長期レビュー
パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX103」
パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX103」前編
~パナソニックと三洋の技術が融合した“史上最高傑作”の味はいかに?
(2013/8/28 00:00)
炊飯器は、価格が高い製品ほど、おいしくごはんを炊くための技術が詰まっている。そのため、おいしいごはんが炊きたいのであれば、価格が高い製品を購入しておけば間違いない、ということが想像できる。実売価格で10万円近い高級炊飯器が登場し続けているのも、価格に見合った結果が得られる確率が高いからだろう。
今回紹介するパナソニックの「Wおどり炊き SR-SPX103」も、ごはんをおいしく炊くための技術が満載された、同社で最高級クラスの炊飯器だ。
この夏発売されたSR-SX103は、パナソニックが以前から搭載している、200℃のスチームで米の旨みをコーティングする「200℃スチーム」機能に加え、三洋電機の炊飯器で搭載されていた、変動する圧力で米をかき混ぜる「Wおどり炊き」機能も採用した点が特徴となる。パナソニックと三洋の技術が融合したこの炊飯器について、同社では“パナソニック史上最高スペックのおいしさ”“史上最高傑作”と謳っている。
しかし、本当にそんな機能ばかりを搭載して、本当においしいのだろうか? パナソニックの技術と三洋の技術の相性が悪いから、今まで搭載できなかったんじゃないのか? 今回も実売想定価格は約10万円だけど、本当にそれだけの価値はあるのか? いろいろ疑問が湧いてくる。
そこで今回は、前後編の2回に渡ってWおどり炊きを使ってみて、本当にそれだけのお金を出す価値があるのか、試してみよう。
メーカー | パナソニック |
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製品名 | Wおどり炊き スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器 SR-SPX103 |
購入場所 | ヨドバシカメラ |
購入価格 | 87,800円 |
炊飯器では珍しい赤いボディ。内釜は凹凸が設けられた独特のスタイル
本体をダンボールから取り出すと、黒と赤という、炊飯器としては珍しいカラーリングに驚いた。しかし、赤い部分の面積は黒い部分よりも抑えられており、派手派手しい印象はなく、むしろ高級感が漂う。本体サイズは266×338×233mm(幅×奥行き×高さ)で、5.5合炊きの高級モデルとしては標準的なサイズだ。
フタを開けると、中には内釜「ダイヤモンド竈釜(かまどかま)」が入っている。重さは実測で777gと、高級炊飯器の内釜にしては軽く、扱いやすい。表面には炊飯時に細かい泡を大量に発生するというダイヤモンドのコーティングが施されている。また釜底には、こちらも泡が大量に発生するよう、ディンプル(凹凸)加工が設けられている。
このほか付属品として、しゃもじと軽量カップも付属する。しゃもじは本体カラーと合わせてブラックを採用する。
まずは1回炊いてみる。水容器に水を入れるのをお忘れなく
まずは1度ごはんを炊いてみよう。付属の計量カップで米を計り、釜内部の水位線に水を合わせる。白米も無洗米も使用可だ。
コースはいくつか用意されているが、おいしいごはんを炊くには、初期出荷時の「エコ炊飯」ではなく、甘み、旨みのあるごはんを炊く「銀シャリコース」を選択する。銀シャリコースでは通常モードのほか、「しゃっきり/もちもち/かため/やわらか」という4段階の細かい炊き分けもできる。
普通の炊飯器と大きく異なるのが、内釜とは別に本体内部にセットされている「水容器」に、45ml以上の水を入れること。水を入れなくても問題なく炊飯できるが、自慢のスチーム炊飯機能の効果がなくなってしまう。
本体上部の黄色い「炊飯」ボタンを押すと、炊飯が開始する。この時、内釜が入っていないと、エラーで内釜が入っていないことを知らせてくれる。液晶画面には、炊飯時間が「48分」と表示され、炊飯完了までカウントダウンが続いていく。
炊飯中に「ガチッガチッ」「シュシュシュシュ」音がするが、これがおいしさの秘訣
炊きあがりまで時間があるため、ここでSR-SPX103に搭載された、ごはんをおいしく炊くための技術を詳しく紹介しよう。
まずは、「Wおどり炊き」機能だ。これは、通電する時間を調節しながら運転することで、内釜の内部に熱対流を発生させ、米を踊らせながらムラなく加熱する「高速交互対流」と、釜内部に1.2気圧を掛けた後で1気圧に減圧し、米を釜底からかき混ぜる「可変圧力」を合わせたもの。これにより、炊飯時に発生する旨み成分「おねば」を多く生み出し、従来モデルよりも甘みを約14%、粘りを約13%アップする効果があるという。
パナソニックの炊飯器では、高速交互対流はこれまでにも搭載してきたが、可変圧力については今回が初めてとなる。この可変圧力こそが、旧三洋電機の炊飯器「おどり炊き」にて搭載されていた技術。炊飯の途中で、本体が「ガチッガチッ」という音が鳴り、「シュシュシュシュ」という蒸気機関車のような音とともに大量の蒸気が吹き出すが、これはまさに圧力が掛かったあとで減圧していることの証だ。
また、パナソニックの炊飯技術である「200℃スチーム」機能も搭載する。先ほど水容器に入れた水を利用して、庫内のヒーターで200℃のスチームを生成し、このスチームをごはんに吹きかけ、ツヤとハリのあるごはんを作るという。
さらに、内釜をフタ/側面上部/中央/側面下/底側面/底の6段階のIHで全面から加熱する「全面発熱6段IH」機能、おねばをフタ上部の「うまみ循環タンク」に蓄え、スチーム時にごはんへ戻す機能も搭載する。
ふっくらと香り高い、弾力のあるおいしいごはん! 食べ比べるとよく分かる
炊飯が終わると「ごはんが炊きあがりました。ごはんをほぐしてください」というメッセージが音声で流れる。どうやら炊飯後のごはんは、一度ほぐしておくのが良いらしい。
フタを開けると、中からはツヤツヤとした白いごはんが登場。これは見た目だけでも相当においしそうだ。
さっそく食べてみると、ふっくらした食感に驚く。ひと口目はふわっと軽やかだが、噛めばしっかりとした弾力がある。ごはんは一粒一粒がしっかりと立っており、まったく潰れてない。しかも口に入れた瞬間に、ごはんの旨み・香りが広がる。これはウマイ! これまでに何回も高級炊飯器で炊いたごはんを食べてきたが、それらに優るとも劣らない、いや、もっとうまいんじゃないかと感じるほどのおいしさだった。
私ひとりだけの意見では心許ないので、実家に持ち帰り家族の意見を聞いてみたが、ここでも絶賛だった。「柔らかい」「ふんわりしている」「甘さがいつまでも口の中に残る」などなど。
試しに、電子レンジで温めるレトルトごはんと、家にこれまであった中級クラスのIH式炊飯器(圧力機能あり)とでブラインドテストを行なったところ、家族全員が正解した。特に、ごはんのふっくら感は歴然とした差がある。テスト後は炊飯器を自宅から持ち帰ったが、「やっぱりあの赤い炊飯器はおいしかった。また持ってきて」とラブコールが掛かるほどだった。
前編については、炊飯をひと通り使ったこのあたりで締めさせていただく。後編では、さまざまな炊飯モードやスマートフォンとの連携機能などを紹介する予定だ。