家電レビュー

パナの月経リズムと睡眠わかるデバイスは忙しい女性の味方になる?

衣服内温度計測と睡眠モニターの機能を持つデバイスとスマホアプリを連携して、体調管理やアドバイスなどを行なう「RizMo」。現状はiOSのみの対応のため、Androidユーザーの筆者はiPhoneと合わせて貸し出してもらって試した。なお、本記事で紹介するアプリ画面は先行試用時のもので、サービス開始に伴い変更になっている可能性がある

ここ数年で活況を見せている“フェムテック”市場。フェムテックとは、“Female(女性)”と“Technology(テクノロジー)”を組み合わせた言葉で、テクノロジーの力で女性の健康課題を解決しようという製品やサービスが続々と登場している。

女性として、こうした流れはとても喜ばしい限り。筆者は既に中高年で現在は更年期真っ盛りだが、妊娠・出産、子育てなどを経て、これまでこうした悩みと奮闘しつつも、仕事を続けてきた1人だ。

パナソニックが10月から開始した女性向けの「RizMo(リズモ)」は、「リズムモニター」というデバイスと専用アプリを利用し、女性の体調を管理するという、これまでにはないユニークな体調ナビゲーションサービス。

10月から正式サービスを開始しており、その前に先行して3カ月ほど試すことができた。どういう時に役立ったかなどをお伝えしたい。

手軽に続けられるクリップ型のデバイス

女性の身体は、思春期からの月経に始まり、妊娠・妊活、出産、産後ケア、更年期などさまざまな特有の問題がある。こうした問題や悩みはこれまで公に語られる機会はあまりなかったが、昨今、女性の社会進出が進み、AIやIoTで個別の健康管理が可能になるなどテクノロジーの進化に加えて、SNSの普及などもあり、女性が悩みを共有しやすくなった。これにより社会的関心が高まり、フェムテックが注目されるようになってきた。

筆者は、数年前から体調不良をなんとなく感じつつも、仕事や子育てに忙殺されてやり過ごしてきた。現在は子育てがひと段落したところで復調してきてはいるものの、体調不良が更年期のせいだったのか、反抗期の子供と向き合う中でのストレス、老いに伴う肉体的な疲労が原因だったのかはよくわからない。おそらくそのどれもが複合的に重なっているのだろうが、とにかく心身ともに疲弊しきっていた。

特に子育て中の女性は子供のことが中心。自分のことはすべて後回しにしがちだ。振り返ってみると、もう少し自分自身に向き合うべきだったなと思うものの、そんな余裕は時間的にも精神的にもないというのが子育て期中の女性だ。

生活がやっと落ち着き、自らをいろいろと見つめ直すことができるようになった矢先に登場したのが、今回紹介するRizMoだったというわけだ。

専用デバイスの「リズムモニター」は、温度センサーと加速度センサーを内蔵し、衣服内の温度と睡眠状態の計測機能を持つ。ユニークなのが、クリップ状のデバイスを裏面が肌に触れるようにショーツなどに取り付けることで、睡眠時の衣服内温度と睡眠状態をモニタリングするというスタイル。

女性の身体は、排卵が起こると体温を上昇させるプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、高温期へと移行する。この月経リズムに連動する低温期、高温期の周期を衣服内温度によって把握できることが、パナソニックと日本大学工学部電気電子工学科の村山嘉延准教授との共同研究で明らかになっているという。「リズムモニター」はこれを利用した仕組みで、睡眠中の衣服内の温度を計測し、1カ月の体調変化を予測する。

一般的に低温期、高温期のリズムは基礎体温の変化から把握する。基礎体温の計測には、口腔内またや脇下で計測する婦人体温計が一般的だが、起床後に寝たままの姿勢で検温する必要があり、起きたばかりの寝ぼけた状態ではついつい忘れがち。以前、スマホアプリと同期してデータ管理を行なえる婦人体温計を利用していたことがあるが、計測を忘れてしまったり、Bluetoothの接続が切れたり、電池切れしたりするタイミングで、続かなくなってしまった。

一方、「リズムモニター」に関しては、クリップでショーツに挟む程度なので、枕元に置いておけば就寝前の習慣としてとても気軽。後はつけっぱなしで眠るだけなのでハードルが低く、続けやすい。

睡眠モニターは、リング型などウェアラブルなスマートデバイスが最近、続々と登場している。「リズムモニター」がこれら一般的な睡眠モニターと違う点は、睡眠時間の長さや寝つきまでの時間、中途覚醒の回数、浅い眠り、深い眠りの時間といったデータだけでなく、寝ている間の姿勢や体動の回数までモニタリングできるところ。下着に取り付けて測定するスタイルならではの機能だ。

「リズムモニター」のサイズは、4×5.3×1.7cm(幅×奥行き×高さ)、重さ(電池込み)21gで、軽量かつコンパクト。装着するのは就寝時のみで、起床後に取り外して、機器側面の転送ボタンを押せばデータが転送される仕組みだ。パナソニックによると、同様のデバイスは国内初とのこと。

電源はバッテリー式ではなく、コイン形電池(CR2032)式を採用。毎日使用しても半年程度は持つとのことで充電の手間がないのが手軽だ。

「リズムモニター」のサイズ感。手のひらに収まるコンパクトサイズだ

使用前はクリップ装着で手軽な反面、睡眠中にデバイスが外れてしまわないかを心配していた。特にトイレに起きた際に寝ぼけて落としてしまわないかが気がかりだった。しかし、さほど注意せずとも、立ち上がった時なども含めて試用中に一度も外れたことはなかった。睡眠中、寝返りやうつ伏せ寝などの際に、身体に当たって不快ではないかも気になっていたものの、こちらも違和感なく試用できた。

クリップ状で下着(ショーツ)の腹部の上あたりに挟んで取り付ける。内側は滑り止め的な突起が複数あり、下着の薄い布でもしっかり固定できる

アプリへのデータ転送は、起床してスイッチを押すだけですぐに同期される。体温計測はピンポイントでなく、装着中の体温変化を1時間ごとに確認でき、これも装着型のデバイスだからこその機能といえる。

クリップのヒンジ側に電源とデータ転送用のボタンを装備。装着前に右側の電源ボタンを必ず押しておく。起床後は左側のデータ転送ボタンを押してスマホアプリと同期する。中央のLEDランプで電源オンやデータ転送中であることを確認できる
アプリの「今日の体調」のメイン画面。「リズムモニター」のデータを転送すると、睡眠スコアや、独自のデータ分析アルゴリズムに基づくその日の体調指数やアドバイスなどが表示される
画面を下にスクロールすると、その日の「温度・周期」、「睡眠量」「睡眠質」「睡眠リズム」「体重・体組成」の分析結果の概要が一覧で確認できる
各項目をタップすると、さらに詳細な分析結果を確認できる

寝ている向きまでわかる睡眠モニタリングがおもしろい

睡眠状態は、寝ている間の姿勢や体動の回数までわかるのがやはりおもしろい。健康や生活習慣の改善には、わかりやすい指標が必要。無意識な睡眠中の状態を把握することはなかなか難しいが、「リズムモニター」ならこれを手軽に実現できる。

例えば、あおむけよりも、横向き姿勢で寝ている時間が意外に長いことがわかった。さらに横向きの姿勢でも、例えば夜中に暑いと感じた時は空調機器側を向いている時間が長く、寒いと感じた朝方は反対側に向きを変えているなど、室内環境とリンクしていることが多いのが見事に示されていて興味深かった。睡眠時の状態が視覚化されたことで、空調機器のタイマー設定を変更してみるなど、睡眠時の環境改善へのアクションにつながった。

1晩の睡眠中の寝姿勢の分析結果。時系列で確認でき、この日は左側を向いている時間が長かったようだ
1カ月間の寝姿勢の分析結果をグラフで確認することも可能。あおむけよりも左右横向き姿勢で寝ている時間が結構長いことがわかった
ひと晩の睡眠中の体動もグラフ表示で可視化
体動回数を月間でグラフ表示

ただし、「リズムモニター」でひとつ難点に思ったのは、寝落ちしてしまった時には測定できないことだ。指につけっぱなしの状態のリング型のデバイスであれば、常にモニタリングしてくれるため、仮眠時のログまでしっかり記録してくれる。筆者の場合、夕食後に家事を終えて休憩している時間帯にいつの間にか寝落ちしてしまうことが多く、その場合はデバイスを未装着なため、睡眠中のデータが計測されない。そうなると、RizMoの記録上の1日の睡眠時間が実際よりも少なく見積もられてしまうため、睡眠スコアが「睡眠不足」とどうしても低く出てしまいがちだ。

寝る前に“取り付ける”というアクションが求められるため、不意の睡眠には対応できない。リング型の睡眠モニターも併用しているため、仮眠を含めたより正確な睡眠時間は把握できるが、“睡眠不足”という感覚そのものが実はストレスにつながったりもするのでこの点はなんともしがたい。

というのも、リング型の別の睡眠モニターを使用するようになって以来、自分の睡眠時間というのが毎日簡単にわかるようになった。その結果、感覚では眠れていないと思っていても、細切れながらも実は5~6時間は眠れていたりして、“主観的不眠”の状態でもあることがわかった。

睡眠の質は年齢とともに変化するといわれている。年齢が増すほどに長時間連続して眠れなかったり、朝型の傾向になるそうだ。筆者の場合は、出産後の習慣なのか、睡眠中に何度か目が覚めることが多く、朝までぐっすりということがなくなった。そのせいか断続的な眠りの印象が強く残り、「ぐっすり眠れなかった」と思いがち。

しかし、睡眠モニターを利用するようになり、たとえ細切れでもトータルでは睡眠時間が取れているとわかることで、それだけでも気持ちが楽になり、「眠らなければ」というプレッシャーから解放されて睡眠の改善につながった。また、RizMoに限らず、“長さ”だけでなく、深さなどの“質”でも睡眠を把握できる睡眠モニターの有用さを実感している。

1カ月後の体調が予測できるから対策を立てやすい

RizMoでは、他にも計測結果に基づいた1カ月後の体調予測や、生理周期全体を通じた体調の傾向レポート、アドバイスなども表示される。予測段階では月経周期に基づいた数値が表示されるが、データを転送するとその日の睡眠状態の結果に応じて、スコアが修正されるようになっている。

そのため、月経周期的には体調スコアの予測が低い日であっても、睡眠の結果次第で数値が変わり、それが「しっかり眠って明日をよりよい1日にしよう!」という睡眠に対するモチベーションや行動変容につながっていき、体調改善へ効果を発揮する。

データ転送前のその日の体調予測画面。睡眠データは反映されていないが、調子のいい卵胞期のため、スコアは70とまずまず
データ転送後、スコアがわずかにアップ。この日は睡眠スコア自体は悪くはなかったが、その前の結果から無理せず休養を促された。こういうアドバイスも地味に参考になる

アプリでは、その日の気分や体調(むくみ、腰痛、ほてりなど)なども入力できる画面が用意されている。不調がある項目をチェックすると、すぐに対応するアドバイスがホーム画面に表示されるのも参考になる。アドバイスをもとに「今日はこうしよう」という行動変容やブレイクタイムにつなげられる。排便の有無、飲酒の有無なども記録できるので、「最近なんか調子悪いな」と感じた時に振り返ることができ、参考になる。

気分や体調を入力する画面。なんとなく便秘気味だったりするときにも具体的にいつからかがわかるので後から振り返る時に役に立つ

症状には個人差があるものだが、一般的にいわゆる生理の直前期は“PMS(月経前症候群)”と呼ばれる症状に悩まされる女性は少なくない。成人女性であれば、こうした周期はなんとなくは把握しているものだが、多忙で自分のことは二の次になりがちだったりすると、前もって意識するのが難しかったりする。

そのため、RizMoのようにアプリを通じてサポートしてくれる存在はありがたく、安心感につながる。意識しなくても手軽にバイオリズムを事前に把握しておければ、気持ちの上でも準備できるし、必要に応じて家族にも伝えることでお互いの配慮にもつなげられる。

「今日の体調」画面では、その日のリズムに合った過ごし方や不調に対するアドバイスが表示される。これを参考に「今日はこれを試してみようかな」と自分では考えもしなかった行動につなげられるのがありがたい

10月10日の本格サービス開始以降の「RizMo」の利用料金は、初期契約料が5,500円で、月額500円のサブスクリプション形式だ。月額プラン解約後もデバイスは返却不要で、各種計測結果の表示はできるものの、体調スコアや睡眠スコアの表示や判定、自身のデータに基づくアドバイスなどは利用できなくなるなど、機能は制限される。

月経期間が終了するごとに自動作成される「周期レポート」の一例。「レポート」の画面で確認できる
「アドバイス」の画面では、基礎知識やレポート結果に基づくアドバイスやコラムが読める。当たり前に知っていて、わかりきっていると思っていた内容でも、改めて確認すると意外に参考になる情報があるもので侮れない

つまり感覚的には、初期契約料5,500円がリズムモニターのデバイス代とも言える。体調スコアや睡眠スコアの表示や判定、アドバイスなどの機能は確かに便利でありがたいが、月額500円は個人的にはちょっとお高い気がしなくもない。しかし、正式サービス開始後からは、看護師・薬剤師・臨床心理士などの50名を超える専門家によるオンライン健康相談やLINEを活用したパートナー共有機能などが新たに提供されるようになるとのこと。こうした+αのサービスや機能をうまく活用したり、考え方次第では妥当と思える可能性はある。

「カレンダー」画面。1カ月先の体調のアップダウン予測をグラフで表示。月経や排卵日の予測や、過去の入力データをもとにした起こりやすい不調もアイコンで表示され、タップすると具体的な内容が確認できるので予定を立てる際の参考になる

月経周期に伴う毎月の体調変化に加えて、結婚・妊娠・出産といったライフイベントに伴う心身の変化が大きく、そこに仕事や子育てのストレス、更年期による不調といったさまざまな負担が重なる女性にとって、きめ細やかな体調管理はなかなかハードルが高い。自分の心身と向き合い、うまく乗り切るためにも、これからの時代はこうしたサービスをうまく活用していくのは有効だと思う。今は過ぎ去ってしまったが、子育て期の一番つらかった時期にRizMoのようなサービスがあればもっと救われたと思う。

本当に辛くなったら医師の診察を受けるべきだが、子育て中の女性は子供の通院に時間が取られてしまったり、自身が通院したりケアする時間がなかなか捻出できなかったりもする。軽度な不調の把握や予防のためにも、こうした手軽な体調管理ツールは利用する価値があるだろう。人ではなくても自分自身の体調に寄り添ってくれる存在自体が意外に心強かったりするものだ。

女性特有の不調は本人だけの問題ではなく、家族や社会で取り組むべき社会課題でもある。将来的には健康保険や助成費等の公的医療支援とあわせて、こうしたサービスの利用が広がっていくのが理想だ。

アプリは現時点でiOSのみの対応。筆者も含めてAndroidユーザーは、まずはAndroid版の登場を待ちたい。

神野 恵美