家電製品レビュー
人工知能が使用者のブラッシングを認知・分析し、ガイドしてくれるブラウン「電動歯ブラシ」
2020年1月21日 06:00
健康に日々を送るためにも、虫歯や歯周病の原因となる歯垢は、毎日しっかり除去したい。だが毎日のことだけに、忙しさにかまけてケアが雑になったり、慣れや個々の磨きグセから、磨き残しはどうしても起こりやすい。歯科医を訪れれば、第三者の目で磨き残しのチェックやブラッシングなどの指導を受けられるが、毎日となると非現実的だ。
そこで今回は、「第三者の目でチェック」できる機能を持つ電動歯ブラシ、ブラウン初の "人工知能(AI)ブラッシング認知機能" 搭載の「オーラルB ジーニアスX」を紹介したい。
メーカー名 | ブラウン |
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製品名 | オーラルB ジーニアスX |
品番 | D7065266XCTG |
実売価格 | 30,900円 |
特徴は、本体にモーションセンサーを搭載し、使用者のブラシの持ち方・動かし方・スピードを検知し、口の中のどこを磨き、磨いていないかを判断できる点。AIが数千人分のブラッシングデータとパターンから照合し、スマートフォンを通して"リアルタイム"にガイドしてくれる。
歯磨きを終えると、磨いた時間、ブラッシングの達成度をデータとして蓄積。使用者のブラッシングの傾向を分析し、達成率や力の入れ過ぎの警告などを教えてくれる。さながら、歯科医が推奨する正しい歯磨きを自宅で毎日実施でき、より良いオーラルケアへと導いてくれるのだ。
レビューにあたり約4週間、できる限り就寝前と起床後の2回ペースで毎日使い続けた。アプリを利用せずとも、もちろんブラウンのハイエンド製品として他と同様に使えるが、ここでは本製品の特徴を最大限に生かすべく、スマホを毎回併用した様子をレポートしている。
アプリを立ち上げて電源ON! ペアリングは超簡単
まずはペアリングだが、AIが検知・分析・ガイドとなると、使用者を認識する設定などが思い浮かび、さぞ面倒だろうと構えた。ところが、ペアリングは拍子抜けするほど簡単で驚いてしまった。
本体を充電しておく必要はあるが、ペアリング自体は数分もかかからない。まず、手持ちのスマホのBluetoothをONにしておき、専用アプリをダウンロードし、アプリを立ち上げる。次に、歯ブラシ本体の電源を入れるだけで完了。使用者の認識作業は特になく、本体とスマホをペアリングするだけで終わってしまった。
ブラシは、毛の硬さが異なるブラシ2種類を標準装備。また、ガイド見ながらブラッシングをするための、吸盤付きスマートフォンホルダーに、持ち運びに便利な充電機能付きのトラベルケースとポーチも付属している。
同梱されている歯ブラシの一つは、0.01mmの極細毛で、歯茎をいたわりながら歯垢除去できる「やわらか極細毛ブラシ」。舌のクリーニングにも活用できる。
もう一つは毛先が16度に傾き、歯垢に届いて除去する黒い「マルチアクションブラシ(ブラック)」。口腔内の状況によって使い分けられる。どちらのブラシも歯の1本1本を包み込み、歯垢を物理的に除去できる定評のものだ。
歯ブラシ本体は浴室でも安全に使用できる防水仕様。ブラシを含む本体サイズは29×35×241mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約130g。モーションセンサー内蔵でも、今までのものと変わらない。
充電は12時間で満充電となり、1日2回・各2分のペースで約2週間使用できる。充電器はマルチ電圧対応(100-240V)で、海外でも使用できる。
褒められるとやっぱり嬉しい! 歯ブラシの動きを追随して評価してくれる
ペアリングが終わったらすぐに使い始められるが、その前にもう1つすることがある。それはアプリを見ながらブラッシングするので、付属のホルダーを用いて、スマホを固定することだ。
ホルダーの吸盤はレバー付きなので、鏡などに簡単に固定ができる。ホルダーを鼻の高さの位置で、吸盤面を鏡に軽く押し付けながらレバーアームを鏡側に倒すだけ。スマホを左右に広げられるホールディングブラケットに挟み込めば、いよいよ準備は完了だ。ホルダーの着脱も簡単にできる。
早速ブラッシングを始めてみよう。本体に付属の黒いマルチアクションブラシを取り付け、スマホのアプリを開くと歯ブラシ本体とアプリが自動的に連動。本体のON/OFFスイッチを入れるとスマホ画面は歯を模した画像が現れる。ブラッシングモードも表示される。
オーラルBの特徴となるブラシの動きは、ブラシの左右反転と上下振動を合わせたもの。本製品の最大左右反転数は約10,500回/分で、最大上下振動数は約48,000回/分。反転数と振動数は、本体で操作・選択したブラッシングモードごとに変化する。
モードはハイエンドらしく6つ搭載。「クリーン/プロクリーン/やわらかクリーン/ホワイトニング/歯ぐきケア/舌クリーニング」から選べる。今回は「クリーン」、「プロクリーン」と「舌クリーニング」の3モードを使用した。
アプリでは、口腔内を上・下の左・右の奥歯(4箇所)に、上・下の前歯(2箇所)の合計6エリア分けてブラッシングを進める。初期値ではそれぞれの外側と内側を20秒かけ、6エリアを合計2分以上かけて磨くイメージだ。アプリ使用中は、本体に内蔵するタイマーは自動的に切られ、時間経過はアプリの時計表示を見ながら行なう。
ブラシを歯に軽く2~3秒当て、外側と内側を1本ずつブラッシングしていくつもりで、ゆっくりと次の歯へと進めていく。すると、各箇所の青白い半透明の歯が徐々に点滅しながら白く変化し、AIが磨ききったと判断すると歯が一瞬パッと輝く。それが次のエリアへと磨き進めるアプリの合図だ。
かつて オーラルB PRO500 のレビュー以降、オーラルBを使い続けている自分はかなり慣れているつもりだったが、歯に当たるブラシの角度や向きが正しくないと、表示は青白い表示のままなので、思わず鏡でブラシがちゃんと当たっているか確認してしまった。いよいよ表示の歯が白く変わり始めると、「あ、この角度と向きならOKなんだ!」と学習できる。
「6箇所すべてOKが出るまで思いのほか時間がかかったなぁ。ヤレヤレ」とスイッチを切ると、スマホに「お見事!」と評価が表れた。口腔内中ブラッシング行き渡り、押し付けすぎもなく、スコアは100%。自宅で歯磨きをしていて褒められることなど皆無なので、時間はかかっても「お見事」と評されるのAI相手とは言え、やっぱり素直に嬉しい。
とてもいいなと感じたのは、表示される歯の色が変化するのを確認しながら進めて行くので、ブラッシングに集中でき、丁寧になる。結果的にも、今までの磨き方よりも歯はツルツルでスッキリ。高い満足感が得られた。2分以上磨くとその時の結果はアプリ内に蓄積されていく。
なお、ブラッシング時にブラシを押し付けすぎると、本体の「スマートリング」が赤く光り、アプリ画面も力を弱めるよう警告が表示される。ブラシの押し付け過ぎによる歯ぐきや口腔内の粘膜を予防してくれるだけでなく、ブラシの毛先の広がりも抑えられる。
ユニークなのは、アプリ内に使用者の磨きグセを診断できる「ブラッシング習慣の診断」というプログラムも用意されていること。
プログラムの実行中は、歯の表示も時計も表示されずに、ただただ自分の感覚に頼ってブラッシングを行なう。歯ブラシを停止させると、ブラッシングした時間・範囲・ブラシ圧の結果を表示し、「その人の磨きグセ」を教えてくれる。
試してみたところ、惨憺たる結果になってしまった。なんと30%近い磨き残しとなり、つい雑になるのか押し付け過ぎることもあり、歯医者さんが推奨する2分間のブラッシングに程遠い結果となった。ちゃんと集中してブラッシングしなければ意味がない、とつくづく思い知らされた。診断はトップ画面からいつでも試すことができる。
オーラルケアの設定をとことんカスタマイズできる
アプリを使ったブラッシングは、初めこそ戸惑いもあったが、何度か試していくうちに、ブラシの向き、ハンドルの位置、歯にブラシを当てる角度が徐々に身について、2分程度で磨けるようになった。磨き終わった後の評価もいくつかのバリエーションがあり、楽しい。
とは言うものの、ブラッシングの目的は早さではなく、あくまでも丁寧にプラークコントロールを実施するところにある。そこで、アプリでは口腔内や歯の状態に合わせて、自分に合う設定ができる。自分の場合、差し歯やブリッジやなどの補綴物も多く、場所によってはくぼみが深い。ゆえに、普段から歯間ブラシやフロスも使い、マウスウォッシュも欠かさないようにしている。
個々の要望に合わせて、アプリは「その他」の中から「お知らせ」と「設定」で細かな設定ができる。
設定内の「タイマー」で、自分に適したブラッシング時間や、口腔内のエリア(セクション)分けパターンの選択に、「通知」はブラシヘッドの交換時期のお知らせを設定できる。
なお、エリア分けパターンや「歯ブラシハンドル」の振動やライトの設定は、アプリを使わない時に反映する。
「お知らせ」は、歯ぐきの出血チェック・舌のクリーニングの実施・デンタルフロスの実施・マウスウォッシュの実施を、ブラッシング後に問いかけるように設定できる。しかも、朝・昼・晩と選べるので、生活スタイルに合わせやすい。いずれも毎日のオーラルケア習慣に追加することを歯科医が推奨するものだ。
以上を自分のスタイルに合わせて設定しておくと、ブラッシングが終了後の評価が出る前に、質問形式で表示されるようになる。つい億劫になりがちでも、改めて聞かれると背中を押され、行動に移しやすかった。
なお、歯磨きのブラッシングが終わった後の舌クリーニングは、ブラシを「やわらか極細毛ブラシ」に付け替え、ブラッシングモード切替スイッチで「舌クリーニング」を選び実施する。歯磨きのブラッシングが終わった後は、歯の画像は表示されない仕組みだ。
また、自分の場合はブラッシング時間を2分30秒に設定したが、たとえ良いブラッシングができても、設定時間よりも短く終えた場合、時計は赤色で表示。小さな事だが、次はもう少し長く、もっと丁寧にしようという気持ちを起こさせる。
オーラルケアの追加習慣を設定しておくと、ブラッシングの評価にそれぞれの連続記録として評価が加わる。続けて行なっているのを実感でき、これも励みになる。
更に、毎日それぞれのケアを続けてある一定期間に達すると、ブラッシング後に「トロフィー」として表示される。表示されるとやはり嬉しい。
毎日のケアをデータで蓄積し、分析結果を確認できる
ブラッシングと追加ケアのデータは、日々アプリ内に蓄積され、「コーチング」及び、「結果」と「達成度」で細かく確認ができる。
「コーチング」の”前回のブラッシングサマリー”の詳細から、前回のブラッシングの結果と追加習慣の実施状況が確認できる。しっかりしたケアが必要な就寝前に役立てやすい。
「結果」からは、「日/週/月」ごとのほか、アプリの導入してからの“全て“と、当日~長期に渡った分析結果を確認できる。
「達成度」は、連続記録と、授与したトロフィーが確認できる。日々の分析とはひと味違い、続けてきて初めて得られるアワードの軌跡となる。振り返って「ああ、これだけオーラルケアを頑張り続けてきたんだなぁ」と実感でき、励みになる。
毎日継続し続けなければならないオーラルケアが楽しくなる
オーラルB ジーニアスXを約4週間使い続けて実感するのは、「オーラルケアを楽しく継続できる」という点だ。毎日繰り返すオーラルケアだけに、慣れからくるクセがついたり、気を抜いて雑になりがちだ。
ところが、オーラルB ジーニアスXとアプリを併用すれば、繰り返されるケアの度にAIはしっかりブラッシングを監視してくれるので、毎日ブラッシングの集中を切らさずに挑める。チェックが入り分析もされるとなると、おのずと成績を落としたくない気持ちが働き、疲れていても眠くても面倒でも手を抜かずにケアをできた。
上手くできれば褒めてくれるし、続いた事柄にはトロフィーも授与されるが、この「褒められる」というのは、楽しく継続する上でかなり重要ではないだろうか。特に大人になると、歯磨きをしたところで誰も褒めてはくれないが、たとえAIだろうとも、褒められればやはり嬉しく、モチベーションに繋がるのを実感したからだ。過去のケアの分析結果も簡単にできるのも良い。
価格は安いものではないが、正しいオーラルケアを365日「楽しく」継続する上で、その価値は大いにあるだろう。もちろん歯医者さんの定期的なチェックはもちろん必要だが、本気でオーラルケアを続け、健康を保ちたい方こそおすすめしたい。