e-bike試乗レビュー
【ぷーこのe-bike沼】目指すは那須。欲望まみれのe-bike旅へ!!
2021年10月8日 08:05
暑い夏も過ぎ去り季節は秋。サイクリングには最高の季節がやってきた。昨年よりもちょっと遅めの夏休みにして、今年は夫と共にe-bikeで走りまくりの旅に出るぞー!! 目指すはサイクリストにフレンドリーな栃木・那須町だ。各地にサイクルラックが用意されているだけでなく、休憩やパンク修理などができる「サイクルピット」もあちこちにある。那須高原という地名のとおり、高低差もあってヒルクライムや景色が楽しめ、観光地らしい立ち寄りスポットに美味しいグルメ、温泉にキャンプなどなど、楽しみがギューッと詰まった魅力的な街だ。走って体験して泊まって食べて飲んで、私の煩悩と欲求を思いっきり詰め込んだ1泊2日のe-bike旅だ。
我々夫婦のe-bike旅の相棒たち
「旅」をテーマにしたミニベロを展開するBRUNO(ブルーノ)。どこにでも連れて行きたくなるモダンで飽きないデザインが人気の理由だろう。そんなBRUNOから初めてのe-bikeが登場した!! “小さな旅”“運ぶ”を追求しているカーゴバイクタイプのe-bikeだからこそ、旅の楽しさがますます広がる。最大積載量50kgまで対応の頑丈なリアキャリア(道路交通法では公道走行時は30kgを超えてはいけない)も付いて、私たちが目指す那須というオシャレな街にもぴったりのe-bikeだ。
かつて編集部が100km超えのロングライド企画で乗ったメリダ「ePASSPORT 400 EQ」(以下、e-PASSPORT)。基本的にはクロスバイクタイプだが、フロントサスペンションと太いタイヤで、多少の道の悪さも気にならないスムーズな走りが期待できそう。バッテリーから電源が供給される前後ライト、最大25kgの積載量のリアキャリアなども標準装備となっている。パニアバッグを両サイドに装着すると、結構な荷物を持ち運べるし、旅にもラクラクなe-bikeだ。
どちらの車体もドライブユニットは、シマノSTEPS「E5080シリーズ」を搭載する。シマノSTEPSシリーズでエントリークラスとなっており、山道も多い那須を運動不足の私が最後まで走り切れるのかは少し気になるところだけれど、一体どんな旅になるのかなぁ。
まずは動物たちと触れ合いたい!!
クルマでe-bikeを運んで「道の駅 那須高原友愛の森」から旅はスタート。e-toolのリアキャリアには特別仕様のアルミボックスが装着されているが、中身はほぼ空っぽ。途中で何か買いたくなった場合に備えてクーラーボックスと保冷剤が入っている程度。車体重量も軽くて小回りが利くので扱いやすい。アルミボックスのような大きなボックスを積んでいても、車体全体がコンパクトなので邪魔にならない。
一方でePASSPORTには荷物がたっぷり入ったパニアバッグを装着(1つは買い出し用に空っぽ)。充実装備で車体重量もあるので、まずは私がe-tool、夫がePASSPORTを乗ることに。
今回のルートは那須高原の中でもやや緩やかな平地寄りを選んだつもりだったけれど、走ってみると、最初から思いのほか高低差がある。同じドライブユニットを搭載するe-bikeといえども、いきなりタイヤ径の違いの差に気付いた。夫よりもペダルを回す必要があるうえに、スタートしたばかりで2人で走るスピード調整ができていない。私よりも脚力のある夫は初めてのe-bikeで楽しそうに、アシストの弱いスピードでグイグイ進むものだから、ハーハーゼーゼー息を切らして顔を真っ赤にして私がキレるという雲行きが怪しい始まりだった(笑)。
2日間で最初の15kmが一番辛かったかもしれない。e-bikeなら通常の自転車ならば行けない場所に行けたりするんだけれど、あくまでも原動機ではなくアシストなので、自分の体力もそこそこ使うのだ。もっとアシストに頼った速度域なら、もっとラクに上れたのもわかっている。スタートしたばかりで元気いっぱいの夫が、体力任せで走ったのが悪いのだ(笑)。
雲行きが怪しい始まりだったけれど、ちょうど良いスピードを見つけた後はもう爽快感しかない。グングン上った先には気持ち良い下り坂。景色を楽しむ余裕も復活。もう全身で秋を感じるー!!!
那須を走りながら驚いたのは、さまざまな牧場がたくさんあって、道中に普通に牛が囲われていたりすること。調べてみると、栃木県は北海道に次ぐ生乳生産県で、その乳牛の多くが那須で飼われているのだとか。なるほどー!! そして、チーズ&高原野菜のイメージを持っていたけれど、本当にあちこちに牛がいた。
肉牛の飼育頭数も全国6位で本州では2位らしく、乳牛・肉牛とにかく牛王国だ。牛だけじゃなくて牛用ご飯の干し草のロールがあちこちに積み上げてあったし、飼料用のとうもろこし畑もたくさん!! 生の牛を見ることなんて何年ぶりだろうか。結構感動しながら「牛がこっち見てるー」とキャッキャしながら走り、向かうはアルパカ牧場。
本当は「那須どうぶつ王国」を楽しみにしていたけれど、1日楽しめそうな施設なので少しだけ立ち寄るにはもったいないし、すごい列で吸い込まれて行くクルマの数に、入り口で写真だけ撮って「よし、アルパカ見に行こう!!」とさっさと方向転換。ヒルクライムしただけだけど、これもe-bikeだからできる楽しみ方だ。
「那須アルパカ牧場」まではピャーっと下ってすぐに到着。広々のんびりした牧場には、寄ってくる子、寝ている子、よく分からない自由な遊びをしている子、いろんな子がいたけれど、近くで見るアルパカは目が大きくてキラキラしていてまつ毛が長く、とても美形なモフモフばかりだった。非常に癒される。「最高だねー」とアルパカ充電を済ませて再びスタート。
かなり上りが多いコースだけれど、必死で速く漕ごうとしなければ全然へっちゃら。会話をしながら漕ぐ余裕さえある。何度か予定のコースを外れて引き返したりグルグル回ったりしたけれど、「え!? あの坂をまた上るの?」なぁんてことにもならない。 「OK戻ろう!!」と、キレイな風景を何度も堪能しながら走れるので、e-bikeは夫婦喧嘩にならない円満ツールとしても機能しているのかもしれない(笑)。いろんな道を走りながら何度も「すごい!! すごーい!!」と声に出して一番感動した光景は、収穫直前の田んぼの光景だ。一面に広がる黄金色の稲穂と空の青、そこに太陽の光。もう美しすぎる自然美に震えそうになった。
盛りだくさんの立ち寄りスポット。アルミボックスが大活躍!!
お目当てのお蕎麦屋さんが臨時休業だったり、しばらく走った後は「森林ノ牧場」で一休み。森に囲まれた牧場内のカフェで、低温殺菌のジャージー牛乳やソフトクリームにスイーツ、ランチなどが楽しめる人気スポットだ。サイクルスポットのカフェは、もちろんサイクルラックも用意されている。ロードバイクの人も立ち寄っていた。
ちょっと小道に入ると気持ち良い森林も広がり、最高に癒される。普段はほぼ牛乳を飲まないのだけれど、ここの低温殺菌のジャージー牛乳はまったくの別物だった!! 甘くて美味しい!! 牛は春夏は青い草を食べ、冬は干し草などを食べて過ごす。なので、牛乳の色や味も季節によって少しずつ違うのだとか。青っぽくフレッシュな夏の牛乳、甘いのは冬。そんな違いを考えて飲んだこともなかったなぁ。私は季節限定のトマトのソフトクリームを。濃厚なのにさっぱりしたソフトクリームにトマトジュレ。こんなカフェが近所にあったらなぁと思いつつも、これが旅の良さということで……。すっかりリフレッシュして、再び爽快に走り出す。
私にとって那須といえば、「チーズ」と「高原野菜」のイメージが強い。そして、日常の趣味が家庭菜園ということもあり、絶対に立ち寄りたいスポットがあったのだ!! それは那須の高原野菜の生産者の畑であーる!! 那須連山から流れてくる水とキレイな空気、昼夜の寒暖差が大きい環境で作られる那須の高原野菜はとても美味しい。今年ハマったもののひとつだ。
その美味しい野菜を「見たい食べたい感じたい」という欲望を叶えようと、事前に「こたろうファーム」さんにお願いしてお伺いすることにした。那須で年間100種類上の野菜を作られており、那須高原野菜セットは「那須ブランド」の54選にも選ばれている。
ウキウキしながら到着すると、毎年開催されている「那須高原ロングライド」(本年度は中止)の補給食で提供している冷たーいトマトで出迎えてくれた。夏日だったこともあり、1日走ってきた体に染み渡る!! さすがサイクリストの心を分かってらっしゃる。夜に予定しているバーベキュー用の採れたて野菜を購入。明日の早朝の収穫を見学させてもらえることになり楽しみが増えた。
さて、ここからは夕飯のバーベキューモードに。オシャレなお店や地元の食材を求めながら、1時間ほどぐるーっと街中を走る。そして、ほぼ空っぽだったe-toolのアルミボックスがどんどん埋まっていく。子乗せもできるカーゴバイクで荷物もたっぷり運べる。デフォルトで両足スタンドなので荷物がいっぱいになっても安定して停車できるのがとても嬉しい。
いつの間にかアルミボックスは荷物でいっぱいになってしまったけど、そんな状況でも負担を感じられずに走れるのはさすがe-bikeだ!! 余裕でスイスイ!! 食材を仕入れてほくほく気分で宿泊先に向かう。運送業者のように荷物を載せつつ、涼しい顔で上り坂を進んで行く。朝イチの出来事を忘れるほどの上機嫌だ。渋滞中の車内からかなりの頻度で二度見されるのを感じた(笑)。いまだにe-bikeって不思議で凄い乗り物だ!!
トレーラーハウスで人気のキャンプ場に宿泊。そしてバーベキュー
宿泊地である「RVグラウンド那須」に到着。今夏にオープンしたばかりで、アメリカンサイズのトレーラーやログハウスが名物で、キャンピングカーで宿泊できるスペース、電動バイクのレンタルなど、広々とした敷地で楽しく過ごせる工夫が盛りだくさんのキャンプ場だ。
普段は見ることのないキャンピングカーがズラリと停車しているのは圧巻だ。コロナ禍でソロキャンプと車中泊にハマった夫は「本気のキャンパー集結かっこいい」と目を輝かせていた(笑)。私たちが宿泊したのは2人用のレンタルトレーラー。「トレーラー!?」と思うようなオシャレな雰囲気で、まるで家のよう。ベッドルームも分かれていて、東京のワンルームマンションよりも広いんじゃないかと思うような豪華さだ。
上りを中心に頑張ってくれたe-bikeたちも充電タイム。アップダウンの激しいエリアを約60km走り、ほぼHIGHモードを使用したe-toolの残り目盛りは2つまで減っていた。夫が乗ったePASSPORTは目盛りが1つしか減っていない。2台ともたっぷり走れるバッテリーのタフさに安心して旅が続けられる。
e-bikeだけでなく、私たちも充電が必要ということで、那須の食材尽くしのバーベキューを開始!! あちこちで買い揃えた那須の食材を前に気持ちも上がる!! 肉に野菜に飲み物に新米まで。旅先で育って作られた食材を旅先で存分に食べる贅沢!! キャンプ好きな夫がいろいろ持ってきたキャンプ道具も大活躍だ。
普段はきっと一人でこうして火を眺めながら、ちょっと美味しいものを食べて、お酒飲んで一人時間を満喫しているんだろうなと思う。でも、今度は一緒に行きたいなというよりも、「アウトドア名人がいるとすっごいラクだぁ」と、夫の働きに全力おんぶ状態で頬張るのみ。満腹になったら焚火を眺めながらワインを飲んだりしてのんびり。どこかで花火大会があったようで、夜空に花火が打ち上がったのが見えて、夏休みらしくとても旅のよい思い出になった。
農家体験やヒルクライム、温泉など那須街道を満喫
たっぷり食べて飲んで、ぐっすり寝て、早起き。毎日こんな生活だったら健康的なのに!! と思いながら窓を開けると朝の寒さに驚いた。朝露が降りてサドルもびっしょり濡れている。もう一回ベッドに戻りたいと考えながらも、上着を2枚着込んで自転車で畑へゴー。畑のあれこれをたくさん聞いて、まさに大人の社会科見学!! すっごい感動した!! もぎたてトマトを食べさせていただいたり、夢のトラクターに乗せてもらったり。
楽しい朝活を終えたらキャンプ場でレモングラスのハーブティーという優雅な時間を過ごす。出発する頃には上着を脱いでも暑い真夏日に。美味しい高原野菜の条件である寒暖差に驚かされた。
2日目はe-bikeを交換してヒルクライム。目指すは那須高原展望台。「え!?あそこまで自転車で上るの?」と、キャンプ場の方からも凄く驚かれたので、結構上るんだろうなぁとは想像していたけれど、なんと10km以上ひたすらに上りだった(笑)。前日に乗っていたe-toolに比べて、ePASSPORTはタイヤが大きいせいか、すっごくラクに感じる。「あはは。まだまだ上るの!?」とか言ってしまう上り坂だけど、心は余裕がある。
一方で夫はタイヤが小さいカーゴバイクのe-tool。アシストがあるとはいえ、かなり頑張ってペダルを漕いで、最後はギアをいちばん軽くして、ゆっくりゆっくり走って「やっと着いたー!!」と喜んでいた。ヒルクライムのような使い方ではなく、子供を乗せたり荷物を運ぶようなシーンを想定しているのに上れてしまう。やっぱりe-bikeって凄い!! でも私だったら最後まで乗り切れなかっただろうと思われるコースだった。
展望台から見下ろす街並みと、さらに高く広がる八溝山系。まさに絶景だ!! 夜景も美しいようで、恋人の聖地としてプロポーズの名所にもなっているらしい。e-bikeがなかったら、私はこの景色と爽快感を知ることはなかったと思うと感動もひとしおだ。
こんなに頑張って上ってきたけれど、下るのはあっという間。ずっと上ってきた那須街道には立ち寄りスポットもたくさん。観光スポットのつつじ吊り橋に寄ってみたけれど、夫婦ともに高いところが苦手で最後まで渡れずすぐ引き返してきたり、白濁した硫酸塩泉の日帰り温泉に寄ってさっぱりスベスベになったり、「地ビール」表示がある大きな酒屋さんでついついお土産地のビールをたくさん買い込んじゃったり、古民家風の素敵なお蕎麦屋さんでランチにお蕎麦を頂いたり。「あれもこれも行きたいやりたい」をたっぷり堪能できて、最高の夏休み。
とても楽しかったe-bikeでの那須ライド
最初に記載したとおり、今回の2台に搭載されていたドライブユニットはシマノSTEPS「E5080シリーズ」だ。シマノSTEPSシリーズでもっともコンパクトで軽量。そのぶんアシストのパワーも少ないから、高低差の大きな那須を走るのは少し心配だったけど、まったくもって杞憂だった。
普段トレーニングなんてしない私は、脚力もなくアシストの範囲を超えるスピードで走り続けることは極端に苦手だ。でも、アシストの範囲内で走るのは、かなりの距離も長い坂もシマノSTEPS「E5080シリーズ」のパワーで十分だった。ペダルを踏み込んだ瞬間にグッとパワーを感じることはないけれど、まるで寄り添うような自然な感じでスムーズにアシストしてくれる。派手な主張がないのだ。
あまりにも自然にアシストしてくれるものだから、「もしや、ほぼ自分で漕いでいるんじゃない!? 実は私って結構走れるんじゃない!?」という錯覚に襲われる。試しにアシストモードを切ってみたら「あ、ごめんなさい。アシストしてくれているのかめっちゃ疑ってました!!」と謝りたくなった(笑)。今回のように街や自然を楽しみながら、のんびりロングライドするには十分すぎる本当に良いドライブユニットだと感じた。いったいハイエンドモデルはどんな感じなんだろうか。
あっという間の2日間。距離は2日間で100km弱とハードなロングライドではないけれど、中身がぎゅーっと濃く詰まった楽しい旅だった。e-bike×旅。本当に最高の相性だ。全身で自然や風を見て感じて、路線や時間に縛られずにどこへでも行ける。そんな自由を与えてくれるe-bikeに私はぞっこんだ。これからももっともっと走っていきたい!!