長期レビュー
シャープ「プラズマクラスター洗濯機 ES-TX800」 最終回
シャープ「プラズマクラスター洗濯機 ES-TX800」 |
シャープの縦型洗濯乾燥機「プラズマクラスター洗濯機 ES-TX800」(以下、TX800)のレビューをお届けしている。最終回となる今回は、シャープの洗濯機ならではのプラズマクラスターイオンを使ったコースのほか、風呂の残り水や話題のすすぎ1回お洗濯を使った節水法、さらにお手入れ方法も併せて紹介する。
■プラズマクラスターイオンでカビやニオイの発生を抑制
TX800では1立方cm当たりのイオン濃度が7,000個の「高濃度プラズマクラスター7000」ユニットを搭載する |
TX800の大きな特徴の1つが、シャープの独自技術である「プラズマクラスターイオン」を搭載していること。洗濯槽内に放出することで、スーツやスカーフなど家庭では洗えない衣類のニオイを取るコースのほか、洗濯機が設置してある洗面所などにプラズマクラスターイオンを放出する機能も備える。
洗面所は水気も多く、カビの発生が気になるところだが、プラズマクラスターイオンがカビの発生を抑えてくれるという。プラズマクラスターの基本的な性質や効果については弊誌で以前掲載したこちらのレビューにて詳しく掲載されているので、ご確認いただきたい。
TX800では、洗濯・乾燥運転後にプラズマクラスターイオンを自動で放出する機能を備えるほか、単独運転もできる。
実感としてはまず、ニオイの発生が抑えられているなと感じている。特に差を感じるのは洗面所に置きっぱなしの衣類のニオイ。仕事をしていることもあって、洗面所に衣類を溜めてしまうことが多いのだが、汗で汚れた衣類や濡れたタオルをそのままにしておくと、特有のニオイがしていた。TX800を使い始めてからは、確実にそのニオイが少なくなった。
これから暖かくなって、カビやニオイがさらに気になる季節。あると嬉しい機能だ。
さらに便利に使っているのが、10分間で衣類のニオイを取る「消臭コース」。ジャケットやぬいぐるみ、帽子など洗えない衣類のニオイが取れるというもの。10分という短時間でどれくらいの効果があるか、正直半信半疑だったが、実際使ってみると、これがスゴイ。帽子の内側についていた汗のニオイやぬいぐるみに付いていたヨダレのニオイがすっきり。洗ったわけではないのに、買ったときのようなフレッシュな印象になる。
しかも10分という短時間で、運転が終わるので、外出前にニオイが気になったらさっと運転を開始、なんていう使い方もできる。
汗の付着が気になる帽子 | 汗やヨダレなどの汚れが付いたぬいぐるみ | 洗濯槽に入れる |
プラズマクラスターイオンによる消臭コースを選択 | 運転時間はたった10分だ |
■気になるのはここ! 乾燥方式の違いがミソ
乾燥機能から節水しながらの洗濯まで、毎日の家事に大活躍のTX800だが、使っていて気になるところもある。
まずは乾燥中の温度/湿度の問題。TX800では、槽とパルセーターを交互に回転させながらヒーターの温風を吹き込んで乾燥させる「ヒーター式」の乾燥方式を採用している。一方、上位機種のドラム式洗濯乾燥機では、乾燥方式として電気代が抑えられる「ヒートポンプ式」を採用している。ヒートプンプ式の説明についてはここでは省略するが、ヒーター式に比べヒートポンプ式の方が電気代が安いのは確かだ。
とはいえ、TX800では独自の穴なし槽を活かして、少ない熱量で槽内の温度を上げるため電気代は1回約39円(4.5kg洗濯~乾燥時)と、従来よりは大幅に低減している。電気代だけを見ると、それほど差はないようにも思える。
ただ、乾燥運転中の本体周りの環境についてはヒートポンプ式とは大きな差が出る。TX800の場合、乾燥運転中は温度/湿度共に上がり、環境によっては洗面所の湿度が90%を超えることもあった。洗面所の壁や窓は結露して水滴が付いてしまうので、換気は必須になる。我が家の場合、乾燥運転中は極力換気扇を付けたり、窓を開けたりするなどの対策を練っているが、設置状況によってはそれができないという場合もあるだろう。
運転前の温度は21.8℃、湿度は59%だった | 4.5kgの洗濯/乾燥コースを選択。運転時間は2時間49分と表示された | 換気扇を付けずに、窓を閉め切った状態で乾燥運転を行なったところ、運転終了間近には温度26℃、湿度91%まで上がっていた |
洗面所の鏡は曇っている | 壁や窓枠には結露した水滴がびっしり |
窓を開けたり、換気すれば温度と湿度の上昇はそれなりに抑えられる。運転開始前の温度は20.8℃、湿度は44%だった | この日の最大湿度は52%だった |
自動コースに設定しても乾きムラが残ることがあった。写真はTシャツ。色が変わっているところはまだ湿り気がある |
もう1つ気になったのは衣類の量や質によって、乾燥仕上がりがまちまちになってしまうということ。TX800の乾燥容量は4.5kgだが、4.5kgフルの衣類を入れると乾燥がやや甘いという印象だ。
センサーによって乾き具合を感知する自動コースに設定しても乾きムラが残っていることもあった。乾燥容量の大きさを重視するのも良いが、「確実に乾かす」という基本的なところをもっと重視してもらいたい。
乾燥機能においては、ヒートポンプ式の方が優れているというのは事実。ただ、本体サイズや価格面で、縦型洗濯乾燥機を選ぶ人が多いのもまた確かだ。縦型かドラム式かで悩んだ時はまず乾燥方式をチェックするようにしたい。
■もっと節水したいなら
洗濯槽の側面に穴がない独自の「穴なし槽」採用によって高い節水能力を持つTX800。洗濯8kgの使用水量は89L、洗濯~乾燥4.5kgの使用水量は76Lで、これは縦型洗濯乾燥機としては業界トップクラスの節水性能だ。
でも、もっと節水したいという人にお勧めなのが、風呂の残り水を使うという方法。この方法自体はかなり前から知られているもので特に新しさはないが、TX800には専用のホースと風呂水用継ぎ手が付いているので、市販の風呂水用ポンプなどを使わなくても簡単に風呂水を使える。
設定も簡単で、本体にはホース収納用のホース掛けまで付いているので、ほとんど何のストレスもなく風呂水を使うことができる。手軽な節水法としてお勧めだ。
本体には風呂水用ポンプとホースが付属する | 風呂水を取り込むための風呂水用継ぎ手も搭載されている | 使ったあとのホースを収納するスペースも設けられている |
■絶対お勧め! すすぎ1回コース
最近テレビのCMなどでもよく目にするすすぎ1回の「濃縮洗剤」。従来2回あったすすぎ工程を1回に短縮、それにより洗濯時間を短くし、使用水量も少なくするというものだ。それでも汚れをきれいに落とすというのだから、主婦にとっては嬉しい。私も気にはなっていたものの、手が出せなかった。これまで使っていた洗濯機には、すすぎ回数を2回から1回に減らすという設定がなかったのだ。
TX800を含め最近の洗濯機には、どれも「すすぎ1回コース」というのがあらかじめ搭載されている。さっそく試してみた。すすぎ1回コースで、一番気になるのが「汚れはちゃんと落ちるの?」ということだ。そこで、前回標準コースで試した汚れ落ちテストをすすぎ1回コースでもやってみた。
「焼肉のたれ」「ケチャップ」「ソース」「しょうゆ」「泥汚れ(土)」「味噌汁」の6つを、吸水性の良い綿100%のタオルに垂らす。これを約4時間置いてからそのまますすぎ1回コースで洗った。
結果は驚き! 標準コースと全く変わらない汚れ落ちで、匂いも全く気にならない。使用水量も、洗濯時間も短いのに、仕上がりは通常と全く変わらないのだから、先端技術を使った洗剤の威力はスゴイ。これなら常にすすぎ1回コースで充分。我が家ではこのテスト以降、すすぎ1回コースしか使ってません!
テレビのCMでもおなじみのすすぎ1回の濃縮洗剤。今回はライオンの「NANOX」を使った | 「焼肉のたれ」「ケチャップ」「ソース」「しょうゆ」「泥汚れ(土)」「味噌汁」の6つを、吸水性の良い綿100%のタオルに垂らす。そのまま4時間放置して「すすぎ1回コース」で洗濯 | 洗濯後のタオル。中央付近にうっすらソースの跡が残るが、あとはすっきりと落ちた。標準コースとほぼ変わらない仕上がり |
■気になるお手入れ方法は?
基本的なお手入れは一般的な洗濯機と変わらない。使うたびに行なうのは、洗濯槽内にある糸くずフィルターを外して中の糸くずを取る、洗剤ケースを洗うといったものだ。乾燥機能を使ったときは、吸気フィルターと排気フィルターのホコリを必ず取り除く。一般的な縦型洗濯乾燥機にはある内蓋がないので、お手入れしやすい。
洗濯槽の上部に設けられている吸気/排気フィルターは乾燥運転の度にお手入れする | フィルターに詰まっているホコリを取り除く | 吸気フィルターは斜めに取り出す |
洗濯槽内の糸くずフィルターも毎回お手入れする | 取り外したところ |
また、TX800ならではのお手入れがプラズマクラスターイオン吹き出し口の掃除だ。1カ月に1回、カバーを外してフィルターに溜まったホコリを取り除く。
そのほか、本体には洗濯槽の内側やパルセーターの裏側まで除菌、防臭してくれる「槽除菌コース」なども搭載されているので、上手に利用して、きれいに保ちたい。
■洗濯の新常識が生まれる
最新機能満載の1台だが、内蓋がなく投入口も広いため、全自動洗濯機と変わらない使い心地 |
最新の洗濯乾燥機を触ったのは今回が初めてだったわけだが、最初はとにかく機能の多さに驚いた。プラズマクラスターイオン放出機能やすすぎ1回コースなどひと昔前の洗濯機にはなかった機能がずらりと並んでいて、使いこなせるかどうか不安に感じていたが、今では「すすぎ1回」が毎日だし、ちょっとニオイが気になったら「消臭コース」というように毎日の生活にすっかり馴染んでしまっている。
洗濯機のような毎日使う家電製品は「馴染む」ということが何より大事だと思うのだ。たとえば、乾燥機能を頻繁に使っていても、電気代が飛び上るほど高くはならないとか、乾燥運転中の湿気は気になるけどプラズマクラスターイオンの効果のおかげか湿気特有のニオイやカビは気にならないとか、生活の中に馴染むように最新技術が配置されていると感じた。
特に全自動洗濯機からの買い替え対象製品としてお勧め。従来の縦型洗濯乾燥機と違い、内蓋がないので、違和感なくスムーズに使えるだろう。
2011年4月20日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)