家電レビュー

パナの自動計量炊飯器は帰宅するとちょうど炊きたて! 圧倒的に手間ナシでおいしい

パナソニックの自動計量IH炊飯器「SR-AX1」

みなさんは、日ごろからごはん(米)とパンのどちらをより多く消費していますか。筆者は米派ではあるものの、近ごろはごはんを炊く手間が惜しくてパンばかり食べていました。

今回、パナソニックが7月から一般販売を開始した、自動計量IH炊飯器「SR-AX1」を試せる機会がありました。筆者が再び米食ライフを取り戻すことができたのかを、レポートします。

面倒がりやは「とにかく簡単」がいい

筆者が米食と疎遠になっていた最大の理由は、手軽さです。パンの場合は出来あいの商品を買って食べますが、ごはんは調理する手間が少しかかるからです。今どき自動炊飯器があるのにどんだけ怠惰なんだと言われそうですが、わが家はいつも土鍋でごはんを炊いています。おかずを作りながら並行して米も調理しているのです。

「SR-AX1」を試用するにあたり、筆者が最も知りたいことはやはり「3つの手間(準備・調理・後かたづけ)」がどのぐらいかかるのかです。誰でもシンプルに毎日使える炊飯器ならば、肩肘張らずに米食習慣が身につけられます。

ほかにも動作音がうるさくないか、吹きこぼれの有無、そして何より「おいしく炊けること」にも注目しました。

「SR-AX1」はアプリで簡単に調理予約ができるIoT炊飯器です

適量のごはんがおいしく自動で炊ける

自動計量IH炊飯器「SR-AX1」は、本体の上部に最大2kg(約13合分)の米をストックできる“米びつ”があり、毎度水タンク(最大容量600ml)を補充しながら、0.5合から2合まで0.25合きざみで、炊く米の量が指定できます。

製品の名称にもある「自動計量」にパナソニックらしい技術力が活きています。本体の下部にセットする“おひつ/内釜”に、あらかじめユーザーが設定した分量の水と米が自動で送られます。同時に内蔵する重量センサーで、水と米の重さを検知して、設定どおりに炊飯量を自動計量してくれます。コーヒーメーカーのような感覚で、手軽にごはんが炊けるという仕組みです。

自動計量した米がおひつに投入され、コンパクトな内釜で調理します
最大容量600mlの着脱可能な給水タンク

本機は無洗米専用機です。パナソニックが実施した調査では、集まった回答の約7割が精白米と比較して「無洗米の方がおいしい」、または「味は変わらない」と答えたこともあり、無洗米専用機にすることを決めたそうです。筆者もふだんは無洗米を食べているので抵抗感なく本機に興味を持ちました。米を準備する際に使う水を節約できて、タンクにセットする水だけで無駄なく調理できるところが魅力的です。

本体上部の米びつに2Kg(約13合分)の無洗米を投入しておきます

米の炊き方を細かく設定したり、外出先からの炊飯開始操作、炊飯予約などにはiOS/Androidに対応する専用アプリ「キッチンポケット」を使います。アプリの使用にはCLUB Panasonicの会員登録と、「SR-AX1」をホームネットワークに接続するためのWi-Fi環境が必要です。最初に設定を済ませてしまえば、外出先からの炊飯予約操作などはスマホから行なえます。

キッチンポケットアプリから炊飯量、炊き方などを決め、ホームネットワークに接続された炊飯器に予約を送信します

「SR-AX1」の本体サイズは17.6×33.6×33.6cm(幅×奥行き×高さ)、重さは約4.8kg。セットしている米の量にもよりますが、水タンクや米びつを外しておけば、本体を持ち上げて場所を移動させることもさほど苦になりません。加熱調理中に「吹きこぼれ」がほとんどないので、本機を置く場所はキッチンカウンターやダイニングなど自由に選べます。

おいしいごはんを炊いてみた

それでは「SR-AX1」でごはんを炊いてみましょう。本体の操作だけでも炊けますが、まずはアプリを使って炊飯してみました。

あらかじめアプリ経由でユーザー登録を済ませると、続けてホームネットワークへの接続設定を行ないます。この時に「登録する機器の家電カテゴリー」の項目で「炊飯器」ではなく、「自動計量IH炊飯器」を登録する点に注意が必要です。

アプリを使うと食感を“やわらかめ”から“かため”まで5段階から選んだり、炊飯量の調整、外出先からの炊飯、予約設定の変更などが細かくできます。炊き方はパナソニックの炊飯器が「おいしく炊けるおすすめのコース」として設けている「銀シャリ」のほか、「早炊き/カレー用(少しかため)/全がゆ/5分がゆ」から選べます。

炊き方は「銀シャリ」にして、かたさ加減はふつう、1合分を炊いてみました。

はい、文句なしにとてもおいしいです。

銀シャリモードの炊き方調整を1段「やわらか」に設定すると、わが家のごはんの味に一歩近づきました。

筆者がふだん土鍋で炊いているごはんは仕上がりの柔らかさに都度バラツキが生じるのですが、「SR-AX1」の場合はそんな曖昧さがなく、はじめは「よそのウチのごはん」をいただいているような感覚がありました。

炊飯予約を送信したり、調理が完了したタイミングでスマホに通知が届きます

タンクの水は毎度入れ替える必要はありますが、あとは最大3件までメモリーに設定できる好みの炊き方を選んで炊飯を開始するだけなので「準備の手間」も要りません。

加えて「調理を見守る手間」も不要。蒸気が立ちこめたり吹きこぼれることが一切なく、炊飯中はとても静かです。

本体をキッチンカウンターに置いて調理。吹きこぼれもないので、置き場所が自由に決められるところも魅力です

銀シャリコースで1合を炊く設定を選ぶと、炊き上がりまでの時間が約60分と表示されますが、実際にはそれよりも早く45分前後で炊けました。

本体でのタイマー予約またはアプリからの遠隔予約が活用できるうえ、予約を忘れてしまった場合でも、帰宅してすぐに炊飯を開始すれば1時間も待たずにおいしいごはんが食べられます。

ただし「SR-AX1」には「保温機能」がないので、タイマー予約の時間を大幅に過ぎて帰宅する場合は、アプリで予約時間を変更するか、キャンセルしておきましょう。せっかくのごはんが硬く冷たくなってしまうので要注意です。

おいしく炊き上がりました。保温機能はないため、基本は炊いた分を食べ切る使い方になります。味は家族にも合格点がもらえました

パナソニックの使用ガイダンスには、「SR-AX1」の「おひつ/内釜」がそのまま食器として使えることが記載されていますが、筆者はすぐにごはんを茶碗などに取りわけて、内釜も水に浸けておく方がよいと思います。少し時間を置くと、内側に付いたごはん粒が洗っても落ちにくくなるからです。パナソニックは内釜の変形を防ぐためとして、電子レンジなどで温めないことや、内面のフッ素加工を傷つけないように金属製のスプーンなどを使わないことを注意事項としています。

なお、アプリを使わず「本体だけで炊飯する」こともできます。本体の天面操作パネルで「RICE」を押すと、炊飯量が「中盛り1杯=0.5合」から0.5合きざみで4段階まで選べます。あとは「START」を押すだけ。通常の炊き方である「銀シャリ」は約60分、STARTを二度押しすると約45分の「早炊き」モードで炊けます。

アプリを使わなくても、本体天面のタッチセンサーリモコンの操作により炊飯することもできます

失敗は起きる前に防ぐ仕組み。メンテナンスも簡単

ごはんが炊き上がると、キッチンポケットアプリがスマホにアラートを表示して知らせます。おひつが本体に正しくセットされていなかったり、タンクに水が入っていない場合はエラーと認識して炊飯を中断。トラブルは未然に防ぐ機能があるので安心です。

タンクに水が入っていない状態で誤って炊飯を始めてしまった場合など、エラー通知がアプリから飛んできます

保温機能がないことについては、わが家では日ごろ土鍋でごはんを炊いていたので大きな問題になりませんでした。毎食ごとに食べたい分だけ炊けばいいし、余った分は冷凍して次の食事にまわせます。

「後かたづけの手間」は、毎食後におひつ/内釜、水タンクと給水パイプを洗い、必要に応じて本体のおひつの「連結パッキン」の洗浄、本体底面の送風口のほこり取りを心がけるだけで、清潔に保てます。

ただ、筆者宅では「米タンク」の取り扱いについて議論になりました。わが家はこれまで米を毎日食べる習慣がなかったので、使う分だけを冷蔵庫から出して炊いていました。

特に夏の間は湿度の高い日もあり、キッチンがじめじめすると本体の米びつに入れっぱなしにした米が劣化しないか不安に駆られました。

パナソニックの製品担当者に問い合わせたところ、毎日1〜2合のごはんを食べると、本機にストックできる最大2kg(13合)の米は1週間から10日前後でなくなるので、通常の使用方法であれば米が劣化する心配はないという回答でした。

そのため、ユーザーが毎度必要な米の量をカップなどで計量して投入するのではなく、公式の利用方法の通り、本体の米びつにあらかじめ投入しておくのが現実的なようです。設置環境に合わせたメンテナンスを心がけつつ、筆者の目標である「普段から米をよく食べる生活習慣」を身に着けることが「SR-AX1」の活用術として正解であると感じました。

もっと気軽に米を食べたいすべての人におすすめしたい

パナソニックの自動計量IH炊飯器は、おいしいごはんを食べることの周辺につきまとう手間から解放してくれる、画期的な調理家電の新カテゴリーであると感じました。

そもそも筆者が米食中心の生活に興味を持ったのは、今年の春に受診した人間ドックで、「血糖値が高い糖尿病予備軍」と判明したのも理由の一つでした。

筆者にはあまり思い当たる節がなく、原因は体質によるところも大きいそうですが、医師からは「米食の機会を増やしてみてはどうか」とのアドバイスもありました。米に含まれる糖質は体内でゆっくりと消化吸収されることから満腹感が持続しやすく、結果として間食しなくなることから糖類の摂取量を減らす効果が期待できるそうです。

筆者は妻とふたりで暮らしているので、SR-AX1があれば取材や原稿の執筆が詰まっている時にも2人分、あるいは妻がごはんを食べたくなければ自分のぶんだけ手早く、しかも本格的においしいごはんが食べられることは本当にありがたく感じました。実際に本機がわが家にいる期間中は、取材をそっちのけでよく炊いていました。

土鍋で米を炊くときには火加減を見張る必要がありますが、SR-AX1は調理や後かたづけの手間が格段に省けるので、わが家でも米食のハードルが下がり、血糖値の上昇を抑える食生活に一歩近づけそうな手応えがありました。パナソニックの直販サイトであるPanasonic Store Plusでは45,540円で販売されています。筆者はとても合理的で納得できる価格だと思います。

外出先から炊飯予約を送信。自動計量IH炊飯器が「おいしいごはんのある生活」を身近なものにしてくれます

SR-AX1はひとり暮らしの方や、手作り弁当にも炊きたてのご飯を詰めて楽しみたい方におすすめです。

動作音がとても静かなうえ日ごろの手入れも簡単なので、家庭でなくても小規模なオフィスであれば、スタッフによる共同利用にも向いているかもしれません。ごはんは本機で炊いて、おかずを持ち寄れば、外食に比べてランチの出費が少し抑えられそうです。もし今後、一度に2合以上炊ける自動計量IH炊飯器のファミリーサイズのモデルも登場すれば、歓迎されるのではと思っています。

山本 敦