億円、営業利益は7.4%増の812億円となったこと、為替を除く実質ベースでは売上高で前年比4%増となっていることを示し、「2年連続の減収減益から、増収増益へと反転した。また、パナホーム(2018年4月以降はパナソニックホームズに社名を変更)を除く、ES(エコソシリューションズ)セグメントでは、増収増益を達成しただけでなく、営業利益目標では公表値を上回る実績を達成している」と好調ぶりを強調。

 続けて、「ソーラー事業の減販を、それ以外の事業の増販でカバーして増収を達成。中国やインドなどの海外事業の大幅な伸張をみせた。一方で、パナソニックホームズの成長性、住宅着工や非住宅着工の減少など、2021年度以降の国内建設市場の縮小への対応を図る必要があり、2018年度からの3カ年で、それに向けた仕込みが重要になる」と、成果と課題について触れた。

パナソニック エコソリューションズ社の北野 亮社長

 エコソリューションズ社では、従来は「住宅」「非住宅」という2つの観点から進めていた事業体制を、2017年度から、より実体に即した形で、「部材」「B2C」に再編していたが、2018年度からは、部材を「空間創造事業」に、B2Cを「くらし創業事業」に再定義。「空間創造事業では、家はもとより、街や社会、クルマ、鉄道、飛行機のなかまで、24時間にわたって、人が過ごす空間を快適にすることを目指す。また、くらし創造事業では、空間のみならず、生涯の時間を、より豊かにすることを目指す」という。

 カンパニーミッションとして、「A Better Lifeを、家、街、社会へと広げていく」ことを掲げ、カンパニービジョンは「人起点で『くらし』をより良く、快適にする」と述べた。

 また、同カンパニーは、2018年度以降も増収増益を維持する計画を打ち出しており、2020年度には売上高が2兆2,700億円、営業利益率は5.5%、海外売上高は5,000億円に拡大。2017年度実績で16.6%の海外売上げ比率は、2020年度には22%にまで引き上げることになる。海外比率の拡大においては、M&Aによる非連続事業は含めていないが、海外でのソーラー事業の改革が鍵になりそうだ。

 ライティング、エナジーシステム、パナソニックエコシステムズ、ハウジングシステムで構成する「空間創造事業」においては、海外電材、国内電材の2つを重点事業にあげ、パナソニックホームズや買収した松村組などによる建設ソリューション事業のほか、自転車事業のパナソニックサイクルテック、介護のエイジフリーで構成する「くらし創造事業」では、建築を重点領域にあげた。

 「海外電材では、中国、アジア、ISAMEA(インド、南アジア、中東アフリカ)の3つの重点エリアと、ライティング、エコシステムズ、エナジーシステムの3つの重点事業の組み合わせによって、海外事業を拡大する。また、国内電材では、各領域でトップシェアを持つ強みを生かして、空間創造の基盤となる電材商品の市場優位性をさらに強化し、高付加価値商品の連打や、市場特性やエリア特性に応じた営業政策を推進。東京オリンピック需要を含む、旺盛な非住宅建設需要の刈り取りを進める」(北野亮社長)

 ライティングでは、照明に音、映像、情報を融合させたNEWライティングによるソリューション提供を推進。空気清浄機などを展開しているエコシステムズでは、換気、湿度、気流制御によるIAQ(Indoor Air Quality)による新たな価値を創出。エナジーシステムでは、従来のエネルギーマネジメントに留まらず、つながる機器の拡充や音声認識、IoTの進化により、新たな体験価値の創出に取り組むという。

 「建築では、グループシナジーの創出によって、パナソニックホームズによる売上げ成長を計画。これまでの中高級住宅や、多層階への取り組みだけでなく、年収500~600万円の世帯を対象にした普及価格帯の住宅への取り組みや、非住宅、街づくりへとシフトし、空間価値を訴求していく」(北野亮社長)

今後の進退は海外でのソーラー事業が鍵となる

 今回の説明会で新たに言及したのが、ビジネスイノベーション本部が、Panasonicβで取り組んでいるHOME Xの最初の成果を、2018年秋に具現化すると明言したことだ。

 HOME Xは、シリコンバレーに拠点を置く同本部が、新たな住空間の実現に向けて、デザインシキングの手法を用いながら、開発を進めているもので、北野社長は、「HOME Xの活動とは密接に連携し、エコソリューションズ社からも相当の人員を送り込んでいる」とし、「パナソニックホームズによる創業100周年記念の第1弾の商品のなかのひとつとして、照明、空調、インターフォン、給湯といった複数の操作系統が混在する環境において、インターフェースをきっちりと統合するものとして、2018年秋に具現化したい」と述べた。

 さらに、ソーラービジネスの今後の拡大についても言及。ソーラー事業は国内での事業縮小などが大きな課題となっていたが、「ソーラー事業に関する筋肉質化は完了したと考えている。それは、国内での落ち込みを、海外でカバーする事業転換を図ることができるとの見通しが立ったことにある。2018年度は、ソーラー事業での増収を目指すとともに、黒字転換を見込んでいる」と、北野社長は話す。

 2016年以降、中国メーカーや韓国メーカーが日本市場で低価格攻勢をかけてきたが、相次いで赤字となったことで、価格競争が沈静化してきたことも黒字化に向けた要因のひとつになるが、やはり、ここで中核となるのが、なんといってもテスラモーターズとの協業だ。

 テスラは、クルマの屋根材に太陽光のセルを使用するソーラールーフの商品化を進めており、パナソニックは、このセルの生産、供給を担当することになる。

 パナソニックは、ソーラー事業において、2017年度に国内4割、海外6割の売上げ構成比を、2020年度には国内1割、海外9割とし、現在はほぼゼロのセルの生産台数比率を、2020年度には、パネル台数比で一気に8割にまで拡大するという。しかもソーラー全体の生産量は、2017年度の3倍規模に拡大する計画だ。まさに、テスラによる事業拡大がベースにあり、言い換えれば、「テスラリスク」の影響を受けやすい事業構造ともいえる。

 これに対して北野社長は、「確かに、テスラのソーラービジネスは立ち上げが遅れているが、こうした状況を踏まえて、投資は慎重に行なっていく。またテスラ以外にも、セルの販売先として複数の道筋がついている。2020年に向けたリスクヘッジは行なっている」と反論した。

 だが、エコソリシューションズ社にとって、ソーラー事業の行方が、業績に大きな影響を与えることは間違いない。その上でテスラの影響は少なくないのは明らかだ。