家電レビュー

エコフローのポータブル電源とソーラーパネルでお仕事電源はタダ!?

2万円以下で購入できたEcoFlowのポータブル電源「RIVER 2」

ブラックフライデーでつい……

2022年の11月25日から12月1日まで、Amazonで毎年恒例のブラックフライデーが開催された。今年は特に何か買うつもりはなかったのだが、ある記事でEcoFlow Technology Japan(エコフロー)のポータブル電源「RIVER 2」がセール価格になっており、さらに5,000円引きクーポンも適用されて20,000円以下で買えるという情報を目にしたので、ついうっかり買ってしまった。加えて、110Wソーラーパネルも25,000円以下になっていたので、これもセットで購入。通常価格はRIVER 2が29,900円で、ソーラーパネルが33,000円だ。

今年の夏、台風の影響で長時間の停電に見舞われて以降、ソーラーパネルとバッテリーに俄然興味が湧いてきた。メーカーさんからお借りしてテストさせてもらったりしていたが、やはり自分用のものがないと、知見が広がらない。そんな勉強用セットとして、合計43,000円ほどで購入できたのはラッキーだった。

イキオイでソーラーパネルも買ってしまった……

高速充電が魅力のRIVER 2、上に充電中のスマホを置ける

エコフローは2017年に深センで創業したベンチャー企業だが、現在は多くの製品をグローバル展開している。Amazonで頻繁にセールを行なっているので、ご存じの方も多いだろう。

RIVER 2は、10月に発売が開始された新モデルである。前モデルのRIVERシリーズは、「RIVER」「RIVER Pro」「RIVER Max」の3タイプがあり、上部にハンドルが付いたデザインだった。これがリニューアルされ、RIVER 2はその第1弾というわけである。

デザイン的にはこれまで上部にあったハンドルが後部に移り、上面にスマホやイヤホンなど充電中の小物を置けるようになった。重量は3.5kgで、従来モデルより30%軽量化している。したがってハンドルが後部にあっても、それほど持ちにくくはない。またハンドル下部に吸気ファンがあり、ハンドルの出っ張りによってファンが塞がれることを防止する働きもあるようだ。

後部にハンドル
ハンドル奥に吸気ファン
平たい天板には、充電中の小物を載せられる

RIVER 2の特徴は、本体への充電(蓄電)速度にある。容量は256Whだが、ACから約1時間で充電できる。充電入力はすべて背面で、AC入力とソーラーなどで使えるDC入力がある。DC入力用としてシガーソケットアダプターも付属する。また前面のUSB Type-C端子からも充電可能だ。

背面の充電端子

出力端子はすべて前面にあり、DCはシガーソケットが1つ、USB Type-Aが2つ、Type-Cが1つ。AC出力は2つある。シガーソケットおよびAC出力は、独立して出力ON・OFFスイッチがある。USBについては特にスイッチはなく、機器を接続すればいつでも使えるようになっている。

出力はすべて正面

AC出力は合計300Wで、独自の「X-Boost」機能により450Wまでの機器が使える。これは450Wが出せるわけではなく、接続機器をコントロールして動作電圧を下げ、300W程度で動かす機能だ。したがってコントロールできない単純な家電、例えば電気ストーブなどを450Wで動かせるわけではない。

RIVER 2の内蔵電池は、リン酸鉄リチウムイオン電池だ。前モデルのRIVERは一般的なリチウムイオン電池で、充放電サイクル寿命は約800回だった。一方、RIVER 2の充放電サイクル寿命は約3,000回となっている。前モデルから容量と最大出力は下がったが、この長寿命がポイントとなっている。

バッテリーのステータスは、専用のスマホアプリから確認できる。BluetoothだけでなくWi-Fiでも繋がるので、出先から発電状況を確認したり、出力のONとOFFもできる。

専用アプリでバッテリーの状態を確認

ソーラーパネルはケースをスタンド代わりにする構造

ソーラーパネルの「EcoFlow 110W」は、発電効率22.8%の単結晶シリコンパネルを4枚繋ぎ合わせたもので、定格出力は110W。パネルのみの重量は約4kgで、防水防滴性能はIP68。別途キャリングケースが付属する。

ソーラーパネルを展開

多くのパネルでは、背面に角度調整用のスタンド機能が搭載されているが、本機にはスタンド機構がない。そのかわり、キャリングケースにカラビナを取り付けてスタンド代わりにする構造になっている。

キャリングケースを使って斜めに立たせる構造

出力のMC4ケーブルは右側から上下に出ており、それぞれ逆向きなのでケーブリングにやや難がある。単体で使うには不便だが、複数枚を接続しやすくするためのものかもしれない。MC4端子からバッテリーへ接続できる、XT60への変換ケーブルも付属するが、キャリングケースにケーブルポケットのようなものが何もないのも残念だ。

ケーブルが上下に出ているのが、微妙に使いづらい

発電と消費電力のバランスは?

RIVER 2とEcoFlow 110Wの組み合わせでやってみたかったのは、仕事に必要な電力をすべてソーラー発電でまかなうことができるのか、という実験である。現在筆者はAppleのノートパソコン「M1 MacBook Air」にREGZAの40インチ4Kテレビ「40M510X」を繋いで、モニター代わりに利用している。これだけで仕事はできるのだが、仕事中に音楽を聴くためにスマートスピーカーの「Echo Studio」をステレオペアで2台動かしたり、ニュースをチラ見するためにスマートディスプレイの「Echo Show 15」を利用したりしている。

仕事部屋の電力結線図

M1 Macと4Kテレビだけのミニマムスタイルなら、消費電力は50Wぐらいだ。M1 Macはかなりの低消費電力で、これだけなら10Wぐらいで動いている。4Kテレビ「40M510X」は定格動作時115Wと書いてあるが、HDMI入力しか使っておらず音も出していないので、40Wぐらいである。もちろんパソコンの消費電力は、負荷に応じてどんどん変わるので、4K動画編集などするともっと消費電力は上がる。

Echo Studioは2つ合わせて10Wぐらいである。音楽を聴きながら仕事すれば、ノートパソコンや4Kテレビと合わせた消費電力は60Wぐらいだ。Echo Show 15は10Wぐらい。昨今は足元が寒いので、小型のパネルヒーターを点けたりしているが、これが20Wぐらい。手元が暗いときはUSB電源のデスクライトを使うこともあるが、これが意外とバカにならず、10Wぐらい食っている。

フルセットで動かしても、全部で100W程度である。普段は全部いっぺんに動かさないため、平均すると仕事中は70〜80Wぐらいで稼働していることになる。これぐらいなら、ソーラー発電でまかなえる。

南向きにソーラーパネルを設置、冬の日差しでもしっかり発電

筆者宅のマンションは南向きなので、ソーラーパネルは窓際に置いておくだけでいい。太陽の角度としては、朝9時ぐらいから発電が始まり、11〜13時ぐらいがピークとなる。ピーク時はだいたい100Wほど発電してくれるが、冬の日差しでこれぐらいなら充分だろう。

そこから16時まで徐々に発電量が下がり続ける。16時以降はベランダの手すりの影がパネルにかかってくるので、ほぼ発電しない。ソーラーパネルの特徴として、パネルに少しでも影がかかっただけで発電量は半分以下に落ちる。影がかからないように設置するのがポイントだ。

角度が良ければ100Wぐらいは発電できる

実際にソーラーパネルをベランダに設置し、RIVER 2を電源にして1日仕事してみた。仕事開始の9時時点で、RIVER 2のバッテリー残量はざっと50%ぐらいだったが、M1 Macと4Kテレビのミニマムセットで作業すると、12時ごろまでにバッテリー残量が60%ぐらいまで増えている。昼休みに1時間ほど機材の電源を切って、戻るとバッテリー残量はだいたい80%ぐらいになる。

その後、音楽をかけながら仕事をしていると、16時の発電終了時刻の時点で残量は40%。仕事終了の18時には残量20%となっている。

電池残量50%からスタートして最終的には20%なので、完全にソーラーパワーだけでまかなえているわけではないが、晴れてさえいればかなりの電力がまかなえることがわかった。

小型のソーラー発電で元はとれる? 自家発電&消費で気付いたこと

一方で小型のソーラー設備で自家発電・自家消費するのは、コストが合うのか。例えば1日平均100Wの発電が5時間可能だったとしよう。系統電力では、100W1時間の電気代はおよそ2.7円とされている。つまりソーラーによる発電では1日あたり13.5円の電気代が節約できることになる。

今回購入したセットが43,000円なので、毎日13.5円発電すると、約8.7年でペイすることになる。ただ雨の日は発電できないし、バッテリーやソーラーパネルも経年変化で性能が落ちてくることを考えると、10年動いてやっとトントン、ぐらいの話である。今後もっと機材コストが下がるか発電効率が上がるかすれば別だが、発電で元を取るのは、補助金でも出ない限りかなり難しい。

自家発電・自家消費のメリットは、コスト的にはほぼない。よってソーラーシステムの広告宣伝が、「クリーンエネルギーで暮らせる」といったマインド方向へシフトしている理由もわかってくる。こうした様々な気づきがあったのが、今回の導入メリットだと言えよう。

以下にそのほか気づいた点を挙げてみる。

系統電力の電気代って安っす!

ソーラーシステムで元が取れないのは、そもそも電気代が安いからである。自分で発電するコストを考えれば、系統電力は安いと感じる。逆に今後電気代が高騰するなら、ソーラーシステムの損益分岐点も変わっていくかもしれない。

スマートスピーカー類の待機電力が無駄

スマートスピーカーは、いつでも音声で反応できるように常時電源が入っているが、音楽を再生しても待機してても消費電力はほとんど変わらない。音楽をかけている実動時間は1日2時間ぐらいなのに、利き耳を立ててるだけで電気食いすぎである。

4Kテレビって、意外に電気食わない

4Kテレビは常時100Wぐらい電気を食っていると思いこんでいたので、これをモニター代わりにするのはかなり贅沢な使い方だと考えていた。だが実際には40Wぐらいで動いており、40インチというサイズを考えたらリーズナブルだった。また主電源を切ってもスタンバイ状態でも、起動時間はほぼいっしょだ。テレビのスタンバイはタイマーで自動録画するためなので、主電源を切っても何の問題もなかった。

ソーラーパネルは、太陽との角度によって発電量が相当違う

キャリング型のソーラーパネルは設置角度が自由に変えられるので、季節ごとの太陽の仰角に合わせて設置できる。一方屋根への据え置き設置は、そもそも屋根の角度や方向で設置角が決まってしまうので、パフォーマンスはかなり限定的なんじゃないかと思われる。

制御ソフトが損益分岐点を左右する

バッテリーを系統電力に繋いでおくと、そこから勝手にフル充電してしまうので、ソーラーパネルを繋いでも蓄電できない。系統電力からの充電は50%ぐらいに抑えたいのだが、現時点ではそうした制御ができない。今後の差別化要因は、そのあたりになりそう。

M1 Macはパフォーマンスの割にはかなり省電力

M1 Macは拡張ボックスを介してHDMI出力しているのだが、拡張ボックスには入力ワット数が45Wと表示される。だがこれは最大入力のようで、常時45W食っているわけではなかった。一般的な原稿書きなら10Wぐらいで動いているので、かなり省電力である。

発電中は、バッテリーの吸気ファン音がかなりうるさい

RIVER 2は入力ワット数に応じてファンの回転がリニアに追従するため、ソーラーでガンガン発電すると、ボディはそれほど熱を持っていないにもかかわらずファンもガンガンに回る。キャンプ場などでは気にならないのかもしれないが、静かな自室だとそこそこうるさい。だが日が陰るとファン音も小さくなるので、外を見なくてもなんとなく天気がわかる。

ソーラーパネルとポータブル電源を使ってみて、節電への意識が変わった

いろんな機器を繋いで実質的な消費電力を見ていくと、何が効率が良くて何が効率悪いのかはっきりする。待機電力などはほとんど無駄で、そういうものはスイッチ付きテーブルタップに繋ぎ、使うときだけ電源を入れても大して不便ではないことも気づきがあった。

我々は東日本大震災の際に、電力ひっ迫による計画停電も経験したわけだが、今やすっかり忘れて、ちょっとした便利のために無駄に電気を使う生活へと戻ってしまった。しかし、ソーラー発電機器の導入で、節電に対する意識も変わった。単に「電気を食ってそうなイメージ」ではなく、実質消費電力を見ることで、生活を犠牲にするような「根性節電」から卒業できたのは、大きな学びがあったと思う。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。