ニュース
パナソニック、下着に挟み月経リズムわかる技術 基礎体温計より手軽
2025年3月4日 10:05
パナソニック くらしアプライアンス社は3日、日本大学工学部電気電子工学科 村山嘉延准教授と共同で、就寝中に腹部周辺の衣服内温度を計測することで、女性特有の月経リズムに伴う二相性が把握できることを実証したと発表した。2025年内には本検証結果を活用した新製品の発表も予定している。
月経リズムを把握する方法としては、口腔内で計測する婦人体温計を用いた基礎体温計測が一般的だが、多くの女性は自身の健康管理を目的とした基礎体温計測を習慣化できていないという。
同社は、月経リズム把握の習慣化のサポートを目的に、就寝中の衣服内温度に着目し、ウェアラブルデバイスの原理モデルを開発。加えて、生殖医療領域における生体データ解析の専門家で、腹部の衣服内温度に関する研究も行なっている村山准教授との共同研究を実施。以下の検証結果を得られたとする。
- 衣服内温度で月経リズムに連動する低温期、高温期の二相性パターンを観察
- 衣服内温度と基礎体温との間で高温期移行日に差がないことを確認
一般的に黄体形成ホルモン(LH)が大量分泌されると排卵が起こり、基礎体温が上昇する。そのため、上記の結果から、衣服内温度の高温期への移行は排卵後の生体反応を捉えたものと考えられるという。
村山准教授は「衣服内温度は就寝中に自動で測れるため、月経リズムの把握を無理なく習慣化できる可能性がある」とコメントしている。
検証方法は次の通り。衣服内温度は研究用に制作したプロトタイプのデバイスを下着にクリップで装着した状態で、就寝中に自動計測。基礎体温は、市販の基礎体温計を用いて毎朝の起床時に計測。被験者は自然な月経周期の女性44名(平均年齢39.0±6歳)で約3カ月間、毎日計測を実施。さらに月経開始日から約10日後に市販の排卵日予測検査薬を使い始め、排卵の反応が出るまで毎日検査を行なった。
皮膚温度を測れるウェアラブルデバイスには腕時計型や指輪型があるが、これらは外気に晒されており、正確な計測が難しい。本デバイスはクリップで下着に装着するため、パジャマや寝具によって断熱されることで体内深部温度に近い温度を測定できる利点がある。
検証は冬と夏に行なわれ、夏は薄着やエアコンの影響でデータにばらつきが多いものの、いずれの周期でも低温期から高温期への移行が判定されているため、季節を問わず使える計測機器になっているとのこと。
計測するのは皮膚温度ではなく衣服内の温度。肌に触れる側に温度センサーを内蔵している。おへそのあたりに装着するが、デバイスは薄型のため装着感や圧迫感は感じにくいという。
データは起床後に転送ボタンを押すことで、Bluetooth接続したスマホアプリへと送られる。装着やデータ転送の手間がなく、継続して使いやすい設計だ。
基礎体温とは、毎朝の起床時に口腔内(舌下)で測定した安静時体温のことで、継続して測ることにより排卵日や妊孕性を推定できる。そのため不妊治療の初期段階で、基礎体温の計測と記録を一定期間行なうこともある。
本検証に用いられたデバイスが基礎体温計の代わりとして妊活に利用できるのかという記者の質問に対して、村山准教授とパナソニックが回答。
村山准教授は「不妊治療に関しては複数の客観的数値を見て判断していく必要がある。基礎体温もそのうちのひとつで、基礎体温だけ見ても十分ではない。ひとつのデバイスで判断はできないが、ひとつの手として活用するのはいいかもしれない」との見方を示した。
一方で「個人的には医療目的ではない使い方にメリットがあると感じている。なにかを診断するための装置ではなく、自分の体に関心を持つきっかけとなり、体を労わったり、心身ともに健やかになる方向に作用すればいい」との考えも述べた。
パナソニックは「基礎体温計に代わるものを作るという目的ではない。検証を通して、女性が意外と自身の排卵期を知らないことに気付いた。本デバイスは低温期と高温期を知る目的にはとても便利に使える。そこに価値を感じており、これから女性の健康管理に応用できれば」としている。