家電製品レビュー

ダイソンのロボット掃除機が圧倒的進化! 「Dyson 360 Heurist」徹底レビュー

 ダイソンのロボット掃除機が全面リニューアルされ、「Dyson 360 Heurist(ヒューリスト)」として今年2月に発売された。結論から言うと、初代の「Dyson 360 Eye」は、吸引力こそ他のダイソンの掃除機と互角だが、部屋を探索するナビゲーションシステムがイマイチで、ロボット掃除機としてみるとギリギリ合格、つまり及第点だった。

形は初代とほとんど変わらないが、鮮やかなブルーが鮮烈な「Dyson 360 Heurist」
メーカー名ダイソン
製品名Dyson 360 Heurist
実売価格118,800円

 しかしDyson 360 Heuristは、まったく別物と言っていいほど改良され、ナビゲーションシステムの賢さはロボット掃除機の中で3本指に入ってくるほど進化した。

ナビゲーション機能の圧倒的な進化が特徴。フローリングの目を見ているかのように、部屋を水平垂直に走り回る

 初代のDyson 360 Eyeを購入した方に、ここで警告しておきたい。ここから先は、悲しくなるので読まないほうがいい。それぐらい驚愕の進化を遂げている。

Heuristが通ったあとはペンペン草どころかゴミひとつない!

 Dyson 360 Heuristに搭載されているモーターは、先代と同じく毎分78,000回転するダイソン独自のデジタルモーターV2。2019年5月現在、スティック掃除機に使われているのはV11モーターだが、V2モーターは2009年~2012年ごろのスティック掃除機に採用されていたものだ。

 バージョンだけ比べるとかなり古いモーターに感じるかもしれないが、ダイソンのスティック掃除機が大ブレイクした時代のモーターだ。このモーターと、特許技術「Radial Root Cyclone(ラジアルルートサイクロン)テクノロジー」がパワフルな吸引力を実現している。

 さらに背面吸引口のブラシは、静電気の発生を抑えながらフローリングから微細な汚れを取り除く「カーボンファイバーブラシ」と、カーペットなどの毛足の奥からゴミを掻き出す「硬いナイロンブラシ」の2種類を備える。ブラシの回転数は、従来機の1,450回/分から、1,600回/分にアップしており、よりパワフルな掃除が可能になった。

ブラシは硬い毛(赤)と柔らかい毛(黒)を採用

 集じん能力は次の写真を見れば一目瞭然だろう。

 花粉と同じサイズの粒子を床に巻いて掃除した軌跡を撮影したものだが、結果は一目瞭然。Dyson 360 Heuristが通った後には、ペンペン草も生えないどころか、花粉の粒子すら残さない。これがDyson 360 Heuristの性能だ。

花粉と同じサイズの微粒子状のゴミを撒いて掃除力をチェック。花粉一粒も残さないほどきれいに掃除できている
一般的なロボット掃除機だと花粉ほどの粒子になると、フィルターにびっしりこびりつくが、ダイソンはサイクロン機構で完全分離! フィルターまで及ばない

賢くなったナビゲーションシステムで暗い部屋にも対応

 ダイソンのロボット掃除機は、上部についているカメラ「360度パノラマレンズ」で部屋を把握し掃除をする。初代モデルは、上部カメラにライトを搭載していなかったため、寝ている間や電気を消した暗い部屋を掃除する場合、非常に時間が掛かり、ナビゲーションの精度が低かった。

 しかし新モデルではライトを搭載しているので、暗い部屋でもナビゲーションの精度を落とすことなく掃除できるようになった。

 より多くの光を取り込みながら本体周辺360度を視認し、「インテリジェント SLAM(Simultaneous Localisation and Mapping) ビジョンシステム」で、現在位置や未清掃の場所を常に把握。カメラが進化したことでインテリジェント SLAMビジョンシステム自体も進化し、さらなる効率的な掃除を実現できたのだ。

本体上部中央に埋め込まれているカメラ「360度パノラマレンズ」。ダイソンのロボット掃除機は、初代からこのカメラの映像を解析して、部屋の形状や自分の位置を把握するという特殊なナビゲーションシステムを採用している
初代はライトがなく暗い状態では掃除が苦手だった。しかしライトを搭載したことで、夜間のタイマー運転や人が不在の暗い部屋でも、効率よくキレイに部屋を掃除できるようになった
家具の下などの暗い場所にもぐりこむと、自動的に強力ライトを点灯して視界を確保する

 探索・走行パターンも変更になり、掃除残しが少なくなった。ナビゲーションの要となるCPU(プロセッサ)が高速化され、1.4GHzのクアッドコアプロセッサにより、処理能力が大きく向上。掃除中に立ち止まって考えている時間も少なくなり、ほぼ確実に充電ステーションに戻れるようになっている。

 さらに気がついたのは、段差の回避ロジックだ。初代に比べて、段差を乗り上げる際、少し乗ってみて、いけるかどうかを確認してから上っているようだった。またもし立ち往生しそうになった場合でも、いろいろなパターンで脱出を試みるように改良されたように感じた。これにより段差で走行不能になる率は大きく下がったと思われる。

ロボット掃除機で勇逸の無限軌道(キャタピラ)走行なので、段差の乗り越えには強いが、細い棒状のものを跨いでしまうと、両輪が浮いてしまうので、段差の乗り越えを慎重にするのが特徴
「Dyson 360 Heurist」走行の様子

 また本体の直径そのものがブラシ幅になっているため、小型のロボット掃除機ながら、大きな掃除機以上にブラシ幅がある。つまり少ない折り返し(ストローク)で広い部分を掃除できるのだ。

 それゆえ家具ギリギリをカーブする際、1cmほどのブラシの出っ張りが引っかかって、進行方向を変えてしまうことがある。先代では進行方向を補正するのが苦手だったが、Heuristでは進路補正の精度が向上していた。

ブラシの幅をおよそ22cm。ロボット掃除機の中では一番の幅広のブラシを持っている
本体の直径より出っ張って配置されているブラシ。このおかげでロボット掃除機特有の前方にあるサイドブラシがなく、ゴミをはじくことがない

 さらに先代から引き続きの弱点として、前方にサイドブラシがないためコーナーの隅が掃除できないという指摘があった。しかしそれは、大きな間違い。

 写真の通り、サイドブラシを持っていなくても、コーナーもきれいに掃除してくれる。逆に言えば、「サイドブラシを持っている=コーナーがきれいになる」というものではない。つまりサイドブラシが回転することで、かえってゴミを回りに巻き散らかしてしまう機種も多いということだ。

サイドブラシがないので、コーナーのゴミを残すのか? と思いきや、壁際までブラシを寄せる独特の走行パターン
むしろサイドブラシがないことでゴミを弾き飛ばさないので、コーナーのきれいさはロボット掃除機でナンバーワンと言える
部屋のマッピングは完璧で掃除のやり残しはない
家具が斜めに配置されている(コーナーのローボード)部分は少し弱いようだ
部屋のアチコチに仕込んだゴミは、ほとんどきれいに回収している
若干の取りこぼしもあるが、誤差と見ていいレベルだ

 さらに広い部屋を掃除して電池が切れそうになると、自動的に充電ステーションに戻り、充電完了後に中断地点から掃除を再開する機能も高精度に位置情報を把握しているようだ。

充電台への帰路やドッキングも精度が高い。とくに途中で電池切れするほど広い範囲を掃除させると、電池切れを起こした瞬間、最短距離で充電台に戻る姿は拍手ものだ

長距離と近距離のツインセンサーで前方障害物を認識

 初代に比べるとDyson 360 Heuristは、家具などへの衝突が大幅に改善されている。まず壁に対して衝突することはまずなく、ペットの水飲み場などもしっかり認識し回避する。

椅子の脚周りは直前でピタリと停止し、方向転換する。ぶつからないように動く
前方には左右に黒いカバーをしている場所があり、ここに前方と側方、そして段差を検知する下部の赤外線センサーを設けている。その精度はかなり高い

 それを可能にしているのは、前方についている赤外線センサーだ。近距離用と長距離用の障害物探知センサーの2つで構成され、長距離用で部屋のマッピングを、短距離用で障害物を検知して速度を落とすようになる。

 また壁ギリギリを伝って走行できるように側面センサー、段差検知用のセンサーを持つ。これらのセンサー類は、毎秒30回の速さで頻繁に周囲の状況を確認するので、急にペットや子供が飛び出してきても安全だ。

前方センサーには、近距離よ遠距離用のセンサーを持っていて、遠くにある壁から、近くにある障害物まではっきり認識できる

 このセンサー類と、ナビゲーションシステムのコンビネーションが絶妙。壁伝いに走行するとき少し壁から離れてしまうと、微妙に方向転換し際ギリギリを走行する。ブラシも本体幅いっぱいに備えられているので、ゴミの取りこぼしなく掻き込んでくれる。

壁から少し離れていることを認識すると、スグに軌道修正して壁際まで幅寄せする

 さらに机やイスの足の回りこみも際までブラシを寄せるので、しっかりゴミを取ってくれる。そのうえ、直径が他のロボット掃除機比べると小さいので、テーブルにイスをしまった状態でもスイスイと入り込む小回りのよさも特徴だ。

他のロボット掃除機比べ直径が小さいので、イスを入れてあるダイニングテーブルの下にもスイスイ入り込んでいく
探索アルゴリズムが他とは違うのか、足の回りを1周する動きは見せなかった(半周ずつ行なう)
イスの足などの回りもブラシを際まで寄せてきれいに掃除してくれる
サイクロン機構を最優先しているため、高さは11cmと他のロボット掃除機比べると高いが、家具の下にも潜り込めた。その分直径を小さくしているので、ダイニングテーブルの下は他のロボット掃除機が入れない隙間もスイスイと入り込む

Dyson Linkでワンランク上の掃除が可能に

 初代同様にスマホとの連携も可能というより、スマホと連携させて使うことが前提と言ってもいいだろう。本体はデザインと使いやすさを優先するため、必要最低限のボタンしかなく、予約運転の設定などができない。

 各曜日ごとのスタート時間などを設定できる予約運転は、必ずスマホで行なうことになる。スマホの普及率と本製品を購入する購買層を鑑みれば、問題には感じないだろう。

本体のボタンは必要最低限なスタート/一時停止ボタンのみ。周りにあるのは、インジケータでボタンではない

 アプリのインストールやWi-Fiの設定は非常に簡単。アプリをダウンロードして、画面の指示通りにすれば迷うことはまずない。

 現在の掃除機の状態もスマホにフィードバックされるので、掃除中なのか? 途中で何らかの影響で止まってしまったのか? 電池切れで一時充電中なのか? 掃除が完了したのか? などが表示される。

スマホと連携させて使うことが前提となっている
各曜日ごとの運転スタート時間設定はスマホアプリから

 またあらかじめ部屋の形状を覚え(マッピング)させることで、アプリ上で区切り線を引いて、エリアを設定することも可能。区切ったエリアはそれぞれキッチンや書斎など名称登録でき、エリア毎に清掃モードを指定できる。

 モードは「強/通常/静音」の3つがあり、例えば、汚れやすいキッチンは強モード、あまり出入りをしない書斎は静音モードなど指定可能。エリアを区切ってそれぞれ清掃モードを設定することで、部屋に合わせた掃除ができる。

 なお英語圏ではAmazon Alexaにも対応しており、Dysonアカウントと連携させることで、音声でコントロール可能。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、マッピングさせることで進入禁止区画を設定できると記載しておりましたが、正しくはエリアごとに清掃モードを指定できる機能になります。また、Amazon Alexaにも対応と記載しておりましたが、現状は英語圏のみ対応しています。お詫びして訂正いたします。

マッピングモードで動作させると、実際には掃除を行わず部屋の形状認識(マッピング)のみを行なう
マッピングモードで得られた地図を元に、手動でエリアを区切ることができる
エリアごとに清掃モードを指定できる
掃除を終えると掃除した箇所のマップが表示される。こちらはリビングとキッチンを掃除したマップ
こちらはリビングやキッチン以外にも、廊下から玄関、脱衣所、書斎まで掃除

ナビゲーションの進化を感じられる一台

 掃除機としての性能は、同様のモーターとブラシヘッドを持つダイソンのスティック掃除機そのものだ。ロボット掃除機の中でナンバーワンの吸引力と言っていい。

 加えてDyson 360 Heuristで刷新されたナビゲーションシステムは、自分位置把握が正確であるとともに、ジャイロの正確さも向上しており、部屋の間取りを水平垂直に効率よくキレイにしていく。段差の乗り越え方も改善され、格段に向上した。

壁際まで幅寄せするナビゲーションシステムに加え、部屋を正しくマッピングする頭脳、そして自分の位置把握など素晴らしく進化を遂げ、ロボット掃除機で3本指にはいる賢さ

 部屋のマッピング精度も高く、広い部屋を掃除させたとき、電池切れで一時充電台に戻ったとしても、迷うことなく素早く中断地点まで戻るのが印象的だ。高いマッピング能力と正確なナビゲーションあっての機能だけに、素晴らしい進化を遂げたことが分かる。

音もそれほどうるさくなく(標準モード時)、猫が怖がる様子もなかった

藤山 哲人