家電製品レビュー
ダイソンのロボット掃除機が圧倒的進化! 「Dyson 360 Heurist」徹底レビュー
2019年5月8日 06:00
ダイソンのロボット掃除機が全面リニューアルされ、「Dyson 360 Heurist(ヒューリスト)」として今年2月に発売された。結論から言うと、初代の「Dyson 360 Eye」は、吸引力こそ他のダイソンの掃除機と互角だが、部屋を探索するナビゲーションシステムがイマイチで、ロボット掃除機としてみるとギリギリ合格、つまり及第点だった。
メーカー名 | ダイソン |
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製品名 | Dyson 360 Heurist |
実売価格 | 118,800円 |
しかしDyson 360 Heuristは、まったく別物と言っていいほど改良され、ナビゲーションシステムの賢さはロボット掃除機の中で3本指に入ってくるほど進化した。
初代のDyson 360 Eyeを購入した方に、ここで警告しておきたい。ここから先は、悲しくなるので読まないほうがいい。それぐらい驚愕の進化を遂げている。
Heuristが通ったあとはペンペン草どころかゴミひとつない!
Dyson 360 Heuristに搭載されているモーターは、先代と同じく毎分78,000回転するダイソン独自のデジタルモーターV2。2019年5月現在、スティック掃除機に使われているのはV11モーターだが、V2モーターは2009年~2012年ごろのスティック掃除機に採用されていたものだ。
バージョンだけ比べるとかなり古いモーターに感じるかもしれないが、ダイソンのスティック掃除機が大ブレイクした時代のモーターだ。このモーターと、特許技術「Radial Root Cyclone(ラジアルルートサイクロン)テクノロジー」がパワフルな吸引力を実現している。
さらに背面吸引口のブラシは、静電気の発生を抑えながらフローリングから微細な汚れを取り除く「カーボンファイバーブラシ」と、カーペットなどの毛足の奥からゴミを掻き出す「硬いナイロンブラシ」の2種類を備える。ブラシの回転数は、従来機の1,450回/分から、1,600回/分にアップしており、よりパワフルな掃除が可能になった。
集じん能力は次の写真を見れば一目瞭然だろう。
花粉と同じサイズの粒子を床に巻いて掃除した軌跡を撮影したものだが、結果は一目瞭然。Dyson 360 Heuristが通った後には、ペンペン草も生えないどころか、花粉の粒子すら残さない。これがDyson 360 Heuristの性能だ。
賢くなったナビゲーションシステムで暗い部屋にも対応
ダイソンのロボット掃除機は、上部についているカメラ「360度パノラマレンズ」で部屋を把握し掃除をする。初代モデルは、上部カメラにライトを搭載していなかったため、寝ている間や電気を消した暗い部屋を掃除する場合、非常に時間が掛かり、ナビゲーションの精度が低かった。
しかし新モデルではライトを搭載しているので、暗い部屋でもナビゲーションの精度を落とすことなく掃除できるようになった。
より多くの光を取り込みながら本体周辺360度を視認し、「インテリジェント SLAM(Simultaneous Localisation and Mapping) ビジョンシステム」で、現在位置や未清掃の場所を常に把握。カメラが進化したことでインテリジェント SLAMビジョンシステム自体も進化し、さらなる効率的な掃除を実現できたのだ。
探索・走行パターンも変更になり、掃除残しが少なくなった。ナビゲーションの要となるCPU(プロセッサ)が高速化され、1.4GHzのクアッドコアプロセッサにより、処理能力が大きく向上。掃除中に立ち止まって考えている時間も少なくなり、ほぼ確実に充電ステーションに戻れるようになっている。
さらに気がついたのは、段差の回避ロジックだ。初代に比べて、段差を乗り上げる際、少し乗ってみて、いけるかどうかを確認してから上っているようだった。またもし立ち往生しそうになった場合でも、いろいろなパターンで脱出を試みるように改良されたように感じた。これにより段差で走行不能になる率は大きく下がったと思われる。
また本体の直径そのものがブラシ幅になっているため、小型のロボット掃除機ながら、大きな掃除機以上にブラシ幅がある。つまり少ない折り返し(ストローク)で広い部分を掃除できるのだ。
それゆえ家具ギリギリをカーブする際、1cmほどのブラシの出っ張りが引っかかって、進行方向を変えてしまうことがある。先代では進行方向を補正するのが苦手だったが、Heuristでは進路補正の精度が向上していた。
さらに先代から引き続きの弱点として、前方にサイドブラシがないためコーナーの隅が掃除できないという指摘があった。しかしそれは、大きな間違い。
写真の通り、サイドブラシを持っていなくても、コーナーもきれいに掃除してくれる。逆に言えば、「サイドブラシを持っている=コーナーがきれいになる」というものではない。つまりサイドブラシが回転することで、かえってゴミを回りに巻き散らかしてしまう機種も多いということだ。
さらに広い部屋を掃除して電池が切れそうになると、自動的に充電ステーションに戻り、充電完了後に中断地点から掃除を再開する機能も高精度に位置情報を把握しているようだ。
長距離と近距離のツインセンサーで前方障害物を認識
初代に比べるとDyson 360 Heuristは、家具などへの衝突が大幅に改善されている。まず壁に対して衝突することはまずなく、ペットの水飲み場などもしっかり認識し回避する。
それを可能にしているのは、前方についている赤外線センサーだ。近距離用と長距離用の障害物探知センサーの2つで構成され、長距離用で部屋のマッピングを、短距離用で障害物を検知して速度を落とすようになる。
また壁ギリギリを伝って走行できるように側面センサー、段差検知用のセンサーを持つ。これらのセンサー類は、毎秒30回の速さで頻繁に周囲の状況を確認するので、急にペットや子供が飛び出してきても安全だ。
このセンサー類と、ナビゲーションシステムのコンビネーションが絶妙。壁伝いに走行するとき少し壁から離れてしまうと、微妙に方向転換し際ギリギリを走行する。ブラシも本体幅いっぱいに備えられているので、ゴミの取りこぼしなく掻き込んでくれる。
さらに机やイスの足の回りこみも際までブラシを寄せるので、しっかりゴミを取ってくれる。そのうえ、直径が他のロボット掃除機比べると小さいので、テーブルにイスをしまった状態でもスイスイと入り込む小回りのよさも特徴だ。
Dyson Linkでワンランク上の掃除が可能に
初代同様にスマホとの連携も可能というより、スマホと連携させて使うことが前提と言ってもいいだろう。本体はデザインと使いやすさを優先するため、必要最低限のボタンしかなく、予約運転の設定などができない。
各曜日ごとのスタート時間などを設定できる予約運転は、必ずスマホで行なうことになる。スマホの普及率と本製品を購入する購買層を鑑みれば、問題には感じないだろう。
アプリのインストールやWi-Fiの設定は非常に簡単。アプリをダウンロードして、画面の指示通りにすれば迷うことはまずない。
現在の掃除機の状態もスマホにフィードバックされるので、掃除中なのか? 途中で何らかの影響で止まってしまったのか? 電池切れで一時充電中なのか? 掃除が完了したのか? などが表示される。
またあらかじめ部屋の形状を覚え(マッピング)させることで、アプリ上で区切り線を引いて、エリアを設定することも可能。区切ったエリアはそれぞれキッチンや書斎など名称登録でき、エリア毎に清掃モードを指定できる。
モードは「強/通常/静音」の3つがあり、例えば、汚れやすいキッチンは強モード、あまり出入りをしない書斎は静音モードなど指定可能。エリアを区切ってそれぞれ清掃モードを設定することで、部屋に合わせた掃除ができる。
なお英語圏ではAmazon Alexaにも対応しており、Dysonアカウントと連携させることで、音声でコントロール可能。
【お詫びと訂正】
記事初出時、マッピングさせることで進入禁止区画を設定できると記載しておりましたが、正しくはエリアごとに清掃モードを指定できる機能になります。また、Amazon Alexaにも対応と記載しておりましたが、現状は英語圏のみ対応しています。お詫びして訂正いたします。
ナビゲーションの進化を感じられる一台
掃除機としての性能は、同様のモーターとブラシヘッドを持つダイソンのスティック掃除機そのものだ。ロボット掃除機の中でナンバーワンの吸引力と言っていい。
加えてDyson 360 Heuristで刷新されたナビゲーションシステムは、自分位置把握が正確であるとともに、ジャイロの正確さも向上しており、部屋の間取りを水平垂直に効率よくキレイにしていく。段差の乗り越え方も改善され、格段に向上した。
部屋のマッピング精度も高く、広い部屋を掃除させたとき、電池切れで一時充電台に戻ったとしても、迷うことなく素早く中断地点まで戻るのが印象的だ。高いマッピング能力と正確なナビゲーションあっての機能だけに、素晴らしい進化を遂げたことが分かる。