e-bike試乗レビュー

自宅を出た瞬間から楽しみが始まる! グラベルe-bikeの魅力を探る気軽なツーリングへ

近年、e-bikeの中で大きなトレンドとなっているのが“グラベルバイク”とか“グラベルロード”と呼ばれるジャンルです。“グラベル”とは未舗装路のことで、そうした路面を走れる太いタイヤとジオメトリーを採用したドロップハンドルの自転車がこう呼ばれます。e-bikeだけでなく、通常のスポーツタイプの自転車を楽しむユーザー間でも世界的な流行となっていて、シマノでもグラベル向けのコンポーネンツを手掛けているほど。

とはいえ、グラベルロードe-bikeでどこを走ればいいのか? どういう楽しみ方ができるのか? 迷ってしまう人も少なくないと思うので、身近なグラベルを探索するツーリングへ出かけてみました。

グラベルは意外と身近なところにある

今回のライドに同行してもらったのは、筆者の友人でもある星さん。フリーの料理人として仕事をしながら、趣味で自転車を楽しんでいて、移動の手段はほとんど自転車。ケータリングにもカーゴバイクを活用しているサイクリストです。

今回乗ったグラベルロードe-bikeはKONAの「LIBRE EL」。価格は539,000円。右は星さんの乗るペップサイクルズ「NS」のグラベル仕様。e-bikeとペダルバイクの組み合わせで楽しむ計画です
「LIBRE EL」は前後650×47CのWTB「Venture(ベンチャー)」タイヤを履くグラベルロードe-bike。アルミフレームですがフォークはグラベル用のフルカーボン
コンポーネンツは前後の油圧式ディスクブレーキも含めてシマノのグラベル用「GRX 810」を採用
ドライブユニットはシマノSTEPS「E6180シリーズ」です
バッテリーはインチューブタイプで容量は504Wh(36V/14.0Ah)

まずは、普段からグラベル遊びをしている星さんに、仕事の行き帰りにも使っているという身近なグラベルを案内してもらうことに。集合場所から走り出して、いきなりグラベルに突入します。小川沿いの小道ですが、こういうところは未舗装のまま残されているところが結構多いのです。

走り出してすぐにグラベルの小径に突入して行きます

ちょっと舗装路に出たと思ったら、すぐにまたグラベルへ。砂利道を含めて、グラベルばかりを選んで走る。街中にも意外と未舗装路が残されていることに気付かされます。

グラベル好きな自転車乗りは、常に未舗装路を探しているので、自分だけの身近なグラベルルートを知っているものです。普通の自転車に乗っていると、こういう道を走りたいとは思いませんが、グラベルロードバイクで走るとちょっとした未舗装路でも楽しい! そういう道をつないで、できるだけグラベルばかりを走るルートを作ると、自転車通勤や街中の移動も数倍楽しくなります。

ここが東京の街中とは、にわかに信じられないような緑あふれる道を2台のグラベルロードバイクで走る。玉川上水沿いエリア(Google マップではこのあたり)
街中も走りますが、こういう石畳になっているようなところでも、グラベルロードe-bikeの太いタイヤだと苦もなく走れます

ちょっと舗装路を走って、今度は大きめの石畳を敷き詰めた道へ。厳密にはグラベルではないかもしれませんが、ロードバイクやクロスバイクだったら入って行こうとは思わない路面です。それ以前に、知っている人に連れてきてもらわなければ、行くことはなかったであろうマニアックなルートです。でも、ここが崖の上に位置していて、なかなかの絶景スポットでした。

細いロード向けのタイヤだったら、なかなか走ろうとは思わない路面。でもグラベルなら入って行けます。ちょっと行くと視界が開けて眼下に絶景が広がります。グラベルロードバイクでなければ出会えなかっただろう景色を楽しめます
その代わり、最後は階段になっているので、押して降りなければいけませんでした

自転車にハマったきっかけは「家から出たらすぐに楽しめること」と話す星さん。はじめはロードバイクに乗っていたそうですが、徐々にMTBやグラベルなど土の上を走るのが楽しくなり、通勤でもグラベルのルートを探すようになったとか。確かにMTBのようにコースまで出かけなくても、近所の未舗装路を走るだけで楽しいのはグラベルロードバイクの特権かもしれません。

川沿いはグラベルの宝庫

続いて目指すのは、野川という川沿いにあるグラベル。この川はコンクリートによる護岸工事がされておらず、川辺まで降りて行けるのでグラベルロードバイクで走るにはとても気持ちいいルートです。

川沿いのシングルトラックが走れるので、野川は個人的にも好きなルート。野川沿いのグラベルエリア(Google マップではこのあたり)
この日は天気も良くて、川沿いをのんびり走るのがとても気持ちいい
徒歩で川を渡ってみたりして、ちょっとした冒険気分も味わえます
ところどころ、ぬかるんでいる場所もあったりして、グラベルロードバイクの本領発揮
ここまでヌルヌルだと、さすがに走れませんでした……
泥がついて、グラベルロードバイクらしいルックスになりました

野川に限らず、川沿いには未舗装の道が残っていることが多いので、グラベルのルートを探すなら近所の川の周辺に行ってみるのがオススメ。意外な気持ちいいルートが見つけられるかもしれません。

野川沿いには大きな公園もあるのですが、その中にも実は自転車で走れるシングルトラックがあったりします。BMXなどが集まるパンプトラックが作られている場所もあって、天気のいい休日ということもあって、結構人が集まっていました。

橋を渡って野川公園に向かいます
公園の中のシングルトラックもなかなか楽しい
公園の中にあるパンプトラックには家族連れも含めて人が集まっていて、なかなかいい雰囲気。野川公園(Google マップではこのあたり)
BMX乗りの人にも「LIBRE EL」に乗ってもらいましたが、プッシュでも良く進むいいフレームだという評価

目的地である多摩川のダートへ向かう

お昼時になったので、途中で昼食を摂りつつ今回の目的地である多摩川のダートに向かうことに。以前に多摩川沿いを100km走ったとき、見つけた気持ちの良かったグラベルルートです。

関連記事:身近で楽しむe-MTBアドベンチャー。多摩川のダートを中心に100km走ってみた

お腹が空いてきたので、昼食を求めて公園を出発
舗装路を2台で走る。e-bikeが前を走ると良い風よけになる!?

舗装路を走っていて気づいたのは、グラベルロードバイク同士だとe-bikeと普通の自転車で一緒に走っても、意外とペースが合うということ。e-bikeは24km/hまではアシストが効きますが、それを超えると重いこともあって30km/h以上で巡航するような走り方はあまり得意ではありません。そのため、ロードバイクと一緒に走るとペースが合わず、平地ではロードバイクについて行くのが大変で、坂道になるとe-bikeがリードするなんてケースになりがちです。

でも、タイヤの太いグラベルロードバイクの場合、あまり高速で巡航するような走り方をしないので、e-bikeでも同じペースで走れてお互いにストレスを感じません。現状、e-bikeを持っている友人は少ないので、普通の自転車と一緒に走れるのはグラベルロードe-bikeの価値になりそうです。

昼食は調布の飛行場に併設されている「プロペラカフェ」でハンバーガーを食べました
このカフェは飛行場のハンガーにも入れて、飛行機好きにはたまらない場所です
多摩川に到着。河川敷にはサイクリングロードもありますが、その下にはグラベルが広がっているのです
途中、橋を渡るために自転車を持ち上げなければいけない場面も

多摩川といえばサイクリングロードが注目されますが、実はその下には広大なグラベルが広がっています。休日のサイクリングロードは混み合っていますが、グラベルは広い上に走る人が少ない(ほとんどいない)ので、自由に走り回ることができます。一部、シングルトラックになっているところもあって、グラベルロードバイクで走るのが楽しい。荒川などにもこういう場所はあるので、グラベルのルートを探すならまずは河川敷に行ってみるといいでしょう。

以前の100kmライドの際に見つけたシングルトラックは相変わらず気持ちいい。グラベルロードバイクにぴったりのルートです。車体を交代して進みます
河川敷にはコースのようになっている場所もあって、そこを2台で走り回る。稲城のシングルトラック(Google マップではこのあたり)
星さんにも「LIBRE EL」に乗ってもらいましたが、初めてのe-bikeに「こんなにラクなのか! そして楽しい!」と驚いていました
ペップサイクルにも乗らせてもらいましたが、45Cのタイヤが履けるし、よく進むいい自転車でした
2台で追いかけっこをするのが楽しい!
ススキの生い茂っている奥に向かって行く道を見つけて入って行きたくなります。こういう探検ができるのもグラベルロードバイクならでは
結構砂の深い場所もありましたが、太いタイヤに助けられてスタックせずに済みました
奥に特に何かがあったわけではありませんが、こういう探検気分が楽しい

河川敷のコースっぽくなっている場所を走り回ったり、探検気分を楽しんだり、1日グラベルライドを満喫しました。走行距離は往復の舗装路も含めて50km弱とたいした距離ではありませんが、満足感は非常に高い! 舗装路を走っているだけでは、ここまでの楽しさはなかったはずなので、グラベルのおもしろさは格別です。言ってみれば、自宅から走り出して河川敷まで行って帰って来ただけですが、未舗装路を探してルートを設定するだけで、これだけ楽しく遊べるのはグラベルロードバイクならでは。普段暮らしている街で、これだけ遊べる自転車はほかにないかもしれません。

帰りに寄ったコンビニで食べたアイスも最高でした
今回はこんな感じのルートを約50km走りました

初心者がロードバイクに乗ると、タイヤの細さやハンドリングのクイックさに戸惑うこともあるようですが、グラベルロードバイクはタイヤが太く、ジオメトリーも安定志向なのでそうした不安には無縁。ロードバイク初心者こそ、グラベルバイクを選んだほうが幸せになれるかもしれません。タイヤが太い分、ペダリングは少し重くなりますが、そういうときはe-bikeの出番。漕ぎの重さが気になる部分をアシストが補ってくれるので、相性は最高です。多くのメーカーがグラベルロードe-bikeに力を入れている理由もわかった気がしました。

ぜひ、自分の近所でグラベルルートを探索してみてはいかがでしょう。かなり楽しい時間を過ごせると思います。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。