家電は共働き家庭を救うか!?
食材入れたら自動調理の「ホットクック」は、共働き家庭を救うか!?
2019年10月23日 06:00
野球部の息子を持つ私にとって、負担の大きい家事は洗濯と弁当作り。洗濯は、子どもが小さいときは週1~2回で済ませていたのだが、今は1日で洗濯機がオーバーフローしてしまう。
そのうえ高校には学食がないため、週末の練習試合も合わせると、下手したら週7で弁当を作ることになる。さらに言えば、自分の昼食は出前を取ったりするので、非効率極まりない。
そんな私が「時短家電の王道」として勧められたのは、材料を入れるだけで後は自動調理してくれるシャープの「ヘルシオ ホットクック」だった。
家電で時間を産むという発想がなかった私は、調理家電がこれほど進化しているとは全く知らなかった。しかし、周囲の子持ち女性たちに聞くと、大半の人が知っているどころか、食洗機と並んで購入を迷っている2大時短家電という扱いだった。
そして所有者の中には、「2台目を買おうか迷っている」というヘビーユーザーもいれば、この手の家電にありがちな「3回使ってお蔵入り」という人もいた。使わなくなったパン焼き機と圧力鍋を実家に置いてきた(高いから捨てられないのよ)私が、どの程度使いこなせるのか、1カ月試してみた。
メーカー名 | シャープ |
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製品名 | ヘルシオ ホットクック「KN-HW16E」 |
容量 | 1.6L |
実売価格 | 45,000円前後 |
「ほったらかしても手間をかけたような味」が売り
このレビューは「ホットクック」の名前くらいは聞いたことがある読者向けに書いているが、一応同商品の公式サイトから特徴を抜き出してみた。
・水なし、自動、予約調理: ほったらかしでも、手間をかけたような味。いつものメニューをさらにおいしく。
・使いやすさ:見やすい画面でメニュー表示。保温やあたため直しもカンタンにできる。
・無線LAN機能:無線LANにつなげばメニューが増える。作り方がわかる。スマホアプリとの連携でさらに便利に。
・お手入れ:毎日使いをさらに後押しする、カンタンお手入れ。
ざっくり言えば、ホットクックに付属しているレシピ本通りに材料を用意し、切って調味料とともに鍋に入れ、ボタンで料理名を選んで「調理スタート」を押せば、後は全部ホットクックがやってくれるという代物だ。
メニューによっては肉を途中で裏返したり、最後に蓋を開けて煮詰める一手間も必要なので念のため。
「鍋をチラ見しないでいい」ことは想像以上に楽
我が家は夫と息子の3人家族なので、今回は2~4人分の料理を想定した容量1.6リットルのホットクック「KN-HW16E」を使ってみた。ホットクックが到着した日は、たまたま九州から父(72歳)が来ており、すぐに箱から出して使えるようにしてくれた(といっても面倒な作業はほとんどない)。
父に似てせっかちな私は、即座にレシピブックをめくり、たまたま材料がそろっていた「ひじきの煮物」を作ることにした。
ひじきは我が家の作り置きの定番。多めに作って、半分は小分けにして弁当用に冷凍。出番の多い脇役おかずだ。もともと面倒なのは人参の細切り程度で、手間のかからないメニューとあって、ホットクックが引き受けるのは、炒めて煮詰める作業のみ。と思っていたけど、その作業を丸投げできるだけでかなり楽、というのが新鮮な発見だった。
普段は、ひじきや人参をだし汁で煮詰めている間に、仕事やほかの家事をして、時々鍋をチェックしている。今回、ホットクックに後工程を丸投げしてみて初めて分かったのは、マルチタスクって静かにバッテリーを消耗しているというか、各々の作業効率を少しずつ犠牲にしているんだな、ということ。
高校生の息子が作った「ぶり大根」
約40日で作った料理は、ひじきの他に切り干し大根の煮物、きんぴらごぼう、煮豚、カレー、ポタージュ、手羽元の甘辛煮、ボルシチ、ピーマンのじゃこあえ、リンゴジャム……はい。使い倒しました。最後に作ったのもひじきの煮物で、ひじきに始まりひじきに終わった。
レシピ通りに作った場合、味はばっちりだったものもあれば、濃いものもあり。家庭の定番メニューに関しては、自分好みにカスタマイズしていけば良いだろう。
きんぴらごぼうや切り干し大根などの煮物は、最後にふたを開けて水分を飛ばす作業もある。完全自動とはいかないけど、それでもずっと炒め続けたり、ちらちら鍋を見る必要がないのはありがたい。
そして今回は夏休みだったこともあり、高1の息子と夫にも「時間があったら作ってね」とお願いしてみた。掃除や洗濯は頼まなくてもやってくれるのに、なぜか料理だけは一切やらない夫。「時間ができたら作るよ」と言いながら、何やかんや理由をつけては逃げ、残念ながらホットクックに触ることすらなかった。
一方息子は
・ぶり大根
・キーマカレー
の2品を作ってくれた。
どっちもメニューは私が決め、材料も用意しておいた。息子は私の留守中に、ぶり大根作りにチャレンジした。ぶりの下処理について2回、質問の電話がかかってきたが、以降は問題なく完成。キーマカレーも一人で全工程を完了した。
料理は家事の中でも、子どもが比較的前向きにお手伝いしてくれるタスクだが、ホットクックという、いかにも子どもの興味をそそるマシンによって、前向きさはさらにアップ。
料理というより、理科の実験とか図工の工作に近いのかもしれない。週に1回くらいなら、カレーとか煮物を作ってくれそうな雰囲気ではあった。それでも十分助かるよね。
手入れは炊飯ジャー並みの手軽さ
多くの人にとって「高い金出して買ったはいいけど、使わなくなるかもしれない」というのが、5万円オーバーのキッチン家電購入を迷う最大の理由だと思う。そして私が使わなくなるとすれば、メンテナンスの面倒さが最大の要因だ。
コーヒーを飲むマグカップを、2日くらい洗わずに使い回せる不精者だし、パソコンの画面も、「文字見えにくくない?」と言われるほど汚れている(らしい。自分では分からない)。
なので手入れについては心配だったが、意外にも? というか炊飯ジャーの取り扱いとほぼ同レベルの簡単さで、洗う部品の取り外しも楽々だった。さすがこの辺の進化は目覚ましい。ということで、炊飯器を使えている人なら、手入れはまず大丈夫だと思う。
料理をしない夫が唯一興味を示した機能は……
購入を迷っている友人たちから「あれって喋るらしいね」と聞かれたので、それについても言及しておきたい。調理中のアナウンスは「ぐつぐつ~♪」「おいしくできますように」「がんばれ~♪」など、ほとんどどうでもいい精神的な呼びかけ。
正直、私にはあってもなくてもどうでもいい機能だった。しかし、料理をしない人間にとっては、そこがこの機械の唯一のチャームポイントだったようで、夫も、私の父も「面白いね~」と反応していた。
何だかな~、アナウンスの声を好きな俳優とか声優にできるなら、付加価値を感じるけど。
時短にならないレシピ、残念レシピ
また色々作ってみて、「時短」という面では意味の薄いレシピもあった。特に「調理時間10分」の副菜たち。ピーマンのじゃこ炒め、プチトマトのさっぱり煮は、調理スタートボタンを押して10分で出来るので、かえって慌ただしい。フライパンや鍋でも作業量は変わらない。
しかもこの2品は、消費に苦労した。レシピの通りに4人分を作ると、分量がかなり多くなってしまう。特にトマトのさっぱり煮は冷凍にも向いていないし、汁気がある分、弁当にも入れにくいので、我が家では完全に企画倒れだった。
明らかに失敗したのはパスタ。麺がくっついてしまった。鍋に入れる時点で、もっとしっかりほぐすべきだったのだろうが、説明書にはそこまで書いてなかった(常識だろ? って話か)。
レシピが豊富でも作るのは定番ばかり
ホットクックを買った時点で組み込まれているレシピは、付属のメニューブックに掲載されているものだけ。無線LANに接続すると、新たに追加されたメニューをダウンロードすることができるという。
使い始めて10日ほど経った時点で、一応無線LANに接続を試み、ホットクック専用アプリもダウンロードしたが、結局使わなかった。
アプリに掲載されているレシピは、色とりどりのインスタ映えする料理が多く、その時点で「私のニーズとは違う」と思ったからだ。むしろネットで「作りたいメニュー(もしくは食材)+ホットクック」と検索する方が、私には便利だった。
メジャーなメニューなら数件ヒットするので、その中から自分がやりやすいレシピを選び、ホットクックに初期インストールされているメニューの中から、一番近そうなメニューを選択する。この方法で、鶏の手羽元と豚の塊肉はいくつかのメニューを作り分けした。
息子が不在の間はホットクックも用なしに
さらに、息子が家を空けていた間は、ほとんどホットクックを使わなかったことも、書き残しておきたい。ホットクックが我が家にあったのは、息子の夏休み期間。部活の合宿と祖父母宅への帰省で、息子は累計9日間、家を空けていたが、その間ホットクックは見事に用なしとなった 。
自宅の近所には大きなスーパーが2軒あり、夕食はお惣菜を手軽に買える環境だ(しかも20時前後に割引が始まる)。そしてテーブルがスーパーのお惣菜祭りになっても、夫は一切不満を言わない。
さらに、食事を作る時間が本当に限られているときは、ホットクックに入れるために食材を下ごしらえするより、丼もので済ませるとか肉、魚を焼いた方が手っ取り早い。つまり、我が家ではホットクックは主に「数日かけて消費したい作り置き」において、力を発揮する存在だった。
料理をアウトソースできない家庭には力強い助っ人に
さて、40日間使ってみて、ホットクックを2台欲しい人の気持ちも、使わなくなる人の事情もよく分かった。ホットクックがフル稼働しそうなのは、食事を外食や出来合いの惣菜で済ませられず、ほぼ毎日、家で作らないといけない家庭だろう。
私の周囲で「ホットクックが大活躍」しているという人は、小さな子どもが複数いる、というケースが多い。ホットクックは色々な料理を作れる。だから調理家電好きならしばらくは飽きずに使い倒せるだろう。しかし私のニーズはそこにはなかった。
実はホットクック到着2日目、休日だったこともあり調子に乗ってボルシチに手を出した。が、ボルシチ以外に使いようがない食材「ビーツ」を手に入れるのにスーパーを何軒もはしごし、時間を消費した。
我が家の場合は、「ホットクックで作れるとしても、そんなに頻繁に食べたいわけではない手のかかる料理は、外食がベター」という結論になった。
一方で弁当用おかずの作り置きには活躍した。例えば煮物。ホットクックに投入してスタートボタンを押せば、途中経過を気にすることなく別の作業をできるし、ごみ捨てにも行ける。
カレーやシチューも普通の鍋で作るより良かったけど、今回使用した1.6リットルサイズだと1回で食べきってしまうのが残念だった。私のような使い方なら、場所をとっても大容量の2.4リットルモデル「KN-HW24E」を選んだ方が楽できそうだ。
そして「切り干し大根」「ひじき」「きんぴら」「煮豚」など、定番常備菜をローテで作り、冷蔵庫にストックする。これだと生活のルーチンにも組み込みやすいし、時間と心の余裕を生み出してくれそうだ。