家電製品ミニレビュー
ダイソンのロボット掃除機は、本家譲りで床ピカピカ! 狭い場所もスイスイ走る
by 藤山 哲人(2015/11/25 07:00)
ようやく発売されたダイソンのロボット掃除機「ダイソン360eye」。吸引力が落ちないただひとつのサイクロン式ロボット掃除機だ。そして戦車やショベルカーなどでおなじみの、キャタピラー走行するただひとつの掃除機。
メーカー名 | ダイソン |
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製品名 | ロボット掃除機 ダイソン360eye |
購入場所 | 公式オンラインストア |
購入価格 | 149,040円 |
よく見るとほかにも、ダイソンオンリーな点がアチコチに見られ“らしさ”を出しているのがよく分かる。発売が1年近く遅れ、ルンパの新モデル「ルンバ980」も登場し、賛否両論あるダイソン360eye。実のところの使い勝手を見ていこう。
はたしてダイソン360eyeは買いなのか!?
開発コンセプトはアンチ・ルンバ!?
ダイソン360eyeの性能を見る前に、どうしても説明しておかねばならないのが、ロボット掃除機市場を制圧しているルンバの存在だ。長年のノウハウを蓄積している老舗ルンバは完成度が高く、本体の形やブラシ、掃除パターンや充電ステーションへの誘導などなど、ロボット掃除機の基礎技術のノウハウを数々持っている。
言い方は悪いが後発メーカーは、ルンバとの違いを打ち出しているものの、ルンバの基礎技術を多く取り入れているので、どこかルンバに似たようなものになる。
たとえばフォルムと大きさは、丸くて直径30~35cm程度で、高さは9~10cm。店に並んでいるロボット掃除機を積み上げると、見事に同じ大きさなのがよく分かる。なので入り込める家具の隙間は、どれも似たり寄ったりだ。
頭にあるひょろんとした回転ブラシは、1、2個と数の違いはあれど、どの機種にも付いている。掃除の走行パターンは、ランダム系か矩形系の2パターン。そして部屋全体の清掃モードと、部分的なスポットモードを備えている。
清掃時間は、どの機種もだいたい30~45分。どれも似たり寄ったりなのだ。変わったところでは、交換用のバッテリーの価格もみんなルンバに準拠して、同じような値付けになっている。
だがダイソンは何もかも違う。まず大きさは小さいが高さがある。ちょうど誕生日ケーキが走っているような感じだ(笑)。そして丸くない。ほぼ丸い形なのだが、直径めいっぱいの幅のブラシを持っているので、ブラシが円から飛び出ているのだ。
走行パターンもこれまでにないタイプ。一応矩形のジャンルに入るが、回転も組み合わせている。そして注目の車輪。他のロボット掃除機は普通のタイヤなのに、ダイソンだけはキャタピラーを採用している。アンチ・ルンバ! が開発コンセプトなのか? と思うほど、何から何までルンパと違うのがダイソン360eyeなのだ。
でもアンチルンバが開発コンセプトじゃない。ルンパをはじめとしたロボット掃除機は「普通の掃除機をロボット化する」のがベースになっているが、ダイソンは「サイクロン掃除機をロボット化する」という別の話。
これは乗用車とトラックを作るぐらい別の話だ。それゆえダイソン360eyeは、サイクロン式ロボット掃除機のパイオニアとして、模索中という印象が強い。その象徴がUSBコネクタだ。USBメモリからもソフトウェアのアップデートができるようにとの配慮だ。
掃除後の床はキャニスターと同じツルツル感!
さて実際部屋を掃除させると、どのぐらいキレイにしてくれるのかを実験してみた。
結論から言うと、ダイソンのキャニスタータイプの掃除機をかけたあとと、同じくらいキレイになる。ダイソンユーザーならこの一言が一番分かりやすいと思うが、まだダイソン未経験の方に説明するなら次のような感じだろう。
フローリングに掃除機を掛けたあと裸足で歩くと、ちょっとプチプチしたり、足の裏に極々小さな粒子のゴミがつくのが一般的な掃除機。これまでのロボット掃除機は、どれもこの仕上がりだ。普通に靴下を履いたりスリッパで生活しているぶんには、まったく気になることがなく、部屋の床は十分にキレイと言っていい。
でもダイソンのキャニスタータイプだと、掃除機を掛けた後に雑巾掛けしたかのように床がツルツルになる。つまり裸足で歩いてもプチプチしないのだ。ダイソン360eyeの仕上がりは、まさにこの仕上がり。裸足でフローリングを歩くと、その違いが分かる。
効率的な走行経路だが誤差が溜まって掛け漏れがでることも
走行パターンは非常に特徴的。基本は矩形で、充電台を中心にして“コ”の字をどんどん大きく描いていく。一般的な矩形走行のジグザグパターンより複雑なので、取り残しが出てしまう場合がある。
今回のテストでは部屋中央部に取り残しが出る確率は、半々という感じだった。原因の特定はできないが、矩形走行パターンの掃除機によくある、家具のレイアウトが複雑な部屋、ラグや電線などの薄いものでも段差が多くあると、微妙に誤差が積み重なり、直進から斜めにズレて掛け漏れが発生しているようだ。
ただコの字の両端では時折、360eyeが1回転して位置補正(確認)をするような動きを見せていたため、同じ部屋を何度も掃除させていると学習して掛け漏れがなくなるかも知れない。
その根拠はスマホで確認できる掃除機の走行パターンと、部屋のマッピング画像だ。ダイソン360eyeはスマホに掃除結果レポートを報告するようになっていて、部屋の形と自分が走行した経路が見られる。
部屋をマス目状に区切って、自分が進めないところや壁などの情報を記録しているのだ。
スマホ連携で運転予約は簡単! でも掃除モードが部屋全体だけ
スマホ連携で一番使いやすいのは、毎日の掃除の予約だ。スマホ画面で、1週間分の掃除開始時刻を5分単位で予約できるので、設定が簡単で早い。もちろん毎週モードに設定することも可能。
ただスマホと連携しないと、予約が一切できないという弱点がある。とはいえ、いまどきWi-Fiを導入していない家庭も少なく、スマホがないという人は少数派だろうから、決定的な弱点にはならないだろう。
設定方法もマニュアルに従っていけば、ほぼ迷うことはないだろう。
一般のロボット掃除機にはあるが、ダイソン360eyeにはないものがある。それは部屋の一部分(大体2m四方ほど)を掃除するスポットモードと、ラジコンのようにリモコンで移動させるモードだ。子どもが勉強したあとや作業のあと、机の周りにサッと掃除機を掛けたい場合に便利な機能なのだが、ダイソン360eyeにはこの機能がない。
このためダイソン360eyeは「部屋全体専用機」となる。筆者の憶測になるが「ちょいがけはスティックタイプを使う」という判断から、カットになったのかも知れない。
サイドブラシはなしで正解! 壁ぎわの取り残しはごくわずか
ロボット掃除機の象徴ともいえる触角のようなサイドブラシだが、ダイソン360eyeには付いていない。確かにダイソンが広告で訴えているように、ブラシが高速回転するので、ゴミをまき散らかすこともあったが、壁ぎわのゴミはきちんと掻き出していた。
ここに注目して掃除後の床を見てみると、ダイソン360eyeは壁ぎわのゴミまでよく吸い取ってくれていた。また一般的なロボット掃除機のように、ゴミをまき散らかすこともなく、壁ぎわのキレイさは1、2位を争う。たださすがに際ギリギリのところは、ブラシがないので、キャニスター型の掃除機と同等にゴミが残ってしまう。
このようにダイソン360eyeには、サイドの回転ブラシはないが、吸い込みブラシを本体の幅いっぱいに広げることで、より壁際の掃除がキレイにできるようになっている。
机の下にもスイスイ入り込む軽快さだが小道で迷子になることも
一般的なロボット掃除機の直径は、ダイニングテーブルのイスの足の隙間とほぼ同じサイズ。なのでイスや機種によっては、テーブルの下まで潜り込んで行かないというのが多々あった。つまりテーブルの下はロボット掃除機の死角になりやすかった。
しかしダイソン360eyeは、本体の直径が23cmなので、イスの足の隙間もスイスイ入り込んでいく。ダイニングテーブルの下もスイスイと掃除してくれる。
逆に高さがあるダイソン360eyeが潜り込めないところは、リビングだとそれほどないようだ。食器棚や本棚、ローボードなど、ほとんどの家具は下に隙間がない。ダイソンも余裕で入れる高さがあるか、どのロボット掃除機も入っていけない高さの両極端ではないだろうか?
違いが出そうなところは、寝室のベッドの下だろう。微妙な高さの隙間がある家具がある場合は、高さを測ってから購入を検討して欲しい。
そう考えると、これまで薄さを競ってきたロボット掃除機だが、今後は直径に言及してくるメーカーも出てくるだろう。
さて直径が小さく小回りが利くだけに、これまでロボット掃除機が入れなかったところまで入り込めるダイソン。反面複雑な家具の配置や部屋、何部屋も連なっている場合などは、迷子になってしまうこともあるようだ。
一般的なロボット掃除機は、電池が切れそうになると充電器に戻るようになっている。このとき手がかりにしているのが、充電器から発せられる赤外線信号だ。赤外線信号は、テレビのリモコンのように部屋の隅々まで届くので、ロボットが充電器を探しやすい。でもダイソンは赤外線ではなく、画像認識で充電器を探す。なので近くに充電器があっても、カメラから見えないと充電器に帰れない。
またリビングの充電器が見えないキッチンの奥まで入り込んでしまうと、内蔵しているマッピングデータを基に充電器が見える位置まで戻らねばならず、かなり紆余曲折していた。
実際にキッチン奥でバッテリー残量が少なくなり、充電器に戻ろうと頑張って10分ほどウロウロしていた。場合によってはそのまま行き倒れになる恐れもあるだろう。
ファームウェアのアップデートがあればルンバ以上になる可能性もあり!
ダイソン360eyeを実際に試してみたが、掃除機としての機能はダイソンのキャニスターなみの仕上がりになることが分かった。また直径が小さく、これまで死角になっていたダイニングテーブルの下まで入り込める、初の掃除機ともいえる。
掃除機としての機能はほぼ満点を取れる360eyeだが、走行パターンや掃除モード、部屋のマッピングやジャイロの精度(自分が向かっている方向検出)など、ソフトウェアの面でまだまだ発展途上にあるといえそうだ。
筆者はまだルンバの新モデル「ルンバ980」を使ったことがないが、現時点でルンバ(800シリーズ)とダイソン360eyeを比べると、完成度はルンバに軍配が上がる。
しかし内蔵ソフトウェアのアップグレードで機能改善される事項も多々あるので、その内容によってはルンバの牙城をいつ崩してもおかしくないハードを持っているといえる。
15万円という大金の賭けにはなるが、見通しがよく間取りが単純な部屋であれば、将来のアップデートを見越した購入もありだろう。