家電製品ミニレビュー

ジェントス「Explorer EX-620LGP」

~導光板採用で食事がおいしく見える暖色系LEDランタン

LEDランタンに導光板を導入

ジェントス「Explorer EX-620LGP」

 ジェントス(GENTOS)は、LEDライトやLEDヘッドライトを主力とするメーカーで、「Explorer」ブランドで展開しているLEDランタンもアウトドア用として定評のあるところだ。

 そのジェントスが、今年3月に発表した最新のLEDランタンが「EX-620LGP」だ。これまでのExplorerシリーズは、強力なLEDを搭載し、明るさを重視した製品が多かったが、今回の製品はランタンとしては初めて導光板を採用し、光の質を重視している。

 実際に購入してみたので、レポートをお届けする。

メーカージェントス
製品名Explorer EX-620LGP
価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格3,509円

LEDの弱点をカバーする導光板

シャープが2012年のLEDペンダントの発表時に使用した「導光板」の説明資料。同社は液晶テレビのバックライトで導光板のノウハウを蓄積した

 実機に触る前に、導光板について解説しておこう。よくご承知の方は、この節は飛ばして読んでいただきたい。

 一般的な導光板は、アクリル素材などでできている。導光板の端から入射した光を導光板内でコントロールして、表面の拡散シートを通して発光する。導光板を外から見ると、面発光に近い形で、ほぼ均一に発光しているように見える。

 導光板を使うことで、LEDの欠点である、発光面が小さいことによる光のムラや眩しさをカバーすることができる。液晶テレビの大きな画面を均一に照らす必要があるLEDバックライトには、導光板が欠かせない。

 照明器具でも、ペンダントライト、シーリングライトでは、導光板を搭載した製品が登場している。シャープを始めとする大手家電メーカーは、テレビで培った独自の導光板技術を持っており、自社の照明器具に応用している。

 また、複数のLEDを使用したLEDデスクライトでは、物の影が複数見える多重影が出やすいが、導光板を併用することで、多重影を軽減できるというメリットもある。

 LED素子の明るさが向上して明るさという問題を解決したLED照明器具にとって、光の質を向上させることは大きな課題の1つだ。その課題の解決に向けて「導光板」は注目されている技術なのだ。

大型の本体、エネループにも対応

 EX-620LGPのパッケージはブリスター型だが大きめだ。特に奥行きがあるので、手提げの紙袋がいっぱいになってしまう。

パッケージは吊り下げ展示ができるブリスター型。かなり大きい
パッケージの台紙に製品の概要が書かれている
本体正面。黒い筐体に対して、白い導光板が印象的だ
取っ手を持ち上げた状態

 なお、電源は単一アルカリ乾電池が3本必要となる。テスト用電池が付属と書かれている資料もあるが、パッケージには付属していなかった。お忘れなく準備されたい。

 また、今回は試せなかったが、電池はエネループにも対応している。単三形エネループを使用する場合は、単一用のアダプターが必要となる。

乾電池は底部から入れる
本体側の端子
単一形乾電池が、横に3個並んで入る。1つだけプラス極が下向きになる

 箱から取り出したランタン本体は、黒くて大きめで存在感がある。本体サイズは101×96×190mmだが、実物はもっと大きく見える。重量は、アルカリ乾電池を入れた状態の実測で868gだった。

乾電池を入れた状態の重量は868g
他のランタンとの大きさ比較。左はパナソニックの「BF-AL01K 」、右は富士通FDKの「HGL2341F」。それぞれ、持ち歩き用のコンパクトランタンと、電池を選ばない防災用ランタンという特徴がある
操作は電源スイッチのみ

 操作部分は押しボタン型のスイッチが1つあるだけだ。1回押すとHigh、もう1回でLow、次にSOS点滅モードとなる。

 良くできていると感心したのは、各モードとも3秒以上点灯した後は、次にボタンを押すと消灯してくれることだ。例えば、Highで点灯して状態から、消灯する場合でも、Low→SOS→消灯という段階を経ずに、いきなり消灯してくれる。とても便利で良いアイデアだと思う。

 ランタンのカバーは透明で、中に3枚の導光板が、三角形に組み合わせて立てられている。LEDは直接見えないが、12個搭載されているということなので、1枚の導光板ごとに4個のLEDが配置されているようだ。上から見た本体の形も三角形になっている。

上から見ると角を丸めた三角形をしている
カバーは透明で、導光板がそのまま見える
3枚の導光板が三角形に組み合わされている

まぶしさがなく、柔らかい光

 とりあえずアルカリ乾電池を入れ、電源スイッチを1回押したら、驚いてしまった。

 これまで見てきたLEDランタンとは、光り方が違う、いや、光の質が違うと言って良い。単に、暖色系のLEDを使っているというだけではない。本当に面発光しているように見えるし、まぶしさを感じない。柔らかい光だ。

点灯した状態。オートホワイトバランスで撮ると、導光板が白く見える
ホワイトバランスをデーライト(日光)にして撮影。この状態が肉眼で見た状態に近い
導光板は全体がむらなく光る
本体の方向に関わらず、360度明るい
廊下の壁のそばに置いて撮影。基本的に横方向を照らしているが、ランタンの周囲もかなり明るい

 導光板を使うことで、暗くなっているのではないかと思っていたが、少なくとも室内で使う分には、十分な明るさだ。

 なにより、暖色系のLEDということもあって、ご飯がおいしそうに見える。

 今回は、非常食を想定して、レトルトカレーを作って食べてみたのだが、EX-620LGPを点けて食べると、おいしそうに見えるし、実際においしいのだ。

約一畳ほどのテーブルの上に置いてみた。テーブルの上はほぼ全部照らせている
レトルトカレーとサラダという防災メニューだが、普通の食卓に見える
同じ配置でランタンのみを取り替えてみた。ちょっとさみしい
皿の中身もちゃんと見えるので、ご飯がおいしく感じる
台所での簡単な調理は、ランタンだけでこなせた

 比較用に白色LEDの一般的なランタンも点けてみたのだが、明るさと光色の差もあるが、光の質が違う感じだ。同じカレーなのに、片方は非常食に見え、片方は料理に見える。

 これが本当に停電している状態であり、保存食のレトルトカレーを食べているだとすれば、絶対にEX-620LGPのほうで食べたい。防災用のランタンでは、栄養の摂取に留まるところが、ちゃんとした食事になる。

 EX-620LGPはもともとキャンプなどのアウトドア用途のための製品であるが、テントの中の照明にとどまらず、食事を囲む際の主照明に十分使えると思う。水がかかっても大丈夫な防滴仕様だし、炎のまたたきこそ無いが、ガスランタンに近い楽しさがある。

 例えば、照明が貧弱なキャンプでは、思ったほど料理が美味しく感じないときがある。それは、料理の見た目などの情報が足りないからであることが多い。つまり闇鍋に近い状態だ。しかし、EX-620LGPだと、まんべんなく照らす明るい光が料理の情報を伝えてくれる。料理をおいしそうに見せるランタンという理由だ。

 また、光にムラがないので、本も読みやすい。このランタンは構造上、ほぼ真横を照らす光が強いので、本を置く位置を選ぶ必要がある。しかし、いい位置に本を置くと、ページのどこかが明るくて、しかも周囲が暗いということがなく、目が疲れにくい。

ランタンのそばで本を読む
ページの照らし方にムラがなく読みやすい
ページのムラが分かりやすいようにホワイトバランスをオートにして撮影

 なお、電池の寿命はHighモードで約23時間、Lowモードで約180時間、SOS点滅モードで約70時間とされている。Highモードにして、このランタンだけで2晩過ごしてみたが、明るさが低下した感じはしない。単一乾電池を3本使うだけあって、2泊3日ぐらいならばHighモードのままで使えるスタミナがある。

Explorerシリーズの特徴は継承しているか

 これまでのExplorerシリーズには、他社のLEDランタンにはない特徴が2つあった。

 1つは、ランタンを逆さに吊るときに、LEDのカバー部分を外すことができる。

 たとえば、テントの中などでランタンを使う場合に、床に置くだけではなく、天井に逆さ吊りにするとテント内を明るく照らすことができる。このため、ランタンの底部に逆さ吊り用のフックを内蔵しているものが、他社のLEDランタンでもある。

 Explorerシリーズでは、この状態で、ランタンのカバーを外し、LEDをほぼむき出しの状態で使用できる。カバーによる影がなくなるので、逆さ吊りにしただけでは、他社の製品ではカバーの天井部分が邪魔になって暗くなってしまうランタンの真下も明るく照らせる。

 残念ながら、EX-620LGPでは、この機能は搭載されていない。逆さ吊り用のフックは内蔵しているが、カバーを外すことはできない。導光板を採用していることで、光の方向が真横に向いているので、カバーを外しても、ほとんど下方向を照らさないからだろう。また、導光板が壊れないように保護するためでもある。

 ちょっと残念ではあるが、EX-620LGPの構造上、仕方がないかもしれない。

底部には折りたたみ式のフックが内蔵されている
底部のフックを使って逆さに吊るした状態
カバーは外せなくても、光がよく回るので、あまり困らない

 もう1つは、「本体認識表示灯」だ。

 これは、本体前面の電源スイッチの上に、小さなLEDランプがあり、数秒置きに点灯するというものだ。本当に真っ暗な状態では、このLEDの点灯はよく見えるので、ランタン本体の位置がすぐ分かる。この機能は、本体の電源スイッチがOFFの状態でも、ずっと動作しており、使わないように設定することはできない。

電源スイッチの上にある緑色のLEDが「本体認識表示灯」

 そういう意味では便利な機能なのだが、1つだけ困った点がある。この本体認識表示灯を使っていると、電池が消耗してしまうのだ。EX-620LGPの場合、本体認識表示灯を使用した場合の電池寿命は約1年とされている。

 この機能の存在を知らないで、乾電池を入れたままで、ランタンを保管していると、実際に使用したいときには乾電池が切れてしまっているということになる。

 この機能はEX-620LGPでも、採用されており、約5秒ごとに、チカッとLEDが点灯している。

 真っ暗な状態では便利な機能なのだが、防災用に保管することを考えると、この機能をOFFにするスイッチが欲しい。とりあえず、防災用に保管する場合は、ランタン本体と乾電池は、必ず分けてしまっておく必要がある。

光の質が高い画期的なLEDランタン

 EX-620LGPは、LEDランタンとしては、かなり画期的な製品だ。

 これまでLEDランタンは、炎がなく空気を汚さないという利点を活かして、室内やテント内での照明として認識されてきたが、本当に大きな光量が必要な場合や、光の質という点では、油やガスを使うランタンには及ばなかった。

 EX-620LGPも、光量という点では、最大時でも230L(ルーメン)にとどまっており、スペースで言うと四畳半から六畳程度の空間を照らすのが精一杯だ。しかし、暖色系LEDと導光板の組み合わせは、光の質という点で大きく進歩している。このランタンなら、キャンプの食事時に主照明として使っても良いと思う。なにより、ご飯がおいしそうに見えるのが良い。

 アウトドアでなくても、クリスマスや誕生日などの家族のパーティの際に、部屋の灯りを消して、EX-620LGPだけで食事をするのは楽しいだろう。それだけのムードが出せる灯りだ。

 先に述べた、本体認識表示灯による電池切れの点もあるので、毎年、特定の日を決めて、このランタンで食事をし、ついでに乾電池を点検するというのは、良い使い方だ。どこかにしまいこんで置く防災用品ではなく、そういうふうに楽しめるだけの光の質を持ったLEDランタンだ。

伊達 浩二