家電は共働き家庭を救うか!?

食材入れたら自動調理の「ホットクック」は、共働き家庭を救うか!?

息子が中1のときに初めて結婚した著者が、家電偏差値35ながらに、時短家電を使いこなす日々を綴ったコーナーです
白主体の我が家の家電の中ではやや主張が強すぎるレッドのホットクックがやってきました

 野球部の息子を持つ私にとって、負担の大きい家事は洗濯と弁当作り。洗濯は、子どもが小さいときは週1~2回で済ませていたのだが、今は1日で洗濯機がオーバーフローしてしまう。

 そのうえ高校には学食がないため、週末の練習試合も合わせると、下手したら週7で弁当を作ることになる。さらに言えば、自分の昼食は出前を取ったりするので、非効率極まりない。

 そんな私が「時短家電の王道」として勧められたのは、材料を入れるだけで後は自動調理してくれるシャープの「ヘルシオ ホットクック」だった。

 家電で時間を産むという発想がなかった私は、調理家電がこれほど進化しているとは全く知らなかった。しかし、周囲の子持ち女性たちに聞くと、大半の人が知っているどころか、食洗機と並んで購入を迷っている2大時短家電という扱いだった。

 そして所有者の中には、「2台目を買おうか迷っている」というヘビーユーザーもいれば、この手の家電にありがちな「3回使ってお蔵入り」という人もいた。使わなくなったパン焼き機と圧力鍋を実家に置いてきた(高いから捨てられないのよ)私が、どの程度使いこなせるのか、1カ月試してみた。

メーカー名シャープ
製品名ヘルシオ ホットクック「KN-HW16E
容量1.6L
実売価格45,000円前後

「ほったらかしても手間をかけたような味」が売り

ヘルシオ ホットクックの公式サイトより

 このレビューは「ホットクック」の名前くらいは聞いたことがある読者向けに書いているが、一応同商品の公式サイトから特徴を抜き出してみた。

 ・水なし、自動、予約調理: ほったらかしでも、手間をかけたような味。いつものメニューをさらにおいしく。
 ・使いやすさ:見やすい画面でメニュー表示。保温やあたため直しもカンタンにできる。
 ・無線LAN機能:無線LANにつなげばメニューが増える。作り方がわかる。スマホアプリとの連携でさらに便利に。
 ・お手入れ:毎日使いをさらに後押しする、カンタンお手入れ。

 ざっくり言えば、ホットクックに付属しているレシピ本通りに材料を用意し、切って調味料とともに鍋に入れ、ボタンで料理名を選んで「調理スタート」を押せば、後は全部ホットクックがやってくれるという代物だ。

 メニューによっては肉を途中で裏返したり、最後に蓋を開けて煮詰める一手間も必要なので念のため。

「鍋をチラ見しないでいい」ことは想像以上に楽

最初の料理は「ひじきの煮物」

 我が家は夫と息子の3人家族なので、今回は2~4人分の料理を想定した容量1.6リットルのホットクック「KN-HW16E」を使ってみた。ホットクックが到着した日は、たまたま九州から父(72歳)が来ており、すぐに箱から出して使えるようにしてくれた(といっても面倒な作業はほとんどない)。

 父に似てせっかちな私は、即座にレシピブックをめくり、たまたま材料がそろっていた「ひじきの煮物」を作ることにした。

付属のレシピ本にあるメニューは本体に組み込まれている
料理のカテゴリーや食材名から簡単にセレクト、スタートできる

 ひじきは我が家の作り置きの定番。多めに作って、半分は小分けにして弁当用に冷凍。出番の多い脇役おかずだ。もともと面倒なのは人参の細切り程度で、手間のかからないメニューとあって、ホットクックが引き受けるのは、炒めて煮詰める作業のみ。と思っていたけど、その作業を丸投げできるだけでかなり楽、というのが新鮮な発見だった。

 普段は、ひじきや人参をだし汁で煮詰めている間に、仕事やほかの家事をして、時々鍋をチェックしている。今回、ホットクックに後工程を丸投げしてみて初めて分かったのは、マルチタスクって静かにバッテリーを消耗しているというか、各々の作業効率を少しずつ犠牲にしているんだな、ということ。

高校生の息子が作った「ぶり大根」

ジャガイモはこれくらいの大きさに切って
ホットクックで調理すると、とろとろのポタージュに
作った料理の一部

 約40日で作った料理は、ひじきの他に切り干し大根の煮物、きんぴらごぼう、煮豚、カレー、ポタージュ、手羽元の甘辛煮、ボルシチ、ピーマンのじゃこあえ、リンゴジャム……はい。使い倒しました。最後に作ったのもひじきの煮物で、ひじきに始まりひじきに終わった。

 レシピ通りに作った場合、味はばっちりだったものもあれば、濃いものもあり。家庭の定番メニューに関しては、自分好みにカスタマイズしていけば良いだろう。

 きんぴらごぼうや切り干し大根などの煮物は、最後にふたを開けて水分を飛ばす作業もある。完全自動とはいかないけど、それでもずっと炒め続けたり、ちらちら鍋を見る必要がないのはありがたい。

 そして今回は夏休みだったこともあり、高1の息子と夫にも「時間があったら作ってね」とお願いしてみた。掃除や洗濯は頼まなくてもやってくれるのに、なぜか料理だけは一切やらない夫。「時間ができたら作るよ」と言いながら、何やかんや理由をつけては逃げ、残念ながらホットクックに触ることすらなかった。

 一方息子は
 ・ぶり大根
 ・キーマカレー
 の2品を作ってくれた。

息子が作ったぶり大根
キーマカレー

 どっちもメニューは私が決め、材料も用意しておいた。息子は私の留守中に、ぶり大根作りにチャレンジした。ぶりの下処理について2回、質問の電話がかかってきたが、以降は問題なく完成。キーマカレーも一人で全工程を完了した。

 料理は家事の中でも、子どもが比較的前向きにお手伝いしてくれるタスクだが、ホットクックという、いかにも子どもの興味をそそるマシンによって、前向きさはさらにアップ。

 料理というより、理科の実験とか図工の工作に近いのかもしれない。週に1回くらいなら、カレーとか煮物を作ってくれそうな雰囲気ではあった。それでも十分助かるよね。

手入れは炊飯ジャー並みの手軽さ

 多くの人にとって「高い金出して買ったはいいけど、使わなくなるかもしれない」というのが、5万円オーバーのキッチン家電購入を迷う最大の理由だと思う。そして私が使わなくなるとすれば、メンテナンスの面倒さが最大の要因だ。

 コーヒーを飲むマグカップを、2日くらい洗わずに使い回せる不精者だし、パソコンの画面も、「文字見えにくくない?」と言われるほど汚れている(らしい。自分では分からない)。

 なので手入れについては心配だったが、意外にも? というか炊飯ジャーの取り扱いとほぼ同レベルの簡単さで、洗う部品の取り外しも楽々だった。さすがこの辺の進化は目覚ましい。ということで、炊飯器を使えている人なら、手入れはまず大丈夫だと思う。

内ぶたなどは簡単に取り外せお手入れ楽々

料理をしない夫が唯一興味を示した機能は……

 購入を迷っている友人たちから「あれって喋るらしいね」と聞かれたので、それについても言及しておきたい。調理中のアナウンスは「ぐつぐつ~♪」「おいしくできますように」「がんばれ~♪」など、ほとんどどうでもいい精神的な呼びかけ。

 正直、私にはあってもなくてもどうでもいい機能だった。しかし、料理をしない人間にとっては、そこがこの機械の唯一のチャームポイントだったようで、夫も、私の父も「面白いね~」と反応していた。

 何だかな~、アナウンスの声を好きな俳優とか声優にできるなら、付加価値を感じるけど。

時短にならないレシピ、残念レシピ

 また色々作ってみて、「時短」という面では意味の薄いレシピもあった。特に「調理時間10分」の副菜たち。ピーマンのじゃこ炒め、プチトマトのさっぱり煮は、調理スタートボタンを押して10分で出来るので、かえって慌ただしい。フライパンや鍋でも作業量は変わらない。

 しかもこの2品は、消費に苦労した。レシピの通りに4人分を作ると、分量がかなり多くなってしまう。特にトマトのさっぱり煮は冷凍にも向いていないし、汁気がある分、弁当にも入れにくいので、我が家では完全に企画倒れだった。

 明らかに失敗したのはパスタ。麺がくっついてしまった。鍋に入れる時点で、もっとしっかりほぐすべきだったのだろうが、説明書にはそこまで書いてなかった(常識だろ? って話か)。

プチトマトのさっぱり煮はレシピ通りに作ったものの食べきれず
パスタは麺がほぐれていないのがお分かりだろうか

レシピが豊富でも作るのは定番ばかり

 ホットクックを買った時点で組み込まれているレシピは、付属のメニューブックに掲載されているものだけ。無線LANに接続すると、新たに追加されたメニューをダウンロードすることができるという。

 使い始めて10日ほど経った時点で、一応無線LANに接続を試み、ホットクック専用アプリもダウンロードしたが、結局使わなかった。

 アプリに掲載されているレシピは、色とりどりのインスタ映えする料理が多く、その時点で「私のニーズとは違う」と思ったからだ。むしろネットで「作りたいメニュー(もしくは食材)+ホットクック」と検索する方が、私には便利だった。

 メジャーなメニューなら数件ヒットするので、その中から自分がやりやすいレシピを選び、ホットクックに初期インストールされているメニューの中から、一番近そうなメニューを選択する。この方法で、鶏の手羽元と豚の塊肉はいくつかのメニューを作り分けした。

ヘルシオ ホットクックのレシピを紹介するアプリ。インストールしたものの、クックパッドの汎用性にはかなわず

息子が不在の間はホットクックも用なしに

 さらに、息子が家を空けていた間は、ほとんどホットクックを使わなかったことも、書き残しておきたい。ホットクックが我が家にあったのは、息子の夏休み期間。部活の合宿と祖父母宅への帰省で、息子は累計9日間、家を空けていたが、その間ホットクックは見事に用なしとなった 。

 自宅の近所には大きなスーパーが2軒あり、夕食はお惣菜を手軽に買える環境だ(しかも20時前後に割引が始まる)。そしてテーブルがスーパーのお惣菜祭りになっても、夫は一切不満を言わない。

 さらに、食事を作る時間が本当に限られているときは、ホットクックに入れるために食材を下ごしらえするより、丼もので済ませるとか肉、魚を焼いた方が手っ取り早い。つまり、我が家ではホットクックは主に「数日かけて消費したい作り置き」において、力を発揮する存在だった。

料理をアウトソースできない家庭には力強い助っ人に

 さて、40日間使ってみて、ホットクックを2台欲しい人の気持ちも、使わなくなる人の事情もよく分かった。ホットクックがフル稼働しそうなのは、食事を外食や出来合いの惣菜で済ませられず、ほぼ毎日、家で作らないといけない家庭だろう。

 私の周囲で「ホットクックが大活躍」しているという人は、小さな子どもが複数いる、というケースが多い。ホットクックは色々な料理を作れる。だから調理家電好きならしばらくは飽きずに使い倒せるだろう。しかし私のニーズはそこにはなかった。

 実はホットクック到着2日目、休日だったこともあり調子に乗ってボルシチに手を出した。が、ボルシチ以外に使いようがない食材「ビーツ」を手に入れるのにスーパーを何軒もはしごし、時間を消費した。

 我が家の場合は、「ホットクックで作れるとしても、そんなに頻繁に食べたいわけではない手のかかる料理は、外食がベター」という結論になった。

血迷って挑戦したボルシチ。ビーツはどこに売っているか分からないうえに高い

 一方で弁当用おかずの作り置きには活躍した。例えば煮物。ホットクックに投入してスタートボタンを押せば、途中経過を気にすることなく別の作業をできるし、ごみ捨てにも行ける。

 カレーやシチューも普通の鍋で作るより良かったけど、今回使用した1.6リットルサイズだと1回で食べきってしまうのが残念だった。私のような使い方なら、場所をとっても大容量の2.4リットルモデル「KN-HW24E」を選んだ方が楽できそうだ。

 そして「切り干し大根」「ひじき」「きんぴら」「煮豚」など、定番常備菜をローテで作り、冷蔵庫にストックする。これだと生活のルーチンにも組み込みやすいし、時間と心の余裕を生み出してくれそうだ。

毎日逃げられない弁当のおかずの作り置きに使うのが、一番しっくりくる使い方だった

浦上 早苗

新聞記者歴12年。2010年に小1の息子を連れ中国に博士留学。その後現地での大学教員を経て2016年に帰国。息子が中1のときに初めて結婚し、シングルマザー生活に終止符を打つ。フリーランスで経済ジャーナリスト、翻訳、MBA教員など。公私ともに何でも一人でやってきたので、効率化とマルチタスクは得意分野ですが、家電偏差値は35くらい。取扱説明書を読む時間ももったいないので、直感で動かせる電気製品、デバイスであるかは購入の重要な決め手。 息子に、「公式戦のユニフォームと練習用のズボンとはだしで超ダサい」と言われた写真。