家電製品レビュー
シャオミ系メーカーのロボット掃除機が日本上陸! ナビゲーションとソフトウェアの完成度がスゲー!
2019年10月18日 00:00
今回テストするのは、Beijing Roborock Technology社の「Roborock S6 (ロボロック エスロク)」というロボット掃除機。
「なにそれ?」という方も多いと思うが、先日「ソフトバンク、シャオミ関連メーカー3社のIoT家電を取り扱い開始 ~第1弾はロボット掃除機」でお伝えした、ソフトフトバンク(SB C&S)が代理店となり、国内で販売開始されるロボット掃除機だ。
メーカー名 | Beijing Roborock Technology |
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製品名 | Roborock S6 |
価格(編集部調べ) | 74,800円前後 |
今中国の人気スマホといえばファーウェイ(HUAWEI)だが、数年前まではシャオミ(Xiaomi)が大ブレイク。そのシャオミは5年ほど前、スマホ屋から総合家電メーカーに転身した。
それとほぼ同時にベンチャー企業を応援するプログラムをスタートさせ、そこに参加しているのがBeijing Roborock Technology社というわけだ。
Beijing Roborock Technology社は2014年に起業したメーカーだが、2016年にはシャオミのOEM商品としてロボット掃除機「Mijia」を製造し、2019年までの累計だと、世界で一番売れているロボット掃除機となっている。
これは筆者の推測なのだが、先日ご紹介した「マジ!? Ankerの最新ロボット掃除機はヘソで茶を沸かせるレベルの性能!」も、OEM供給はBeijing Roborock Technology社の可能性が非常に高い。
そんなわけでBeijing Roborock Technology社(シャオミ)の「Roborock S6」は、日本でほとんど認知されていないが、ロボット掃除機として、かなり高いパフォーマンスを秘めている製品なのだ!
かなりの賢さ! 間取り検出とナビゲーションシステム
「Roborock S6」最大の特徴は、上部についている丸い煙突。この中には回転するレーザーが入っていて、部屋の間取りを素早く正確に認識するとともに、自分の位置把握にも利用されている。カタログにこそ記載されていないが、SLAMロジックを使い、間取りと位置把握を同時に行なってるようだ。
それが顕著に分かるのは、掃除途中でスマホに表示される間取り図。ロボットを中心に放射状に間取りがリアルタイムで表示されていく。
掃除をスタートさせると、充電台を基準としておよそ5m四方の矩形の床を壁伝いに反時計回りに走り、また家具などの障害物を避けながらレーザーで間取り(部屋の形状)を、実際に走行して掃除する範囲を探索する。
ここまでの挙動は先日紹介したAnkerのRoboVac L70とまったく同じ。しかし反時計回りで障害物を検知する方法が、RoboVac L70とRoborock S6では少し異なるようだ。RoboVac L70は、側面の距離センサーをうまく利用して、壁や障害物にできるだけ当たらないよういして障害物を検知していた。
しかしRoborock S6は、バンバーセンサーをメインにして障害物を検知しているようで、壁や障害物に軽く触れ(当たり)ながら走行していた。そのため軽いゴミ箱などは、外周を走ったときに動かしてしまう場合がある。
部屋を一周すると、あとは部屋の中央を塗りつぶすようにジグザクと掃除する。この精度も非常に高く、まるでフローリングの継ぎ目を見ているかのように、一直線に進んでいく。
しかも壁から数10cmはすでに掃除済みなので、塗りつぶし時はまったく壁にも障害物にもぶつかることなく、効率的に掃除する姿に驚くだろう。さらに掃除のたびに塗り潰しの方向を「縦」「横」に切り替えるようなので、フローリングの目やカーペットの目を縦横から掃除してくれるのもうれしい。
こうして5m四方の領域をすべて掃除し終え、まだ未知の領域があれば、同様の掃除手順を繰り返す。驚くべきは、その間取り認識の精度の高さだ。スマホに表示された地図は回転できないので、地図は後からレタッチソフトで回転させている。この地図と、実際の間取り図を見比べれば、それだけ正確に、そしてどんな軌跡を描いて掃除したかがひと目で分かる。
この間取り認識、現在位置把握、部屋探索、掃除ルートナビゲーションというロボット掃除機の頭脳に当たる部分はかなり賢く、精度の高いものになっている。
掃除機としての性能は粒子系のゴミ収集に改善の余地アリ
Roborockの頭脳面の完成度が高いことは分かったが、掃除機としての性能はどうだろう。そこで部屋に次のようなゴミを撒いて、うまく吸い込めるかをテストしてみた。
結果、ホコリのような軽いゴミはきれいに掃除できるが、粒子系のゴミの掃除が苦手のようだ。まず食べこぼしなどを想定し、粒が大きいゴミとして利用したハムスターのえさ。これは掃除機前方のサイドブラシに弾き飛ばされて、かえって撒き散らしてしまった。
一般的なロボット掃除機のサイドブラシは、歯ブラシのブラシと同じ細いナイロンの束でしなやか。それでもゴミを撒き散らかしてしまう機種もある。しかしRoborock S6のサイドブラシは硬いゴムでできているので、軽い大きな粒の食べこぼしは、一般的なロボット掃除機以上に撒き散らかしてしまうようだ。
また花粉サイズのピンクの微粒子も取りきれていなかった。フローリングには、うっすらと花粉が塗り広げられ、フローリングの溝に溜まってしまっていた。
いちばん苦手なのは砂ゴミのようで、ブラシで散らかしてしまう上に、ゴミ回収用のブラシを吸引ポンプでも吸い取りきれないようだ。
規定の吸引力「中」では弱いのかと思い、「強」→「MAX」に切り替えて掃除をしてもそれほど効果は見られない。これは筆者の推測だが、掃除機と床面の隙間が大きく、うまく吸引できていないように思われる。隙間の調整でかなり改善できると思われるので、次期モデルに期待したい。
なおメーカーデモで行なっていたパチンコ玉の吸引テストもしてみた。こちらはデモ通りに回収。ただ吸引ポンプで吸い込んでいるのではなく、ブラシで掻き上げダストボックスに入れているという感じだ。
しかも8mmの玉がロボット掃除機の下に入り込めるということは、それだけ隙間があるということになり、吸引力を弱める原因とも言えるだろう。
なお、おがくずや綿ぼこりを模した擬似ごみは、残すことなくきれいに吸い込んでくれた。こちらはゴム製のサイドブラシがホコリをキャッチして吸い込み口まで集めてくれるようで、コーナーもしっかり掃除できていた。
またRoborock S6は拭き掃除もやってくれるが、これはおまけ程度に見ておくといい。掃除機の下に水タンクと専用のモップを取り付けると、水拭きもしてくれるというものだ。
給水は自然に水を滴らせてモップに染み込ませる方式。残ってしまった砂ゴミや花粉を拭き取ってくれるかと思いきや、かえってこれらのゴミを引きずってしまい、汚れを広げる結果に。
から拭き用のモップも添付されているが、こちらも同様におまけと見ておいたほうがいいだろう。
砂や花粉などの粒子ゴミの掃除は苦手だが、毎日のホコリゴミの掃除にはその高いナビゲーション能力とのあわせ技で、ゴミを取り残さず掃除をしてくれる。それがRoborock S6の特徴だ。
多機能なアプリはロボット掃除機ナンバーワン!
Roborock S6のスマホ連携は、おそらくロボット掃除機でいちばん使いやすく多機能だ。出先から掃除を開始できるのはもちろん、運転予約やマップ表示など多才だ。
中でも使いやすいのは、部屋のマップを使ったさまざまな指定。一度フロアの全部屋を掃除させるとマップが登録され、ある程度自動的に部屋を区分けしてくれる。より細かく部屋と廊下を区別したい場合は、マップ上で部屋を分割することも可能。逆にリビングとキッチンを1部屋としてまとめたいというような場合は、隣り合った部屋の結合も可能だ。
こうして部屋を区分けすると、指定した部屋のみを掃除したり、指定の部屋だけをハイパワーで掃除機3度がけする、などの指定ができる。
また予約運転にもマップが使えるので、曜日ごとに部屋を変えたり、それぞれの吸引力の強さと何度がけするかを決めたりできる。
掃除機を進入させたくないエリアも、2つの方法で指定可能。
ひとつは一般的なアプリでもよくある、矩形の進入禁止エリアをマップ上に指定する方法。ペットの水飲み場や赤ちゃんのお布団の回り、作業中で床にモノを広げている箇所などを指定できる。レーザーで検知した正確なマップ上に指定できるので、家具の配置やイスの足などを目安に狙った場所を進入禁止にしやすい。
もちろんマップを拡大表示して指定できるので、フロア全体のマップでもキッチンを拡大して進入禁止エリアを指定するなんてことも可能だ。
もうひとつは、仮想の壁を作る方法。マップ上に線を引くと、その線の手前で引き返すようになる。例えば、部屋のドアのところに線を引けば、部屋から出て行かないように設定できる。また脱衣所の中央に線を引けば、奥のペットのトイレに進入できなくしたりなどもできる。また線は、縦横だけでなく、斜めにも引けるので、部屋の三角のコーナーを進入禁止にすることも可能だ。
さらにワンタッチで、ロボットをマップ上の目的地に行かせることも可能。部屋の特定部分だけを掃除するスポット掃除と組み合わせると、サッ! とスティック掃除機をかける感覚でロボット掃除機を操作できる。
ここまで自由度の高いアプリは他に類を見ず、筆者の知るところロボット掃除機でナンバーワンのアプリと言える。
強気の価格設定があだとなるかも?
掃除機としての性能は改良の余地が残るが、間取り認識や現在位置判定などのナビゲーションシステムは、ロボット掃除機の中でも最高峰に位置づけられるRoborock S6。
さらにスマホ連携の高機能さと、自由度の高い操作方法、洗練されたインターフェイスなど、ソフトウェアの完成度も最高峰だ。
ただ価格が74,800円と、非常に微妙なラインなのが正直なところ。確かにルンバやルーロ、PUREi9やDyson 360 Heuristといった10万円オーバーのロボット掃除機に匹敵、もしくはソレを超える性能を持つRoborock S6としてはお手ごろ価格だ。
しかしロボット掃除機の低価格・高機能化も同時に進んできており、先日紹介したAnker RoboVac L70に比べると少し値が張る感じも否めないのだ。
Roborock S6の価値は、アプリの完成度の高さ。そこに掃除性能が加わったらかなり手強い存在になるだろう。今後のモデルで、大きく化けることを期待したい。