家電製品ミニレビュー

シャープ「600シリーズ 調色・調光モデル」

~昼白色と電球色が切り換えられるLED電球
by 藤原 大蔵

シャープのLED電球「600シリーズ 調色・調光モデル DL-L60AV
 2009年6月11日、シャープは、実売3千円台からという従来よりも低価格なLED電球「600/400 シリーズ」を発表。家電業界に衝撃を与えた。この時、価格以外の面で特に大きな注目を集めたのが、調色に加えて調光もできるLED電球「600シリーズ DL-L60AV」である。

 このDL-L60AV、本体内に搭載された2色のLEDの明るさの比率を変えることで、暖かみのある「電球色」から、スッキリとした白色の「昼白色」まで、7段階に色が変更できる。しかも、明るさも7段階に調節できる。つまり、7×7=49種類のことなる明かりが演出できるというのだ。もちろん特別な器具は一切必要なく、一般的なE26口金の電球ソケットに接続すればすぐに使える。

【昼白色】
全光束は全灯時で430lm、色温度は5,400K
【中間色】【電球色】
全光束は全灯時で300lm、色温度は2,650K

 しかし、「調光はまだわかるけど、調色ってぶっちゃけ何のため」のような疑問の声もあるだろう。もちろん、そんな疑問の声が上がるのも当然。1個の電球で「調色」ができるものは、一般家庭向けでは初めての製品だからだ。

 結論から言えばこのDL-L60AV、非常に使い勝手が良い製品だ。我が家でも重宝しており、一般家庭の灯りのあり方さえも変えてしまうのではないか!? と思うほどである。

 他社のLED電球にはない、この「調色・調光」LED電球が、実際に生活でどのように活躍してくれるのか。本稿で紹介していこう。

メーカーシャープ
製品名600シリーズ 調色・調光モデル
品番DL-L60AV
希望小売価格オープンプライス
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格6,942円

見た目は普通のLED電球

 使用シーンを紹介する前に、まずDL-L60AVの基本的な機能を見ていこう。

 DL-L60AVは、シャープのLED電球「600シリーズ(直下照度が白熱電球60Wクラス)」のラインナップの1つ。そのため、114×59mm(高さ×直径)という大きさ、くびれのある電球らしい外見は、調光・調色に非対応の「600シリーズ スタンダードモデル」とまったく同じ。大きな違いは、スタンダードモデルでは白いヒートシンクが特徴的であったが、こちらは明るいシルバー色となっている。重さは182gと、スタンダードモデルのものより20g重い。

 光の広がりも他の600シリーズと同様に、光源部を中心にほぼ球形に拡散しており、光色を変えたところでも、拡散性に大きな変化は見られない。密閉器具には対応していない点も同じである。

 なお本製品は「電球本体で調光できるLED電球」であって、「調光器具」自体には対応していない点もご注意いただきたい。

DL-L60AVの高さは114mm(右)。60Wタイプの白熱電球(三菱電気オスラム)の高さは94mm(左)で、20mm高いことになる。ヒートシンク部は明るいシルバー色。重さは182gと、LED電球の中では重いDL-L60AVの直径は59mm(右)。60Wタイプの白熱電球の直径は55mm(左)なので、若干太めとなる。光源部分はガラス製
【白熱電球:60W】
ソケットぎりぎりまで明るいため、床面に近いところから電球を中心に光が広がっている
【DL-L60AV:昼白色】
光は球形に近い形で拡散する。電球らしいくびれのある形状なので、ある程度の光が床面にも届いている
【DL-L60AV:中間色】
昼白色のような光の広がりが得られた
【DL-L60AV:電球色】
光が球形に近い形で拡散するものの、全光束が落ちるため、光の届く範囲が狭い印象を受ける

※光の広がり方を見るため、撮影時同じ明るさに見えるよう補正している


【白熱電球:60W】
250×150mm(直径×高さ)のペンダントに取り付けたようす。電球の端がちょっと覗いている程度の角度から撮影した
【DL-L60AV】
シェードから少々顔が出てしまうが、不自然さはそれほど感じない


付属のリモコンで調色/調光

同梱されるリモコンで調光・調色を操作する

 目玉の機能である調光・調色は、本体に同梱のリモコンで行なう。リモコンはサイズが33×87×6mm(幅x高さx厚み)で、重さは15gととてもコンパクト。電池は同梱のボタン型リチウム電池(CR2025)を1個使用する。

 操作は簡単で、「入/切」ボタンで電球のON/OFFを切り替え、「明るさ」と「色調」でそれぞれを7段階に調節するだけ。これなら、説明書を読まずともすぐ操作できるだろう。また、明るさを「全灯(100%)/半灯(50%)/微灯(10%)」、光色を「昼白色/電球色/中間色(昼白色と電球色)」にダイレクトに選べるボタンもが並んでいる。ダイレクトボタンで大まかに選択してから、光を細かく調節するといった使い方ができる。

 細かい話だが、リモコンで消灯した場合も待機電力を消費している。長時間使わない時は、照明の主電源を切っておくのが良いだろう。なお、リモコン、主電源のどちらを使って消灯しても、電球は消灯する直前の調色・調光の状態を記憶している。

【DL-L60AV:昼白色】
上から全灯・半灯・微灯(右の写真も同様)
【DL-L60AV:中間色】【DL-L60AV:電球色】

少し暗めも高い演色性。食事もおいしく見える


光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測した。写真は60Wタイプの白熱電球で、照度は800lx
 前置きが長くなったが、ここからは実際に器具に取り付けて、明るさと光色を調べてみよう。

 高さ55cmの位置から、「全灯」でテーブル面を照射したところ、照度計の数値は、昼白色は410lx、中間色は387lx、電球色は313lxを示した。昼白色はまずまずの明るさが得られるが、電球色は一般的なLED電球の中でも少々暗めといったところか。

 ここで、リモコンの「半灯」ボタンを押すと、昼白色は191lx、中間色は176lx、電球色は156lxと、数値は全灯時のほぼ半分となった。また「微灯」は、昼白色は45lx、中間色は42lx、電球色は39lxと、これも全灯時のほぼ1/10という、説明書通りの明るさになった。

【昼白色 全灯(100%):410lx】【昼白色 半灯(50%):191lx】【昼白色 微灯(10%):45lx】
【中間色 全灯(100%):387lx】【中間色 半灯(50%):176lx】【中間色 微灯(10%):42lx】
【電球色 全灯(100%):313lx】【電球色 半灯(50%):156lx】【電球色 微灯(10%):39lx】

 明るさを計測していて気付いたのが、いずれも光色がとても良いところ。そこで、それぞれの光色の下で食事のシーンを撮影したところ、いずれの光色も自然な色合いで、食事がおいしそうに見えた。パッケージには「料理やお肌の色をより自然に表現」と演色性の良さが記されていたが、まさしくその通りの結果となった。特に、「電球色」から1、2段階だけ「昼白色」に寄せた光色は、白熱電球と比較しても遜色のない演色性が得られたのには驚いてしまった。

【DL-L60AV:電球色 100%】
白熱電球(2,850K)でホワイトバランスを取り撮影。電球色は白熱電球よりも色温度が低いため(2,650K)、写真では色被りを起こしたような色合いにも見えるが、肉眼では非常においしそうに見える
【DL-L60AV:電球色 100%から一段階昼白色側に設定】
この色が白熱電球の色合いに最も近い。演色性が高く、食べ物の色合いがとても自然だ
【白熱電球:60W】【DL-L601L】
こちらは非調光・非調色のスタンダードモデル。黄色い色被りが目立ち、食べ物がおいしそうに見えない


【DL-L60AV:昼白色 100%】
カメラの蛍光灯モード(5,000K)で撮影したが、昼白色は色温度が5,400Kのため、少し青色が強調される。しかし、食べ物の色味は良いままだ
【DL-L601N】
非調光・非調色のスタンダードモデルの昼白色タイプ。多少黄色が強調されてしまう傾向があり、色の純度が落ちる印象だ

自然光の届きにくい部屋、仕事と寛ぎを切替えたい場合にも

 しかし、実生活でこの調色/調光機能は本当に機能するのだろうか。そこで、我が家のダイニングキッチンと仕事部屋に取り付けてみたのだが、これがかなりイケているのだ。

我が家の昼間のダイニングキッチンの風景。窓が小さいため自然光が入りにくく、昼間でも暗い。ペンダントを点灯すると、昼間なんだか夜なんだかはっきりしない中途半端な雰囲気に陥りがち
 まずは、ダイニングキッチンに取り付けた実例から紹介しよう。我が家のダイニングキッチンは窓が小さいため、昼間でも照明が必要なほど暗い。部屋にあるペンダントライトを点灯するのだがそれでも暗く、昼間だか夜だかはっきりしない中途半端な雰囲気に陥ってしまう。また、隣の部屋から差し込んでくる自然光と電球色の灯りがしっくりこない。

 そこで、特に暗く感じる壁面を照らすよう、天井のトラックレールにDL-L60AVを付けたスポットライトを設置した(ペンダントライトはそのまま)。すると、昼光色に照らし出された壁面が、隣の部屋から入ってくる自然光とマッチして、とても良い感じだ。また、日が沈んでからは電球色にすることで、ペンダントの灯りと隣の部屋の照明が合い、とてもリラックスした雰囲気が醸し出せる。朝から晩まで暗かった我が家のダイニングキッチンが、常に居心地の良い空間に様変わりした。

ダイニングキッチンにDL-L60AVを設置。真昼には光色を昼白色にすると、奥の部屋から差し込む自然光と合い、ペンダントをつけていても昼間らしい雰囲気になった夕日が差し込む頃、光色を少し中間色にする。自然光の変化にも十分に対応できる奥の部屋の電球色の照明ともマッチし、全体的に落ち着いた雰囲気が演出できる
真昼のダイニングキッチンには昼白色。ペンダントが消えていても暗くなりすぎず、自然な雰囲気が保たれている夕方のダイニングキッチンには中間色。夕日が差し込んだ奥の部屋の壁の色味と、LED電球に照らされた壁の色味が近くとても自然だ就寝前のダイニングキッチン。食事も終わったらペンダントも消し、少し暗い雰囲気を作り、就寝に備える灯りが演出できる

 もう一つの例は仕事部屋だ。我が家の仕事部屋は寝室も兼ねているのだが、仕事と休息というまったく相反する機能を備えているため、どうにも気分にメリハリが付かなかった。

 そこで、DL-L60AVを設置し、仕事中は集中力を促すよう白っぽい光色に、就寝前はリラックスしやすいよう暖かみのある光色に設定した。光色で気分も大きく変わり、とても機能的な空間が作り出せた。

DL-L60AVの昼白色は、外が曇っていて十分な自然光が取れなくても、良い補助光となる。窓から入ってくる自然光、壁の色など、色味のバランスが良好で仕事がしやすい夜間の仕事中には、ほんの少し電球色を足すと暖かみのある白色光もなかなか心地よい就寝前の風景。DL-L60AVを電球色100%・明るさを50%に設定すると、奥の明かりとのバランスも良くリラックスしやすい雰囲気が演出できた。昼間とは全く違う風景になる

 使用シーンとしては上記の通り、窓が少なく自然光が届きにくい暗い部屋や、子供部屋や寝室といった、勉強をしたり寛いだりなど用途に幅がある部屋には、非常に重宝するだろう。光色も自然なので、リビングルームのような生活の中心となるシーンにもふさわしい。

中間色の場合、その明かりの下での読み書きをすると、光色のちらつきが気になった
 1つ残念だったのが、電球を「中間色」にした時、光が多少チラついてしまう点だ。全体照明に使用した場合、視線が動いている時はまったく気づかない が、電気スタンドに取り付けて、その明かりの下で読み物する場合、紙面に映る光の色合いがチラチラと変化してしまう。100%の昼白色、電球色にすればチラつきは無くなるが、中間色は光色が良いだけにとても惜しい。


白熱電球や電球型蛍光灯の代用品ではなく、新しいスタイルの明かりとして

 ところでLED電球といえば、白熱電球や電球型蛍光灯よりも消費電力が少ない“省エネ照明”。DL-L60AVも定格消費電力は7.8Wとなっているが、実際のところはどうだろうか。

 全灯時の消費電力をワットチェッカーで測定すると、昼白色と中間色の場合で7W、電球色で6Wという結果になった。光色によっても消費電力が変化するのは興味深いが、いずれにしても電球形LED電球の中では平均的な値だ。他製品と同様に省エネ効果が期待できるだろう。なお、半灯時は各色とも1Wで、微灯にすると0W(測定不能)となる。

【DL-L60AV:昼白色 7W】【DL-L60AV:中間色 7W】【DL-L60AV:電球色 6W】

 しかしDL-L60AVの場合、消費電力よりも、高価格である点の方が問題だ。Amazon.co.jpでの価格は 6,942円(12月21日時点)で、600シリーズのスタンダードモデルなら2個分に相当する高額商品だ。買い物ついでに1つ、なんて気楽に買えるものではない。

【省エネ性能比較】

電球ジャンル白熱電球電球形蛍光灯LED電球
製品名三菱オスラム
60W
パナソニック
パルックボール
プレミアクイック60W型
600シリーズ
調色・調光モデル
品番LW100V57W2PZEFA15EL/10HSDL-L60AV
電球1個の値段※71.5 円※※1,480 円6,942円
定格寿命1,000 時間13,000時間40,000 時間
実測消費電力56 W8 W7 W
1日8時間使用した場合の
寿命日数
125日
(約4カ月)
1,625日
(約4年5カ月)
5,000日
(約13年8か月)
1年間で必要な電球個数
(365日×8時間÷定格寿命)
2.92個0.22個0.073個
1年間の電球代
(1年間で必要な電球個数×購入価格)
209 円326 円506 円
1年間の電気代
(365日×8時間使用)
3,577 円514 円449 円
1年当たりの維持費
(1年間の電球代+1年間の電気代)
3,786 円840 円955 円
※白熱電球は2個セット143円でIKEAにて購入  ※Yodobashi.com での価格(12月10日時点)

 とはいっても、白熱電球と取替えた場合なら、2年弱使い続けた電球代と電気代が、DL-L60AVの1年間の電球代・電気代とほぼ同額。そこからさらに11年以上も使い続けられると考えれば、十分に元は取れると見て良いだろう。それに加えて、「電球だけで調色・調光が可能」という大きな付加価値は、白熱電球はもちろん、ほかのLED電球にはマネはできない。他製品とはまったく別の照明と考えた方が良さそうだ。

 それにしても、特殊な器具も必要なく、たった1個の電球を取り替えるだけで、部屋の雰囲気が何通りにも変えられるのはすごい。この上なく便利で、もはや生活に手放せない存在となってしまった。DL-L60AVは「白熱電球の代替製品」という枠を乗り越えた、まったく新しい製品と捉えるべきだろう。「新しいスタイルの明かり」として、ぜひともお薦めしたい。




2009年12月22日 00:00